JP3287920B2 - 脂環式エポキシ基含有共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

脂環式エポキシ基含有共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物

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JP3287920B2 JP21513593A JP21513593A JP3287920B2 JP 3287920 B2 JP3287920 B2 JP 3287920B2 JP 21513593 A JP21513593 A JP 21513593A JP 21513593 A JP21513593 A JP 21513593A JP 3287920 B2 JP3287920 B2 JP 3287920B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は機械的性質に優れた成形
品を与える熱可塑性樹脂組成物に関する。また、本発明
は特に低温時の耐衝撃性に優れた成形品を与える得る熱
可塑性樹脂組成物に関するものである。さらにまた本発
明は成形時の流動性および耐乾熱劣化性に優れた成形品
を与える熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリブチレンテレフタレ−トやポリエチ
レンテレフタレ−トに代表される芳香族ポリエステルは
その優れた特性から電気および電子機器部品、自動車部
品などの広い分野で使用されている。しかしながら、芳
香族ポリエステルは耐衝撃性、特にノッチ付衝撃強さが
劣るため、従来から多くの改善方法が提案されてきた。
それらの中でも特開昭51−144452号公報、特開
昭52−32045号公報、特開昭53−117049
号公報などに示されるα−オレフィンおよびα,β−不
飽和酸グリシジルエステルなどのモノマ−からなる共重
合体をブレンドする方法は比較的優れてはいる。しか
し、これらの方法により得られた成形品は確かに室温付
近では良好な耐衝撃性を示すが、たとえば−40℃程度
の低温雰囲気下では、大幅に耐衝撃性が低下するという
問題があった。このような問題に対し、特開昭58−1
71485号公報には前記共重合体に加え更にエチレン
系共重合体を配合する方法が提案され、低温耐衝撃性が
改善されることが記載されている。また、前記共重合体
を加えた芳香族ポリエステル樹脂組成物はオ−ブン中で
加熱処理した場合に耐衝撃性が低下する問題に対し、特
開昭60−231757号公報には特定のポリカ−ボネ
−トを特定量配合することにより解決できる旨が記載さ
れている。また特開昭55−139448号公報には前
記共重合体と共に、特定の化合物を併用した組成物が機
械的強度に優れると共に、降温結晶化温度が高められ、
成形サイクルが効果的に短縮できる旨が記載されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記特開昭58−17
148号公報、特開昭60−231757号公報、特開
昭55−139448号公報の提案にかかる各発明にお
いては、それぞれの提案に関する改善点が達成されては
いるものの、必ずしも充分とはいえず、更に改善が求め
られている。
【0004】また、従来のグリシジル基を有するエチレ
ン共重合体は、そのエポキシ基が高温に対し不安定であ
るため、種々の問題があった。まず、この共重合体を製
造するに際し、α−オレフィン化合物とグリシジルメタ
クリレ−トとを高温下でラジカル重合を行わせるとき、
その反応温度でグリシジル基が開裂し、精製した共重合
体中のエポキシ基含有量が著しく低下し、また、ある場
合にはその分解により架橋反応が起こり、共重合体の溶
融温度が上がるなどの問題があった。従って、その様な
問題を避けるため共重合体中のグリシジル基含有単量体
の含有量を多くすることができず、限定された割合以下
でしか共重合が不可能であった。また、共重合における
重合温度も高くするとエポキシ基の分解や開列が起きる
ため、重合温度をある温度以下に保って共重合させるこ
とも行われている。しかし、その様な場合、共重合体の
分子量が大きくなり共重合自体の溶融粘度が大きくなる
ため、重合操作が問題であるばかりでなく他の樹脂との
ブレンド特性も悪くなるなどの問題があった。また押出
機など用いて他の樹脂とブレンドする場合、充分ブレン
ドを行うために混練温度を高くしたり、あるいは、混練
時間を長くすると、共重合体中のエポキシ基それ自体が
分解したり、自己開裂し、ブレンド樹脂が著しく着色し
たり、本来のブレンド効果が得られないなどの問題があ
った。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、前記
各課題に鑑み、熱安定性に優れかつ芳香族ポリエステル
樹脂の機械的性質や成形サイクルの短縮化を更に改善し
うる改質材について鋭意検討したところ、α−オレフィ
