JP3303435B2 - 駆動・制動力配分制御装置 - Google Patents

駆動・制動力配分制御装置

Info

Publication number
JP3303435B2
JP3303435B2 JP13655793A JP13655793A JP3303435B2 JP 3303435 B2 JP3303435 B2 JP 3303435B2 JP 13655793 A JP13655793 A JP 13655793A JP 13655793 A JP13655793 A JP 13655793A JP 3303435 B2 JP3303435 B2 JP 3303435B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
braking force
distribution control
margin
reference value
wheel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP13655793A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06321077A (ja
Inventor
豊 大沼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP13655793A priority Critical patent/JP3303435B2/ja
Publication of JPH06321077A publication Critical patent/JPH06321077A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3303435B2 publication Critical patent/JP3303435B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)
  • Hydraulic Control Valves For Brake Systems (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両用の駆動・制動力配
分制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】駆動・制動力配分制御装置が特開昭60
─248466号公報に記載されている。この装置は、
(a) 車両の実旋回状態量を取得する実旋回状態量取得手
段と、(b) 取得された実旋回状態量の目標旋回状態量か
らの偏差(以下、旋回状態量偏差と称する)が基準値よ
り大きくなった場合に、実旋回状態量が目標旋回状態量
に追従するように駆動力と制動力との少なくとも一方の
各車輪への配分を制御する配分制御手段とを備えたもの
である。
【0003】この装置においては、旋回状態量偏差が基
準値以下の場合には駆動・制動力配分制御は行われない
が、基準値に達すると制御が開始される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の装置に
よれば、駆動・制動力配分制御が運転者の意に反して開
始される場合があるという問題があった。基準値が、運
転者が受けている感じ(後述する運転者の余裕度)とは
無関係に一定の大きさに決められていたからである。旋
回状態量偏差が同じであっても、その時点に運転者が受
けている感じは運転者個々によって異なる。運転者が余
裕がある、すなわち、車両を十分制御できると感じ、自
分で旋回状態量偏差を小さくすべく車両挙動の修正を図
ろうと考えている場合には、旋回状態量偏差が基準値よ
り大きくなっても、運転者は、制御が行われないことを
望むものである。逆に、運転者が余裕がないと感じてい
る場合には、旋回状態量偏差が基準値以下であっても、
制御が行われることによって旋回状態量偏差が小さくさ
れることを望む。以上の事情を背景として、本発明は、
駆動・制動力配分制御が運転者の意に反して開始される
ことを回避し得る駆動・制動力配分制御装置を得ること
を目的として為されたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】そして、請求項1の発明
の要旨は、図1に示すように、前記(a) 実旋回状態量取
得手段1と、(b) 配分制御手段2とを備えた駆動・制動
力配分制御装置において、配分制御手段2に、(c) 運転
者が車両を十分制御できると感じる度合いである余裕度
を、運転者による運転操作部材の操作状態に基づいて検
出する余裕度検出手段3と、(d) 基準値を余裕度が高い
場合には低い場合より大きくなるように決定する制御開
始基準値決定手段4とを設けたことにある。また、請求
項2の発明の要旨は、余裕度検出手段を、アクセルペダ
ルの操作量と、ブレーキペダルの操作力と、ステアリン
グホイールの操舵角速度の絶対値との少なくとも1つを
運転操作部材の操作状態として余裕度を検出するものと
したことにある。
【0006】
【作用】本発明の駆動・制動力配分制御装置において
は、基準値が、制御開始基準値決定手段4によって運転
者の余裕度が低い場合には高い場合より小さくなるよう
に決定される。そのため、同じ旋回状態量偏差に対し
て、運転者の余裕度が低い場合には駆動・制動力配分制
御が行われるが、余裕度が高い場合には行われない領域
が生じる。運転者の余裕度は余裕度検出手段3によって
検出される。余裕度は、運転者が受けている感じであ
り、運転者個々によって異なるものであるが、例えば、
運転操作部材の操作量,操作速度,操作パターン等の操
作状態によって推定することができる具体例として
、ブレーキペダルやアクセルペダルの操作力,操作ス
トローク,操作速度,操作量の増減頻度や、ステアリン
グホイールの操作量の増減速度等がある。
【0007】旋回状態量偏差が同じであっても、運転者
が制御困難な状態にあると感じている場合には、一般に
ブレーキペダルの操作力が大きくなる。この場合には、
運転者が旋回状態量偏差が制御によって修正されること
を望んでいるのが普通であり、ブレーキ操作力が大きい
ほど余裕度が低いと推定することは妥当なことである。
また、運転者が余裕を感じている場合には、一般に大き
い車速で旋回状態を修正し、旋回状態量偏差を小さくし
ようとする(スポーツ走行を行おうとする)ため、アク
セルペダルの踏込量が大きくなるのが普通である。した
がって、アクセルペダルの踏込量が大きいほど余裕度が
高いと推定することは妥当なことである。なお、旋回状
