JP3296723B2 - 深絞り性に優れるオーステナイト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

深絞り性に優れるオーステナイト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延のままで
も、深絞り性に優れるオーステナイト系ステンレス熱延
鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】オーステナイト系ステンレス鋼板は、耐
食性に優れるので、浴槽、鍋、食器、流し等の使途に広
く使用されている。このような用途においては、曲げ
性、張り出し性、深絞り性等のプレス成形性が良好であ
ることが必要であるが、オーステナイト系ステンレス鋼
は、曲げ性、張り出し性には優れているものの、深絞り
性には必ずしも優れているとはいえないという問題があ
った。それにもかかわらず、オーステナイト系ステンレ
ス鋼の深絞り性そのものを向上させる技術は知られてい
ないのが現状である。すなわち、従来のオーステナイト
系ステンレス鋼のプレス成形性の向上に関する技術は、
特開昭54-72713号公報のように曲げ性、張り出し性の改
善に主眼がおかれたものや、特開昭58-224113号公報に
開示されているように成形後の耳の発生を抑制すること
に着目しているものだけであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、金属板の深
絞り性には集合組織が影響することは知られており、例
えば、金属学会誌 32(1968)9,742〜745 には、Al板の絞
り加工性に及ぼす集合組織の影響について報告されてい
る。この報告内容から推定すれば、オーステナイト系ス
テンレス鋼板においても、板面に平行な{111}集合
組織が深絞り性の向上に有効であると考えられる。しか
しながら、オーステナイト系ステンレス鋼板において、
{111}集合組織を発達させるための工業的に実施可
能な方法は、これまでに知られておらず、また、そのよ
うなオーステナイト系ステンレス鋼板を製造し、深絞り
加工性を調査した報告も見当たらない。最近、発明者ら
は、オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の集合組織に
ついて研究した結果、P量を0.015 wt%以下に低減した
うえ、熱間圧延の最終パスの温度、圧下率および歪み速
度を制御することによって、{111}集積度の高い鋼
板を製造できることを見いだした。しかし、この方法
は、P量を0.015 wt%以下に低減しなければならないた
め、工業的に実施する場合に、原料や精錬コストが大き
くなるという問題がある。
【0004】そこで、本発明の目的は、上記既知技術が
抱えている問題点に鑑み、深絞り性に優れるオーステナ
イト系ステンレス熱延鋼板を提供することにある。ま
た、本発明の他の目的は、限界絞り比2.5以上の特性
を有するオーステナイト系ステンレス熱延鋼板を提供す
ることにある。さらに、本発明の他の目的は、深絞り性
に優れるオーステナイト系ステンレス熱延鋼板を経済的
に生産するための製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上掲
の目的の実現に向けて、上述したように、オーステナイ
ト系ステンレス鋼板でも、{111}集合組織が深絞り
性の向上に有効であると考え、{111}集合組織を発
達させる方法について種々の検討を行った。その結果、
熱間圧延前の連続鋳造スラブの性状調整と熱間圧延条件
の制御、特に、スラブの等軸晶率を従来のレベル(等軸
晶率≒0%)よりも格段に高くするとともに、熱間圧延
における最終パスの温度(熱延終了温度)を、従来の温
度(900 〜1000℃程度)より一層高くした場合に、熱延
鋼板の板面に平行な面における{111}の集積度が著
しく高い集合組織を形成しうることを知見した。
【0006】図1は、P含有量が0.01〜0.06wt%のSUS3
04について、熱間仕上げ圧延の最終パスを、温度1050
℃、圧下率15%、歪み速度150/sec で圧延した熱延板の
板面に平行な面における{111}集合組織の集積度に
及ぼす連続鋳造スラブの鋳造組織における等軸晶率の影
響を調査した結果である。図1から、P量が比較的高い
場合でも、この等軸晶率を通常のレベルよりも格段に高
めることにより、板面における{111}集合組織の発
達を促進でき、特にP量が0.04wt%以下、等軸晶率が30
%以上の場合に、{111}の集積度を2.2 以上に増大
できることがわかる。
【0007】発明者らは、SUS304の熱延板の{111}
集合組織の集積度を大きくするための方法について、さ
らに検討を続けた。図2は、P量が0.04wt%で、等軸晶
率が30%のSUS304について、熱延板の板面に平行な面
における{111}集合組織の集積度に及ぼす熱間仕上
げ圧延最終パスの温度と圧下率の影響を調査した結果で
ある。図2から、熱間仕上げ圧延最終パスの温度を1050
℃、最終パスの圧下率を15%以上にすることにより、
{111}集合組織の集積度を2.2 以上にまで高め得る
