JP3297704B2 - 耐孔食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
耐孔食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法Info
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用される各種の装飾材として好適な優れた耐孔食性を有
するオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法に関す
る。
れいな表面光沢と良好な耐食性を兼ね備えているため、
建築物の外装材など装飾を主な目的とする部材に広く使
用されている。
が広がるにつれて厳しい孔食環境下で使用される場合が
多くなっている。高価なMoやCr等を多量含有させた
耐孔食性に優れたステンレス鋼は数多く開発されてい
る。しかしながら、耐孔食性は改善されたが、SUS3
04(18%Cr−8%Ni)に代表されるオーステナ
イト系ステンレス鋼に比べて加工性および製造コストの
点で問題がある。
添加は、ステンレス鋼の強度を上昇させるのみならず、
耐孔食性を向上させるのに有効であることはよく知られ
ている。耐孔食性の向上は、オーステナイト鋼中の固溶
窒素により発現する。
としてSUS304N2,SUS304LN,SUS3
29LN,SUS316LNなどがJIS規格化されて
いる。これら含Nオーステナイト系ステンレス鋼のN含
有量は0.1〜0.25質量%程度であ。これら含Nオ
ーステナイト系ステンレス鋼は、耐孔食性に優れている
が、通常のオーステナイト系ステンレス鋼と比較して熱
間加工時の変形抵抗が高くなるため割れ等の欠陥を誘発
し、それらを除去するための下工程の負担も大きくな
る。
食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を製造する
方法の提案がなされるようになった。
ステナイト系ステンレス鋼を露点−40℃以下に制御さ
れた、容量%で25〜80%のN2を含有するH2ガスと
の混合ガス雰囲気中で、1150〜1200℃の温度域
で光輝焼鈍する製造方法が開示されている。この方法
は、高温で極めて短時間の光輝焼鈍を施すことにより、
ステンレス鋼表面にN含有化合物を含む極薄い酸化皮膜
を生成させ、耐食性を改善したものである。しかしなが
ら、この方法により製造された鋼材は、薄い酸化皮膜に
疵が付くと皮膜直下から腐食が進展するという問題があ
る。特開平8−311618号公報には、鋼板の表面か
ら板厚の15%までの範囲における平均N量を0.1〜
0.5%に、鋼板の表面から板厚の15%の深さから板
厚の中心までの範囲における平均N量が0.05%以下
にしたオーステナイト系ステンレス鋼板が開示されてい
る。
のNH3濃度を2〜10%の範囲にして1050〜12
00℃で窒化処理する方法が記載されている。通常のオ
ーステナイト系ステンレス鋼は0.03%程度のNを含
有している。これらオーステナイト系ステンレス鋼を窒
化する場合、鋼中のN原子の拡散距離は、熱力学的に
(Nの拡散係数×窒化時間)1/2に律速される。従っ
て、上記製造方法では、板厚が0.5mmの鋼板を表層
窒素濃度が0.15%程度になる雰囲気で焼鈍した場
合、板厚15%までの平均N濃度を0.1%以上にする
には、窒化時間(均熱時間)を60秒以上にする必要が
ある。
と高くなるような雰囲気で焼鈍して窒化時間を短縮する
ことも考えられるが、そのためには雰囲気ガスを高純度
化(99.999%以上)して雰囲気露点を低く(−5
0℃以下)する必要があり、実生産で制御するのは困難
である。
焼鈍の1.5〜2倍程度に相当する。そのため、連続焼
鈍の消費エネルギー量の増加、および生産性の低下を招
く。この傾向は、板厚が厚くなればなる程顕著になる。
