JPH101851A - 制電性短繊維集合体およびその製造方法 - Google Patents

制電性短繊維集合体およびその製造方法

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JPH101851A
JPH101851A JP8152008A JP15200896A JPH101851A JP H101851 A JPH101851 A JP H101851A JP 8152008 A JP8152008 A JP 8152008A JP 15200896 A JP15200896 A JP 15200896A JP H101851 A JPH101851 A JP H101851A
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JP
Japan
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short fiber
conductive
fiber
short fibers
fibers
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JP8152008A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Kawachi
博之 河内
Hiroshi Hosokawa
宏 細川
Yasuo Yanagi
康夫 柳
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い制電性能を有する制電性短繊維集合体お
よび所望の摩擦帯電圧を得るための短繊維集合体中の導
電性短繊維の単繊維繊度、導電性短繊維の混率を予想で
きる制電性短繊維集合体製造方法を提供する。 【解決手段】 印加電圧100Vにおける導電率が10
-4S/cm以上である導電性短繊維と他の短繊維がD/
W≦3を満足する範囲の混率よりなる、摩擦帯電圧が3
000V以下である制電性短繊維集合体、および、D/
Wをかえて短繊維集合体を製造し、摩擦帯電圧を測定
し、その測定値を最小二乗法により特定式にあてはめ、
得られた特定式より、所望の摩擦帯電圧を得る導電性短
繊維の単繊維繊度、導電性短繊維の混率を決める制電性
短繊維集合体の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた制電性を有
し、衣料・インテリア用途および資材用途として用いる
ことのできる、短繊維集合体(紡績糸、短繊維と長繊維
との複合糸、不織布、織物、編物)に関し、さらに所望
の摩擦帯電圧を得る短繊維集合体中の導電性短繊維の単
繊維繊度、導電性短繊維の混率を決める制電性短繊維集
合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】制電性を付与した繊維集合体は静電気を
除去する目的で工業用および家庭用に広く使用されてお
り、静電気爆発の回避、電子部品の故障防止、衣服のま
とわりつき防止、冬場の低湿度期に顕著な衣類、マッ
ト、カーペットなどの摩擦帯電に起因するスパーク発生
の回避などのためには必要不可欠な材料となっている。
【0003】繊維集合体に制電性を付与する方法として
は、原料となる繊維あるいは繊維集合体に帯電防止剤を
塗布する方法または原料繊維を製造する際に帯電防止剤
を紡糸原液に添加し紡糸する方法が一般的に行われてい
るが、これらの方法では初期には優れた制電性を示すも
のの繰り返し漂白、洗濯等により著しく制電性が低下す
るのが通例であった。
【0004】このような状況下で最近、制電性繊維より
導電率の高い導電性繊維が注目されている。導電性繊維
は繊維表面に導電材料を後加工により複合化する方法、
繊維基質自身に導電材料を使用する方法、導電材料を繊
維内部に練り込む方法などにより生産され、各分野で使
用されてきた。
【0005】例えば、後加工技術としてはカーボンブラ
ックまたは金属(化合物)などの導電性微粒子を繊維基
質表面に埋め込む方法、銅化合物などの金属化合物を含
浸した後に化学処理することにより硫化銅、沃化銅など
の導電性金属化合物を繊維内部または表層に析出させる
方法などが知られている。
【0006】繊維基質自身に導電材料を使用する方法と
