JP3294773B2 - 誘導加熱装置およびその制御方法 - Google Patents

誘導加熱装置およびその制御方法

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JP3294773B2 JP30305096A JP30305096A JP3294773B2 JP 3294773 B2 JP3294773 B2 JP 3294773B2 JP 30305096 A JP30305096 A JP 30305096A JP 30305096 A JP30305096 A JP 30305096A JP 3294773 B2 JP3294773 B2 JP 3294773B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鍛造の前工程と
して被加熱材を加熱処理する際に用いられる誘導加熱装
置およびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は特公平6−93379号公報に掲
載された従来の誘導加熱装置の概要を示す構成図であ
る。図において、1は所定のサイズに分割された鋼材等
の被加熱材、2、3はそれぞれ被加熱材1を高周波によ
り誘導加熱する低温域用の加熱コイルおよび高温域用の
加熱コイル、4、5はそれぞれ加熱コイル2、3に電力
を供給する低温域用の高周波インバータおよび高温域用
の高周波インバータ、6は被加熱材1を加熱コイル2、
3中に連続的に供給するピンチローラ機構、7はピンチ
ローラ機構7を駆動するモータ、8はモータ7を制御す
る速度制御回路、9は高周波インバータ4、5および速
度制御回路8を制御する制御装置、10はスキッドレー
ルである。
【0003】次に、この誘導加熱装置の動作を説明す
る。まず、定常運転時、被加熱材1はピンチローラ機構
6によって連続的に低温域用加熱コイル2と高温域用加
熱コイル3の中を定常速度Sで搬送され、所定の温度
(通常は1200℃前後)に昇温させられて加熱装置
(以下、低温域用加熱コイル2と高温域用加熱コイル3
の両方を含めて称す。)より排出された後、図示しない
プレス装置に送り込まれ、プレスされることになる。こ
のとき、制御装置9は被加熱材1が加熱装置内の移動す
るにしたがって図5のAで示すように常温から所定の温
度に上昇して行くパターンとなるように、低温域用高周
波インバータ4および高温域用高周波インバータ5を制
御している。
【0004】ところで、このような加熱装置の運転中
に、後工程であるプレス装置が故障等で停止した場合、
被加熱材1のプレス装置への送り込みも停止させなけれ
ばならず、これに伴って加熱装置も即座にその動作を停
止する。すなわち、制御装置9より速度制御装置8へ停
止指令が出てモータ7が停まり、ピンチローラ機構6が
動作を停止することにより、被加熱材1の搬送が停止す
るとともにインバータ4、5も動作を停止し、加熱コイ
ル1、2への電力供給が停止される。
【0005】次に、プレス装置が運転を再開する際、加
熱装置内の被加熱材1の温度は装置の停止時間に応じて
低下しているため、直ちに通常の運転を再開しても加熱
装置から排出された被加熱材1は所望の温度を持ったも
のとならない。このため、運転再開時には、まず、被加
熱材1を停止した状態で高温域の加熱コイル3に停止時
間に応じて計算された定常時の電力Pより大きい電力
R1を供給して図5のBで示すように加熱し、その
後、定常速度Sより低い速度Sで搬送しながら低温
域用インバータ4に速度Sの送りに見合った電力を供
給するとともに高温域用インバータ5にも電力PR1
り大きい電力PR2を供給して加熱し、被加熱材1を低
速で搬送しながら少しづつ排出させる。(図5のCで示
すように徐々に昇温していく。)そして、高温域用加熱
コイル3の入口側の被加熱材1の温度が所定温度に近づ
いたことを推定すると、定常運転に復帰させることにな
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の誘導
加熱装置においては、再起動運転の機能を使うことによ
り、装置の運転再開後にも加熱装置内に滞在していた被
加熱材1の温度を所定値に近づけて排出させることが可
能となるが、以下のような問題があった。
【0007】すなわち、低温域用加熱コイル2に滞在し
ていた被加熱材の温度は、停止中に低下しているため、
定常運転時の昇温パターンより低く、運転再開後に所定
の温度に上がらず、また、高温域用加熱コイル3では定
常より高い電力が供給されているものの加熱装置内に滞
在している被加熱材1はオーバーヒート等により必ずし
も均等に昇温せず、さらに、制御を経過時間に基づいて