態量偏差自体も運転者の余裕度と関連深いものである
が、常に余裕度と対応するとは限らない。例えば、旋回
状態量偏差が大きい場合には余裕度が低いことが多い
が、運転者の運転技量が高く、意図的にスポーツ走行を
行おうとしている場合には、旋回状態量偏差が大きくて
も余裕度は高いのである。そして、この場合には、一般
にアクセルペダルの踏込量が大きくなるため、アクセル
ペダルの踏込量基づいて余裕度を検出し、制御開始基
準値を大きくするのである。
【0008】
【発明の効果】以上のように、本発明の駆動・制動力配
分制御装置によれば、基準値が運転者の余裕度に応じて
決められるため、駆動・制動力配分制御が運転者の意に
反して開始されてしまうことを回避することができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例である制動力配分制
御装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】この制動力配分制御装置は、車輪が前後左
右にそれぞれ配置された4輪車両に設けられ、制動力の
左右・前後配分を制御するものである。この制動力配分
制御装置は図2に示す電気制御式ブレーキシステムに設
けられている。このブレーキシステムは同図に示すよう
に、マスタシリンダ10および電気制御液圧源12が2
位置弁14を介して4個の車輪FR,FL,RR,RL
の各々のブレーキのホイールシリンダ20に接続される
ことによって構成されている。2位置弁14によりホイ
ールシリンダ20の液圧源としてのマスタシリンダ10
と電気制御液圧源12とのいずれかが選択可能とされて
いるのである。
【0011】マスタシリンダ10は2個の加圧室が互い
に直列に並んだタンデム型であり、それら加圧室にブレ
ーキペダル24の踏力Fに応じた高さの液圧を機械的に
発生させる。そして、一方の加圧室は左右前輪FL,F
Rのホイールシリンダ20に接続され、他方の加圧室は
左右後輪RL,RRのホイールシリンダ20に接続され
ている。
【0012】電気制御液圧源12は、アキュムレータ3
0,リザーバ32から作動液を汲み上げてアキュムレー
タ30に蓄えさせるポンプ34,励磁電流に比例した高
さに液圧を制御するリニア液圧制御弁40等を主体とし
て構成されており、アキュムレータ30に蓄積された高
い液圧をリニア液圧制御弁40により適当な高さに減圧
して出力する。リニア液圧制御弁40は、スプールに互
いに逆向きに作用する磁気力と液圧とをスプール自身に
よってバランスさせることにより液圧の高さを磁気力に
対してリニアに変化させるものである。このリニア液圧
制御弁40は各ホイールシリンダ20について個々に設
けられて、各ホイールシリンダ20のブレーキ圧を互い
に独立して制御する。
【0013】前記2位置弁14も各ホイールシリンダ2
0について個々に設けられている。2位置弁14は、非
通電状態では、マスタシリンダ10をホイールシリンダ
20に連通させるとともに、リニア液圧制御弁40をホ
イールシリンダ20から遮断する位置にあるが、通電状
態では、リニア液圧制御弁40をホイールシリンダ20
に連通させるとともに、マスタシリンダ10をホイール
シリンダ20から遮断する位置に切り換わる方向切換弁
である。
【0014】それらリニア液圧制御弁40および2位置
弁14は、図3に示されているように、駆動回路50,
52を介してECU(Electronic Controlled Unit)6
0の出力側に接続されている。一方、このECU60の
入力側には、踏力センサ70,ヨーレイトセンサ72,
車速センサ74,操舵角センサ76,前輪荷重センサ7
8,後輪荷重センサ80,圧力センサ86,アクセル開
度センサ88等が接続されている。以下、それら各セン
サを簡単に説明する。
【0015】踏力センサ70は、ブレーキペダル24の
踏力Fを検出するものである。ヨーレイトセンサ72
は、車体に実際に発生しているヨーレイト、すなわち実
ヨーレイトγを検出するものであって、左回りのヨーレ
イトを正、右回りのヨーレイトを負として検出するもの
である。車速センサ74は、車両の走行速度である車速
Vを検出するものである。操舵角センサ76は、ステア
リングホイールの操舵角θを検出するものであり、操舵
角θに基づいて操舵角速度θ′が求められる。前輪荷重
センサ78および後輪荷重センサ80はそれぞれ、左・
右前輪および左・右後輪にそれぞれ作用する接地荷重W
FL,WFR,WRL,WRRを検出するものである。圧力セン
サ86は、各ホイールシリンダ20について個々に設け
られていて、それらのブレーキ圧Pを検出するものであ
る。アクセル開度センサ88は、スロットルバルブの開
度を検出するものである。スロットル開度の大きさは図
示しないアクセルペダルの踏込量の大きさにに対応す
る。
【0016】ECU60はCPU,ROMおよびRAM
を含むコンピュータを主体として構成されており、RO
Mには、図5〜7のグラフで表されるテーブルや、操舵
角θに基づいて操舵角速度θ′を求めるプログラム,後
述する制御ゲインKや基準値Hを演算するプログラム,
踏力─ブレーキ圧制御プログラム等が格納されている。
入力された各種信号に基づいてプログラムが実行され、
電気制御液圧源12が正常であるか否かが繰り返し判定
され、正常である場合には、踏力−ブレーキ圧制御が実
行されるとともに、車両制動時であるか否かを問わず左
右・前後制動力配分制御が実行される。
【0017】ここで「踏力−ブレーキ圧制御」とは、ブ
レーキペダル24の踏力Fに見合った大きさの車体減速
度を実現するのに適当な全制動力BTOT を想定し、その
全制動力BTOT が各輪に、接地荷重WFL,WFR,WRL
RRの比率に従って配分されるように、リニア液圧制御
弁40を介してブレーキ圧を制御することである。すな
わち、左前輪の基準各輪制動力BFL0 は、 BFL0 =(WFL/(WFL+WFR+WRL+WRR))・B
TOT とされ、右前輪の基準各輪制動力BFR0 は、 BFR0 =(WFR/(WFL+WFR+WRL+WRR))・B
TOT とされ、左後輪の基準各輪制動力BRL0 は、 BRL0 =(WRL/(WFL+WFR+WRL+WRR))・B
TOT とされ、右後輪の基準各輪制動力BRR0 は、 BRR0 =(WRR/(WFL+WFR+WRL+WRR))・B
TOT とされるのである。
【0018】一方、「左右・前後制動力配分制御」と
は、左右制動力配分制御と前後制動力配分制御とが同時
に実行され、かつ、それらが上記踏力−ブレーキ圧制御
と同時に実行される制御である。概略的に説明すれば、
