JP3289100B2 - 導電性アクリル繊維及びその製造方法 - Google Patents

導電性アクリル繊維及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた導電性を有
し、帯電防止効果や電磁波シールド効果が必要とされる
衣料及びインテリア用途等に好適に用いられる導電性ア
クリル繊維及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、アクリル繊維は保温性、収縮
性、形態安定性、耐光性、風合い、染色性等において優
れた特徴を発揮し、衣料用またはインテリア用として広
範囲の用途に利用されている。しかし、一般にアクリル
繊維は電気絶縁性であり、接触や摩擦により発生した静
電気は容易に漏洩することはない。この結果、(1)衣
類のまとわりつき、(2)汚れの付着、(3)衣服に帯
電した静電気が原因となる可燃ガス、粉塵への引火、爆
発、(4)電子機器の誤動作など種々の問題を引き起こ
す。特にパソコン等の電子機器の普及に伴って上記
(4)の障害は近年クローズアップされている。アクリ
ル繊維に導電性を付与する技術として、従来よりカーボ
ンブラックを紡糸原液に混入して紡糸した繊維が提案さ
れているが、色相面から白度、発色性が要求される衣料
用途には適応が困難である。
【0003】これら色相を白色系に改善する方法とし
て、酸化錫に代表される金属酸化物を用いる方法があ
り、アクリル繊維に対しての適用例が特開昭59−22
3309号公報、特開昭57−39213号公報等に開
示されている。これらの白色導電性微粒子を複合紡糸し
て得られた繊維は、通常繊維に少量ブレンドすることに
より良好な制電性を付与することができ、しかも染色
性、風合い等の繊維加工品本来の特性を殆ど損なわない
ことから、市中でも使用され始めている。アクリロニト
リル系重合体溶液と導電性微粒子を分散した重合体溶液
とを混合し紡糸する技術としては、サイドバイサイド型
及び芯鞘型の複合紡糸法があるが、前者では、高濃度に
導電性微粒子を分散させた原液は曳糸性が悪く、単独で
吐出されると糸切れ、ノズル詰まりなどのトラブルが生
じ易く、繊維の繊度、形状ムラが大きくなる欠点があ
り、後者では、精密流体制御を必要とするためノズルホ
ール数が増やせず高生産性が望めないという問題点があ
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
の問題点を解消し、優れた導電性を有し、かつ優れた生
産性及び工程の安定した通過性を兼ね備えた導電性アク
リル繊維及びその製造方の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、比抵抗10
Ω・cm以下の導電性微粒子とアクリロニトリル系重合
体との混合比率が40/60〜90/10である混合体
が、繊維断面において直径0.01〜10μmの内接円
が含まれる領域を少なくとも一つ形成して導電性微粒子
を含まぬアクリロニトリル系重合体の領域中に存在して
いることを特徴とする導電性アクリル繊維、及び、比抵
抗10Ω・cm以下の導電性微粒子とアクリロニトリ
ル系重合体との混合比率が40/60〜90/10であ
る混合体を有機溶媒に溶解分散させた混合体30〜70
重量%を含む導電性微粒子分散液と、アクリロニトリル
系重合体を有機溶媒に溶解した紡糸原液とを、静止型管
内混合装置を用い、分割合流を繰り返して20〜800
0の層を形成させ、次いで紡糸ノズルより紡糸すること
を特徴とする導電性アクリル繊維の製造方法、にある。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本
発明において、アクリル繊維を構成するアクリロニトリ
ル系重合体及び導電性微粒子と混合されるアクリロニト
リル系重合体は、アクリロニトリルのホモ重合体、又は
アクリロニトリルを50重量%以上含有する共重合体で
あり、アクリロニトリルと共重合しうる不飽和ビニール
化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン
酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びこれらの塩、
アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のメタクリル酸
エステル類、メチルビニルケトン類、蟻酸ビニル、酢酸
ビニル等のビニルエステル類、メチルビニルエーテル等
のビニルエーテル類、アクリルアミド及びアルキル置換
体、ビニルスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びそれら
の塩類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン及
びそのアルキルまたはハロゲン置換体、アリルアルコー