推定させているため、結果的に被加熱材1に温度のばら
つきを生じ、所望のプレス結果が得られないものであっ
た。また、停止状態で加熱するため、定常運転への復帰
が必ずしも迅速に行われないものであった。
【0008】この発明は上述の問題を解消するためなさ
れたもので、定常運転の再開後に被加熱材の温度を効率
的に所望値に上げるように構成した誘導加熱装置および
その制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は上記目的を達
成するために、誘導加熱装置の最終段加熱コイルの入口
側に被加熱材の温度を検出する温度測定器を設けるとと
もに、被加熱材の移動量を検出し、最終段加熱コイルの
中間に移動したとき、温度測定値に基づいて最終段加熱
コイルへの供給電圧を補正させる制御装置を設けるよう
に構成したものである。
【0010】さらに、この発明は、最終段加熱コイルの
入口側に設けられた温度測定器により被加熱材の温度を
測定するとともに、被加熱材が最終段加熱コイルの中間
に移動したとき、温度測定値に基づいて最終段加熱コイ
ルへの供給電圧を補正させるようにした誘導加熱装置の
制御方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1. 以下、この発明を一実施例である図1に基づいて説明す
る。図1において、11は予め加熱コイル2、3の種
類、被加熱材1の種類(被加熱材1のサイズすなわち通
常は径、長さ)等の運転条件を入力する運転条件入力装
置、12は搬送機構であるピンチローラ機構6の回転数
を検出するピンチローラ回転数検出器で、ロータリエン
コーダや近接スイッチと回転円板を組み合わせたもの等
で構成され、被加熱材の移動量検出器を形成する。
【0012】また、13は高温域用加熱コイル3の入口
側に設けられ、被加熱材1の温度を測定する温度測定器
である。なお、制御装置9はプログラマブルコントロー
ラで構成され、ピンチローラ回転数検出器11、温度測
定器12および運転条件入力装置13の信号に基づいて
高周波インバータ4、5および速度制御装置8に制御信
号を出力するように構成されている。その他の構成は図
4に示すものと同一である。
【0013】次に、このような構成の誘導加熱装置の動
作を説明する。まず、図3に示すように運転条件入力装
置11により予め加熱コイル2、3の種類、被加熱材1
の種類を入力し、制御装置14によりデータテーブルか
ら所定の数値を引き出して高周波インバータ4、5およ
び速度制御装置8の制御を行わせる。すなわち、定常運
転時には、図2のAで示すように、低温域用加熱コイル
2の出口で約1,100℃、高温域用加熱コイル3の出
口で所望の温度である約1,200℃になるように、制
御装置9は低温域用インバータ4と高温域用インバータ
5に対して、それぞれ定常運転時の電圧VL0、VH0
を出力するように制御指令を出す。
【0014】次に、プレス装置が停止すると、加熱装置
の出力を若干下げて動作させるとともに被加熱材1の搬
送速度を低くさせて加熱装置から排出する捨て材(プレ
スでの鍛造に使用されない無駄材)を最小限にする保温
運転を行なわせる。このとき、当然ながら搬送速度が低
いほど捨て材は少なくなるので、その搬送速度は定常運
転時に比べて1/10程度が指令される。この保温運転
時の被加熱材1は、図2のBに示すような昇温パターン
となり、定常運転時の昇温パターンAとの差の度合いは
保温運転の時間経過とともに大きくなる。
【0015】その後、プレス装置が復帰して加熱装置が
定常運転に復帰するときには、以下の再起動運転を行
う。まず、制御装置9より低温域用インバータ4と高温
域用インバータ5に定常運転時の電圧VL0、VH0
供給が指令され、また、速度制御装置8には定常速度S
での搬送が指令される。このため、被加熱材1は定常
連転時の電力、定常運転時の速度で加熱、搬送されるこ
とになる。
【0016】一方、昇温パターンは定常運転時に復帰し
ていないので、排出される被加熱材1の温度は所定値で
はなく、このため、高温域用加熱コイル3の入口側に設
けられた温度測定器13により被加熱材1の温度を測定
させ、その測定値Tによって高温域で以下の温度補償を
行なわせる。
【0017】 (1)測温値Tが予め設定した目標温度T(約1,1
00℃)より大きいときは、高温域用インバータ5の電
圧Vを定常電圧VH0より低くして、高温域での昇温
度合いを小さくする。 (2)測温値Tが予め設定した目標温度Tより小さい
ときは、高温域用インバータ5の電圧Vを定常電圧V
H0より高くして高温域での昇温度合いを大きくする。
【0018】具体的な電圧設定は、測温値Tによって電
圧の増減値を細かく変えるように設定すればよく、例え