ことがわかる。
【0008】上述したように、P量が比較的高くても、
連続鋳造スラブの等軸晶率を高め、仕上げ熱延最終パス
の温度を高く、かつ圧下率を大きくすることにより、板
面に平行な面における{111}集合組織の集積度を高
めることができることがわかった。このように、板面に
平行な面の{111}集合組織が発達する機構について
は必ずしも明らかではないが、上記条件でスラブを熱間
圧延した場合には、いずれの方位の集合組織でも熱延中
または熱延直後に回復、再結晶が生じて、冷間圧延のよ
うに、歪みが蓄積しやすい特定の方位に優先的に再結晶
が生じ、歪の蓄積しにくい{111}集合組織を侵食す
るといった現象が起こらないために、圧延により結晶粒
が回転して生じた{111}集合組織が発達すると考え
られる。
【0009】図3は、P量が0.04wt%のSUS304の熱延鋼
板について、板面に平行な面における{111}集合組
織の集積度と限界絞り比(LDR)との関係を示すもの
である。図3から、板面に平行な面における{111}
集合組織の集積度を2.2 以上に制御すれば、LDRが2.
5 以上となり極めて良好な深絞り特性が得られることを
確認した。なお、以上の実験結果は、SUS304を熱間圧延
したままの鋼板を用いて得られた結果であるが、本発明
方法にしたがって製造すれば、熱延のままでも、ほぼ回
復、再結晶が完了していることを確認した。したがっ
て、熱間圧延後さらに焼鈍を行っても、集合組織が大き
く変化しないので、熱延後の焼鈍は必ずしも必要ではな
い。ただし、一層の軟質化を図るために、熱延後さらに
焼鈍することは可能である。
【0010】本発明は、以上述べた各知見に基づいて完
成されたものであり、その要旨構成は次のとおりであ
る。
【0011】)C:0.005〜0.1wt%、Si:0.05〜3.0w
t%、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.04wt%以下、S:0.03
wt%以下、Al:0.5wt%以下、Cr:15〜25wt%、Ni:5〜
15wt%、N:0.005〜0.3 wt%、O:0.007wt%以下を含
有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に
平行な面における{111}集合組織の集積度が2.2以
上であることを特徴とする深絞り性に優れるオーステナ
イト系ステンレス熱延鋼板。
【0012】)C:0.005 〜0.1wt%、Si:0.05〜3.0
wt%、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.04wt%以下、S:0.0
3wt%以下、Al:0.5wt%以下、Cr:15〜25wt%、Ni:5
〜15wt%、N:0.005 〜0.3wt%、O:0.007wt%以下を
含み、かつCu:0.05〜5.0wt%、Co:0.05〜5.0wt%、M
o:0.05〜5.0wt%、W:0.05〜5.0wt%、Ti:0.01〜0.5
wt%、Nb:0.01〜0.5wt%、V:0.01〜0.5wt%、Zr:0.
01〜0.5wt%、B:0.0003〜0.01wt%、Ca:0.0003〜0.0
1wt%、REM:0.001〜0.1wt%およびY:0.001〜0.5wt%
のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平
行な面における{111}集合組織の集積度が2.2以上
であることを特徴とする深絞り性に優れるオーステナイ
ト系ステンレス熱延鋼板。
【0013】)等軸晶率を30%以上になした連続鋳造
による鋼スラブを、加熱後、粗圧延し、次いで仕上げ圧
延の最終パスを、1050℃以上の温度かつ15%以上の圧下
率にて圧延することを特徴とする上記1)または2)に記
載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
【0014】)仕上げ圧延の最終パスに潤滑剤を用い
る上記3)に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼
板の製造方法。
【0015】)粗圧延で得られたシートバーを先行す
るシートバーと接合し、連続的に仕上げ圧延する上記
)または)に記載のオーステナイト系ステンレス熱延
鋼板の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明によるオーステナイト系ステンレス熱延鋼
板における板面に平行な面における{111}の集積度
を2.2 以上とする。というのは、図3に示したように、
この{111}集合組織の集積度を2.2 以上に高めれ
ば、限界絞り比:2.5 以上の良好な特性が得られるから
である。よって、本発明では、板面に平行な面における
{111}の集積度を2.2 以上、好ましくは 2.5以上と
する。
【0017】C:0.005 〜0.1 wt% Cは、強力なオーステナイト化元素で0.005 wt%以上添
加されるが、0.1 wt%を超えて添加すると溶接時にブロ
ーホールが発生しやすくなる。よって、Cの添加量は0.