しては、金属繊維を用いる方法、炭素繊維を用いる方法
などが知られている。導電材料を繊維内部に練り込む方
法としては、カーボンブラックまたは金属(化合物)な
どの導電性微粒子をブレンド紡糸または複合紡糸などの
方法により複合化する方法が知られている。
【0007】従来、導電性繊維の開発・工業化において
は、優れた制電性を発揮するための導電材の種類、添加
量、導電層を繊維表面に露出させるといった構造あるい
は、制電性発現の本質に関わる単繊維に必要な臨界導電
率などについての検討は種々行われているが、導電性短
繊維の混率と制電性の発現については、ほとんど定性的
にしか触れられていなかった。
【0008】一般に、導電性繊維は長繊維として用いら
れることが多く、交織したりあるいは他の長繊維と交絡
し混繊糸として使用し、導電性短繊維を他の短繊維に混
合して制電性短繊維集合体にすることはほとんど皆無で
あった。しかし、近年セーター、ジャージあるいはタイ
ツなど紡績糸よりなる短繊維集合体に高い制電性能の付
与が望まれている。
【0009】導電性短繊維を他の短繊維と混合して制電
性を有する短繊維集合体を得ようとする場合(例えば、
特開昭53−86856号公報、特開昭52−1073
50号公報に開示)、長繊維の導電性繊維を使用する場
合とは制電性の発現挙動が全く異なり、新規な技術が必
要であった。
【0010】例えば、長繊維の導電性繊維を使用した織
物では、1cm前後の間隔で導電性繊維を打ち込むこと
により優れた制電性能を発揮する。この場合の混率は約
0.01〜0.1重量%となるが、短繊維では通常この
程度の混率で満足する制電性能が得られない。このよう
に、導電性短繊維を用いて必要に応じた制電性能を発現
する短繊維集合体を得る技術はこれまで大変未熟であっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高い
制電性を有する制電性短繊維集合体(紡績糸、短繊維と
長繊維との複合糸、不織布、織物、編物)および所望の
摩擦帯電圧を得るための短繊維集合体中の導電性短繊維
の単繊維繊度、導電性短繊維の混率を予想できる制電性
短繊維集合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく、制電性能発現メカニズムを鋭意解析した
結果、本発明に至った。
【0013】すなわち、本発明は、印加電圧100Vに
おける導電率が10-4S/cm以上である導電性短繊維
と他の短繊維が下記式(1)を満足する範囲の混率より
なる、摩擦帯電圧が3000V以下である制電性短繊維
集合体を第1の要旨とし、
【0014】D/W≦3 (1) D:導電性短繊維の単繊維繊度(デニール) W:導電性短繊維の混率(重量%)
【0015】導電性短繊維と他の短繊維とを混合して短
繊維集合体を製造する方法において、D/Wをかえて複
数の短繊維集合体を製造し、その摩擦帯電圧を測定し、
その測定値を最小二乗法により下記式(3)または
(4)にあてはめ、得られた下記式(3)または(4)
より、所望の摩擦帯電圧を得る導電性短繊維の単繊維繊
度、導電性短繊維の混率を決める制電性短繊維集合体の
製造方法を第2の要旨とする。
【0016】
【数3】
【0017】
【数4】
【0018】D:導電性短繊維の単繊維繊度(デニー
ル) W:導電性短繊維の混率(重量%) A,B,C:定数
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の短繊維集合体としては、
紡績糸、短繊維と長繊維との複合糸、不織布、織物、編
物等が挙げられる。
【0020】本発明において導電性短繊維と共に短繊維
集合体を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ポ
リプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、羊
毛、ナイロン繊維等の短繊維集合体の形成が可能な繊維
であれば特に限定されない。
【0021】本発明では、制電性短繊維集合体を構成す
る導電性短繊維の導電率が印加電圧100Vにおいて1
-4S/cm以上である必要がある。印加電圧100V
の時の繊維の導電率が10-4S/cm未満になると短繊