ンと脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体(ただし、
グリシジル化合物は除く)から得られる特定の共重合体
を配合することが著しく効果的であることを見い出し、
本件各発明を完成させることができた。
【0006】すなわち本件第1発明は、芳香族ポリエス
テル樹脂(A)100重量部に対し、α−オレフィン
(b1)、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b2(ただし、グリシジル化合物は除く)および任
意成分としてエチレン系不飽和単量体(b3)をラジカ
ル重合触媒を用いて共重合させることにより得られる共
重合体(B)1〜80重量部を配合してなる熱可塑性樹
脂組成物の組成物に関する。また、本件第2発明は、芳
香族ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、α−
オレフィン(b1)、脂環式エポキシ基を有する不飽和
単量体(b2(ただし、グリシジル化合物は除く)
よび任意成分としてエチレン系不飽和単量体(b3)を
ラジカル重合触媒を用いて共重合させることにより得ら
れる共重合体(B)1〜50重量部、およびエチレン4
0〜99モル%と炭素数3以上のα−オレフィン60〜
1モル%からなるエチレン系共重合体(C)1〜50重
量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物の組成物に関す
る。また、本件第3発明は、芳香族ポリエステル樹脂
(A)95〜30重量%および芳香族ポリカーボネート
樹脂(D)5〜70重量%(両者の合計100重量%)
からなる樹脂100重量部に対し、α−オレフィン(b
1)、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体(b2
(ただし、グリシジル化合物は除く)および任意成分と
してエチレン系不飽和単量体(b3)をラジカル重合触
媒を用いて共重合させることにより得られる共重合体
(B)1〜80重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成
物の組成物に関する。さらに本件第4発明は、芳香族ポ
リエステル樹脂100重量部に対し、α−オレフィン
(b1)、脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b2(ただし、グリシジル化合物は除く)および任
意成分としてエチレン系不飽和単量体(b3)をラジカ
ル重合触媒を用いて共重合させることにより得られる共
重合体(B)0.5〜30重量部、およびステアリン酸
ナトリウム、ステアリン酸バリウム、エポキシステアリ
ン酸ナトリウム、エポキシステアリン酸バリウム、テレ
フタル酸モノメチルモノナトリウム、イソフタル酸モノ
メチルモノナトリウムおよびエチレン−α,β−不飽和
酸共重合体ナトリウム塩からなる群から選ばれる化合物
(E)0.1〜5重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組
成物の組成物に関する。以下、本件各発明を詳しく説明
する。
【0007】本件各発明で用いる芳香族ポリエステル樹
脂(A)とは、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリ
エステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸(あるいは、その
エステル形成性誘導体)とジオ−ル(あるいはそのエス
テル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応により得
られる重合体ないしは共重合体である。
【0008】ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテ
レフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタ
レンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、
ビス(P−カルボキシフェニル)メタン、アントラセン
ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、
4,4’−ジフェニルエ−テルジカルボン酸あるいはそ
のエステル形成誘導体などが挙げられる。中でもテレフ
タル酸を用いることが好ましい。なお、酸性分として4
0モル%以下であれば、アジピン酸、セバシン酸、アゼ
ライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン
酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シ
クロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸お
よびそれらのエステル形成誘導体などの芳香族ジカルボ
ン酸以外のジカルボン酸で置換してもよい。