005 〜0.1 wt%の範囲とする。
【0018】Si:0.05〜3.0 wt% Siは、溶製時に脱酸剤として0.05wt%以上添加される。
しかし、その添加量が3.0wtwt %を超えると熱延時のデ
スケーリングや焼鈍後の脱スケールが困難になる。よっ
て、Siの添加量は0.05〜3.0 wt%の範囲とする。
【0019】Mn:0.05〜2.0 wt% Mnは、オーステナイトを安定化するとともに、Sを固定
して熱間加工性を向上させるために、0.05wtwt%以上の
添加量が必要である。しかし、Mnの量が2.0 wt%を超え
ると熱延時のデスケーリングや焼鈍後の脱スケールが困
難になる。よって、Mnの添加量は0.05〜2.0 wt%の範囲
とする。
【0020】P:0.04wt%以下 Pは、板面に平行な面における{111}集合組織を発
達させるために低くするのが望ましい。連続鋳造スラブ
の等軸晶率および熱間圧延が本発明にある場合に、P量
が0.04wt%までは、図1に示すように{111}集合組
織の発達が顕著となり、限界絞り比が向上する。よっ
て、Pの添加量は0.04wt%以下とする。
【0021】S:0.03wt%以下 Sは、熱間加工性を低下させ、耐食性を低下させる元素
であり、少なくすることが望ましい。Sの含有量は、0.
03wt%までは許容しうるので、0.03wt%以下とする。
【0022】Al:0.5 wt%以下 Alは、溶製時に必要に応じて脱酸剤として添加される。
しかし、その添加量が0.5 wt%を超えると熱延時のデス
ケーリングを困難にする。よって、その上限を0.5 wt%
とする。
【0023】Cr:15〜25wt% Crは、耐食性および耐酸化性を向上させる元素であり、
15wt%以上添加する必要がある。しかし、その添加量が
25wt%を超えると、鋼が脆化しやすくなる。よって、Cr
の添加量は15〜25wt%の範囲とする。
【0024】Ni:5 〜15wt% Niは、オーステナイトを安定化するとともに、靭性およ
び耐食性を向上させる元素であり、5 wt%以上添加する
必要がある。しかし、その添加量が15wt%を超えても、
これらの効果が飽和する。よって、Niの添加量は5 〜15
wt%の範囲とする。
【0025】N:0.005 〜0.3 wt% Nは、オーステナイトを安定化するとともに、耐食性を
向上させる元素であり、0.005 wt%以上添加する必要が
ある。しかし、その添加量が0.3 wt%を超えると、溶接
時にブローホールが発生しやすくなる。よって、0.005
〜0.3 wt%の範囲とする。
【0026】O:0.007 wt% Oは、鋼の加工性を低下させる元素であり、少なくする
ことが望ましいが、その含有量は0.007 wt%まで許容さ
れる。
【0027】以上の基本元素のほか、必要に応じて、
Cu、Co、Mo、WTi、Nb、V、Zr、B、Ca、RE
M 、Yの各群から選ばれるいずれか1種または2種以上
の元素を添加することができる。 Cu:0.05〜5.0 wt%、Co:0.05〜5.0 wt% Cu、Coは、オーステナイトを安定化するとともに、耐食
性を向上させる元素であり、いずれも0.05wt%以上添加
される。しかし、これらの添加量が5.0 wt%を超えても
その効果が飽和する。よって、いずれの元素とも0.05〜
5.0 wt%の範囲とする。
【0028】Mo:0.05〜5.0 wt%、W:0.05〜5.0 wt% Mo、Wは、いずれも耐食性を向上させる元素であり、0.
05wt%以上添加される。しかし、これらの添加量が、5.
