JP3293420B2 - エンジンのシリンダブロックおよびその製造方法 - Google Patents

エンジンのシリンダブロックおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローズドデッキ
・ウエットライナ形のエンジンのシリンダブロックおよ
びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にアルミニウム合金製のエンジンの
シリンダブロックでは、薄肉の耐摩性材料からなるシリ
ンダライナが組込まれており、このシリンダライナによ
ってピストンが嵌装されるシリンダボアが形成されてい
る。
【0003】この種のシリンダブロックには、例えば、
図11に示すシリンダブロック1のように、冷却水を循環
させるためにシリンダライナ2の外周部に形成されたウ
ォータジャケット3がシリンダヘッド取付面4で開口さ
れた構造のオープンデッキ形のものと、図12に示すシリ
ンダブロック5のように、シリンダライナ6の外周部に
形成されたウォータジャケット7はシリンダヘッド取付
面8で閉じられ、シリンダヘッド取付面8にウォータジ
ャケット7に連通する冷却水通路9が設けられた構造の
クローズドデッキ形のものとがある。
【0004】図11に示すようなオープンデッキ形のシリ
ンダブロック1は、アルミニウム合金等で鋳造成形する
場合、ダイカスト法によって容易に成形することができ
る反面、シリンダヘッド取付面4が開口しているため、
剛性が低く、振動、騒音を発生しやすいという欠点があ
る。
【0005】一方、図12に示すようなクローズドデッキ
形のシリンダブロックは、シリンダヘッド取付面8が閉
じているため、剛性が高く、振動、騒音を発生しにくい
ので、薄肉、軽量化を図ることができるという利点があ
る。さらに、図13に示すシリンダブロック10のように、
シリンダライナ11の外周部でウォータジャケット12を形
成するようにしたクローズドデッキ・ウエットライナ形
のものは、ウォータジャケット12内の冷却水が直接シリ
ンダライナ11に接するので、冷却効率に優れる。なお、
図13中、図12のものと同様の部分には、同一の番号を付
してある。
【0006】ところで、クローズドデッキ・ウエットラ
イナ形のシリンダブロック10は、その構造上、ウォータ
ジャケット12がアンダーカット部を形成するため、ダイ
カスト法による成形が困難であり、一般に、崩壊性中子
を用いた重力鋳造法あるいは低圧鋳造法によって成形さ
れているが、中子の製造および成形後の取出が煩雑であ
り、生産性が低いという問題があった。
【0007】そこで、従来、生産性を向上させるべくク
ローズドデッキ・ウエットライナ形のシリンダブロック
をダイカスト法を用いて製造する方法が種々提案されて
いる。例えば、分割式の移動可能な中子を用いてウォ
ータジャケットを形成する方法(特公平2−53623
号、特公平2−53624号公報参照)、オープンデ
ッキ形と同様にウォータジャケットを形成した後、シリ
ンダヘッド取付面の開口部の一部を塞ぐ方法(特開平1
−100352号、特開平1−147145号、特公平
2−11735号公報参照)、予めウォータジャケッ
トを設けたシリンダライナを鋳包む方法(特開昭62−
113845号、実開平5−78950号公報参照)、
および、シリンダブロックに形成した段付ボアの小径
部に、一端部の外側にフランジ部を有するシリンダライ
ナを圧入して、段付ボアの大径部と、シリンダライナの
側壁およびフランジ部とでウォータジャケットを形成す
る方法(特開昭60−135650号、実公平1−10
427号公報参照)が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のシリンダブロックの製造方法では、次のような問題
がある。すなわち、の方法では、金型の構造が複雑に
なり、型費が高くなるとともに型寿命も短くなる。の
方法では、開口部の一部を塞ぐ工程が煩雑となり生産性
の向上があまり期待できない。の方法では、シリンダ
ライナの形状が複雑で製造が困難となるため、生産性の
向上があまり期待できない。の方法では、シリンダブ
ロック本体とシリンダライナとを強固に結合することが
困難であり、シリンダブロックの剛性が低下しやすい。
このように、上記ないしに示すシリンダブロックの
製造方法は、いずれも充分満足できる効果を奏している
とは言えない。