【0009】また、ジオ−ル成分としては炭素数2〜1
0の脂肪族ジオ−ル、すなわちエチレングリコ−ル、プ
ロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペ
ンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6
−ヘキサンジオ−ル、デカメチレングリコ−ル、シクロ
ヘキサンジオ−ルなど、あるいは分子量400〜600
0の長鎖グリコ−ル、すなわちポリエチレングリコ−
ル、ポリ−1,3−プロピレングリコ−ル、ポリテトラ
メチレングリコ−ルなどおよびそれらの混合物などが挙
げられる。
【0010】本発明で使用する好ましい芳香族ポリエス
テル樹脂の例としてはポリエチレンテレフタレ−ト、ポ
リプロピレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ
−ト、ポリヘキサメチレンテレフタレ−ト、ポリシクロ
ヘキシレンジメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレン−
2,6−ナフタレ−トなどが挙げられるが、中でも適度
の機械的強度を有するポリブチレンテレフタレ−トが最
も好ましい。
【0011】また、これらの芳香族ポリエステル樹脂は
0.5%のオルソクロロフェノ−ル溶液を25℃で測定
したときの固有粘度が0.5〜3.0の範囲にあること
が好ましい。芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度が前記
範囲にある場合に、とりわけ本発明により充分な機械的
強度と表面光沢の良好な成形品が得られる。
【0012】本件各発明の組成物を構成する共重合体
(B)は特開平4−23812号公報および同2381
3号公報により公知であり、α−オレフィン(b1)、
脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体(b2(ただ
し、グリシジル化合物は除く)および任意成分としてエ
チレン系不飽和単量体(b3)をラジカル重合触媒を用
いて共重合させることにより得られる。ここでα−オレ
フィン(b1)としてはエチレンおよびプロピレンなど
が挙げられるが、さらに分子量の大きいα−オレフィン
も用いることができ、1種または2種以上を混合して用
いてもよい。
【0013】脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b2(ただし、グリシジル化合物は除く)は1分子
中にα−オレフィン単量体と共重合しうる不飽和結合1
個を有し該脂環式エポキシ基を1個以上有する単量体で
ある。例えば、その様な単量体としては以下に示すもの
が挙げられる。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】[各一般式中、R1は水素原子またはメチ
ル基、R2(複数ある場合は互いに異なっていてもよ
い)は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基、R
3は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、nは1〜30
の整数を示す。]などが挙げられる。これらの単量体は
各々単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明の特性を損なわない範囲内でグリシジル基
を有する不飽和単量体、例えばグリシジルメタクリレー
トなどを脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b 2 )(ただし、グリシジル化合物は除く)と併用し
て用いることもできる。一般式(1)〜(15)の中で
特に(3)および(15)は工業的に容易に入手できる
ので好ましい。例えば、下記の単量体が下記の商品名で
ダイセル化学工業(株)により商品化されている。
【0020】
【化6】
【0021】さらに、α−オレフィン化合物と脂環式エ
ポキシ基を有する不飽和単量体(ただし、グリシジル化
合物は除く)と3元共重合させる任意成分のエチレン系
不飽和単量体(b3)の具体例としてはα−オレフィン
(b1)を除くものであり、酢酸ビニル、プロピオン酸
ビニルなどのビニルエステル類、スチレンなどの芳香族
ビニル化合物、アクリロニトリルなどのビニル化合物、
さらにアクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアク
リル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エ
チルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられるが、
特に好ましいのは酢酸ビニルである。
【0022】共重合体(B)に占めるα−オレフィン
(b1)の好ましい構成単位含量の範囲は50〜95モ