均熱時間を通常およびそれ以下に短くする場合には、鋼
板の表層窒素濃度が必然的に高くなるような雰囲気ガス
で焼鈍しなければならず、オーステナイト系ステンレス
鋼のN固溶限を超える場合が生じる。例えば、SUS3
04鋼の場合、鋼のN固溶限は0.45%程度である。
オーステナイト鋼の固溶限を超えたNは、Cr窒化物と
してオーステナイト地に析出することになる。従って、
耐孔食性はオーステナイト地のCr量が少なくなるので
逆に低下することになる。
加工性を劣化させるNを鋼の溶製時に添加することな
く、また高価な合金元素を用いず、表面の不動態被膜に
疵が付いても優れた耐孔食性を発揮するオーステナイト
系ステンレス鋼板を低コストで製造する方法を提供する
ことにある。
通りである。
板を冷間圧延した後、体積比率でN2 ガス:20〜6
0%およびH2 ガス:40〜80%を含む雰囲気ガス
中で、950〜1150℃の温度範囲内で光輝焼鈍処理
を施し、鋼板の表面から深さ10μmまでの表層におけ
る窒素濃度を0.15質量%以上にする耐孔食性に優れ
たオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
2%以下のNH3 ガスを含有する上記(1)に記載の耐
孔食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造
方法。
を鋼の溶製時に添加することなく、また高価な合金元素
を用いずに、耐孔食性がSUS316と同等以上で、表
面の不動態被膜に疵が付いても優れた耐孔食性を発揮す
るオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法を開発する
ことを目標とした。
から窒素を冷延鋼板表面に吸収させることに注目し、オ
ーステナイト系ステンレス鋼板の表層にNを0.1%以
上吸収させた光輝焼鈍した鋼板を用いて種々の腐食環境
で耐孔食性を調査した。その結果、以下の知見を得て本
発明を完成させた。
板の腐食孔の深さは非常に浅く、10μm程度である。
一方、Nを吸収させない鋼中のN含有が0.05%以下
の鋼板では30〜100μmに及ぶ。この表層に窒素を
吸収させた効果は、鋼中のNが腐食により環境中に溶出
し、腐食孔の中の液性を変化させ孔食の進行を抑制した
結果と考えられる。
焼鈍により生成した酸化皮膜を備えた状態で、SUS3
16鋼を上回る極めて優れた耐孔食性を示す。
層のN含有量が0.1%以上の場合、光輝焼鈍時に表面
に生成したCr酸化物(Cr 2 O 3 )の皮膜をエメリー
紙で破壊した部分における孔食深さは10μm以下とな
っている。そしてこのN含有量が0.15質量%以上と
なるとSUS316鋼と同等以上の耐孔食性を示すよう
になる。
ガス雰囲気中においてオーステナイト系ステンレス鋼を
焼鈍(光輝焼鈍)すると、N原子を鋼板表面から深さ1
0μmまでの表層に浸透させることができ、通常の連続
焼鈍炉での均熱時間(10〜60秒)でN含有量を0.
15質量%以上にすることができる。
温度を1000℃以上とし、効率よく吸窒させるため
に、窒化の触媒作用を有するNH 3 ガスを2%以下で
雰囲気ガスに添加することが好ましい。
系ステンレス鋼板の製造方法について具体的に説明す
る。
の冷間圧延 本発明の製造方法の対象となるオーステナイト系ステン
レス鋼は、化学組成に影響されることはなく、通常のオ
ーステナイト系ステンレス鋼であればよい。特に、SU
S304が好適である。熱延鋼板は、通常の方法により
製造したものでよい。
おこなった後、真空脱ガスを行い、連続鋳造によりスラ
ブ(厚さ120〜280mm、幅700〜1200m
m、長さ8〜10m程度)を製造し、この連続鋳造スラ
ブを1100〜1300℃程度に加熱した後、熱間圧延
して厚さ2〜10mm程度の熱延鋼板とし、その後、焼
鈍処理と酸洗処理を施して、さらに冷間圧延と焼鈍を繰