維集合体とした後における制電性能発現が困難となる。
【0022】本発明では、D/W≦3(D:導電性短繊
維のデニール、W:導電性短繊維の混率(重量%))で
ある必要がある。D/W≦1とすることにより従来の混
率より小さな混率で十分低い摩擦帯電圧を有する短繊維
集合体が得られるのでさらに好ましい。D/Wの値が3
を超えると短繊維集合体とした後の制電性能の発現が困
難となる。
【0023】本発明では、導電性微粒子の導電層に占め
る割合が15〜70体積.%の範囲にあることが必要で
あり、更に好ましくは20〜60体積%である。導電性
微粒子の導電層に占める割合が15体積%未満になる
と、導電性の発現に繊維間のムラの発生する割合が急激
に上昇する。逆に、この割合が70体積%を超えると紡
糸性が急激に悪化するなどの理由で、同様に導電性の発
現に繊維間のムラの発生する割合が上昇する。
【0024】本発明において使用される導電性短繊維中
の導電材としては導電性を有する微粒子が好ましい。こ
のような導電性微粒子としては、鉄、銅、アルミニウ
ム、鉛、スズ、金、銀、ニッケルなどに代表される金属
類およびそれらの酸化物、硫化物、カルボニル塩、ファ
ーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラッ
ク、アセチレンブラックに代表されるカーボンブラック
系導電材、またITO(インジウム・スズ酸化物)、A
TO(アンチモン・スズ酸化物)、酸化亜鉛などの導電
性金属酸化物及びこれらを硫酸バリウム、酸化チタン、
チタン酸カリ、アルミニウムの担体微粒子にコーティン
グしたセラミックス系導電材等が挙げられる。より具体
的には、白色系のITO(インジウム・スズ酸化物)、
ATO(アンチモン・スズ酸化物)、酸化亜鉛などの導
電性金属酸化を酸化チタンの担体微粒子にコーティング
した粒状導電性セラミックスが好ましい。
【0025】本発明の導電性短繊維の基質としては、ポ
リエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン
等に代表される熱溶融性ポリマー、レーヨン、ポリウレ
タンアクリロニトリルなどに代表される溶剤可溶性ポリ
マーなどを用いることができる。紡糸法としては、溶融
紡糸または溶液紡糸法が挙げられる。
【0026】本発明の導電性短繊維を複合繊維とする場
合には、層状複合紡糸、サイドバイサイド複合紡糸及び
芯鞘複合繊維等が好ましい例として挙げられる。これら
の中で最も好ましいのは、芯鞘複合繊維である。その
際、導電材は芯部に存在するのが好ましい。
【0027】導電材が粒子状導電性セラミックスであ
り、これが鞘部に存在すると、紡糸工程および紡績工程
などの加工工程の工程通過性が著しく悪化すると同時
に、衣料用途等に使用した場合、着用感が悪いなどの欠
点がある。導電材を導電性微粒子とし芯鞘複合繊維の芯
部に入れた場合には、導電性の発現の点から芯/鞘体積
比率は5/95〜60/40好ましくは10/90〜5
0/50が特に好ましい。60/40を越えると、芯鞘
構造が崩れ目的とする繊維が得られなくなる傾向にあ
る。
【0028】芯鞘複合繊維において、芯部に使用するポ
リマーは特に限定されないが、一般に、ポリエステル、
ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表され
る熱溶融性ポリマー、ポリアクリロニトリル、レーヨ
ン、ポリウレタンなどに代表される溶剤可溶性ポリマー
などを用いることができる。また、さらに場合によって
は、紡糸性向上、導電性向上などの目的で、他のポリマ
ー、化合物、添加物などを使用しても良い。
【0029】また、風合い、外観、発色性等に優れ、衣
料分野で最も制電性の要求度の高いセーター用途等に対
応できるので、繊維基質としてアクリロニトリル系ポリ
マーを用いることが特に好ましい。
【0030】本発明で導電性短繊維の繊維基質としてア
クリロニトリル系ポリマーを用いる場合には、通常のア
クリル繊維を構成するポリマーであれば特に限定されな
いが、モノマー構成としてアクリロニトリルを50重量
%以上含有することが望ましい。ポリマーの中のアクリ
ロニトリル含有率が50重量%未満であると、原糸が本
来のアクリル繊維としての特性を失い、本発明の目的に
不適合となる。