ば以下のとおりとする。 (1)T≧T+80(℃) ⇒ V=VH0×0.5 (2)T+80>T≧T+60(℃) ⇒ V=VH0×0.6 (3)T+60>T≧T+40(℃) ⇒ V=VH0×0.7 (4)T+40>T≧T+20(℃) ⇒ V=VH0×0.8 (5)T+20>T≧T+10(℃) ⇒ V=VH0×0.9 (6)T+10>T≧T−10(℃) ⇒ V=VH0×1.0 (7)T−10>T≧T−20(℃) ⇒ V=VH0×1.1 (8)T−20>T≧T−40(℃) ⇒ V=VH0×1.2 (9)T−40>T≧T−60(℃) ⇒ V=VH0×1.3 (l0)T−60>T≧T−80(℃)⇒ V=VH0×1.4 (11)T−80>T(℃) ⇒ V=VH0×1.5
【0019】なお、設定値Tは最終的な所望加熱温度
が得られる定常運転時の昇温パターンに応じた値で決定
される。また、測温値Tが目標温度Tより大きくなる
のは、搬送速度が低下したときに、低温域用加熱コイル
2の中間部で逆に昇温が高くなり、その影響を受けた被
加熱材1が高温域用加熱コイル3の入口に到達するため
である。
【0020】ところで、上記の測定値Tの大小によって
直ちに高温域用インバータ5の電圧を変更すると、その
時点では測定された被加熱材1は低温域用加熱コイル2
と高温域用加熱コイル3の中間部にあるため、本来増減
させたい被加熱材1の温度補償ができない。このため、
測定値Tを一旦制御装置9のレジスタに格納するととも
にピンチローラの回転数検出器12より発生するパルス
を計数して移動距離を算出し、対象となる被加熱材1が
高温域用加熱コイル3のほぽ中問位置に達した時点で、
上記の判断基準に基づいて実際の電圧Vを変更する。
これにより、高温域用加熱コイル3では所定温度より高
い被加熱材1に対して印加電圧を低くし、所定温度より
低い被加熱材1に対して印加電圧を高くして温度を補償
することができる。
【0021】なお、測温値Tと高温域用高周波インバー
タ5の出力電圧Vとの関係は一定のものではないが、
測温値Tがある温度のときには出力電圧Vに乗ずる係
数をいくらにすれば、高温域用加熱コイル3より出ると
きの被加熱材1の温度、すなわち加熱装置より排出され
るときの被加熱材1の温度が所定値(約1,200℃)
に近づくか、という関係を見い出すことができ、この関
係は、加熱コイル3の種類、被加熱材1の種類によって
実験的に求めることが可能である。したがって、上記の
係数、すなわちV/Vに相当する値(係数K)を加
熱コイル2、3の種類、被加熱材1の種類に対応させて
制御装置9内のデータテーブルに記憶させておくことが
できる。
【0022】また、高温域用加熱コイル3の長さが搬送
方向に長過ぎると、本来の補正対象とするべき被加熱材
1の前後の多くの被加熱材1を温度補償してしまうた
め、適度の長さ、すなわち被加熱材1の長さの2倍乃至
4倍程度がよく、また、加熱コイル3は製作上、あまり
短いものはできないので、通常100〜500mm程度
の長さの被加熱材1に対して、500〜2000mm程
度に構成することが望ましい。
【0023】さらに、測温するタイミングとしては、常
時測温するのではなく、被加熱材1の1個ごとに合わせ
て行うのがよく、一方、被加熱材1は連続して搬送され
るため、加熱装置内では1個ずつの区別ができない。こ
のため、図3に示すように被加熱材1の長さに対応した
処理サイクルタイムを予め運転条件入力装置11より入
力しておき、運転中は設定されたサイクルタイム(数秒
程度)ごとに測定する動作を行なわせる。この方法によ
り被加熱材1を1個づつ最適に温度補償させることが可
能となる。
【0024】また、上述したように被加熱材1の長さに
比べて高温域用加熱コイル3の長さが大きいため、排出
される被加熱材1の温度は完全に均一にはならないが、
プレス装置に適した温度は、一般的に例えば1200℃
に対して±30℃程度の範囲が許容されるため、大きな
問題とはならない。
【0025】このように加熱装置の再起動運転間始時
に、高温域の加熱コイル3で温度補償を行ってから被加
熱材1を排出することにより、排出される被加熱材1の
温度をプレス装置に適した温度にすることが可能とな
る。
【0026】実施の形態2. 上記の実施態様においては、高温域用高周波インバータ
5の電圧を変更するタイミングとして、被加熱材1の移
動距離をピンチローラ回転数検出器12により測定して
行う方法を示したが、定常運転時の搬送速度は一定であ
るから(移動距離÷搬送速度)の演算を行うことによ
り、測温点より高温域用加熱コイル3の中間に達する移
動時間を算出でき、制御装置9内のタイマーによって電
圧変更のタイミングを指令させることが可能である。
【0027】実施の形態3. また、上記の実施態様においては、加熱コイル、高周波
