JP3293660B2 - 金属粉含有活性エネルギー線硬化型インキ - Google Patents

金属粉含有活性エネルギー線硬化型インキ

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慶一 南埜
啓介 隅田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、貯蔵安定性、および印
刷後の色調・光輝性に対する安定性を顕著に改善した金
属粉含有活性エネルギー線硬化型インキに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】色料として銅粉、アルミニウム粉、ブロ
ンズ粉などの金属粉を配合したインクは、金インク、銀
インクとして知られている。金属粉としては、箔状の細
片ないし鱗片状のものが好適に用いられる。このインク
を用いて紙やフィルムなどの対象物に印刷を行えば、印
刷部が金色や銀色の光輝性を有する美麗な印刷物を得る
ことができる。
【0003】金属粉含有インキのビヒクルとしては、た
とえばロジン変性アルキッド、ロジン変性フェノール樹
脂、クマロン樹脂、環化ゴムなどの低酸価樹脂ワニスが
用いられているが、近年においては、高速硬化性、溶剤
不使用性、省エネルギー、省スペースなどの点で有利な
紫外線硬化型樹脂の使用が試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、紫外線
硬化型樹脂に金属粉を配合したインクは、金属粉がイオ
ン化してモノマーまたはオリゴマー成分の重合開始剤と
して作用するため、保存中に短時日でゲル化するという
問題点があり、そのためインクメーカーにおいて予め金
属粉を配合して調合してユーザーに供給しようとして
も、輸送中や保管中にゲル化し、使用不可能になること
を免かれなかった。
【0005】そこで、金属粉含有紫外線硬化型インキを
用いる場合は、印刷を行うユーザー側が使用直前に金属
粉を混合してインクを調製しなければならず、また調製
後のインクは短時間に使い切る必要があった。
【0006】加えて、金属粉含有紫外線硬化型インキで
印刷したものは、印刷後の金属粉が硬化後の樹脂成分中
に溶出して酸化されるため、時間経過と共に色相が変化
したり光輝性が消失するという問題点を有していた。た
とえば、銅粉を配合したインキを使用して印刷した印刷
物は、初期には金色に輝いて見えるものの、時間経過と
共に緑青の緑色に変化して金属光沢が失われる傾向があ
り、アルミニウム粉を配合したインクを使用して印刷し
た印刷物は、経時的にチョーキングを起こして白くなる
という傾向があった。
【0007】本発明は、このような背景下において、予
め活性エネルギー線硬化型インクに金属粉を配合してお
いても、貯蔵安定性が良好で、かつ印刷後においても印
刷当初の色相および光輝性を長期間維持することのでき
る金属粉含有活性エネルギー線硬化型インキを提供する
ことを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の金属粉含有活性
エネルギー線硬化型インキは、金属粉を配合した活性エ
ネルギー線硬化型インクに、分子量が3万以下、残存水
酸基の含有量が1〜3重量%、ASTM D817によ
る粘度が0.05秒以下のセルロースアセテートブ チレート
を含有させたことを特徴とするものである。
【0009】以下本発明を詳細に説明する。
【0010】金属粉としては、たとえば、銅粉、アルミ
ニウム粉、ブロンズ粉などの粉体が用いられる。粉体の
形状は、箔状の細片ないし鱗片状であることが特に好ま
しく、インク膜中で木の葉状に重なるリーフィング効果
により金属性の光輝を与える。
【0011】ビヒクルは、反応性オリゴマー、反応性モ
ノマー、ポリマーなどからなる紫外線硬化型または電子
線硬化型樹脂組成物で構成される。溶剤は必要としない
が、少量であれば使用しても差し支えない。
【0012】反応性オリゴマー(プレポリマー)として
は、たとえば、ペンタエリスリトールトリアクリレー
ト、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペン
タエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロー
ルプロパンテトラアクリレートなどの多価アルコールの
アクリル酸エステル;ビスフェノールAジグリシジルエ
ーテルアクリレート、変性ビスフェノールAエポキシア
クリレート、脂肪族エポキシアクリレートなどのエポキ
シアクリレート;ロジン変性ウレタンアクリレート、ア
ルキッド変性ウレタンアクリレート、乾性油変性ウレタ
ンアクリレート、カルバミン酸ポリアクリレートなどの
ウレタンアクリレート;ポリエステルアクリレート;ポ
リエーテルアクリレート;アクリレートアルキッド;メ
ラミンアクリレート;などがあげられる。
【0013】反応性モノマーとしては、粘度が低く、皮
膚刺激性および臭気が少なく、溶解力および硬化性にす
ぐれたものを用いることが好ましく、具体的には、ヒド
ロキシブチルアクリレート、ジシクロペンタジエンアク
リレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレー
ト、シクロヘキシルアクリレート、メタクリル酸−2−
ヒドロキシエチルなどの単官能モノマー、1,6−ヘキ
サンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコール
ジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレー
ト、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロー
ルプロパンジアクリレート、トリプロピレングリコール
ジアクリレートなどの二官能モノマー、トリメチロール
プロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ
アクリレートなどの三官能モノマーなどがあげられる。
【0014】ポリマーとしては、ポリエステル、ポリメ
チルメタクリレート、石油樹脂をはじめとする種々のポ
リマーがあげられる。ポリマーの配合は、接着性向上、
膜強度向上、柔軟性付与などに貢献する。
【0015】上記の反応性オリゴマー、反応性モノマ
ー、ポリマーのそれぞれは、単独であるいは2種以上を
混合して用いる。
【0016】そして本発明においては、金属粉を配合し
た活性エネルギー線硬化型インクに、分子量が3万以
下、残存水酸基の含有量が1〜3重量%、ASTM D
817による粘度が0.05秒以下のセルロースアセテート
ブチレートを含有させる。この点が本発明のポイントと
なる特徴点である。
【0017】セルロースアセテートブチレートとして
は、アセチル基含有量が1〜10重量%程度、ブチリル
基含有量が30〜55重量%程度のセルロースアセテー
トブチレートが重要である。
【0018】上記セルロースアセテートブチレートは残
存水酸基を有することが要求され、その残存水酸基の含
有量は1〜3重量%の範囲にあることが必要である。
存水酸基の過少は安定性改善効果を欠き、残存水酸基の
過多は系に対する溶解性を損なう。
【0019】また上記セルロースアセテートブチレート
は、非造膜性の低分子量のものであることが要求され
る。ここで低分子量とは、3万以下、好ましくは2万以
下を言い、重合度では慨ね200以下、好ましくは10
0以下となる。また粘度で表わせば、ASTM D81
7による粘度が0.05秒以下、好ましくは0.03秒以下であ
ることが要求される。造膜性を有するほどの高分子とな
ると、安定性改善効果が消失したり、系に対する溶解性
が損なわれたりする。
【0020】インク組成物全体に占める上記の上記セル
ロースアセテートブチレートの割合は、 0.5〜20重量
%、好ましくは2〜10重量%に設定される。セルロー
スアセテートブチレートの過少は安定性改善効果を欠
き、その過多はインク膜の物性を損なう。
【0021】本発明のインキには、さらに酸化防止剤を
添加することが好ましい。酸化防止剤の代表例はトリフ
ェニルリンである。
【0022】本発明のインクが電子線硬化型であるとき
は特に光重合開始剤や増感剤を用いる必要はないが、紫
外線硬化型であるときは光重合開始剤や増感剤を適当量
用いることが好ましい。
【0023】そのほか本発明のインキには、必要に応
じ、キレート剤(ヒドラジン誘導体等)、金属粉以外の
色料、熱重合禁止剤、消泡剤、スリップ剤などの添加剤
を配合することができる。
【0024】本発明のインクの調合に際しての各成分の
混合順序には特に限定はないものの、ポリマー成分や