【0031】上記のアクリロニトリルの共重合成分とし
ては、通常のアクリル繊維を構成する共重合モノマーで
あれば特に限定されないが、例えば、以下のモノマーが
挙げられる。
【0032】すなわち、アクリル酸メチル、アクリル酸
エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに
代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、
メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メ
タクリル酸t−ブチル、n−ヘキシル、メタクリル酸シ
クロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2
−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピ
ル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表され
るメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル
酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メ
チロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、
スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、
塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化
ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマーであ
る。さらに、染色性改良などの目的でp−スルホフェニ
ルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスル
ホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2
−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらのアルカリ
金属塩などを共重合しても良い。
【0033】アクリロニトリル系ポリマーの分子量は特
に限定されないが、分子量10万以上かつ100万以下
が望ましい。分子量10万未満では、紡糸性が低下する
と同時に原糸の糸質も悪化する傾向にある。分子量が1
00万を越えると紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー
濃度が低くなり、生産性が低下する傾向にある。
【0034】アクリロニトリル系ポリマーの溶媒として
は、アクリロニトリル系ポリマーを溶解する溶媒であれ
ば特に限定されないが、このような溶媒として、例え
ば、硝酸(水溶液)、塩化亜鉛水溶液、ロダン塩水溶
液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジ
メチルスルホキシド、エチレンカーボネート、γ−ブチ
ロラクトン及びアセトン等が挙げられる。
【0035】導電性短繊維の基質としてアクリロニトリ
ル系ポリマーを用いる場合の紡糸法としては特に限定さ
れず、溶融紡糸、溶液紡糸法等の一般的な紡糸法が挙げ
られる。より具体的には、アクリロニトリル系ポリマ−
の紡糸法として湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法
などが挙げられる。
【0036】上述のようにD/Wを所定の値以下とする
ことにより短繊維集合体に対し、制電性能を付与できる
理由、言い換えれば導電性短繊維の単繊維繊度を小さく
することが導電性短繊維の短繊維集合体中の混率を増や
すことと等価である理由は現在のところ定かではないが
本発明者らは以下のように考えている。
【0037】一般的に導電性短繊維集合体における制電
性のメカニズムは、コロナ放電による電荷の中和である
と考えられている(静電気ハンドブック第一版P815
静電気学会編オーム社発行による)。導電性繊維混綿紡
績糸では、コロナ放電は帯電した通常繊維の電界が導電