車体の実ヨーレイトγを検出し、車速Vと操舵角θとか
ら車体の目標ヨーレイトγ* を決定し、踏力−ブレーキ
圧制御における基準各輪制動力BFL0 ,BFR0 ,B
RL0 ,BRR0 を基準にして、実ヨーレイトγが目標ヨー
レイトγ* に追従するように制動力の左右・前後差を制
御するものである。なお、ブレーキペダル24が踏み込
まれていない場合には、当然、基準各輪制動力BFL0
FR0 ,BRL0 ,BRR0 は0とされる。
【0019】すなわち、この左右・前後制動力配分制御
は、図4に示されているように、実ヨーレイトγの操舵
応答特性を予め設定した仮想モデル、すなわち規範モデ
ルに実際の車両を追従させて一致させる制御方式によ
り、実ヨーレイトγを規範モデルの出力である目標ヨー
レイトγ* に追従させて左右・前後制動力配分を制御す
るヨーレイトのモデル追従制御であり、車両制動時であ
るか否かを問わず、車両の実際のステア特性がニュート
ラルに近くなって車両の操縦安定性が確保されるように
制動力の左右・前後差を制御するものである。この制御
の詳細については後述する。
【0020】なお、電気制御液圧源12が有効とされた
場合には、2位置弁14によりマスタシリンダ20から
の作動液の排出、すなわちブレーキペダル24の変位が
阻止されるため、ブレーキ操作感がかなり硬いものとな
る。そのため、電気制御液圧源12が有効とされた場合
でも、マスタシリンダ10が有効とされた場合とほぼ同
じようなブレーキ操作感が得られるようにするために、
図2に示されているように、マスタシリンダ10の加圧
室にノーマルクローズド型の電磁開閉弁である2位置弁
90を介してストロークシミュレータ92が接続されて
いる。電気制御液圧源12が有効とされている間、2位
置弁90が通電されて開状態に保たれることにより、マ
スタシリンダ10から排出された作動液が圧力下に蓄積
され、これにより、マスタシリンダ10が有効とされた
場合に近いブレーキ操作感が擬似的に実現されるのであ
る。
【0021】これに対して、電気制御液圧源12が正常
ではない場合には、ECU60は2位置弁90を非通電
状態としてストロークシュミレータ92を遮断するとと
もに2位置弁14を非通電状態としてマスタシリンダ1
0を有効とし、ブレーキペダル24の操作に応じてホイ
ールシリンダ20のブレーキ圧が機械的に変化させられ
る状態とする。
【0022】以下、前述の左右・前後制動力配分制御に
ついて詳細に説明する。まず、左右制動力配分制御にお
いて、制動力左右差ΔBが次式に基づいて演算される。 ΔB=K・(γ* −γ) ここで「K」は制御ゲインであって、各成分ゲインK1
〜K5 の予め決められた関数の演算によって求められる
値である。 K=g(K1 ,K2 ,K3 ,K4 ,K5 ) 各成分ゲインK1 〜K5 は、車速V,操舵角θ,アクセ
ル開度A,ブレーキ踏力F,操舵角速度θ′の絶対値に
基づいてそれぞれ求められる値である。また、(γ*
γ)はヨーレイト偏差Δγであり、目標ヨーレイトγ*
から実ヨーレイトγを引いた値である。制動力左右差Δ
Bの絶対値は、ヨーレイト偏差Δγが同じ場合には、制
御ゲインKが大きいほど大きくなる。換言すれば、制御
ゲインKは、大きな制動力差が必要な場合に大きくされ
る。
【0023】図5に示すように、成分ゲインK1 は車速
Vの増加に伴って増加させられる値である。車速Vが小
さい場合には大きい場合より、運転者にとってヨーレイ
ト偏差Δγを小さくすべく車両挙動を修正することが容
易である。そのため、車速Vが小さい場合には大きい場
合より制動力差が小さくてよいのである。成分ゲインK
2 は操舵角θの絶対値の増加に伴って減少させられる値
である。運転者は、操舵角θの絶対値が大きい場合(ス
テアリングホイールのニュートラル位置からの隔たりが
大きい場合)には、小さい場合(ステアリングホイール
がニュートラル位置近傍にある場合)より、操舵角θの
変化量に対するヨーレイト偏差Δγの変化量を小さく感
じ、操舵角θを多めに変化させるものである。そのた
め、操舵角θが大きい場合には小さい場合より制動力差
が小さくてよいのである。
【0024】成分ゲインK3 はアクセル開度Aの増加に
伴って減少させられる値である。アクセル開度Aは、前
述のようにアクセルペダルの踏込量に相当する値であ
り、運転者の余裕度を表す値である。運転者の余裕度が
高いほど、ヨーレイト偏差Δγが小さくなるように、大
きな車速で車両挙動の修正を図ろうとする意図(スポー
ツ走行を行おうとする意図)が強くなり、アクセルペダ
ルの踏込量が多くなる。そのため、アクセル開度Aが大
きいほど余裕度が高いと検出され余裕度が高いほど制
動力差が小さくされるのである。
【0025】成分ゲインK4 はブレーキペダル24の踏
力F(以下、ブレーキ踏力Fと略称する)の増加に伴っ
て増加させられる値であり、成分ゲインK5 は操舵角速
度θ′の絶対値の増加に伴って増加させられる値であ
る。ブレーキ踏力Fや操舵角速度θ′の絶対値は、運転
者の余裕度を表す値である。運転者の余裕度が低いほど
運転者が危険回避を行おうとする意図が強くなり、大き
な制動力を得ようとしてブレーキ踏力Fが大きくされた
り、急に車両の向きを変えようとして操舵角速度θ′の
絶対値が大きくされたりする。そのため、ブレーキ踏力
Fや操舵角速度θ′の絶対値が大きいほど余裕度が低い
と検出され、余裕度が低いほど制動力差が大きくされる
のである。
【0026】成分ゲインK1 ,K2 はそれぞれ車速V,
操舵角θから決まる値であり、成分ゲインK3 〜K5
それぞれ運転者の余裕度から決まる値であるため、制御
ゲインKは車両の走行状態と運転者の余裕度とを合わせ
て決められることになる。制御ゲインKは、車速Vおよ
び操舵角θが同じである場合には、余裕度に基づいて決
められることになる。
【0027】アクセルペダルとブレーキペダル24とが
同時に踏み込まれることは殆どないため、ブレーキペダ
ル24が踏み込まれていない場合には、制御ゲインK
は、アクセル開度Aと操舵角速度θ′の絶対値とから決
められる。つまり、アクセル開度Aが小さく、操舵角速
度θ′の絶対値が大きい場合には、成分ゲインK3 も、
成分ゲインK5 も大きくなるため制御ゲインKが大きく
なる。余裕度が低く、制動力差を大きくする必要がある
からである。逆に、アクセル開度Aが大きく、操舵角速
度θ′の絶対値が小さい場合には、成分ゲインK3 も、
成分ゲインK5 も小さくなるため制御ゲインKは小さく
なる。余裕度が高く、制動力差を大きくする必要がない
からである。また、アクセル開度Aも操舵角速度θ′の
絶対値も大きい場合には、成分ゲインK3 が小さくなる
