JP3307017B2 - 透明電極板の形成方法 - Google Patents

透明電極板の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明電極板の形成方法
に関し、さらに詳しくは、カラー液晶表示装置用等に使
用される透明電極板の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、カラー液晶表示装置用電極板の製
造工程では、ガラス等透明基板上の少なくとも一部に赤
(R)、緑(G)、青(B)の着色層をカラーフィルタ
ーとして形成し、この着色層上に保護膜を形成し、さら
に透明導電膜を形成することが行われる。この際に、透
明導電膜と保護膜の接着が十分ではないことを解決する
ために、種々の対策が講じられており、例えば、保護膜
表面の不純物等を逆スパッタリングで除去する方法(特
公平4−53407)が知られている。
【0003】また、保護膜等有機物被膜を形成した透明
基板上であって、前記保護膜等を形成しないガラス等が
露出した部分(以下「透明基板周辺部」という)にも保
護膜等の形成過程において有機物が付着するため、この
部分に形成する透明導電膜が断線、剥離等することが問
題となる。これを解決するために、透明基板周辺部上を
直流グロー放電により発生したプラズマによりクリーニ
ングする方法(特開平4−56825)が知られてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の方法では、透明基板周辺部上の有機物による汚染を
十分には除去できない要因があることが判明した。プラ
ズマ等によるクリーニングの過程で、透明基板周辺部上
の汚染物は除去されるものの、同時に保護膜から有機物
が発生し、透明基板周辺部上に飛散し、再汚染の原因と
なるのである。
【0005】そこで、本発明は、保護膜からの有機物か
らの再汚染を抑制することによって、ガラス等が露出し
た透明基板周辺部上から透明導電膜の断線等の原因とな
る有機物を有効に除去し得る処理方法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、透明基
板の一方の主表面上の一部に、有機物被膜を形成し、前
記透明基板とは別に設置した陰極に直流電圧を印加して
発生したグロー放電により形成したプラズマによりクリ
ーニングし、透明導電膜を被覆する透明電極板の形成方
法であって、前記プラズマによるクリーニングは、直流
電圧を100V以上550V以下とし、かつ、前記グロ
ー放電時の酸素分圧を1×10-2Torr以上10To
rr以下とすることを特徴とする透明電極板の形成方法
である。
【0007】前記直流電圧については、100V以上4
00V以下であればさらによく、また、前記グロー放電
時の酸素分圧については、1×10-1Torr以上10
Torr以下であればさらによい。
【0008】本発明の第2は、透明基板の一方の主表面
上の一部に、有機物被膜を形成し、前記透明基板とは別
に設置した陰極に直流電圧を印加して発生したグロー放
電により形成したプラズマによりクリーニングし、透明
導電膜を被覆する透明電極板の形成方法であって、前記
プラズマによるクリーニングは、直流電圧を100V以
上350V以下とし、かつ、前記グロー放電時の気圧を
5×10-1Torr以上10Torr以下とすることを
特徴とする透明電極板の形成方法である。
【0009】
【作用】本発明により発生したプラズマを構成するイオ
ン種は、低電圧下で発生してエネルギーが低いため、保
護膜表面を損傷する程度が少なく、結果として保護膜か
らの有機物の発生が抑制される。
【0010】また、比較的高い圧力下で発生しているプ
ラズマであるため、保護膜から発生し飛散する有機物の
平均自由行程が短くなり、有機物が透明基板周辺部上に
まで到達する確率も低くなる。
【0011】さらに、酸素は有機物を酸化するため有機
物除去に特に有効となる。従って、プラズマ発生時の雰
囲気中に酸素が一定量以上存在すれば、有機物質による
再汚染は効果的に抑制される。
【0012】但し、酸素の分圧を高くすると保護膜の損
傷が大きくなることが指摘されており、酸素の存在は有
機物除去にとって良悪両要因となる。しかし、本発明者
らは電圧を低く設定することによって保護膜の損傷を低
下させれば、上記酸素による酸化作用をも有効に利用し
て透明基板周辺部上の十分なクリーニング効果が得られ
ることを見い出した。
【0013】また、酸素分圧が低い状態もしくは無酸素