ル及びそのエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等
のハロゲン化ビニル又はビニリデン類等が挙げられる。
【0007】本発明において使用される導電性繊維の導
電材としては特に限定されず、鉄、銅、アルミニウム、
鉛、錫、金、銀、ニッケルなどに代表される金属類及び
それらの酸化物、硫化物、カルボニル塩、またはITO
(インジウム・スズ酸化物)、ATO(アンチモン・ス
ズ酸化物)、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物及びこれ
らの硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリ、アルミ
ニウムの担体微粒子にコーティングした非金属系導電
材、ファーネス、チャンネル、サーマル、アセチレンブ
ラックに代表されるカーボンブラック系導電材、及びポ
リアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等に代表さ
れる導電性高分子化合物、テトラシアノパラキノジメタ
ン(TCNQ)とテトラチアフルバレン(TTF)との
錯体等に代表される有機導電性化合物が挙げられる。
【0008】混合体中の導電性微粒子とアクリロニトリ
ル系重合体との混合比率は、40/60〜90/10で
ある。導電体微粒子の比率が40%未満では導電性能が
不十分であり、90%を越えると紡糸安定性及び延伸性
が低下して十分な糸質が得られない。前記アクリロニト
リル系重合体を溶解し、分散媒とするための有機溶剤と
しては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等を挙げる
ことができるが、紡糸原液に用いられる有機溶媒と同じ
ものであることが好ましい。
【0009】分散液中のアクリロニトリル系重合体と導
電性微粒子の混合体の量は、特に限定されないが、通常
30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲
に調製される。70重量%を越えると、十分な分散性が
得られにくく、また30重量%未満の場合は、分散液が
希薄となり生産性の点で好ましくない。
【0010】本発明においては、比抵抗102Ω・cm
以下の導電性微粒子と分散用アクリロニトリル系重合体
の混合体が、繊維断面において内接円の直径が0.01
〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである領域を少
なくとも一つ形成させることが、優れた導電性を発揮さ
せるために必要である。上記内接円の直径が0.01μ
m未満では、電子伝導に必要な導電パスの形成が困難と
なり目的とする導電性を得ることができない。また上記
内接円の直径が10μmを越える場合は、導電率の向上
は認められず、コスト的にも好ましくない。また、上記
領域の面積は0.01〜100μm2であることが同様
の理由で望ましい。更に、導電性微粒子と分散用アクリ
ロニトリル系重合体の混合体は、繊維軸方向に沿ってで
きる限り連続した筋状構造を形成させることが優れた導
電性を発揮させるために望ましい。
【0011】導電性微粒子分散液をアクリロニトリル系
紡糸原液に混合するための装置としては、静止型管内混
合装置を用いることが望ましい。ここで静止型管内混合
装置とは、らせん状エレメント(プロペラ)を交互にそ
のねじれを逆にして連結し、パイプ内に設けたものであ
り、紡糸原液等の流体が該混合装置内に流入するとエレ
メントによってその流れが分割合流を繰り返すことによ
って混合される装置である。また、開放形の交差流路を
用いた静止型管内混合装置も使用することができる。
【0012】導電性微粒子分散液と紡糸原液とを上記静
止型管内混合装置により混合したときの分割層数Nは次
式で示される。 N=2n (上式中nはエレメント数である) 導電性微粒子分散液と紡糸原液との分割層数は20〜8
000好ましくは100〜1000の範囲内にする必要
がある。エレメント数は4〜12好ましくは6〜10で
ある。分割数が20未満である場合には、導電性微粒子
分散液と紡糸原液との混合が不十分となり、導電性微粒
子を含有するアクリロニトリル系重合体からなる繊維と
アクリロニトリル系重合体単独成分からなる繊維とが形
成されるため、導電性にバラツキが生じるので好ましく
ない。分割層数が8000を越えると、導電性に必要な
導電性微粒子と分散用アクリロニトリル系重合体との混
合体からなる領域の形成が不可能となり、目的とする導
電性能が得られない。また、静止型管内混合装置の設置
位置は、特に限定されないが、品種切替え時等の作業性
や形成された前記領域の維持の両面から紡糸直前に行わ
れるのが好ましい。
【0013】混合紡糸原液中のアクリロニトリル系重合
体に対する導電性微粒子の添加量は、5〜50重量%、
好ましくは10〜40重量%の範囲内で配合するのがよ