が成分ゲインK5 が大きくなるため、制御ゲインKは中
程度になる。アクセルペダルの踏込量は大きいが、ステ
アリングホイールの急な操作が行われており、余裕度が
中程度であるからである。アクセル開度Aも操舵角速度
θ′の絶対値も小さい場合には、成分ゲインK3は大き
くなるが成分ゲインK5 は小さいため、制御ゲインKは
中程度になる。ステアリングホイールの操作は緩やかで
あるが、アクセルペダルの踏込量が小さいからである。
【0028】一方、ブレーキペダル24が踏み込まれて
いる場合には、ブレーキ踏力Fと操舵角速度θ′の絶対
値とに基づいて決められる。この場合には、ブレーキ踏
力Fも操舵角速度θ′の絶対値も大きければ余裕度が低
いとされるため、踏力Fと操舵角速度θ′の絶対値との
両方が大きい場合に制御ゲインKが最も大きくなり、い
ずれか一方が小さい場合に中程度となり、両方が小さい
場合に最も小さくなる。
【0029】したがって、制御ゲインKは、車速V,操
舵角θが一定であれば、余裕度が高いほど小さくされ、
制動力左右差ΔBの絶対値は、ヨーレイト偏差Δγの大
きさが同じである場合には、余裕度が高くなるにつれて
小さくされる。なお、後述する基準値Hは、余裕度が高
くなるにつれて逆に大きくされる。余裕度が高い場合に
は制動力配分制御を行う必要性が低いからである。
【0030】このようにして制動力左右差ΔBが演算さ
れたならば、その制動力左右差ΔBが、左右いずれか一
方の前輪と後輪とに、その一方の前後輪間の車輪荷重配
分に応じて配分される。本実施例においては、左右輪の
いずれか一方のブレーキ圧Pを増加させることによって
車体の向きを修正するためのヨーイングモーメントを発
生させるようになっていて、具体的には、車体の右回り
のヨーイングモーメントを増加させる必要がある場合に
は、右前輪と右後輪との双方について制動力を増加さ
せ、逆に、車体の左回りのヨーイングモーメントを増加
させる必要がある場合には、左前輪と左後輪との双方に
ついて制動力を増加させるように設計されている。
【0031】したがって、この左右配分制御において、
右回りのヨーイングモーメントを増加させる必要がある
場合、すなわち、実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγ*
より大きいために(ヨーレイトは左回りが正)ヨーレイ
ト偏差Δγが負である場合には、右前後輪に配分される
制動力が左前後輪に配分される制動力より大きくされ
る。これは、右旋回状態においては実ヨーレイトγの絶
対値が目標ヨーレイトγ* の絶対値より小さい場合、左
旋回状態においては実ヨーレイトγが目標ヨーレイトγ
* より大きい場合である。右前輪の最終各輪制動力BFR
は、 BFR=BFR0 +(WFR/(WFR+WRR))・|ΔB| となり、右後輪の最終各輪制動力BRRは、 BRR=BRR0 +(WRR/(WFR+WRR))・|ΔB| となり、左前輪の最終各輪制動力BFLは、 BFL=BFL0 となり、左後輪の最終各輪制動力BRLは、 BRL=BRL0 となる。
【0032】これに対して、左回りのヨーイングモーメ
ントを増加させる必要がある場合、すなわち、実ヨーレ
イトγが目標ヨーレイトγ* より小さいためにヨーレイ
ト偏差Δγが正の場合には、左前後輪に配分される制動
力が大きくされるように制動力配分制御が行われる。右
前輪の最終各輪制動力BFRは、 BFR=BFR0 となり、右後輪の最終各輪制動力BRRは、 BRR=BRR0 となり、左前輪の最終各輪制動力BFLは、 BFL=BFL0 +(WFL/(WFL+WRL))・|ΔB| となり、左後輪の最終各輪制動力BRLは、 BRL=BRL0 +(WRL/(WFL+WRL))・|ΔB| となる。
【0033】この左右制動力配分制御が実行されると、
最終各輪制動力BFR,BRR,BFL,BRLの和が踏力−ブ
レーキ圧制御における全制動力BTOT より制動力左右差
ΔBだけ増加することになるが、この程度の影響は車両
制動にとって殆ど問題にはならない。ただし、制動力を
左右の一方で|ΔB|/2だけ増加させ、他方で|ΔB
|/2だけ減少させて左右制動力配分制御の影響が踏力
−ブレーキ圧制御に全く及ばないようにして本発明を実
施し、あるいは、踏力−ブレーキ圧制御への影響を小さ
くして本発明を実施することができるのはもちろんであ
る。
【0034】次に、前後制動力配分制御は、旋回特性値
ΔγC に基づいて行われる。旋回特性値ΔγC は、実ヨ
ーレイトγから目標ヨーレイトγ* を差し引いた値に実
ヨーレイトγを掛け算した値である。 ΔγC =γ・(γ−γ* ) 車両がオーバステア特性を示す場合には符号が正とな
り、アンダステア特性を示す場合には負となり、かつ、
オーバステア特性またはアンダステア特性が強いほどそ
の絶対値が大きくなる値である。この旋回特性値ΔγC
は、車両の旋回方向が左であるか右であるかによっては
影響を受けない。
【0035】この前後制動力配分制御においては、車両
がオーバステア特性を示す場合、すなわち旋回特性値Δ
γC が正である場合には、前輪制動力が増加させられて
前輪横力が減少させられる一方、後輪制動力が減少させ
られて後輪横力が増加させられ、これにより、オーバス
テア特性を抑制する向きのヨーイングモーメントが増加
させられる。これに対して、車両がアンダステア特性を
示す場合、すなわち旋回特性値ΔγC が負である場合に
は、前輪制動力が減少させられて前輪横力が増加させら
れる一方、後輪制動力が増加させられて後輪横力が減少
させられ、これにより、アンダステア特性を抑制する向
きのヨーイングモーメントが増加させられる。
【0036】すなわち、前輪制動力と後輪制動力とが互
いに逆向きに、かつ互いに等しい量Δbずつ増減させら
れる。この増減量Δbは、 Δb=R・|ΔB| で表される大きさである。Rは係数であり、図6のグラ
フに表されるように、車両がニュートラルステア特性を
示す場合には「0」となり、オーバステア特性(図にお
いて「OS」で表す)を示す場合には「0より大きい
値」となり、アンダステア特性(図において「US」で
表す)を示す場合には「0より小さい値」となる可変値
とされている。また、係数Rの絶対値は、これらステア
特性が大きいほど(旋回特性値ΔγC の絶対値が大きい
ほど)大きくされる。
【0037】その結果、増減量Δbは、車両がオーバス
テア特性を示すときには正の値を取り、アンダステア特
性を示すときには負の値を取ることになり、前者の場合
には、前輪制動力が後輪制動力より大きくされ、後者の
場合には前輪制動力が後輪制動力より小さくされる。ま