状態であっても、雰囲気全圧を一定値以上とし、有機物
飛散の平均自由行程をさらに短縮することによって透明
基板周辺部上の再汚染は一定限度防止し得る。但し、こ
の場合には、さらに電圧を下げて保護膜表面からの有機
物の発生を抑制することが必要である。
【0014】一方、本発明によれば、透明基板周辺部上
に付着した有機物質を除去するために必要なエネルギー
をプラズマに与えるだけの直流電圧は印加しているた
め、透明基板上の有機物質は除去されうる。
【0015】従って、有機物からなる汚染物の除去と、
保護膜から飛散してくる有機物による再汚染との競争反
応である透明基板周辺部上のクリーニングの過程におい
て、後者が抑制されて前者が有効に行われることにな
る。
【0016】
【実施例】以下に、図面に基づき本発明を実施例により
詳細に説明する。 (実施例1)ソーダライムシリケートからなるガラス基
板上にエポキシ系のバインダーを用いた顔料にて、印刷
法を用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色か
らなるカラーフィルター3をガラス基板の表面の一部に
形成し、このカラーフィルター3上にポリイミドからな
る保護膜2を形成した。得られた基板表面には、図1及
び図2に示すように、カラーフィルター3及び保護膜2
が形成されている部分と形成されていない周辺部1があ
る。
【0017】このカラーフィルターおよび保護膜を形成
したガラスを、アルミニウムからなる電極をあらかじめ
設けたスパッタリング装置内に設置した。
【0018】次に、このスパッタリング装置内部を3.
0×10-5Torrに減圧した後、アルゴンと酸素の割
合を9:1とした混合ガスを導入し、1Torrにまで
昇圧した。この状態で、前記電極に−230Vの電圧、
即ち、230Vの負の電圧を印加し、グロー放電を起こ
してプラズマを発生させ、設置したガラス基板をプラズ
マ中に搬送して、保護膜等を形成した面を1分間プラズ
マに暴露してサンプル1とした。
【0019】尚、ガラス基板はフローティング電位に保
たれており、電圧は印加されていない。
【0020】このガラス基板を取り出し、保護膜等が形
成されていないガラス基板周辺部1の清浄度を純水の接
触角を用いて評価した。
【0021】結果をプラズマ処理のみを施さない比較例
とともに表1に示す。一般に、純水の接触角が小さいほ
どその表面の濡れ性が大きく清浄度が大きいことが知ら
れており、また、接触角20度以下であれば透明導電膜
形成に際しても十分清浄である。表1より、本発明によ
る方法によってガラス基板表面の清浄度が向上し、実用
上問題ないレベルに達していることがわかる。
【0022】
【表1】
【0023】また、本実施例で作製したガラス基板上に
スパッタリング法により膜厚250nmのITO膜を成
膜し、サンプル2とした。成膜温度は200℃とし、I
TO膜は保護膜が形成されている部分にもされていない
部分にも全面に形成した。
【0024】このITO膜の付着強度を5μmR圧子の
スクラッチ試験で評価した。さらに、40℃、4重量%
の水酸化カリウム水溶液に10分間浸漬し、ITO膜の
耐アルカリ性を評価した。
【0025】このスクラッチ試験と耐アルカリ性試験
を、本発明による処理を行わないガラス基板に行った。
結果を表2に示す。付着性、耐アルカリ性とも、本発明
による処理によって向上したことがわかる。
【0026】
【表2】
【0027】(実施例2)実施例1で、1Torrであ
った放電時の装置内圧力を、4.0×10-1Torr、
1.0×10-1Torr、5.0×10-2Torr、
1.0×10-2Torrとし、その他の条件は実施例1
と同様としてサンプル3〜6を作製し、純水の接触角の
測定を行った。
【0028】結果を表3に示す。放電時の圧力が高いほ
うがガラス基板の清浄度が良いことがわかる。
【0029】なお、本実施例では電圧は独立して制御し
ていない。
【0030】
【表3】
【0031】(実施例3)実施例1で、10%であった
酸素の分圧を、0%、50%、100%として、その他
の条件は実施例1と同様としてサンプル7〜9を作製
し、純水の接触角の測定を行った。
【0032】結果を表4に示す。雰囲気中の圧力が同じ
でも酸素分圧が高くなるほど清浄度が向上することがわ
かる。
【0033】
【表4】
【0034】(実施例4)実施例1とは異なり、スパッ
タリング装置内部を一度3.0×10-5Torrに減圧
することなく、大気圧から直接1Torrに減圧して、
大気成分のままで電圧を印可し、その他については実施