インバータを各2個用いたものについて説明したが、こ
れは3個以上の場合でも、最終段の加熱コイルを温度測
定器の測定値に基づいて補償するように構成すれば、同
様の効果を得ることができる。さらに、保温運転時、加
熱コイル2、3の制御温度を必ずしも低下させる必要は
なく、定常運転時と同じ制御としてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、誘導加熱装置の最終段加熱コイルの入口側に被加熱
材の温度を検出する温度測定器を設けるとともに、被加
熱材の移動量を検出し、最終段加熱コイルの中間に移動
したとき、温度測定値に基づいて最終段加熱コイルへの
供給電圧を補正させる制御装置を設けるように構成した
ので、被加熱材を所望温度に加熱することが可能とな
り、捨て材の削減および定常運転への復帰を効率的に行
わせることが可能となるとともに、被加熱材の加熱を正
確に行わせることができる。
【0029】さらに、温度測定を被加熱材1個が通過す
るタイミングで行わせ、被加熱材1個ごとに温度補償を
行わせることにより、被加熱材を1個づつ最適に温度補
償させることができる。
【0030】また、少なくとも2つのセクションに分割
された加熱コイル中に複数の被加熱材を連続的に搬送さ
せ、誘導加熱するものにおいて、保温運転後、再度定常
運転に復帰させる際、上記加熱コイルの最終段入口側の
被加熱材の温度を測定し、該温度測定された被加熱材が
上記最終段加熱コイルの中間位置に移動したとき、上記
温度測定値に基づいて上記最終段加熱コイルへの供給電
圧を補正させるようにした誘導加熱装置の制御方法によ
り、被加熱材を所望温度に加熱することが可能となり、
捨て材の削減および定常運転への復帰を効率的に行わせ
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1である誘導加熱装置
を示す構成図である。
【図2】 実施の形態1における昇温パターンを示す特
性図である。
【図3】 実施の形態1における制御フローを示す図で
ある。
【図4】 従来の誘導加熱装置を示す構成図である。
【図5】 従来例における昇温パターンを示す特性図で
ある。
【符号の説明】
1 被加熱材、2 低温域用加熱コイル、3 高温域用
加熱コイル、4 低温域用高周波インバータ、5 高温
域用高周波インバータ、6 ピンチローラ機構、7 モ
ータ、8 速度制御装置、9 制御装置、11 運転条
件入力装置、12 ピンチローラ回転数検出器、13
温度測定器。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続的に搬送される複数の被加熱材を誘
    導加熱する少なくとも2つのセクションに分割された加
    熱コイル、被加熱材を供給部から排出部に向かって上記
    加熱コイルの中を連続して搬送させる搬送機構、この搬
    送機構による被加熱材の移動量を検出する移動量検出
    器、被加熱材および上記加熱コイルの種類等を入力する
    運転条件入力装置、最終段の上記加熱コイル入口側に設
    けられ、上記被加熱材の温度を測定する温度測定器、上
    記運転条件入力装置の入力信号に基づき、上記加熱コイ
    ルおよび上記搬送機構の運転状態を制御するとともに、
    被加熱材の保温運転後、再度定常運転に復帰させる際、
    上記移動量検出器の信号に基づき、上記温度測定器で測
    定された被加熱材が上記最終段加熱コイルの中間位置に
    移動したときを判断し、上記最終段加熱コイルへの供給
    電圧を上記温度測定器の測定値に基づいて補正させる制
    御装置を備えたことを特徴とする誘導加熱装置。
  2. 【請求項2】 温度測定を被加熱材1個が通過するタイ
    ミングで行わせ、被加熱材1個ごとに温度補償を行わせ
    るようにしたことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱
    装置。
  3. 【請求項3】 少なくとも2つのセクションに分割され
    た加熱コイル中に複数の被加熱材を連続的に搬送させ、
    誘導加熱するものにおいて、保温運転後、再度定常運転
    に復帰させる際、上記加熱コイルの最終段入口側の被加
    熱材の温度を測定し、該温度測定された被加熱材が上記
    最終段加熱コイルの中間位置に移動したとき、上記温度
    測定値に基づいて上記最終段加熱コイルへの供給電圧を
    補正させるようにしたことを特徴とする誘導加熱装置の
    制御方法。
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