り返して板厚0.2〜1mm程度の冷延鋼板とする。
下、単に表層と記すこともある)に0.15%以上のN
を吸窒させて耐孔食性を向上させためにおこなう。オー
ステナイト系ステンレス鋼板を光輝焼鈍すると、母材に
固溶しているNに加えて、雰囲気ガスから供給されるN
が表層に吸収される。通常、オーステナイト系ステンレ
ス鋼板には、0.02〜0.04%程度のNが固溶して
おり、この範囲の含有量であれば光揮焼鈍には影響しな
いので、母材のN量を考慮する必要はない。
合ガスとする。N2ガスは表層にNを吸収させるため雰
囲気ガス中に体積比率で20%以上の量が必要である。
一方60%を超えるとH2 ガスの含有量を少なくしな
ければならないため上限を60%とした。N2 ガスに
H2 ガスを混合するのは、雰囲気ガス中に不可避的に
混入する酸素ガスにより鋼板表面に生成される酸化皮膜
をH 2 ガスにより還元して、なるべく酸化皮膜厚さを薄
くし、雰囲気ガス中のN 2 ガスから表層への窒素の吸
収を促進するためである。そのためには、混合ガス中の
H 2 は、雰囲気ガス中に体積比率で40%以上必要で
ある。したがって、H2含有量の下限を40%とした。
また、H 2 含有量が80%を超えるとN2ガス含有量
を少なくしなければならないため、上限を80%とし
た。
2 ガスの体積比率を25〜50%とするのが好ましい。
面に緻密でかつ厚い酸化皮膜が形成され、表層への窒素
の吸収が進行しなくなるため、雰囲気ガスの露点は−4
5℃以下に制御することが好ましい。さらに、雰囲気ガ
スには吸窒反応を促進させる触媒として2%以下のNH
3 を含んでいることが好ましい。NH 3 ガスは、高温
において分解してしまうため、2%を超えて添加しても
窒化源として効果は期待できない。なお、混合ガスはN
2 ガス、H 2 ガス以外は2%以下のNH 3 ガスやア
ルゴンガスのような不活性ガスと不可避的に混入する酸
素等の微量な不純ガスである。すなわち、混合ガスは、
不可避的に混入する酸素等の微量な不純ガス以外のガス
が、N 2 ガスとH 2 ガスの2種混合ガス、またはN 2
ガスとH 2 ガスおよびNH 3 ガスの3種混合ガスで
あってもよく、またN 2 ガスとH 2 ガスの合計量、ま
たはN 2 ガスとH 2 ガスおよびNH 3 ガスの合計量
が100%未満の場合、残部のガスを上記のアルゴンガ
スのような不活性ガスとした混合ガスであってもよい。
ーステナイト系ステンレス鋼板の再結晶温度は950℃
程度であり、鋼板の吸窒は再結晶温度から起こるために
焼鈍温度の下限は950℃とする。一方、焼鈍温度が1
150℃を超えると、結晶粒が粗大化し、鋼板の機械的
性質(耐力、引張強度、靱性)の劣化を招くことにな
る。また、表層のN濃度が高くなり過ぎNの固溶限(S
US304の場合,Nの固溶限は0.45%程度)を超
えると、逆に耐食性が劣化する。
処理時間である10〜60秒の範囲でよい。また、光輝
焼鈍後の冷却速度は、通常の連続焼鈍炉で実施される5
〜40℃/秒の範囲でよい。
窒素濃度 鋼板の表面から深さ10μmまでの範囲の窒素濃度を高
めるのは、鋼板表面に生成している不動態被膜が破壊さ
れても孔食の発生を抑制するためである。鋼板の表面か
ら10μmとしたのは、この範囲の窒素濃度を高めてお
けば、SUS316L鋼と同等以上の耐孔食性(孔食電
位V' C10 :0.4〜0.5V(vsSCE))が得
られるからである。また、10μm以上の深さまで吸窒
させるためには光揮焼鈍時間が長くなり、連続焼鈍での
生産効率が低下するためである。
な耐孔食性を付与するためには0.15質量%必要であ
る。上限は限定するものではないが、あまり多量にする
とCr窒化物としてオーステナイト地に析出して耐孔食
性を低下させるので0.4%以下とするのが好ましい。
整は、雰囲気ガスの組成や光揮焼鈍時間を調整すること