ル%、同じく脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b2(ただし、グリシジル化合物は除く)の好まし
い構成単位含量範囲は40〜5モル%、さらにエチレン
系不飽和単量体(b3)の好ましい構成単位含量は0〜
10モル%の範囲である。
【0023】共重合体Bの製造に用いられるラジカル重
合触媒は重合条件下でラジカルを発生し、不飽和単量体
のラジカル重合反応を起させるものであり、酸素または
(O−O)結合または(N−N)結合を有する化合物を
包含する。このような触媒としては酸素、過酸化水素、
有機酸酸化物、アゾ化合物等が有効である。そのうちで
も以下の一般式で示される過酸化物およびアゾ化合物が
特に有効である。なお、下記の式中、Xはアリ−ル基お
よびその誘導基、アルキル基、水素などであり、XとY
とが同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
【化7】
【0025】共重合体(B)を製造するにあたり、反応
温度は、40〜250℃である。250℃以上では、エ
ポキシ基の開裂が若干起こり、共重合体中のエポキシ基
の含有量が低下する。重合温度が40℃以下では、重合
反応速度が著しく遅くなり多量の触媒が必要となるた
め、工業的に不利となる。共重合反応は溶媒を用いずに
行うこともできるが、エタン、プロパン、ブタン、ヘプ
タン、ヘキサン等の不活性溶媒の共存下に行うこともで
きる。反応はバッチまたは連続いずれの方法で行っても
よいが、高圧に耐えられる反応容器が必要であることは
いうまでもない。
【0026】本件第1発明の組成物における共重合体
(B)の添加量は芳香族ポリエステル樹脂(A)100
重量部に対して1〜80重量部、好ましくは2〜40重
量部である。添加量が1重量部以下では低温衝撃特性の
改良が充分でなく、80重量部以上ではかえって芳香族
ポリエステル樹脂の機械的性質を損なう傾向があるため
いずれも好ましくない。
【0027】本件第2発明で用いるエチレンと炭素数3
以上のα−オレフィンよりなるエチレン系共重合体
(C)における炭素数3以上のα−オレフィンとはプロ
ピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテ
ン−1、オクテン−1などが例示でき、プロピレン、ブ
テン−1が好ましく使用できる。エチレンと炭素数3以
上のα−オレフィンの共重合比は40/60〜99/1
(モル%)、好ましくは10/30〜95/5(モル
%)である。
【0028】本件第2発明における共重合体(B)およ
びエチレン系共重合体(C)の添加量はいずれも芳香族
ポリエステル樹脂100重量部に対して1〜50重量
部、好ましくは2〜40重量部である。添加量が1重量
部以下では低温衝撃特性の改良が充分でなく、50重量
部以上ではかえって芳香族ポリエステル樹脂の機械的性
質を損なう傾向があるためいずれも好ましくない。
【0029】本件第3発明で使用する芳香族ポリカ−ボ
ネ−ト樹脂(D)は、4,4’−ジヒドロキシジフェニ
ル−2,2−プロパン(通称ビスフェノ−ルA)をはじ
めとする4,4’−ジオキシジアリルアルカン系ポリカ
−ボネ−トであるが、その中でも特に4,4’−ジヒド
ロキシジフェニル−2,2−プロパンのポリカ−ボネ−
トで機械的性質の点から、数平均分子量15,000〜
80,000のものが好ましく、20,000〜50,
000のものがより好ましい。数平均分子量が15,0
00以下の場合、機械的性質および耐乾熱劣化性の改良
が充分でなく、80,000以上の場合、例えばPBT
に対する分散が不良となるために機械的性質が低下し、
いずれも好ましくない。これらのポリカ−ボネ−トは任
意の方法によって製造される。例えば、4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニル−2,2−プロパンのポリカ−ボネ
−トの製造には、ジオキシ化合物として4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニル−2,2−プロパンを用いて、苛性
アルカリ水溶液および溶剤存在下にホスゲンを吹き込ん
で製造するホスゲン法、または4,4’−ジヒドロキシ
ジフェニル−2,2−プロパンと炭酸ジエステルとを触
媒存在下でエステル交換させて製造する方法が採用でき
る。
【0030】本件第3発明における芳香族ポリカ−ボネ
−ト(D)の樹脂全体((A)と(D)の合計)におけ
る含有量は5〜70重量%が好ましく、10〜60重量
%がより好ましく、20〜50重量%が最も好ましい。
含有量が5重量%以下の場合、機械的性質の改良が充分
でなく、70重量%以上の場合、成形時の流動性が損な
われるために好ましくない。
【0031】本件第3発明における共重合体(B)の配
合量は芳香族ポリエステル樹脂(A)と芳香族ポリカ−
ボネ−ト樹脂(B)を含有する樹脂100重量部に対し
て1〜80重量部、好ましくは2〜40重量部である。
添加量が1重量部以下では衝撃特性の改良が充分でな
く、80重量部以上ではかえって芳香族ポリエステルの
機械的性質を損なう傾向があるためいずれも好ましくな