性短繊維に集中し、局部的に高い電界が生じこの部分が
絶縁破壊して起こる。つまり、導電性短繊維と帯電した
通常繊維とを電極とした放電であると考えることができ
る。
【0038】本発明者らは次の2つのモデルを想定して
導電性短繊維の単繊維繊度と混率により摩擦帯電圧の定
式化を検討した。
【0039】モデル1は、コロナ放電は帯電した通常繊
維と導電性短繊維の間に電位差により生じ、その電位差
は他の導電性短繊維間との静電容量により定まり、コロ
ナ放電可能距離はコロナ放電が開始する電位を生じる臨
界値における距離であり導電性短繊維間の半分の距離と
する。
【0040】モデル2は、モデル1同様に電位差は他の
導電性短繊維間との静電容量により定まるが、コロナ放
電可能距離はコロナ定住の条件(dEm/dR)R2
r<0からはずれた時点の距離とした。
【0041】以下に、2つのモデルの定式化について順
に説明する。モデル1においては、コロナ放電を左右す
る因子として次の二つをあげた。一つは摩擦によって生
じた静電界を導電性短繊維に効率よく集中させことであ
り、他の一つは帯電した通常繊維と導電性短繊維の間に
電位差をもたせるため導電性短繊維を接地あるいは接地
体との静電容量を大きくする事である。(静電気ハンド
ブック第一版P832静電気学会編オーム社発行によ
る)。
【0042】電界集中は導電率が10-6S/cm以上で
ある導電性短繊維を使用すれば十分であると考えられる
ため、10-6S/cm以上であれば、コロナ放電を左右
する因子から除外することができる。
【0043】一方、接地あるいは接地体との静電容量の
増大に関しては、衣料の場合他の衣類の上に着用するこ
とが多く、接地体である人体に直接接触することはまれ
であり、実質的に導電性短繊維を接地させることは不可
能である。そのため、混綿された導電性短繊維は絶縁状
態の導体であると考えられ、帯電した通常繊維の誘導電
圧により導電性短繊維は、帯電した通常繊維に近い電圧
となる。つまり、帯電した通常繊維と導電性短繊維との
間の電圧差が小さいものとなる。そこで、帯電した通常
繊維と導電性短繊維との間に電圧差をもたせるには、導
電性短繊維と接地体との静電容量を大きくする必要があ
る。コロナ放電を左右する最も重要な因子は導電性短繊
維と接地体との静電容量であるとした。
【0044】図1に示すように、帯電体、絶縁状態にあ
る導体及び接地体がある場合、帯電体の帯電圧をV1
帯電体と絶縁状態にある導体の相互静電容量をC12、絶
縁状態にある導体の対地静電容量をC2とすれば、絶縁
状態にある導体の帯電圧をVは、次式(5)で表され
る。
【0045】 V=C12×V1/(C12+C2) (5)
【0046】この式より、帯電した通常繊維と導電性短
繊維の間の電圧差(V1−V2)は、絶縁状態にある導体
の対地静電容量(C2)に比例すると考えられる(静電
気ハンドブック第一版P782静電気学会編オーム社発
行による)。
【0047】ここで、実際の紡績糸を図2に示すような
導電性短繊維が1辺がdの各格子の中心に位置し周りを
帯電した通常繊維で充填されているモデルで扱い、導電
性短繊維同士の相互静電容量すなわち導電性短繊維同士
間の距離と摩擦帯電圧との定式化を試みた。
【0048】図2に示すようなモデルを図1にあてはめ
ると、帯電体は帯電した通常繊維、絶縁状態にある導体
が導電性短繊維となる。接地体は、通常は大地とする
が、この場合導電性短繊維のまわりに存在する他の導電
性短繊維との相互作用の方がはるかに大きいので、他の
導電性短繊維と想定した。
【0049】帯電した通常繊維と絶縁状態にある導電性
短繊維の相互静電容量(C12)は、導電性短繊維の周り
を帯電した通常繊維で取り囲まれていると仮定すると次
式により表せる(静電気ハンドブック第一版P170静
電気学会編オーム社発行による)。
【0050】
【数5】
【0051】R:導電性短繊維と帯電した通常繊維との
距離(m) r:導電性短繊維の半径(m) ε:帯電した通常繊維の誘電率(F/m)
【0052】しかし、帯電した通常繊維と絶縁状態にあ
る導電性短繊維の相互静電容量(C12)は、上記式から
わかるように導電性短繊維の混率に無関係で常に一定な
ので定数:Fとした。
【0053】C12=F (7)
【0054】次に、導電性短繊維間の静電容量(C2