【0009】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、ダイカスト法を用いて容易に製造することがで
きるクローズドデッキ・ウエットライナ形式のエンジン
のシリンダブロックおよびその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、請求項1に係るエンジンのシリンダブロックは、
両端部の内側にフランジ部を有する筒状のインサート部
材の両フランジ部間に崩壊性の補強材を充填、固化し
て、前記インサート部材をシリンダブロック本体のシリ
ンダボア外周部に鋳包み、前記補強材を崩壊、除去し、
シリンダライナを前記インサート部材に挿通して前記フ
ランジ部に嵌合させたことを特徴とする。
【0011】この構成により、シリンダブロック本体に
鋳包まれたインサート部材と、インサート部材のフラン
ジ部に嵌合されたシリンダライナとの間にウォータジャ
ケットが形成される。
【0012】請求項2に係るエンジンのシリンダブロッ
クは、上記請求項1の構成に加えて、インサート部材の
一方のフランジ部に貫通孔が設けられ、該フランジ部が
シリンダブロック本体のシリンダヘッド取付面に露出し
ていることを特徴とする。
【0013】この構成により、ウォータジャケットに連
通された貫通孔がシリンダヘッド取付面上に開口して冷
却水通路となる。
【0014】請求項3に係るシリンダブロックの製造方
法は、両端部の内側にフランジ部を有する筒状のインサ
ート部材の両フランジ部間に崩壊性の補強材を充填、固
化してインサート部材を補強し、該インサート部材を金
型のキャビティ内に配置して前記金型の一部を前記イン
サート部材内に挿通、嵌合し、前記キャビティ内に溶湯
を充填してシリンダボアの外周部に前記インサート部材
を鋳包むようにシリンダブロック本体をダイカスト成形
した後、前記補強材を崩壊、除去し、前記インサート部
材にシリンダライナを嵌合させてクローズドデッキ・ウ
エットライナ形のシリンダブロックを製造する。
【0015】また、請求項4に係るシリンダブロックの
製造方法は、上記請求項3の構成に加えて、インサート
部材の一方のフランジ部に貫通孔を設け、前記インサー
ト部材に円柱状部材を挿通して両端フランジ部に嵌合さ
せ、前記貫通孔から両フランジ部間に補強材を充填し、
さらに、前記貫通孔を有するフランジ部がシリンダヘッ
ド取付面上に露出するように前記インサート部材をシリ
ンダブロック本体に鋳包み、前記補強材を崩壊、除去し
て前記貫通孔をシリンダヘッド取付面上に開口する冷却
水通とするクローズドデッキ・ウエットライナ形のシリ
ンダブロックを製造する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて詳細に説明する。
【0017】図1および図2に示すように、本実施形態
に係るシリンダブロック13は、多気筒エンジン用のクロ
ーズドデッキ・ウエットライナ形のシリンダブロックで
あり、アルミニウム合金製のシリンダブロック本体14
に、複数(3つのみ図示する)のシリンダボア15が直列
に並設されている。
【0018】複数のシリンダボア15の外周部には、複数
の円筒部材を直列に並べてそれぞれの側面部を互いに結
合させた筒状のインサート部材16が鋳包まれている。イ
ンサート部材16の両端部の内側には、それぞれフランジ
部17,18が形成されており、一端側のフランジ部17がシ
リンダブロック本体14のシリンダヘッド取付面19(以
下、デッキ面19という)と面一になるように露出されて
いる。シリンダブロック本体14に形成されたボア20およ
びインサート部材16のフランジ部17,18に、円筒状のシ
リンダライナ21が挿通、嵌合されてシリンダボア15が形
成されている。そして、インサート部材16の側壁および
フランジ部17,18とシリンダライナ21の側壁とによっ
て、シリンダボア15の周囲を囲むウォータジャケット22
が形成されている。また、インサート部材16の一端側の
フランジ17には、複数の貫通孔23が設けられており、こ
の貫通孔23によってウォータジャケット22がデッキ面19
上に開口されて、デッキ面19に取り付けられるシリンダ
ヘッド(図示せず)の冷却水通路に連通されるようにな
っている。
【0019】図3および図4に示すように、インサート
部材16は、両端部の内側にフランジ部を有する複数(図
示のものでは4つ)の略円筒状部分が各シリンダボア15