0 wt%を超えると脆化しやすくなる。よって、いずれの
元素とも0.05〜5.0 wt%の範囲とする。
【0029】Ti:0.01〜0.5 wt%、Nb:0.01〜0.5 wt
%、V:0.01〜0.5 wt%、Zr:0.01〜0.5 wt% Ti, Nb, V, Zrは、いずれも溶接時のCr炭窒化物の生成
を抑制して、鋭敏化を抑制するために有用な元素であ
り、0.01wt%以上添加される。しかし、これらの添加量
が0.5 wt%を超えると大型介在物が生成して靭性が劣化
する。よって、いずれの元素とも0.01〜0.5 wt%の範囲
とする。
【0030】B:0.0003〜0.01wt% Bは、二次加工脆性を防止するために0.0003wt%以上添
加される。しかし、その量が0.01wt%を超えると加工性
が低下する。このため、Bの添加量は0.0003〜0.01wt%
の範囲とする。
【0031】Ca:0.0003〜0.01wt% Caは、Al2O3 と化合して介在物の強度を低下させ、延性
を増して加工性を向上させるのに有用な元素である。そ
の効果は0.0003wt%以上の添加で効果が発揮されるが、
0.01wt%を超えて添加すると耐食性が低下する。よっ
て、Caの添加量は0.0003〜0.01wt%の範囲とする。
【0032】REM :0.001 〜0.1 wt%、Y:0.001 〜0.
5 wt% REM 、Yは、Sを固定して熱間加工性を向上させる元素
である。その効果は、. ずれも0.001 wt%以上の添加で
得られるが、REM で0.1 wt%、Yで0.5 wt%を超えて添
加すると鋼の靱性が低下する。よって、REM は0.001 〜
0.1 wt%、Yは0.001 〜0.5 wt%の範囲で添加する。
【0033】連続鋳造スラブの等軸晶率 連続鋳造スラブの鋳造組織における等軸晶率は、熱延板
の板面に平行な面における{111}集合組織を高める
ために、高くすることが有効である。図1で示したよう
に、{111}集合組織の形成に悪影響を及ぼすPの含
有量が0.04wt%であっても、30%以上の等軸晶率のスラ
ブを所定の条件で熱間圧延すれば、{111}集合組織
の集積度が2.2 以上となり、高い限界絞り比を達成する
ことができる。したがって、連続鋳造スラブの等軸晶率
は30%以上とする。等軸晶率30%以上といった、従来の
技術では製造困難であった高い等軸晶率の連続鋳造スラ
ブを製造するための方法としては、連続鋳造時の鋳込み
開始温度を低下したり、鋳込み開始後に電磁力によって
攪拌を行うことが有効である。
【0034】次に、熱間圧延の具体的方法について説明
する。熱間圧延前のスラブ加熱の温度は、1150〜1250℃
の範囲がよい。加熱に続いて、粗圧延と4〜8パスの多
パス圧延による仕上げ圧延とからなる熱間圧延を行う。
このときの仕上げ圧延の最終パスを次のように配慮する
必要がある。 ・熱延の最終パスの温度:図2に示すように、板面に平
行な面における{111}集合組織は、最終パスの温度
を高くすれば形成されやすくなる。そして集積度2.2 以
上の{111}集合組織を形成させ、高い限界絞り比を
達成するには、最終パスの温度を1050℃以上にする必要
がある。よって、熱間仕上げ圧延最終パスの温度は1050
℃以上とする。なお、その上限はとくに定めないが、通
常スラブの再加熱温度が高々1250℃であることを考慮し
て1250℃までとするのが望ましく、また、熱延中に特に
加熱する必要はない。
【0035】・熱延の最終パスの圧下率:図2に示すよ
うに、熱間仕上げ圧延における最終パスの圧下率を15
%以上にすることにより、板面に平行な面における{1
11}集合組織の集積度を大きくし、限界絞り比を向上
させることができる。よって、熱間仕上げ圧延最終パス
の圧下率は15%以上の範囲とする。その上限は特に定
めないが、鋼板の形状や鋼板の蛇行の点を考慮すれば、
通常は40%程度までである。なお、熱延の最終パスの
歪み速度については特に定めないが、150 /sec以上の範
囲で行うことが集合組織形成のうえから望ましい。
【0036】・熱延の最終パスにおける潤滑剤の使用と
連続圧延:粗圧延で得られるシートバーを接合して、熱
間仕上げ圧延を連続的に行うと、最終パスにおける圧下
率あるいはさらに歪み速度を、コイルの長さ方向にわた
って、一様に大きくすることができ、コイル全長にわた
って、均一かつ優れた集合組織引いては深絞り性を確保
できるので有効である。また、潤滑剤の使用は厚み方向
における歪み量の均一化をもたらし、{111}集合組
織の均一な発達に寄与する。なお、潤滑剤および連続圧