は、導電性短繊維の周りに存在する他の導電性短繊維と
の静電容量の和として次式により表せる。
【0055】
【数6】
【0056】d:導電性短繊維と他の導電性短繊維との
距離(cm) ε:帯電した通常繊維の誘電率(F/m)
【0057】導電性短繊維間の静電容量(C2)は、上
記式(8)からわかるように導電性短繊維間の距離の関
数であり、また通常の紡績糸の場合、番手が22メート
ル番手、混率が3重量%とすると紡績糸の断面あたりに
含まれる導電性短繊維の数は5本前後となることより、
近似して次式(9)により表した。
【0058】
【数7】
【0059】G:定数
【0060】上記式(5)、(7)、(9)より導電性
短繊維の電圧(V2)は、次式(10)により表すこと
ができ、
【0061】
【数8】 さらに、上記式を変形して帯電し、通常繊維と導電性短
繊維の間に電圧差(V1−V2)は、
【0062】
【数9】
【0063】となる。また、この場合のコロナ放電は、
導電性短繊維と帯電した繊維とをそれぞれ電極とし放電
が起こると考えられる。ここで、導電性短繊維の周りを
帯電した繊維で充填されているととすると、コロナ放電
を同軸円筒電極のモデルで扱うことができる。その場合
コロナ放電の開始電界強度は、次式(12)により表せ
る(静電気ハンドブック第一版P222静電気学会編オ
ーム社発行による)。
【0064】
【数10】
【0065】Em:コロナ放電開始電界強度(V/m) V:導電性短繊維と帯電した繊維との電位差(V) R:導電性短繊維と帯電した繊維間の距離(m)
【0066】ここで、V:導電性短繊維と帯電した繊維
との電位差(V)は式(11)により表され、rは導電
性短繊維の半径とした。また、導電性短繊維と帯電した
繊維間の距離(R)つまりコロナ放電可能距離は、通常
の同軸円筒電極のモデルとは異なり周り帯電した繊維で
充填されているので明確な距離は設定できないが、摩擦
帯電圧の示す値をコロナ放電が開始する電位を生じる臨
界値すなわち摩擦帯電圧まで電荷を蓄積可能であり、そ
れ以上になるとコロナ放電を生じるとすると、その臨界
値における距離が導電性短繊維と帯電した繊維間の距離
に対応し、便宜上導電性短繊維間の半分の距離つまりd
/2とすることができる。
【0067】したがって次式(13)により短繊維集合
体中のコロナ放電開始条件を示すことができる。
【0068】
【数11】
【0069】したがって、式(11)、(13)より、
摩擦帯電圧(V1)は次式(14)により表すことがで
きる。
【0070】
【数12】
【0071】ここにおいて格子モデルにおいて格子の一
辺dは、導電性短繊維間の距離であり、導電性短繊維の
本数に関係する。そこで、dを導電性短繊維の単繊維繊
度及び混率により次式により表した。
【0072】
【数13】
【0073】D:導電性短繊維の単繊維繊度(デニー
ル) W:導電性短繊維の混率(重量%)k:定数 式(14)、(15)より、摩擦帯電圧(V1)とデニ
ール及び混率の関係は次式(16)により表すことがで
きる。
【0074】
【数14】
【0075】この式において定数部分を
【0076】
【数15】
【0077】と置き、
【0078】
【数16】
【0079】が得られる。導電性短繊維の半径として1
×10-6〜1×10-5(m)を代入すると、一般的な紡
績糸の場合には定数kは1.0×10-4となり、ln
(k/r)は2.3〜4.6となる。したがってA:
B:C=1:1.3a:a2−0.7a{a:2.3≦
a≦4.6}となる。
【0080】この式の定数A、B、Cを上記関係に従い
数値を代入すると、実際のデータによく一致することが
分かった。これは、この式により必要に応じた制電性能
を有する紡績糸が得られることを意味する。
【0081】モデル2では、モデル1と同様にコロナ放
電を左右する最も重要な因子は導電性短繊維と接地体と
の静電容量であると想定したが、式(12)のコロナ放
電可能距離をコロナ定在の条件(dEm/dR)R2
r<0からはずれた時点の距離と想定した。この場合R
2/r≒2.7となりコロナ放電が停止する導電性短繊
維と帯電した通常繊維間のコロナ放電可能距離(m)は
2.7×rとなる。それにより次式(17)でコロナ放
電開始電界強度を表すことができる。(静電気ハンドブ