を取り囲むように並べて結合され、それらの内部を互い
に連通させた形状となっている。これにより、各シリン
ダボア15の周囲に形成されるウォータジャケット22は、
互いに連通されている。なお、図4は、インサート部材
16を半割りにした形状の一方を示している。
【0020】両端部の内側にフランジ部17,18を有する
筒状のインサート部材16は、アンダーカット部を有する
ので、例えば図3および図4に示すように、これを分割
(半割り)した形状の部材16a ,16b (図3中、分割面
を符号Aで示す)を成形し、これらを接合して筒状の一
体とすることによって容易に製造することができる。こ
のように分割構造とすることにより、アンダーカット部
を解消して各部材16a,16b をアルミニウム合金製とし
て容易にダイカスト成形することができる。
【0021】各部材16a ,16b の結合手段としては、例
えば、プロジェクション溶接等の抵抗溶接、アークスポ
ット溶接、TIG溶接、MIG溶接、摩擦圧接等による
溶着、アロンセラミック(東亜合成化学工業株式会社
製)等の耐熱性無機系接着剤等を用いた接着、ロウ付
け、超音波を応用したハンダ付け、若しくは、超音波接
合を用いることができる。
【0022】上記のように、インサート部材16を分割構
造とした場合、シリンダブロック本体14を後述するよう
にダイカスト成形する際に、インサート部材16を鋳包む
ことにより、インサート部材16はシリンダブロック本体
14と一体化され、各部材16a,16b 間の接合部が確実に
シールされる。
【0023】なお、上記のほか、インサート部材16は、
中子を用いてシェル型鋳造、金型鋳造等の重力鋳造によ
って分割することなく一体として製造することもでき、
また、熱処理等によって強度を高めることもできる。
【0024】次に、シリンダブロック13のダイカスト法
を用いた製造方法ついて図5ないし図10を用いて説明す
る。
【0025】図5に示すように、インサート部材16の両
フランジ部17,18間の環状空間すなわちウォータジャケ
ット22を形成する空間およびフランジ部17の貫通孔23内
に補強材24を充填して固化させる。ここで、補強材24
は、空間内に充填して、固化させることができ、その
後、空間内から除去可能なものとする。この補強材24と
しては、例えば、シェル中子を形成するレジンコーテッ
ドサンド(以下、RCSという)または有機粘結剤自硬
性鋳型材に用いられるような珪砂、粘結剤および硬化剤
の混合物等を用いることができる。
【0026】一例として、RCSをインサート部材16に
充填する場合について図7を用いて説明する。図7に示
すように、RCSの充填は、補強材充填装置25を用いて
行うことができる。補強材充填装置25は、鋳造時に用い
る中子を成形するための吹込方式のシェルマシンと同
様、金型26と、吹込装置27と、充填ノズル28と、排気管
29と、金型を加熱する加熱装置(図示せず)とから概略
構成されている。
【0027】加熱炉(図示せず)によって 250℃程度に
予熱したインサート部材16を金型26にセットして、フラ
ンジ部17,18に円柱状の芯金30(円柱状部材)を挿通、
嵌合させて、両フランジ部17,18間に環状空間Sを形成
する。このとき、芯金30とフランジ17,18との隙間は、
0.2mm 以下が望ましい。インサート部材16の複数の貫通
孔23に充填ノズル28および排気管29を接続する。
【0028】吹込装置27により、圧縮空気(通常4〜5
気圧程度)を用いてタンク内のRCSを充填ノズル28か
ら噴射して環状空間S内に高速充填する。このとき、排
気管29の先端部に取り付けられたエアベント31によっ
て、環状空間S内の空気が排気管29から排出され、RS
Cのみが環状空間S内に残る。このようにして、環状空
間Sおよび貫通孔23内にRSCを充填した後、貫通孔23
から充填ノズル28および排気管29を取り外す。
【0029】加熱装置によって、金型26を加熱して環状
空間内S内のRCSを硬化させる。RCSは、バインダ
である熱硬化性レジンが一端軟化した後、硬化すること
により、強固に固化された補強材24が形成される。な
お、加熱装置としては、例えばカートリッジ式、油循環
式またはLPGバーナー式等を用いることができる。ま
た、RCSを充分硬化させるためには、250 〜300 ℃で
2〜3分程度の加熱が必要である。
【0030】RCSの硬化が完了して補強部材24が形成