た、増減量Δbの絶対値は、係数Rの絶対値が大きいほ
ど大きくされ、前後制動力配分制御に基づくヨーイング
モーメントが旋回特性値ΔγC の絶対値が増加するにつ
れて大きくされる。
【0038】以上のように、左右制動力差ΔBおよび係
数R(増減量Δb)が求められると、左右・前後制動力
配分制御においては、最終各輪制動力BFR〜BRLが次の
ように決定されることになる。すなわち、前記ヨーレイ
ト偏差Δγが0以下である場合(すなわち、制動力左右
差ΔBが0以下である場合)には、右前輪の最終各輪制
動力BFRは、 BFR=BFR0 +((WFR/(WFR+WRR))+R)・|
ΔB| となり、右後輪の最終各輪制動力BRRは、 BRR=BRR0 +((WRR/(WFR+WRR))−R)・|
ΔB| となり、左前輪の最終各輪制動力BFLは、 BFL=BFL0 となり、左後輪の最終各輪制動力BRLは、 BRL=BRL0 となるように決定される。
【0039】一方、ヨーレイト偏差Δγが0より大きい
場合(すなわち、制動力左右差ΔBが0より大きい場
合)には、右前輪の最終各輪制動力BFRは、 BFR=BFR0 となり、右後輪の最終各輪制動力BRRは、 BRR=BRR0 となり、左前輪の最終各輪制動力BFLは、 BFL=BFL0 +((WFL/(WFL+WRL))+R)・|
ΔB| となり、左後輪の最終各輪制動力BRLは、 BRL=BRL0 +((WRL/(WFL+WRL))−R)・|
ΔB| となるように決定される。
【0040】これら左右・前後車輪の制動力配分制御
は、本実施例においては、制動力左右差ΔBの絶対値が
0でない基準値Hを超えない限り、実行されず、踏力−
ブレーキ圧制御のみが実行されるようになっている。基
準値Hは、制動力配分制御の必要性が低いほど大きい値
にされ、制動力制御が開始され難くされる。制動力配分
制御の必要性は、車速V,操舵角θ等車両の走行状態に
基づいて決まる客観的必要性と、運転者の余裕度に基づ
いて一律に決まる主観的必要性との両方に基づいて決め
られる。基準値Hは、制御ゲインKと同様に、各成分基
準値H1 〜H5 の関数の演算によって求められる。 H=h(H1 ,H2 ,H3 ,H4 ,H5 ) また、各成分基準値H1 〜H5 は、車速V,操舵角θ,
アクセル開度A,ブレーキ踏力F,操舵角速度θ′の絶
対値から決められる。
【0041】図7に示すように、成分基準値H1 は、車
速Vの増加に伴って減少させられる値である。車速Vが
大きい場合には小さい場合より制動力配分制御が行われ
る必要性が高いからである。成分基準値H2 は、操舵角
θの絶対値の増加に伴って増加させられる値である。操
舵角θの絶対値が大きい場合には小さい場合より上記必
要性が低いからである。また、成分基準値H3 は、アク
セル開度Aの増加に伴って増加させられる値である。ア
クセル開度Aが大きい場合には小さい場合より運転者の
余裕度が高いため、制動力制御が行われる必要性が低
い。運転者は、余裕度が高いほどヨーレイト偏差Δγを
小さくするため車両挙動の修正を自分で行おうとする意
図が強くなるからである。成分基準値H4 は、ブレーキ
踏力Fの増加に伴って減少させられる値で、成分基準値
5 は、操舵角速度θ′の絶対値の増加に伴って減少さ
せられる値である。ブレーキ踏力F,操舵角速度θ′の
絶対値が大きい場合には小さい場合より運転者の余裕度
が低く、制動力配分制御が行われる必要性が高いからで
ある。運転者は、余裕度が低いほど制動力制御が開始さ
れることを望むものである。
【0042】仮に、基準値Hが車速Vや操舵角θ(客観
的必要姓)のみに基づいて決められるようにされている
場合には、運転者の意に反して制御が開始される場合が
あった。成分基準値H1 がそのまま基準値Hにされる場
合には、運転者が大きな車速Vで車両挙動の修正を図ろ
うとしても(スポーツ走行を行おうとしても)制動力配
分制御が開始され、車両挙動が修正されてしまうのであ
る。それを解決するために、基準値Hを一定でしかも大
きな値に(不感帯を大きく)すれば、ヨーレイト偏差Δ
γが大きくても制動力配分制御が開始されないことにな
る。その結果、上記スポーツ走行を望む運転者は満足で
きるが、制動力配分制御によって車両挙動の修正が行わ
れることを望む運転者は満足できないことになる。しか
も、運転技量が高く、スポーツ走行を望む運転者であっ
ても、常に制動力制御が開始されない方がよいと考える
わけではなく、制動力制御が開始された方がよいと考え
る場合もある。
【0043】それに対して、基準値Hが、簡単のため成
分基準値H1 と成分基準値H3 とに基づいて決められる
場合を想定する。車速Vが大きく、かつ、アクセル開度
Aが小さい場合には、成分基準値H1 も、成分基準値H
3 も小さくなり、基準値Hも小さくなる。車速Vが大き
いのは運転者の意図によるものではなく、余裕度は低い
と考えられる。逆に、車速Vも、アクセル開度Aも大き
い場合には、成分基準値H1 は小さくなるが、成分基準
値H3 は大きくなり、基準値Hは中程度になる。車速V
が大きいのは運転者の意図によるものであり、余裕度が
高いと考えられる。また、車速Vが小さく、かつ、アク
セル開度Aが大きい場合には、成分基準値H1 も、成分
基準値H3 も大きくなるため、基準値Hも大きくなる。
車速Vも、アクセル開度Aも小さい場合には、成分基準
値H1 は大きくなるが、成分基準値H3 は小さくなるた
め、基準値Hは中程度になる。
【0044】このように、基準値Hを余裕度を考慮して
決定すれば、制動力配分制御が、運転者の意図に合致し
て開始されることになる。基準値Hは、余裕度が高く、
運転者が制動力制御が行われることを望んでいない場合
には大きくされ、不感帯が大きくされる。制動力配分制
御が行われる必要は低いからである。逆に、余裕度が低
く、運転者が制動力制御が行われることを望んでいる場
合には、基準値Hは小さくされ、不感帯が小さくされ
る。
【0045】さらに、本実施例においては、制動力左右
差ΔBの絶対値が基準値Hを超えて左右・前後配分制御
が開始される場合には、その制動力左右差ΔBの値をそ
のまま用いて制御が行われるのではなく、その制動力左
右差ΔBから基準値Hを差し引いた値を用いて制御が行
われるようになっている。基準値Hの設定により車両の
挙動が急変することを抑制するためである。
【0046】以上、踏力−ブレーキ圧制御および左右・
前後配分制御について個々に説明するとともに、それら
制御相互の関係についても説明したが、次に、実際の制
動力配分制御を、ECU60のROMに格納された踏力
−ブレーキ圧制御および左右・前後制動力配分制御プロ