延の採用は、いずれか一方でも得られるが、両者の手段
を併用すれば更なる効果が得られるので、両者を併用す
ることが望ましい。ここに連続圧延は、粗圧延で得られ
たシートバーを先行するシートバーと接合し、連続的に
仕上げ圧延するものである。また、潤滑圧延の方法は、
低融点のガラス系の潤滑剤を圧延前の鋼板に吹きつける
ことなどによって行えばよい。
【0037】以上の方法によって製造した熱延鋼板(焼
鈍したものも含む)は、脱スケールを行うことなくその
ままでも使用しうるが、一般には、さらに脱スケールを
行い最終製品として使用される。脱スケールの方法は、
ショットブラスト、ベンディング等の機械的な予備脱ス
ケールを行ったのち、75〜90℃、15〜30%の硫
酸に20〜120秒浸漬し、さらに50〜70℃の、1
〜5%のフッ酸と5〜20%の硝酸の混合酸に20〜1
20秒浸漬するなどの方法で行えばよい。
【0038】
【実施例】表1に示す成分組成のオーステナイト系ステ
ンレス鋼を、通常の転炉法で溶製し、連続鋳造工程によ
り厚さ200mm のスラブとした。鋳造にあたっては、電磁
攪拌の程度を変化させることによって、等軸晶率を変化
させた。このスラブを、スラブ加熱炉で、1150〜1250℃
で1〜2hr均熱した後、1080〜1150℃の温度で合計9
0%の圧下率の粗圧延を行い、次いで、7パスからなる
仕上げ圧延の最終パスの圧延を、表2および表3に示す
条件で行い、種々の板厚の熱延板とした。これらの熱延
板を分割し、一方はそのまま、他方はさらに、連続焼鈍
炉で1150℃×30sec の焼鈍を行った。以上の方法で製造
した熱延まま材および熱延焼鈍材を、ショットブラスト
による機械的な予備脱スケールした後、80℃、24%
の硫酸に30秒浸漬し、さらに60℃の、3%のフッ酸
と12%の硝酸の混合酸に30秒間浸漬して脱スケール
を行い供試材とした。
【0039】上記スラブ加熱前の連続鋳造スラブについ
て、鋳造方向に垂直な断面(横断面)を、研磨後、王水
でエッチングし、鋳造組織における等軸晶率を測定し
た。ここに、等軸晶率は、鋳造組織の長軸と短軸の比
(長軸/短軸)が1〜2の範囲にあるものを等軸晶と
し、この等軸晶の合計面積が横断面の面積に占める面積
百分率で表した。また、脱スケールした供試材について
は、板面に平行な{111}集合組織の集積度と限界絞
り比を調査した。ここに、板面に平行な面における{1
11}集合組織の集積度は、板表面から板厚1/4 まで研
削した圧延面に平行な面を#1000 のエメリー紙で研磨し
た後、王水でエッチングして加工組織を除去した試料に
ついて、インバース法(松村源太郎訳:カリティ新版X
線回折要論(1986)290〜293ページ参照)に
より測定した{111}の強度と、ランダム試料のそれ
との強度比(I/IO)として表した。限界絞り比(L
DR)は、鋼板にワセリンを塗布し、しわ抑え力を1to
n とした時に、33mmφの円筒ポンチで絞り加工が可能な
限界の鋼板の直径とポンチの直径の比で求めた。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】得られた試験結果を表2および表3に併せ
て示す。本発明例に相当するNo. 4,6,12〜15,17,21,23,
27,29,31,33,35,37,39,41,43,45,47,49は、熱延まま
材、熱延焼鈍材とも板面に平行な面における{111}
の集積度が2.2 以上で、限界絞り比が2.5 以上であっ
て、深絞り性は良好であった。これに対し、スラブの等
軸晶率が30%未満であるNo. 1,2,7 〜10,18,19,24,2
5, 34,38,40,44,46、熱延の仕上げ温度が1050℃未満で
あるNo.1,3,5,7,9,11,16,18,20,22,24,26,28,32,34,40,
42,48 、熱延の圧下率が15%未満である30,36は、熱
延まま材、熱延焼鈍材とも板面に平行な{111}の集
積度が2.2 未満で、限界絞り比も2.5 未満であり、絞り
成形性が不十分である。また、本発明例のうち、熱間仕
上げ圧延工程を連続圧延にて行ったNo. 14、潤滑を施し
たNo. 12、連続圧延と潤滑を行ったNo. 15は、連続圧
延、潤滑のいずれも行わなかったNo. 11と比べて、板面
に平行な面の{111}の集積度、限界絞り比ともより
良好な値を示している。なお、本発明例のうち、P量が
0.04wt%以下のものは、P量が0.05wt%であるNo. 27,2
9 と比べて、板面に平行な{111}の集積度が高く、
限界絞り比もより良好な値を示している。