されたら、押出ピン32を突出させてインサート部材16を
離型させる。このようにして、補強材24が充填、固化さ
れたインサート部材16を得ることができる。
【0031】なお、補強材24として、有機粘結剤自硬
性鋳型材を用いる場合には、常温自硬性または常温ガス
硬化性により、インサート部材16の予熱および金型の
加熱は不要となる。常温自硬性を呈する粘結材として
は、例えばフラン系樹脂、ポリオール系樹脂またはフェ
ノール系樹脂を主体とするものがある。そして、鋳型造
型法の一つであるコールドボックス法と同様、ウレタン
樹脂を構成する主成分のフェノール・ホルムアルデヒド
初期重合物とポリイソシアネートを石油系溶剤に溶解し
た液を均一に珪砂に混練し、この鋳砂を迅速に充填した
後、液状第3級アミン類を細霧状に含む空気またはCO
ガスを通して硬化させることもできる。一般に、有機
粘結剤自硬性鋳型材は、RCSに比して流動性が悪い、
振動を付加することにより充填を促進することができ
る。
【0032】ここでは、吹込方式によって補強材を環状
空間S内に充填する場合について説明したが、このほ
か、ダンプ式、落し込み式等のシェル中子を成形する場
合と同様の方法を用いて補強材を充填することもでき
る。
【0033】次に、補強材24が充填、固化されたインサ
ート部材16を用いてダイカスト法によってシリンダブロ
ック13を製造する方法について説明する。
【0034】図8に示すように、先ず、ダイカスト金型
の可動型33に設けられ、前述のシリンダブロック本体14
に、ボア20を形成するための芯金34(金型の一部)をイ
ンサート部材16に挿通してフランジ部17,18および補強
材24に嵌合させ、シリンダブロック本体14のデッキ面19
を形成するための可動型33の底部35をフランジ部17に当
接させる。このとき、両フランジ部17,18間に補強材24
が充填されており、インサート部材16は、肉厚がほぼ均
一な筒形状となっているので、芯金34を容易に挿通させ
ることができる。
【0035】次に、図9に示すように、可動型33と固定
型36とを型締してキャビティCを形成するとともに、固
定型36に設けられたガイドピン37をフランジ部18に当接
させてインサート部材16をキャビティC内に位置決めす
る。
【0036】その後、キャビティC内にアルミニウム合
金の溶湯を鋳込み、シリンダブロック本体14を鋳造成形
してインサート部材16を鋳包むことにより、インサート
部材16はシリンダブロック本体14と一体化される。この
とき、可動型33の底部35に当接されたフランジ部17は、
シリンダブロック本体14のデッキ面19上に露出され、ま
た、環状空間Sおよび貫通孔23には、溶湯が注入されな
いので、ウォータジャケット22および冷却水通路となる
空間が確保される。ここで、インサート部材16に高温の
溶湯が接触するが、ダイカスト法では、溶湯の凝固が比
較的早く行われるため、インサート部材16の軟化、溶融
が起こりにくくいので、シリンダブロック本体14と同様
の材質のアルミニウム合金製のインサート部材16を用い
ることができる。
【0037】インサート部材16内の環状空間Sには、強
固な補強部材24が充填されており、変形しにくくなって
いるので、インサート部材16の薄肉化が可能となり、ま
た、高圧鋳造が可能となり、緻密で高品質な成形品を得
ることができ、シリンダーブロック本体14の強度および
耐圧性を向上させることができる。なお、本実施例で
は、鋳造条件を溶湯温度 650℃、鋳造圧力 800〜830kgf
/cm2 、高速昇圧時間20〜50msec. としている。
【0038】次に図10を用いて、シリンダブロック本体
14の機械加工およびシリンダライナ21の圧入工程につい
て説明する。
【0039】可動型33と固定型36とを開いてシリンダブ
ロック本体14に鋳包まれたインサート部材16から芯金34
を抜き取り、鋳造品を離型して図10(a)に示すシリン
ダブロック本体14を得る。離型した鋳造品を 400℃程度
に約 0.5時間加熱して補強部材24中の粘結剤を消失させ
補強材24を崩壊させてインサート部材16から除去して、
ウォータジャケット22となる空間および冷却水通路とな
る貫通孔23を確保する。ここで、補強材24は、鋳造時に
は、金型の芯金34によって密閉された環状空間S内に充
填されており、充分高い圧力に耐えることができるの