グラムを表す図8のフローチャートに基づいて説明す
る。
【0047】まず、ステップS1(以下、単にS1とい
う。他のステップについても同じとする)において、各
種センサから踏力F,実ヨーレイトγ,車速V,操舵角
θ,車輪荷重WFR,WFL,WRR,WRLが取り込まれる。
次に、S2において、踏力Fに応じて、踏力−ブレーキ
圧制御に係る全制動力BTOT が決定される。その後、S
3において、車輪荷重WFR,WFL,WRR,WRLに基づく
車輪荷重配分に応じて、踏力−ブレーキ圧制御に係る基
準各輪制動力BFR0 ,BFL0 ,BRR0 ,BRL0が決定さ
れる。
【0048】続いて、S4において、目標ヨーレイトγ
* ,操舵角速度θ′が決定される。目標ヨーレイトγ*
は、操舵角θと車速Vとから決定される。それらパラメ
ータ相互の関係が予めECU60のROMに記憶させら
れており、その関係を用いて目標ヨーレイトγ* が決定
されるのである。操舵角速度θ′は操舵角θの時間に対
する変化量であり、ECU60のROMに記憶させらて
いる操舵角速度演算プログラムに従って決定される。
【0049】その後、S5において、成分ゲインK1
5 の今回値が、ROMに格納された図5のグラフに表
されるテーブルに基づいて求められ、S6において、そ
れら成分ゲインK1 〜K5 から制御ゲインKの今回値が
決定される。S7において、その制御ゲインKと前記目
標ヨーレイトγ* および実ヨーレイトγから、制動力左
右差ΔBの目標値が決定される。
【0050】続いて、S8において、旋回特性値ΔγC
が演算され、さらに、その旋回特性値ΔγC に応じて係
数Rの今回値が図6のグラフで表されるテーブルに基づ
いて決定される。
【0051】その後、S9において、図7のグラフで表
されるテーブルに基づいて成分基準値H1 〜H5 の今回
値が求められ、S10において、それら成分基準値H1
〜H5 から基準値Hの今回値が決定される。
【0052】S11において、制動力左右差ΔBの絶対
値が基準値Hより大きいか否かが判定される。制動力左
右差ΔBの絶対値が基準値Hより大きくない場合には、
判定がNOとなり、S12において、基準各輪制動力B
FR0 等がそれぞれそのまま、最終各輪制動力BFR等とさ
れ、続いて、S13において、それら最終各輪制動力B
FR等が実現されるように、圧力センサ86でブレーキ圧
を監視しつリニア液圧制御弁40が制御される。以上で
本ルーチンの1回の実行が終了する。ブレーキ踏力Fが
0の場合には、最終各輪制動力BFR等が0になる。
【0053】その後、S1〜13の実行すなわち踏力−
ブレーキ圧制御のみの実行が繰り返されるうちに、制動
力左右差ΔBの絶対値が基準値Hより大きくなった場合
には、S11の判定がYESとなり、S14以下のステ
ップが実行され、これにより、踏力−ブレーキ圧制御の
みならず左右・前後配分制御も実行されることになる。
【0054】S14において、その制動力左右差ΔBが
0より大きいか否かが判定される。左回りのヨーイング
モーメントを増加させる必要があるか右回りのヨーイン
グモーメントを増加させる必要があるかが判定されるの
である。制動力左右差ΔBが0より大きい場合には、判
定がYESとなり、S15において、制動力左右差ΔB
から基準値Hが差し引かれることによって制動力左右差
ΔBが変更され、その後、S16,17および13の実
行により、その変更された制動力左右差ΔBが実現され
るようにブレーキ圧が制御される。
【0055】それに対して、制動力左右差ΔBが0以下
である場合には、S14の判定がNOとなり、S18に
おいて、制動力左右差ΔBに基準値Hが加算されること
によって制動力左右差ΔBが変更され、その後、S1
9,20および13の実行により、その変更された制動
力左右差ΔBが実現されるようにブレーキ圧が制御され
る。
【0056】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、基準値Hが運転者の余裕度を加味して決定
されるため、制動力配分制御が運転者の余裕度に応じて
開始されることになる。余裕度が高い場合には不感帯が
大きくされ、余裕度が低い場合には不感帯が小さくされ
る。したがって、基準値が常に一定の値にされている場
合に比較して、運転者の意に反して制御が行われること
が回避され、操縦性が向上する。
【0057】上記実施例の制動力配分制御は、ブレーキ
ペダル24が踏み込まれていなくても行われる。アクセ
ルペダルが踏み込まれている場合(ブレーキペダル24
が踏み込まれていない場合)には、ブレーキ踏力Fが0
となり、基準各輪制動力BFL0 〜BRR0 が0となり(S
3)、最終各輪制動力BFL〜BRRが、左右制動力差Δ
B,係数R(増減量Δb),各輪荷重に基づいた制動力
の大きさとされる(S16,17,19,20)。その
場合に、決定された最終各輪制動力BFL〜BRRが0以下
の値になる可能性があるが、ホイールシリンダ20の液
圧を負圧にすることはできないため、0以下になれば液
圧の制御は行われないことになる。したがって、予定さ
れた制動力差(左右制動力差ΔBや前後増減量Δb×
2)が、得られない場合もあるが、本実施例において
は、図4に示すように、ヨーレイトフィードバック制御
が行われるため、ヨーレイト偏差Δγが小さくなるまで
に必要な時間は長くなるものの制動力配分制御は行われ
る。
【0058】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、ヨーレイトセンサ72が本発明における
「実旋回状態量取得手段1」の一態様を構成し、ECU
60の図8のS1〜8,11〜20を実行する部分が本
発明における「配分制御手段2」の一態様を構成し、ま
た、踏力センサ70,操舵角センサ76,アクセル開度
センサ88等が本発明における「余裕度検出手段3」の
一態様を構成し、ECU60の図8のS9および10を
実行する部分が車速センサ74および操舵角センサ76
と共同して、本発明における「制御開始基準値決定手段
3」の一態様を構成しているのである。
【0059】なお、上記実施例においては、左右制動力
差ΔB(ヨーレイト偏差Δγ)が基準値Hより大きくな
った場合に、制動力配分制御が開始され、同じ値以下に
なった場合に終了されるようにされているが、開始され
る場合の基準値Hと終了される場合の基準値Hとを異な
る値にしてもよい。また、開始される場合の基準値と、
一旦開始されてからの各回実行される毎の基準値Hとを
異なる値にしたり、終了される場合の基準値Hを0にす
ることも可能である。
【0060】また、上記実施例においては、本発明にお