によりおこなうことができる。雰囲気ガス中のN 2 ガ
スの含有比率を高め、焼鈍時間を長くすると、鋼板の表
層のN濃度が高まり、表面から深くまで吸窒する傾向に
なる。
で求めることができる。
取し、ガス分析法することによりppmの精度で測定す
ることができる。また、ガス分析法の他に、軽元素
(C,N)測定専用の分光結晶LAD(人工コーティン
グ多層膜)を有するEPMA装置を使用して、表層部の
N濃度と鋼のN濃度分布を測定することができる。
に析出したCr窒化物は透過型電子顕微鏡を用いて観察
することができる。ここで、電子顕微鏡観察は、抽出レ
プリカ用試料を作製し、明視野像法により析出物の有無
を確認する。次いで、確認された析出物は、電子回折法
により回折パターンを撮影し、得られた回折パターンよ
り析出物の格子定数を求め、さらにEDX元素分析法に
より析出物の元素を確認することにより析出物を同定す
ることができる。
する板厚3mmのオーステナイト系ステンレス熱延鋼板
を冷間圧延して板厚0.5mm、0.35mmおよび
0.03mmの鋼板を製造した。この冷延鋼板から孔食
試験片を採取し、表2に示す各種の条件で光輝焼鈍をお
こなった。比較のために、表2に示すように雰囲気ガス
組成および焼鈍条件を本発明に規定する範囲外に設定し
て光輝焼鈍をおこなった。
スとH 2 ガスの2種混合ガス、N 2 ガスとH 2 ガスお
よびNH 3 の3種混合ガスを使用し、雰囲気ガスの露
点を−45℃以下に制御した。また、ヒートパターンは
平均加熱速度および平均冷却速度をそれぞれ20℃/秒
とした。
析出有無を調べ、次いで孔食試験をおこなった。
G0577)Ar脱気下の30℃,3.5%NaCl水
溶液中で孔食発生電位V' C10 を測定することにより
評価した。試料調整は、鋼板表面を#800エメリー紙
で湿式研磨し、不動態化処理(60℃−20%HNO 3
溶液浸漬)を施し、続いて測定部を#800エメリー
紙で研磨して不動態膜を破ることによりおこなった。孔
食深さは、孔食電位測定により発生した孔食を孔食深さ
測定計および光学顕微鏡(焦点深度法)を用いて測定し
た。
8、9、11、12、13、16、17は本発明に規定
する表層窒素濃度が0.15%以上の場合で、孔食電位
V' C10 が0.45V(vsSCE)以上,孔食深さ
が10μm未満であり、耐孔食性に優れていることが分
かる。この耐孔食性は、SUS316L鋼(孔食電位
V' C10 :0.4〜0.5V(vsSCE))と同程
度である。
度は、本発明で規定する範囲内であるが、光輝焼鈍条件
が本発明の規定範囲から外れている場合である。
5は、光揮焼鈍の雰囲気ガス組成が本発明で規定する範
囲外の場合である。
び孔食深さとも本発明例に比べかなり劣っていることが
分かる。
に熱間加工性を劣化させるNや高価な元素を添加する必
要がないので、熱間加工が容易となり低製造コストで、
厳しい孔食環境下(中性環境)において優れた効果を発
揮するオーステナイト系ステンレス鋼板を製造すること
ができる。
Claims (2)
- 【請求項1】オーステナイト系ステンレス熱延鋼板を冷
間圧延した後、体積比率でN2 ガス:20〜60%およ
びH2ガス:40〜80%を含む雰囲気ガス中で、95
0〜1150℃の温度範囲内で光輝焼鈍処理を施し、鋼
板の表面から深さ10μmまでの表層の窒素濃度を0.
15質量%以上に高めることを特徴とする耐孔食性に優
れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項2】雰囲気ガス中に、さらに体積比率で2%以
下のNH3 ガスを含有する請求項1に記載の耐孔食性に
優れたオーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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