で、鋳造後の除去を考慮して崩壊性を重視したものにす
るとよい。
【0040】次に、図10(b)に示すように、機械加工
により、シリンダブロック本体14のボア20およびインサ
ート部材16のフランジ部17,18を共加工してシリンダラ
イナ21の圧入部のはめ合い寸法を出す。その後、図10
(c)に示すように、シリンダブロック本体14のボア20
およびインサート部材16のフランジ部17,18にシリンダ
ライナ21を圧入することにより、インサート部材16とシ
リンダライナ21との間にウォータジャケット22が形成さ
れる。
【0041】このように、金型の一部である芯金27を補
強材24が充填されたインサート部材16に嵌合させてイン
サート部材16を鋳包むことにより、ウォータジャケット
22を形成するためのアンダカット部が解消されるので、
ダイカスト法を用いてアルミニウム合金製のクローズド
デッキ・ウエットライナ形のシリンダブロック13を製造
することができる。また、ダイカスト鋳造によりシリン
ダブロック本体14の鋳肌に硬質かつ緻密なチル層が形成
されるので、ウォータジャケット22の耐圧性が向上す
る。
【0042】さらに、補強部材24によって、鋳造時のイ
ンサート部材16の変形が防止されるので、インサート部
材16を薄肉化することができ、また、高圧鋳造が可能と
なって緻密で高品質なシリンダブロック13を成形するこ
とができる。また、インサート部材16のフランジ部17の
貫通孔23を冷却水通路として使用できるため、シリンダ
ブロック本体14の鋳造後、別途機械加工によってデッキ
面19に冷却水通路を穿設する必要がなく、加工によりチ
ル層が除去されないので耐圧性が向上する。
【0043】なお、上記実施形態では、一例として直列
4気筒エンジン用のシリンダブロックについて説明して
いるが、本発明は、これに限らず、このほかの多気筒ま
たは単気筒エンジン用のシリンダブロックにも同様に適
用することができる。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1に係るエ
ンジンのシリンダブロックによれば、シリンダブロック
本体に鋳包まれたインサート部材とインサート部材のフ
ランジ部に嵌合されたシリンダライナとの間にウォータ
ジャケットが形成されるので、クローズドデッキ・ウエ
ットライナ形のシリンダブロックを得ることができる。
【0045】請求項2に係るエンジンのシリンダブロッ
クによれば、貫通孔がシリンダヘッド取付面上に開口す
るので、この貫通孔が冷却水通路となってウォータジャ
ケットをシリンダヘッド側の冷却水通路に連通させるこ
とができる。
【0046】請求項3に係るシリンダヘッドの製造方法
によれば、金型の一部をインサート部材に嵌合させるこ
とによって、シリンダブロック本体のアンダーカット部
が解消され、インサート部材を鋳包んだシリンダブロッ
ク本体をダイカスト成形することができ、インサート部
材のフランジ部にシリンダライナを嵌合することによっ
て、クローズドデッキ・ウエットライナ形のシリンダブ
ロックを製造することができる。その結果、ダイカスト
法によって容易にクローズドデッキ・ウエットライナ形
のシリンダブロックを製造することができ、生産性の向
上および製造コストの低減を図ることができる。さら
に、補強部材によって、鋳造時のインサート部材の変形
が防止されるので、インサート部材を薄肉化することが
でき、また、高圧鋳造が可能となって緻密で高品質なシ
リンダブロックを成形することができる。
【0047】また、請求項4に係るシリンダブロックの
製造方法によれば、インサート部材のフランジ部の貫通
孔から容易に補強材を充填することができる。さらに、
貫通孔は、製品となったときシリンダヘッド取付面上に
開口するので、この貫通孔が冷却水通路となってウォー
タジャケットをシリンダヘッド側の冷却水通路に連通さ
せることができる。その結果、シリンダブロック本体の
鋳造後、別途機械加工によってシリンダヘッド取付面に
冷却水通路を設ける必要がなく、加工により緻密な層が
除去されないので、シリンダブロックの耐圧性を向上さ
せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のシリンダブロックを一部
破断して示す斜視図である。
【図2】図1のシリンダブロック縦断面図である。
【図3】図1のシリンダブロックに鋳包まれるインサー
ト部材の平面図である。
