JP3297839B2 - ゴミ焼却炉からの排ガスの処理および水銀の回収方法 - Google Patents

ゴミ焼却炉からの排ガスの処理および水銀の回収方法

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輝昭 藤川
奉弘 野邑
伸也 西村
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大阪市
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴミ焼却炉からの
排ガスの処理および水銀の回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ゴミ焼却炉からの排ガス中の水銀
などの有害物質の公知の除去処理方法としては、湿式法
と乾式法とがある。
【0003】湿式法は、図1にフローチャートとして示
す様に、ゴミ焼却炉から電気集塵機を通過した高温の排
ガス(200〜300℃程度)を触媒脱硝装置に導いて脱硝処
理した後、スクラバーなどの洗浄装置において、排ガス
とアルカリ水溶液とを接触させ、排ガス中の有害物質を
水に吸収させて除去するものである。しかしながら、こ
の湿式方法においては、排ガス中の水銀および水銀化合
物の中、水溶性である塩化第二水銀(HgCl2)は、捕捉
できるものの、非水溶性である金属水銀(Hg0)は、捕
捉できない。また、水銀化合物を吸収したスクラバー廃
水を処理して、水銀を除去するための廃水処理設備が別
途必要となるので、工程管理を厳重に行う必要があり、
且つコスト高となる難点がある。
【0004】乾式法は、図2にフローチャートとして示
す様に、ゴミ焼却炉からの高温の排ガスに消石灰(Ca
(OH)2)の微粉末を散布して、消石灰と排ガス中の酸
性ガス(SOx、HClなど)とを反応させた後、排ガス中に
活性炭微粉末を散布して、ガス中の金属水銀を吸着除去
し、次いで、上記の反応生成物と水銀を吸着した活性炭
微粉末とをバグフィルターにより除去している。この方
法は、スクラバー廃水の処理を必要としない点では、湿
式法に比して、有利ではあるが、特有の欠点をも有して
いる。すなわち、消石灰は、塩化第二水銀に対しては高
い除去率を示すが、金属水銀の除去率は低い。従って、
金属水銀の吸着除去のために、高価な活性炭を多量に使
用する必要があり、コスト高となる。また、活性炭は、
180℃以上の温度では、吸着能力が著しく低下するの
で、消石灰散布後の高温の排ガス中にそのまま活性炭を
散布することは極めて不利であり、排ガスの温度低下を
待って散布を行わなければならないが、触媒脱硝を行う
場合には、バグフィルター通過後に行われる200℃以上
での触媒脱硝反応が阻害されることになる。さらに、多
量の消石灰散布により形成されるバグフィルター捕集灰
の処理経費が高いことも、乾式法の大きな難点である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、水
銀を含有するゴミ焼却炉からの排ガスを高価な設備や薬
剤を使用することなく、安価に且つ高効率で処理して、
水銀を回収除去しうる方法を提供することを主な目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の様な
従来技術の現状に留意しつつ鋭意研究を重ねた結果、バ
グフィルターに堆積したゴミ焼却炉からの飛灰(BF堆
積灰)とゴミ焼却炉排ガスとを接触させる場合には、B
F堆積灰が極めて高度の水銀吸着能を発揮して、排ガス
中に含まれる水銀が高い除去率で除去されることを見出
した。また、バグフィルターを通過した排ガスは、水銀
を実質的に含まないので、スクラバーなどの洗浄装置に
より洗浄するだけで、排ガス中の有害物質を水に吸収さ
せて、その除去精製を行い得ることをも、見出した。さ
らに、水銀を捕集したBF堆積灰をゴミ焼却炉で得られ
る過熱蒸気により処理することにより、捕集した水銀を
容易に回収しうることを見出した。
【0007】すなわち、本発明は、下記のゴミ焼却炉か
らの排ガスの処理および水銀の回収方法を提供するもの
である:1.ゴミ焼却炉からの排ガスを焼却炉飛灰が堆
積したバグフィルターにそのまま送って金属水銀を捕集
除去した後、処理ガスを排ガス洗浄装置で洗浄して酸性
ガスを除去するとともに、バグフィルターにより捕集さ
れた水銀を過熱蒸気を使用して回収することを特徴とす
るゴミ焼却炉からの排ガスの処理および水銀の回収方
法。
【0008】
【発明の実施の形態】以下図面を参照しつつ、本発明を
さらに詳細に説明する。
【0009】本発明方法の概要をフローチャートとして
図3に示す。本発明方法においては、焼却炉からの高温
の排ガスは、バグフィルターに送られる。バグフィルタ
ーには、予め飛灰(消石灰を散布しない状態での焼却炉
飛灰)が堆積されている。この状態で水銀含有排ガスと