い。
【0032】本件第3発明の組成物に対して、さらに前
記エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンよりなるエ
チレン系共重合体(C)を含有せしめると、一層耐衝撃
性の改良効果があるため好ましい。かかるエチレン系共
重合体の添加量は芳香族ポリエステル樹脂(A)と芳香
族ポリカ−ボネ−ト樹脂(D)を含有する樹脂100重
量部に対して1〜60重量部、好ましくは2〜40重量
部である。
【0033】本件第4発明において、前記共重合体
(B)の配合量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)1
00重量部に対して0.5〜30重量部、とくに3〜1
5重量部が適当であり、0.5重量部以下では低温金型
の使用が困難で、機械的性質が不十分な成形品しか得ら
れず、30重量部以上では成形サイクルの短縮が困難と
なり、成形品の弾性率が低下するため好ましくない。
【0034】本件第4発明において熱可塑性ポリエステ
ル樹脂(A)の成形サイクル短縮のために使用する化合
物(E)とは、ステアリン酸もしくはエポキシステアリ
ン酸のナトリウムまたはバリウム塩、テレフタル酸モノ
メチルモノナトリウム、イソフタル酸モノメチルモノナ
トリウムおよびエチレン−α,β−不飽和酸共重合体の
ナトリウム塩から選ばれた少なくとも1種であり、上記
共重合体(B)と共にこれらの化合物を併用した場合に
特異的な成形性改良効果が得られ、通常熱可塑性ポリエ
ステル樹脂の結晶化核剤として知られている中性粘土
類、周期律表第2族金属の酸化物、硫酸塩、ステアリン
酸金属塩のうち本発明で使用するもの以外のものを使用
しても、上記オレフィン系共重合体を含む熱可塑性ポリ
エステル組成物の成形サイクルを短縮することが困難で
ある。
【0035】前記した結晶核剤はその製法如何によら
ず、多少の原料、副材料が含まれて入れもよい。本発明
においてエポキシステアリン酸塩とは9,10−エポキ
システアリン酸ナトリウムもしくはバリウム塩をいう。
またエチレン−α、β−不飽和共重合体のナトリウム塩
はエチレンと一般式CH2=CRCOOH(Rは水素原
子または低級アルキル基)で示される化合物、具体的に
はアクリル酸、メタクリル酸などを5〜30モル%含有
する共重合体であり、α、β−不飽和成分のナトリウム
置換率が10〜100%であるものをいう。なおこの共
重合体はまた、共重合可能な他の不飽和モノマ、例えば
ビニルエ−テル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルな
どのビニルエステル類、アクリル酸およびメタクリル酸
のエステル類等を少割合共重合せしめたものであっても
よい。
【0036】これらの化合物の配合量は熱可塑性ポリエ
ステル樹脂(A)100重量部に対し0.1〜5重量
部、とくに0.3〜3重量部であり、0.1重量部以下
では成形サイクルが短縮できず、5重量部以上では組成
物から得た成形品の機械的性質、特に耐衝撃性が低下す
るため好ましくない。
【0037】なお、本件各発明の組成物に対して、エポ
キシ化合物とカルボン酸との反応を促進する化合物をさ
らに添加する場合には耐衝撃性を一層改良できるという
効果が得られる。これらの化合物としては、トリフェニ
ルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチ
ル)フェノ−ルなどの3級アミン、トリフェニルホスフ
ァイト、トリイソデシルホスファイトなどの亜リン酸エ
ステル、トリフェニルアリルホスホニウムブロマイドな
どのホスホニウム化合物、トリフニエルホスフィンなど
の3級ホスフィン、ステアリン酸リチウム、ステアリン
酸カルシウムなどのカルボン酸金属塩、ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベ
ンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸金属塩、
ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩などが挙
げられ、ポリエステル100重量部に対して0.001
〜5重量部添加されるのが好ましい。
【0038】なお、本件件各発明の組成物に対して、本
発明の目的を損なわない範囲で、繊維状および粒状の充
填剤および強化剤、酸化防止剤および熱安定剤(例えば
ヒンダ−ドフェノ−ル、ヒドロキノン、チオエ−テル、
ホスファイト類およびこれらの置換体およびその組み合
わせを含む)、紫外線吸収剤(例えば種々のレゾルシノ
−ル、サリシレ−ト、ベンゾトリアゾ−ル、ベンゾフェ
ノンなど)、滑剤および離型剤(例えばステアリン酸お
よびその塩、モンタン酸およびその塩、エステル、ハ−
フエステル、ステアリルアルコ−ル、ステアラミドな
ど)、染料(例えばニトロシンなど)および顔料(例え
ば硫化カドミウム、フタロシアニン、カ−ボンブラック
などを含む着色剤、難燃剤(例えばデカブロモジフェニ