【図4】図3のインサート部材の半割り状の部材の正面
図である。
【図5】インサート部材に補強材を充填し、固化させた
状態を示す縦断面図である。
【図6】補強材が充填され、固化されたインサート部材
を一部破断して示す斜視図である。
【図7】インサート部材に補強材を充填する工程を示す
概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るシリンダブロック本
体のダイカスト成形用金型の開いた状態を示す概略図で
ある。
【図9】図8の金型の閉じた状態を示す概略図である。
【図10】インサート部材が鋳包まれたシリンダブロッ
ク本体の補強部の除去、機械加工およびシリンダライナ
圧入工程を示す概略図である。
【図11】オープンデッキ形のエンジンのシリンダブロ
ックを一部破断して示す斜視図である。
【図12】クローズドデッキ・ドライライナ形のエンジ
ンのシリンダブロックを一部破断して示す斜視図であ
る。
【図13】従来のクローズドデッキ・ウエットライナ形
のエンジンのシリンダブロックを一部破断して示す斜視
図である。
【符号の説明】
13 シリンダブロック 14 シリンダブロック本体 15 シリンダボア 16 インサート部材 17,18 フランジ部 19 デッキ面(シリンダヘッド取付面) 21 シリンダライナ 22 ウォータジャケット 23 貫通孔 24 補強材 30 芯金(円柱状部材) 33 可動型(金型) 36 固定型(金型) 34 芯金(金型の一部) C キャビティ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F02F 1/16 F02F 1/16 B (56)参考文献 特開 昭62−113845(JP,A) 特開 平3−462(JP,A) 特開 平1−110861(JP,A) 特開 平2−252946(JP,A) 特開 平1−110862(JP,A) 特開 平1−100352(JP,A) 特開 平1−147145(JP,A) 特開 昭58−74850(JP,A) 特開 昭60−135650(JP,A) 実開 昭60−32543(JP,U) 実開 平5−78950(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02F 1/00 - 1/42

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両端部の内側にフランジ部を有する筒状
    のインサート部材の両フランジ部間に崩壊性の補強材を
    充填、固化して、前記インサート部材をシリンダブロッ
    ク本体のシリンダボア外周部に鋳包み、前記補強材を崩
    壊、除去し、シリンダライナを前記インサート部材に挿
    通して前記フランジ部に嵌合させたことを特徴とするエ
    ンジンのシリンダブロック。
  2. 【請求項2】 インサート部材の一方のフランジ部に貫
    通孔が設けられ、該フランジ部がシリンダブロック本体
    のシリンダヘッド取付面に露出していることを特徴とす
    る請求項1に記載のエンジンのシリンダブロック。
  3. 【請求項3】 両端部の内側にフランジ部を有する筒状
    のインサート部材の両フランジ部間に崩壊性の補強材を
    充填、固化し、該インサート部材を金型のキャビティ内
    に配置して前記金型の一部を前記インサート部材内に挿
    通、嵌合し、前記キャビティ内に溶湯を充填してシリン
    ダボアの外周部に前記インサート部材を鋳包むようにシ
    リンダブロック本体をダイカスト成形した後、前記補強
    材を崩壊、除去し、前記インサート部材の両フランジ部
    にシリンダライナを嵌合させるようにしたことを特徴と
    するシリンダブロックの製造方法。
  4. 【請求項4】 インサート部材の一方のフランジ部に貫
    通孔を設け、前記インサート部材に円柱状部材を挿通し
    て両端フランジ部に嵌合させ、前記貫通孔から両フラン
    ジ部間に補強材を充填し、さらに、前記貫通孔を有する
    フランジ部がシリンダヘッド取付面上に露出するように
    前記インサート部材をシリンダブロック本体に鋳包むよ
    うにしたことを特徴とする請求項3に記載のシリンダブ
    ロックの製造方法。
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