ルロースアセテートブチレートは予め反応性モノマーに
溶解した形態で混合に供することが均一混合性の点で
有利である。
【0025】印刷方法としては、オフセット印刷が好ま
しく、そのほか、平版印刷、凸版印刷、スクリーン印
刷、パッド印刷などが採用される。印刷対象物は、紙、
プラスチックス、金属、木板、ガラス、繊維製品をはじ
め特に限定はない。パターン印刷のみならず、全面印刷
も可能である。印刷後は、紫外線、電子線などの活性エ
ネルギー線を照射して硬化を図る。
【0026】
【作用】金属粉を配合した活性エネルギー線硬化型イン
クに、分子量が3万以下、残存水酸基の含有量が1〜3
重量%、ASTM D817による粘度が0.05秒以下の
セルロースアセテートブチレートを含有させると、貯蔵
時の保存安定性が顕著に向上する上、印刷後の色相の変
化や光輝性の消失も有効に防止される。
【0027】このようなすぐれた効果が得られる理由に
ついては必ずしも明らかではないが、インキに配合され
上記セルロースアセテートブチレートがその残存水酸
基とアシル基の立体障害との関係で高分子キレート剤的
な作用を果たし、インク組成物または印刷後のインク膜
における金属粉のイオン化を阻止するのではないかと推
測される。
【0028】なお本発明者らの研究によれば、通常の低
分子のキレート剤はそのような保存安定性向上効果をほ
とんどあるいは期待するほどには示さないことから、金
属粉のイオン化阻止作用は上記セルロースアセテートブ
チレートに固有の挙動ではないかと思われる。また通常
のグレードのセルロースアセテートブチレートを配合し
ても金属粉のイオン化阻止作用は見られないことから、
そのようなイオン化阻止作用は造膜性を有しない程度
の分子量においてはじめて現出するものと思われる。
【0029】
【実施例】次に実施例をあげて本発明をさらに説明す
る。以下「部」、「%」とあるのは重量基準で示したも
のである。
【0030】実施例1 〈インクの調製〉 下記の処方により、金属粉含有紫外線硬化型インクを調
製した。使用したセルロースアセテートブチレートは、
これを溶剤に溶解してから基材上に塗布、乾燥しても、
造膜性を有しないものである。
【0031】〈処方〉 ・ロジン変性ウレタンアクリレート 35部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート70部に低分子量ポリエステル( 接着性改善剤)30部を溶解した溶液 10部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート80部にセルロースアセテートブ チレート(アセチル基 2.0%、ブチリル基53%、水酸基含有量 1.5%、分子量 16000、ガラス転移点85℃、ASTM D817による粘度0.01秒)20 部を溶解した溶液 10部 ・銅粉(粒径10μm 以下、鱗片状) 40部 ・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光重合 開始剤) 5部 ・トリフェニルリン(酸化防止剤) 0.05部 ・ハイドロキノモノメチルエーテル(熱重合禁止剤) 500ppm
【0032】〈貯蔵安定性〉 上記のインク 1.0kgを亜鉛鋼板製の容器に貯蔵し(上部
空間は空気)、50℃の条件下に放置したところ、20
日経過後も流動性を保っており、ゲル化などの異常は全
く認められなかった。なお50℃×20日の条件は、常
温放置では6か月間に相当するものである。
【0033】〈印刷物の安定性〉 また、上記のインクを用いてオフセット印刷により厚紙
およびポリエステルフィルム上に印刷を行ってから紫外
線照射し、厚さ約2μm の印刷膜を形成させた。この印
刷物につき経時的に印刷面の異常の有無を観察したとこ
ろ、6ケ月経過後も変色や光輝性の低下は認められなか
った。
【0034】比較例1 セルロースアセテートブチレートの配合を省略したほか
は実施例1と同様にして金属粉含有インキを製造した
が、このインクは50℃の条件下では3日目にはゲル化
した。またこのインクを用いて印刷を行ったところ、2
週間経過後には、緑色を帯びるようになった上、光輝性
も明らかに低下していた。
【0035】実施例2 〈インクの調製〉 下記の処方により、金属粉含有紫外線硬化型インクを調