く、5重量%未満では十分な導電性能を付与することが
できない。50重量%を越えると導電性能向上が飽和す
るため、コスト面で好ましくない。
【0014】本発明の導電性アクリル繊維は、湿式、乾
式あるいは乾湿式の通常のアクリル繊維の製造工程で製
造することができ、その他、耐光安定剤、酸化防止剤等
の各種添加剤を含むことも差し支えない。また、繊維物
性が通常のアクリル繊維と異ならないため、必要に応じ
てハイバルク処理を施して、高収縮性繊維として使用す
ることも可能である。
【0015】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
説明する。尚、実施例において、導電部の領域の内接円
の直径及び面積は、繊維断面を透過型電子顕微鏡により
観察して測定した。また、電気比抵抗値は次の測定法に
より測定した。
【0016】(電気比抵抗値の測定法)20℃、40%
RHにおいて長さ1cmの単繊維を10本束にして両端
を導電性接着剤などにより金属と接続し、1000Vの
直流電圧を印加して電気抵抗Rを超絶縁計(SM−82
10 東亜電波株式会社製)により測定した。電気比抵
抗ρは次式により算出した。 ρ=R×1.11×10-5×デニール/比重(Ω・c
m)
【0017】(実施例1〜3、比較例1、2)粒径0.
2μmの導電性酸化チタン(A)(W−P:三菱マテリ
アル社製)とアクリロニトリル93.1wt%、酢酸ビ
ニル6.9wt%のアクリロニトリル系重合体(B)と
を表1に示すように、(A)と(B)との混合比率を変
更してジメチルアセトアミドに添加混合し、ボールミル
で約20時間分散処理を行った。各分散液の分散処理後
の分散状態、並びに該分散液を1週間室温で放置した時
の分散状態を表1に示した。表中○は良好、△はやや不
良、×は不良を示す。
【0018】
【表1】
【0019】表1のNo.1〜5の導電性微粒子分散液
と、アクリロニトリル93.1wt%、酢酸ビニル6.
9wt%のアクリロニトリル系重合体を濃度25wt%
となるようにジメチルアセトアミドに溶解した紡糸原液
とを、導電性微粒子添加量がアクリロニトリル系重合体
に対して20wt%となるように、静止型管内混合装置
(ノリタケ社製スタティックミキサー)を用いて、その
段数を8段として混合紡糸した時の紡糸性及び電気比抵
抗を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】(実施例4)表1のNo.4の導電性微粒
子分散液とアクリロニトリル93.1wt%、酢酸ビニ
ル6.9wt%のアクリロニトリル系重合体を濃度25
wt%となるようにジメチルアセトアミドに溶解した紡
糸原液とを、静止型管内混合装置(ノリタケ社製スタテ
ィックミキサー)を用いて、その段数を変更して混合紡
糸した時の電気比抵抗及びその繊維断面における混合体
領域の内接円直径及び面積を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
【発明の効果】本発明の繊維は高い導電性を有してお
り、また本発明の製造方法によれば、優れた導電性を有
するアクリル繊維を生産性よく安定に製造することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−9426(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/54 D01F 8/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 比抵抗10Ω・cm以下の導電性微粒
    子とアクリロニトリル系重合体との混合比率が40/6
    0〜90/10である混合体が、繊維断面において直径
    0.01〜10μmの内接円が含まれる領域を少なくと
    も一つ形成して導電性微粒子を含まぬアクリロニトリル
    系重合体の領域中に存在していることを特徴とする導電
    性アクリル繊維。
  2. 【請求項2】 混合体が形成している領域の面積が、
    0.01〜100μmである請求項1記載の導電性ア
    クリル繊維。
  3. 【請求項3】 比抵抗10Ω・cm以下の導電性微粒
    子とアクリロニトリル系重合体との混合比率が40/6
    0〜90/10である混合体を有機溶媒に溶解分散させ
    た混合体30〜70重量%を含む導電性微粒子分散液
    と、アクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した紡
    糸原液とを、静止型管内混合装置を用い、分割合流を繰
    り返して20〜8000の層を形成させ、次いで紡糸ノ
    ズルより紡糸することを特徴とする導電性アクリル繊維
    の製造方法
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