ける「旋回運動状態量」として車体のヨーレイトが検出
されていたが、例えば、車体の横加速度等を検出するよ
うにすることもできる。
【0061】さらに、上記実施例においては、制御ゲイ
ンKが成分ゲインK1 〜K5 の予め決められた関数の演
算によって求められるようにされていたが、予め決めら
れたテーブルに基づいて求められるようにしてもよい。
【0062】さらに、各成分ゲインK1 〜K5 に異なる
比重を掛けて、制御ゲインKを求めるようにしてもよ
い。例えば、成分ゲインK3 〜K5 の比重を成分ゲイン
1 〜K2 の比重より大きくすれば、より余裕度を重視
した制御ゲインKが決定される。特に、アクセル開度A
が大きい場合には、運転者の余裕度が非常に高いとして
もよい。また、基準値Hを求める場合も制御ゲインKを
求める場合と同様に、上記実施例における方法とは別の
方法で求めてもよく、アクセル開度Aが大きい場合に
は、基準値Hが非常に大きい値になるようにしてもよ
い。
【0063】さらに、上記実施例においては、運転者の
余裕度がアクセル開度A,ブレーキ踏力F,操舵角速度
θ′の絶対値に基づいてそれぞれ決定されるようにされ
ていたが、これらのうち任意の2つ以上の要素を合わせ
て決定されるようにしてもよいまた、S15,18を
実行する(実際の車輪に与える制動力左右差を、制動力
左右差ΔBと基準値Hとの差とする)ことは不可欠では
なく、制御の初期応答性向上を優先させるためには、省
略した方がよい場合もある。
【0064】また、上記実施例においては、ヨーレイト
偏差Δγに基づいた左右制動力配分制御と、旋回特性値
Δγc に基づいた前後制動力配分制御とが同時に行われ
るようにされているが、いずれか一方のみが行われるよ
うにしても、択一的に行われるようにしてもよい。
【0065】さらに、上記実施例においては、各ホイー
ルシリンダ20のブレーキ圧が制御されることによって
制動力配分が直接に制御されるようになっていたが、例
えば、アンチロック制御における各車輪のスリップ率を
制御することによって制動力配分を間接に制御すること
もできる。
【0066】また、上記実施例においては、各車輪への
制動力配分制御について説明したが、ブレーキペダル2
4が踏み込まれていない場合には、結果的に駆動力配分
制御が行われたことと同じになる。駆動力伝達系の差動
装置を差動制限量の制御が可能なものとするなどによっ
て、各車輪への駆動力の配分を制御することもできる。
【0067】さらに、本発明は、内燃機関を全車輪に共
通の駆動源とする自動車用の駆動・制動力配分制御装置
に対してのみならず、電動モータや油圧モータを駆動源
とするいわゆる電気自動車,油圧自動車用の駆動・制動
力配分制御装置に対して適用することもできる。電動モ
ータや油圧モータを各車輪毎に設ければ、それら電動モ
ータや油圧モータをそれぞれ制御することによって制動
・駆動力配分制御が行われることになる。
【0068】これらの他にも特許請求の範囲を逸脱する
ことなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を
施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の一実施例である制動力配分制御装置を
含む電気制御式ブレーキシステムを示すシステム図であ
る。
【図3】上記電気制御式ブレーキシステムの電気部分の
構成を示すブロック図である。
【図4】上記制動力配分制御装置の制御モデルを示すブ
ロック図である。
【図5】上記制動力配分制御装置のECUのROMに格
納された各成分ゲインK1 〜K5 を表す図である。
【図6】上記ECUのROMに格納された旋回特性値Δ
γC と係数Rとの関係を表す図である。
【図7】上記ECUのROMに格納された成分基準値H
1 〜H5 を表す図である。
【図8】上記ECUのROMに格納された左右・前後制
動力配分制御プログラムを表すフローチャートである。
【符号の説明】
20 ホイールシリンダ 40 リニア液圧制御弁 60 ECU 70 踏力センサ 72 ヨーレイトセンサ 74 車速センサ 76 操舵角センサ 88 アクセル開度センサ
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/24 B60T 8/58 B60K 17/348 B60K 23/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の実旋回状態量を取得する実旋回状態
    量取得手段と、 取得された実旋回状態量の目標旋回状態量からの偏差が
    基準値より大きくなった場合に、実旋回状態量が目標旋
    回状態量に追従するように駆動力と制動力との少なくと
    も一方の各車輪への配分を制御する配分制御手段とを備
    えた駆動・制動力配分制御装置において、 前記配分制御手段に、運転者が車両を十分制御できると感じる度合いである余
    裕度を、 運転者による運転操作部材の操作状態に基づい
    て検出する余裕度検出手段と、 前記基準値を前記余裕度が高い場合には低い場合より大
    きくなるように決定する制御開始基準値決定手段とを設
    けたことを特徴とする駆動・制動力配分制御装置。
  2. 【請求項2】前記余裕度検出手段が、アクセルペダルの
    操作量と、ブレーキペダルの操作力と、ステアリングホ
    イールの操舵角速度の絶対値との少なくとも1つを前記
    運転操作部材の操作状態として前記余裕度を検出する請
    求項1に記載の駆動・制動力配分制御装置。
JP13655793A 1993-05-13 1993-05-13 駆動・制動力配分制御装置 Expired - Lifetime JP3303435B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13655793A JP3303435B2 (ja) 1993-05-13 1993-05-13 駆動・制動力配分制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP13655793A JP3303435B2 (ja) 1993-05-13 1993-05-13 駆動・制動力配分制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06321077A JPH06321077A (ja) 1994-11-22
JP3303435B2 true JP3303435B2 (ja) 2002-07-22