【0044】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、板
面に平行な面における{111}集積度が高い集合組織
が得られ、深絞り性に優れるオーステナイト系ステンレ
ス熱延鋼板を製造することが可能になる。本発明法によ
れば、冷間圧延を行うことを必要とせず、工業的にも容
易に実施可能であるので、深絞り成形用のオーステナイ
ト系ステンレス熱延鋼板を経済的に製造することが可能
になる。したがって、浴槽、鍋、パイプ、食器、流し等
の成形品を容易かつ安価に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SUS304熱延鋼板の板面に平行な面におけ
る{111}集合組織の集積度に及ぼすスラブ等軸晶率
の影響を示す図である。
【図2】SUS304熱延鋼板の板面に平行な面におけ
る{111}集合組織の集積度に及ぼす熱間仕上げ圧延
最終パスの温度と圧下率の影響を示す図である。
【図3】SUS304熱延鋼板の限界絞り比(LDR)
と板面に平行な面における{111}集合組織の集積度
との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/00 - 8/10

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.005 〜0.1wt%、Si:0.05〜3.0wt
    %、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.04wt%以下、S:0.03w
    t%以下、Al:0.5wt%以下、Cr:15〜25wt%、Ni:5〜1
    5wt%、N:0.005〜0.3wt%、O:0.007wt%以下を含有
    し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平
    行な面における{111}集合組織の集積度が2.2以上
    であることを特徴とする深絞り性に優れるオーステナイ
    ト系ステンレス熱延鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.005 〜0.1wt%、Si:0.05〜3.0wt
    %、Mn:0.05〜2.0wt%、P:0.04wt%以下、S:0.03w
    t%以下、Al:0.5wt%以下、Cr:15〜25wt%、Ni:5〜1
    5wt%、N:0.005〜0.3wt%、O:0.007wt%以下を含
    み、かつCu:0.05〜5.0wt%、Co:0.05〜5.0wt%、Mo:
    0.05〜5.0wt%、W:0.05〜5.0wt%、Ti:0.01〜0.5wt
    %、Nb:0.01〜0.5wt%、V:0.01〜0.5wt%、Zr:0.01
    〜0.5wt%、B:0.0003〜0.01wt%、Ca:0.0003〜0.01w
    t%、REM:0.001〜0.1wt%およびY:0.001〜0.5wt%の
    うちから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有
    し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平
    行な面における{111}集合組織の集積度が2.2以上
    であることを特徴とする深絞り性に優れるオーステナイ
    ト系ステンレス熱延鋼板。
  3. 【請求項3】等軸晶率を30%以上になした連続鋳造によ
    る鋼スラブを、加熱後、粗圧延し、次いで仕上げ圧延の
    最終パスを、1050℃以上の温度かつ15%以上の圧下率に
    て圧延することを特徴とする請求項1または2に記載の
    オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】仕上げ圧延の最終パスに潤滑剤を用いる請
    求項に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼板の
    製造方法。
  5. 【請求項5】粗圧延で得られたシートバーを先行するシ
    ートバーと接合し、連続的に仕上げ圧延する請求項
    たはに記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼板の
    製造方法。
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