ック第一版P222静電気学会編オーム社発行によ
る)。
【0082】
【数17】
【0083】したがって、式(11)、(17)より、
摩擦帯電圧(V1)は次式(18)により表すことがで
きる。
【0084】
【数18】
【0085】さらに式(13、16)より、摩擦帯電圧
(V1)はデニール及び混率の関係は次式(19)によ
り表すことができる。
【0086】
【数19】
【0087】この式において定数部分を
【0088】
【数20】
【0089】と置き、
【0090】
【数21】
【0091】が得られる。この式の定数A’、B’を上
記関係に従い数値を代入すると、実際のデータによく一
致することを分かり、この式により必要に応じた制電性
能を有する短繊維集合体が得られることが分かる。
【0092】以上より、導電性短繊維と他の短繊維とを
混合して短繊維集合体を製造する方法において、D/W
をかえて短繊維集合体を製造し、摩擦帯電圧を測定し、
その測定値を最小二乗法により式(3)または(4)に
フィッティングし、得られた式(3)または(4)よ
り、その導電性短繊維を用いた場合、所望の摩擦帯電圧
を得る導電性短繊維の単繊維繊度(デニール)、導電性
短繊維の混率(重量%)を決めることができるのであ
る。
【0093】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。繊維の導電率は以下の方法により評価した。
【0094】(導電率の測定)繊維束より単繊維を取り
出し、これを正確に1cm離して銀ペースト(藤倉化成
株式会社製ドータイト)により金属端子に接着した。2
0℃、相対湿度40RH%において、この端子間に10
0Vの直流電圧を印加し、端子間の抵抗値R(Ω)を超
絶縁計(SM−8210東亜電波株式会社製)により測
定した。導電率σ(S/cm)は次式によって求めた。
【0095】 σ=1/(1.11×10-6×R×(D/ρ))
【0096】ここで、Dは導電性短繊維の単繊維繊度
(デニール)、ρは導電性短繊維の比重である。
【0097】(摩擦帯電圧の測定)導電性短繊維を紡績
糸して目付300gの編地(10cm×20cm)を編
成した後、JIS−L−1094−1980B法に準拠
し、以下のようにして摩擦帯電圧を測定した。
【0098】編地100部に対して精練液(スコアロー
ル濃度1グラム/リットルの水溶液)5000部に浸
し、70℃で20分間油剤脱落処理を行い、引き続き編
地100部に対して、染色液[BLUE−KGLH(保
土ケ谷化学社製染料)0.5部、酢酸2部、酢酸ソーダ
0.5部]5000部に浸して、30分間要して100
℃まで昇温し、100℃で60分間加熱した後、編地を
取り出し風乾して後、制電性能測定用試料とした。
【0099】得られた試料を、130℃、60分で絶乾
処理した後、シリカゲル封入デシケーター中で降温して
後、恒温恒湿雰囲気下(温度20℃、相対湿度40%)
で24時間以上の調湿した。京大化研式ロータリースタ
ーティックテスター(興亜商会社製)で摩擦帯電圧測定
した。
【0100】ロータリースターティックテスター使用条
件 ドラム回転数:400rpm 摩擦時間 :60秒 摩擦布 :綿
【0101】(実施例1〜11、比較例1)アクリロニ
トリル93.5重量%、アクリル酸メチル6.0重量
%、メタリルスルホン酸ソーダ0.5重量%からなるア
クリル系重合体(分子量16万)をジメチルホルムアミ
ドに溶解し、重合体濃度が30重量%の紡糸原液(H)
を得た。
【0102】さらに粒径0.2〜0.3μm、粉体導電
率2〜5S/cm、比重4.6の粒状導電性酸化チタン
(石原産業株式会社製ET−500W)90部を紡糸原
液(H)と同じ組成の紡糸原液100重量部に分散し、
導電性微粒子の芯部に占める割合が43体積%になるよ
うに紡糸原液(I)を調製した。芯部を形成する紡糸原
液として(I)を鞘部を形成する紡糸原液として(H)
を用いた。
【0103】紡糸原液を別々に130℃に加熱した後、
孔数400、孔径0.2mmφの芯鞘紡糸口金を用いて
230℃の不活性ガス中に吐出した。未延伸糸の芯部/
鞘部の体積比が30/70であり、延伸洗浄後の繊度が
2、3及び5デニールになるように紡糸原液の吐出量を
種々変更した。得られた未延伸糸を引き続き、100℃
の熱水中で3.75倍に延伸し、さらに95℃の熱水中