Family

ID=15178018

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP13655793A Expired - Lifetime JP3303435B2 (ja) 1993-05-13 1993-05-13 駆動・制動力配分制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3303435B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102008060097A1 (de) 2007-12-20 2009-09-10 Mitsubishi Fuso Truck and Bus Corp., Kawasaki Fahrverhalten-Steuereinrichtung

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4759864B2 (ja) * 2001-07-23 2011-08-31 トヨタ自動車株式会社 車輌の制動制御装置
JP2009166843A (ja) * 2003-06-03 2009-07-30 Toyota Motor Corp 車輌の制動力制御装置
JP2006117154A (ja) * 2004-10-22 2006-05-11 Advics:Kk 車両の運動制御装置
JP5040013B2 (ja) * 2007-09-06 2012-10-03 三菱自動車工業株式会社 車両の旋回挙動制御装置
JP6048127B2 (ja) * 2012-12-25 2016-12-21 株式会社アドヴィックス 車両の運動制御装置、及び車両の運動制御方法
JP6115371B2 (ja) * 2013-07-22 2017-04-19 株式会社デンソー 車両制御装置
JP7026884B2 (ja) * 2018-03-26 2022-03-01 マツダ株式会社 車両の制御装置
JP7029110B2 (ja) * 2018-03-26 2022-03-03 マツダ株式会社 車両の制御装置
JP7026885B2 (ja) * 2018-03-26 2022-03-01 マツダ株式会社 車両の制御装置
JP7070453B2 (ja) * 2019-02-01 2022-05-18 トヨタ自動車株式会社 車両用制動力制御装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102008060097A1 (de) 2007-12-20 2009-09-10 Mitsubishi Fuso Truck and Bus Corp., Kawasaki Fahrverhalten-Steuereinrichtung

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06321077A (ja) 1994-11-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3303500B2 (ja) 車両の挙動制御装置
US5839799A (en) Behavior control device of vehicle based upon monitoring movement of rear wheels
US6131688A (en) Driftout control device of four wheel steered vehicle by combination of brake/traction control and rear wheel steering
JP3423125B2 (ja) 車両の旋回挙動制御装置
JP4297150B2 (ja) Osまたはusを段階的に異なる手段で抑制する車輌
JP3303435B2 (ja) 駆動・制動力配分制御装置
US20200406873A1 (en) Vehicle control method and vehicle system
JP3577088B2 (ja) 駆動・制動力配分制御装置
JP3161206B2 (ja) 車両の旋回挙動制御装置
JP2572860B2 (ja) 車両の旋回挙動制御装置
US8249790B2 (en) Vehicle behavior control device
CN110936941B (zh) 车辆用制动控制装置
JP2006240386A (ja) 車両挙動制御装置
JPH07117645A (ja) 制動制御装置
JPH07223526A (ja) 車両状態推定装置及び制動制御装置
JP2006306201A (ja) 駆動系にトルクコンバータを備えた車輌の制駆動力制御装置
US20130211620A1 (en) Vehicle motion control system
US6757605B2 (en) Method and device for situation-dependent and driver-dependent attenuation of ESP stabilization measures
JP4061629B2 (ja) 車両のブレーキ制御装置
JP2903553B2 (ja) アンチスキッド制御装置
JP2979705B2 (ja) 制動力制御装置
JP2002137721A (ja) 車両運動制御装置
JP3845127B2 (ja) 車両のブレーキ力配分制御方法
JPH05262212A (ja) 車両制動方法
JPH08244588A (ja) 車両の安定制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080510

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090510

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100510

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110510

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110510

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120510

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130510

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140510

Year of fee payment: 12

EXPY Cancellation because of completion of term