例1と同様としてサンプル10を作製し、純水の接触角
の測定を行った。
【0035】結果を表5に示す。大気成分中のプラズマ
でも高い清浄効果を得られることがわかる。
【0036】
【表5】
【0037】(実施例5)さらに、上記実施例と同様の
方法によって、種々の酸素分圧下で多数のサンプルを作
製し、純水の接触角の測定を行った。
【0038】結果を図3と図4に示す。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、保護膜等有機物被膜を
ガラス等透明基板上に形成した際に問題となる有機物に
よる透明基板周辺部上の汚染を除去できる。この際に、
形成した有機物被膜から透明基板上への再汚染をも有効
に抑制し得るため、透明基板周辺部上は従来の方法によ
るよりも清浄度が高くなり、透明導電膜を前記透明基板
周辺部上に形成したときにも断線等の問題が極めて生じ
にくくなる。
【0040】また、本発明によれば、酸素分圧が一定圧
以上であれば、または、酸素分圧にかかわらず全圧が一
定圧以上であれば、グロー放電の電圧を調整することに
より上記効果を達成し得るので、雰囲気中の成分につい
て厳密な調整を要することなく、大気成分のまま減圧す
ることによっても実施が可能であり、簡便に透明基板上
を清浄し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いた保護膜等を形成したガラス基板
の模式的な平面図
【図2】本発明に用いた保護膜等を形成したガラス基板
の模式的な断面図
【図3】酸素分圧と電圧による接触角変化を示す図
【図4】酸素濃度のみを変化させたときの接触角変化を
示す図
【符号の説明】
1 保護膜等を形成しないガラス基板の露出部 2 保護膜 3 カラーフィルター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−239125(JP,A) 特開 昭63−168624(JP,A) 特開 昭64−26821(JP,A) 特開 平1−233420(JP,A) 特開 平3−200215(JP,A) 特開 平4−56825(JP,A) 特開 平4−225320(JP,A) 特開 平4−257826(JP,A) 特開 平4−303824(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1343 G02F 1/1333 G02F 1/1335

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板の一方の主表面上の一部に、有
    機物被膜を形成し、前記透明基板とは別に設置した陰極
    に直流電圧を印加して発生したグロー放電により形成し
    たプラズマによりクリーニングし、透明導電膜を被覆す
    る透明電極板の形成方法であって、 前記プラズマによるクリーニングは、直流電圧を100
    V以上550V以下とし、かつ、前記グロー放電時の酸
    素分圧を1×10-2Torr以上10Torr以下とす
    ることを特徴とする透明電極板の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記直流電圧を100V以上400V以
    下とし、かつ、前記グロー放電時の酸素分圧を1×10
    -2Torr以上10Torr以下とすることを特徴とす
    る請求項1記載の透明電極板の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記直流電圧を100V以上400V以
    下とし、かつ、前記グロー放電時の酸素分圧を1×10
    -1Torr以上10Torr以下とすることを特徴とす
    る請求項1記載の透明電極板の形成方法。
  4. 【請求項4】 透明基板の一方の主表面上の一部に、有
    機物被膜を形成し、前記透明基板とは別に設置した陰極
    に直流電圧を印加して発生したグロー放電により形成し
    たプラズマによりクリーニングし、透明導電膜を被覆す
    る透明電極板の形成方法であって、 前記プラズマによるクリーニングは、直流電圧を100
    V以上350V以下とし、かつ、前記グロー放電時の気
    圧を5×10-1Torr以上10Torr以下とするこ
    とを特徴とする透明電極板の形成方法。
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