バグフィルターに堆積した飛灰とが接触すると、排ガス
中の水銀が飛灰に捕捉され、排ガスから除去される。本
発明においては、排ガス温度が200℃程度の高温のまま
でも、十分な水銀除去率が得られ、排ガス温度が低温に
なると、水銀除去率はさらに改善される。
【0010】バグフィルターに堆積した飛灰(BF堆積
灰)では、時間の経過とともに捕集された水銀の量が増
大して、やがて水銀の捕集能力が低下する。従って、一
定時間(ゴミ焼却炉とその付属設備の能力などにより、
大きく異なるが、通常30〜60分間程度)経過後に
は、バグフィルターを通常の払い落とし操作に供して、
BF体積灰を払い落とし、反応器に送る。反応器には、
焼却炉に併設されたボイラーでの熱回収により発生する
過熱蒸気が供給されており、空気が存在しない或いは殆
ど存在しない雰囲気において、BF体積灰と過熱蒸気と
が接触すると、水銀は、BF体積灰から揮散する。揮散
した水銀は、蒸気とともにコンデンサーに送られ、凝縮
回収される。
【0011】水銀の回収率は、過熱蒸気の温度に依存す
るので、過熱蒸気温度は、250℃以上であることが好ま
しく、280℃以上であることがより好ましい。
【0012】なお、コンデンサーからの排気は、必要な
らば、反応器に循環し、再度処理することもできる。
【0013】バグフィルターにより水銀を除去された排
ガスは、スクラバーなどの公知の排ガス洗浄装置により
洗浄され、酸性ガス(SOx、HClなど)が除去される。洗
浄排水は、凝集沈殿処理法などの公知の排水処理法によ
り処理される。
【0014】処理を終えた排ガスは、煙突から大気中に
放出される。
【0015】なお、焼却炉からの飛灰の組成が所定値
(塩化カルシウムとして3重量%以上、炭素系吸着能物
質として3重量%以上)を下回る場合、或いはBF堆積
灰の払い落とし促進のための助剤などの薬剤散布のため
に、BF堆積灰中の有効成分が所定値に達しない場合に
は、塩化カルシウムの散布或いは水酸化カルシウムを排
ガスに添加して排ガス中のHClとの反応により、BF堆
積灰中に塩化カルシウムを形成させても良く、不足する
炭素系吸着能物質を補うために活性炭を補給しても良
い。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、飛灰を有効利用するこ
とにより、水銀除去のための薬剤が不要となる。或いは
この様な薬剤を使用する場合にも、その使用量を減少さ
せることができる。
【0017】200℃以上の高温においても、塩化第二水
銀のみならず、金属水銀をも高い除去率で除去できる。
【0018】酸性ガス処理のための消石灰の散布を行わ
ないので、バグフィルター灰の生成量が大幅に減少す
る。
【0019】BF堆積灰により捕集された水銀は、焼却
炉発生熱により生成する過熱蒸気を利用して回収される
ので、外部からのエネルギー供給を行うことなく、焼却
炉排ガス中の水銀をほぼ完全に回収することが出来る。
【0020】
【実施例】以下に参考例および実施例を示し、本発明の
特徴とするところをより一層明確にする。
【0021】なお、金属水銀を含有するが、その他の不
純成分を含有しない模擬排ガスを使用する以下の実施例
においては、水銀除去後のガスからの酸性ガスの洗浄除
去処理および洗浄排水の処理は、示していないが、これ
らの後処理は、すでに確立されている常法により、容易
に行いうるところである。
【0022】参考例1本発明において、高温における飛
灰による高い金属水銀除去能は、飛灰に含まれる塩化カ
ルシウムと炭素系吸着能物質(未燃焼の多孔質炭素成分
からなり、比表面積100〜500m2/g程度で、活性炭に類似
する吸着特性を有している)とにより発揮されるもので
ある。
【0023】これらの含有率と水銀除去率との関係をよ
り一層明確にするために、先ず疑似BF堆積灰による水
銀除去を下記の要領で行った。
【0024】カオリン(不活性物質)に塩化カルシウム
と炭素系吸着能物質に代替する活性炭(比表面積約800m
2/g)とを等量の割合で添加して疑似BF堆積灰を調製
し、図4に示す装置を使用して、高温ガス中の水銀除去
効果を確認した。
【0025】金属水銀0.15mg/Nm3を含む模擬排ガスをラ
イン1からヒーターにより350℃に加熱された予熱管3
を経て、フィルター7を備え、ヒーターにより200℃に
加熱保持されたガラス管5に供給した。予熱管3および
ガラス管5の温度は、熱電対により温度測定を行いつ
つ、調整した。フィルター7では、上記で調製した模擬
BF堆積灰により、約5mmの厚さの粉体層(フィルター
ケーキ層)を形成させた。この状態で、フィルター7を
出た模擬排ガスを水銀分析用吸収液9、ガスメーター1
1および吸引ポンプ13を経て系外に取り出した。
【0026】水銀除去効果を図5に示す。塩化カルシウ
ムと活性炭の各含有量が5重量%の場合には、約80%と
いう高い水銀除去率が達成されている。