製した。 ・ロジン変性ウレタンアクリレート 35部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート70部に低分子量ポリエステル( 接着性改善剤)30部を溶解した溶液 10部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート80部にセルロースアセテートブ チレート(実施例1で用いたもの)20部を溶解した溶液 10部 ・アルミニウム粉(粒径10μm 以下、鱗片状) 40部 ・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光重合 開始剤) 5部 ・トリフェニルリン(酸化防止剤) 0.05部 ・ハイドロキノモノメチルエーテル(熱重合禁止剤) 500ppm
【0036】〈貯蔵安定性〉 上記のインク 1.0kgを亜鉛鋼板製の容器に貯蔵し(上部
空間は空気)、50℃の条件下に放置したところ、20
日経過後も流動性を保っており、ゲル化などの異常は全
く認められなかった。
【0037】〈印刷物の安定性〉 また、上記のインクを用いてオフセット印刷により厚紙
およびポリエステルフィルム上に印刷を行ってから紫外
線照射し、厚さ約2μm の印刷膜を形成させた。この印
刷物につき経時的に印刷面の異常の有無を観察したとこ
ろ、6ケ月経過後も変色や光輝性の低下は認められなか
った。
【0038】比較例2 セルロースアセテートブチレートの配合を省略したほか
は実施例2と同様にして金属粉含有インキを製造した
が、このインクは50℃の条件下では3日目にはゲル化
した。またこのインクを用いて印刷を行ったところ、2
週間経過後には、チョーキングを起こして白色を帯びる
ようになった上、光輝性も明らかに低下していた。
【0039】実施例3 〈インクの調製〉 下記の処方により、金属粉含有紫外線硬化型インクを調
製した。 ・エポキシアクリレート 30部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート70部に低分子量ポリエステル( 接着性改善剤)30部を溶解した溶液 15部 ・トリメチロールプロパントリアクリレート80部にセルロースアセテートブ チレート(実施例1で用いたもの)20部を溶解した溶液 10部 ・銅粉(粒径10μm 以下、鱗片状) 40部 ・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光重合 開始剤) 5部 ・トリフェニルリン(酸化防止剤) 0.05部 ・ハイドロキノモノメチルエーテル(熱重合禁止剤) 500ppm
【0040】〈貯蔵安定性〉 上記のインク 1.0kgを亜鉛鋼板製の容器に貯蔵し(上部
空間は空気)、50℃の条件下に放置したところ、20
日経過後も流動性を保っており、ゲル化などの異常は全
く認められなかった。
【0041】
【発明の効果】本発明の金属粉含有活性エネルギー線硬
化型インクは、予め金属粉を配合しておいても、貯蔵安
定性が良好で、かつ印刷後においても印刷当初の色相お
よび光輝性が長期間維持できるというすぐれた効果を奏
する。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−238870(JP,A) 特開 昭60−55069(JP,A) 特開 昭59−222267(JP,A) 特開 昭49−10223(JP,A) 特開 昭57−108106(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 11/00 - 11/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属粉を配合した活性エネルギー線硬化型
    インクに、分子量が3万以下、残存水酸基の含有量が1
    〜3重量%、ASTM D817による粘度が0.05秒以
    下のセルロースアセテートブチレートを含有させたこと
    を特徴とする金属粉含有活性エネルギー線硬化型イン
    キ。
  2. 【請求項2】インク組成物全体に占めるセルロースアセ
    テートブチレートの割合が 0.5〜20重量%である請求
    項1または2記載の金属粉含有活性エネルギー線硬化型
    インキ。
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