で洗浄した。得られた繊維束は無緊張状態下に相対湿度
40%、温度150℃で乾燥、緩和処理し、20%収縮
させ導電性短繊維(J)として得た。
【0104】得られた導電性短繊維(J)の繊度はそれ
ぞれ0.8、2、3及び5デニールであった。この導電
性短繊維(J)を51mmにカットした後、通常のアク
リル繊維2d×51mmとの混率を種々変更して1/5
2メートル番手の紡績糸を形成し、18ゲージ2本取り
にて平編み地を編成して制電性能を評価した。その結果
を表1に示した
【0105】
【表1】
【0106】
【発明の効果】本発明により得られる制電性短繊維集合
体は、高い制電性能を有しており、また、本発明の制電
性短繊維集合体の製造方法によれば、従来困難であった
制電性短繊維集合体の製造のための設計が容易にでき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】帯電状態にある制電性短繊維集合体のモデル図
である。
【図2】本発明の制電性短繊維集合体中の導電性短繊維
の配置を示したモデル図である。
【図3】実施例各条件における短繊維集合体(編地)の
摩擦帯電圧を繊度/混率に対してプロットしたグラフ及
び理論曲線を示したグラフである。
【図4】実施例各条件における短繊維集合体(編地)の
摩擦帯電圧を繊度/混率に対してプロットしたグラフ及
び理論曲線を示したグラフである。
【符号の説明】
1 通常の繊維(帯電体) 2 導電性短繊維(絶縁状態にある導体) 3 人体(接地体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D03D 15/00 101 D03D 15/00 101

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 印加電圧100Vにおける導電率が10
    -4S/cm以上である導電性短繊維と他の短繊維が下記
    式(1)を満足する範囲の混率よりなる、摩擦帯電圧が
    3000V以下である制電性短繊維集合体。 D/W≦3 (1) D:導電性繊維の単繊維繊度(デニール) W:導電性短繊維の混率(重量%)
  2. 【請求項2】 印加電圧100Vにおける導電率が10
    -4S/cm以上である導電性短繊維と他の短繊維が下記
    式(2)を満足する範囲の混合率よりなる、摩擦帯電圧
    が2500V以下である制電性短繊維集合体。 D/W≦1 (2) D:導電性短繊維の単繊維繊度(デニール) W:導電性短繊維の混率(重量%)
  3. 【請求項3】 導電性短繊維と他の短繊維とを混合して
    短繊維集合体を製造する方法において、D/Wをかえて
    複数の短繊維集合体を製造し、その摩擦帯電圧を測定
    し、その測定値を最小二乗法により下記式(3)または
    (4)にあてはめ、得られた下記式(3)または(4)
    より、所望の摩擦帯電圧を得る導電性短繊維の単繊維繊
    度、導電性短繊維の混率を決める制電性短繊維集合体の
    製造方法。 【数1】 【数2】 D:導電性短繊維の単繊維繊度(デニール) W:導電性短繊維の混率(重量%) A,B,C:定数
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003227053A (ja) * 2002-02-01 2003-08-15 Toho Tenax Co Ltd ポリアクリロニトリル系炭素繊維紡績糸織物、及びその製造方法
EP2180091B1 (en) * 2008-10-24 2012-09-12 The Ritsumeikan Trust Pressure-sensitive conductive yarn and biological information-measuring garment

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JP2003227053A (ja) * 2002-02-01 2003-08-15 Toho Tenax Co Ltd ポリアクリロニトリル系炭素繊維紡績糸織物、及びその製造方法
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