【0027】実施例1 上記参考例1によりBF堆積灰の高い金属水銀除去能が
確認できたので、図6に示す装置を使用して、水銀を捕
集したゴミ焼却炉の飛灰からの水銀回収を行った。反応
器本体は、縦型に設置した内径3cmのガラス管からな
り、このガラス管にはガラス繊維フィルターを装着し、
その上に水銀を捕集した飛灰層(厚さ8mm、2g)を保持
した。
【0028】反応器は、温度コントローラーにより制御
されるマントルヒーターにより350℃に加熱保持した。
フラスコで発生させた水蒸気(3g/分)をスーパーヒー
ターに導き、350℃の過熱蒸気とし、反応器に導いて飛
灰層中を通過させた後、コンデンサーで凝縮させ、ドレ
ンびんで回収し、ガスをガス吸収びんで回収した。
【0029】実験終了後、飛灰、ドレンびんの回収水お
よびガス吸収びん中のKMnO4溶液の水銀を分析定量し
た。なお、比較のため、過熱蒸気に代えて350℃の空気
(1リットル/分)を供給する以外は同様にして実験を
行った。結果は表1に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】表1に示す結果から明らかな様に、水銀回
収率は、加熱空気を使用する場合には、40%にとどまっ
ているのに対し、過熱蒸気を使用する場合には、98.0%
にも達している。これは、過熱蒸気を使用する場合に
は、空気が存在しない条件となるので、飛灰中の水銀化
合物(HgCl2、Hg2Cl2、HgOなど)が、灰中の還元性物質
と酸素不存在下の還元雰囲気で反応することにより揮散
しやすい金属水銀(Hg0)に還元されたためであると推
測される。
【0032】実施例2 飛灰からの水銀回収に際しての温度依存性を明らかにす
るために、過熱蒸気および空気の温度を変える以外は実
施例1と同様にして、飛灰中の水銀の回収を行った。結
果は、表2に示す通りである。ただし、各温度における
水銀回収率は、350℃における回収率を100%とする相対
値で示してある。
【0033】
【表2】
【0034】表2に示す結果から明らかな様に、過熱蒸
気を使用する場合および空気を使用する場合のいずれに
おいても、温度上昇とともに水銀回収率は向上してい
る。しかしながら、温度上昇による水銀回収効果の改善
は、過熱蒸気の場合の方が著しく、200℃において、す
でに60%以上となっている。これに対し、空気を使用す
る場合には、300℃においても、水銀回収率は、40%に
も達していない。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゴミ焼却炉からの排ガスの公知の湿式処理方法
を示すフローチャートである。
【図2】ゴミ焼却炉からの排ガスの公知の乾式処理方法
を示すフローチャートである。
【図3】本発明によるゴミ焼却炉からの排ガスの処理お
よび水銀の回収方法を示すフローチャートである。
【図4】参考例1による高温排ガス中の水銀除去処理で
使用した装置を示すフローチャートである。
【図5】参考例1における水銀除去効果を示すグラフで
ある。
【図6】実施例1において使用した飛灰からの水銀除去
装置の概要を示す図面である。
【符号の説明】
1…排ガス導入ライン 3…予熱管 5…ガラス管 7…フィルター 9…水銀分析用吸収液 11…ガスメーター 13…吸引ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西村 朗 兵庫県宝塚市雲雀丘山手2−15−40− 202 (72)発明者 藤川 輝昭 大阪府大阪狭山市大野台2−16−10 (72)発明者 野邑 奉弘 大阪府大阪市淀川区塚本1−1−10 (72)発明者 西村 伸也 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2−6−39 −305 (72)発明者 伊與田 浩志 大阪府大阪市阿倍野区文の里3−14−19 (56)参考文献 特開 平8−117554(JP,A) 特開 平6−142507(JP,A) 特開 平5−305278(JP,A) 特開 平7−256230(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/34 B01J 20/34

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ゴミ焼却炉からの排ガスを、塩化カルシウ
    ム3重量%以上及び炭素系吸着能物質3重量%以上を含
    む焼却炉飛灰が堆積したバグフィルターにそのまま送っ
    て金属水銀を捕集除去した後、処理ガスを排ガス洗浄装
    置で洗浄して酸性ガスを除去するとともに、バグフィル
    ターにより捕集された水銀を過熱蒸気を使用して回収す
    ることを特徴とするゴミ焼却炉からの排ガスの処理およ
    び水銀の回収方法。
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