ルエ−テル、臭素化ポリカ−ボネ−トのようなハロゲン
系、メラミンあるいはシアヌル酸系、リン系など)、難
燃助剤(例えば酸化アンチモンなど)、帯電防止剤(例
えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアル
キレングリコ−ルなど)、結晶化促進剤などの通常の添
加剤を1種以上添加することができる。また、少量の他
の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレ
ン、アクリル酸、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタ
−ル、ポリカ−ボネ−ト、ポリスルホン、ポリフェニレ
ンオキサイドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノ−ル
樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂など)、軟質熱可塑
性樹脂(例えばエチレン/酢ビ共重合体、ポリエステル
エラストマ−など)を添加することもでき、これらの樹
脂は、1種のみではなく2種以上を併用してもよい。但
し、本件各発明でこれらを必須成分添加する場合はこの
限りでない。
【0039】本件各発明の組成物の製造方法は特に限定
されるものではないが、好ましくは芳香族ポリエステル
樹脂(A)脂環式エポキシ基を有する不飽和単量体
(b 2 )(ただし、グリシジル化合物は除く)および
チレン系不飽和単量体(b 3 の三成分、あるいは他の
必須成分や任意成分を押出機を使用して溶融混練する方
法が挙げられる。
【0040】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明の効果をさらに
詳述する。
【0041】(実施例1〜8、比較例1〜4)ポリブチ
レンテレフタレ−ト(PBT:ジュラネックス400F
P、ポリプラスチックス株式会社製)と、表−1に示し
た種類および割合の脂環式エポキシ基含有共重合体およ
びエチレン系共重合体をドライブレンドし、250℃に
設定したスクリュ−押出機により溶融混合し、さらに2
50℃に設定した射出成形機を使用して成形を行った。
サンプル片はASTMの1号ダンベルおよび1/4イン
チ幅のアイゾット衝撃試験片を作成した。これらの試験
片について23℃および−40℃の雰囲気下における引
張試験およびノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。
試験結果を表−1に示す。
【0042】(実施例9〜12、比較例5〜9)ポリブ
チレンテレフタレ−ト(PBT:ジュラネックス400
FP、ポリプラスチックス株式会社製)と、表−2に示
した種類および割合のポリカ−ボネ−トおよび脂環式エ
チレン基含有共重合体をドライブレンドし、250℃に
設定したスクリュ−押出機により溶融混合し、さらに2
50℃に設定した射出成形機を使用して成形を行った。
サンプル片はASTMの1号ダンベルおよび1/4イン
チ幅のアイゾット衝撃試験片を作成した。これらの試験
片について23℃の雰囲気下における引張試験およびノ
ッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。一方、作成した
試験片を150℃のオ−ブン中で500時間熱処理した
後、23℃の雰囲気下において、引張試験およびノッチ
付きアイゾット衝撃試験を行った。またスクリュー押出
機により溶融混合したものを高化式フローテスター(島
津製作所製)を使用して、250℃で溶融粘度を測定し
た。試験結果を表−2に示す。
【0043】(実施例13〜20、比較例10〜15)
相対粘度1.35のポリエチレンテレフタレ−ト100
重量部に対して脂環式エポシキ基含有共重合体、結晶
核剤、ガラス繊維を表−3に示した割合で配合ブレンド
し、275℃に設定したスクリュ−押出機により溶融混
合を行いペレット化した。得られた組成物について、D
SC(理学製、DSC−8230)を用いて結晶化温度
を測定した。DSC測定条件:窒素気流中、室温から昇
温速度20℃/分で昇温し、300℃に10分間保持
し、20℃/分の降温速度で結晶化温度を求めた。結晶
化温度の高いことおよびピ−ク曲線がシャ−プなことは
結晶化速度が速いことを示す。
【0044】
【発明の効果】本件各発明の熱可塑性樹脂組成物は射出
成形、押出成形などの通常の方法で容易に成形すること
が可能であり、得られた成形品は優れた機械的性質を発
揮する。また、各発明に応じて、低温耐衝撃性の向上、
成形サイクルの効果的な短縮が達成される。さらに、本
発明は熱安定性の良好な共重合体(B)を用いるので、
従来問題があったエポキシ基含有共重合体の分解もな
く、着色程度の小さい樹脂組成物、更には成形品が得ら
れる。
【表1】
【表2】
【表3】

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ポリエステル樹脂(A)100重
    量部に対し、α−オレフィン(b1)、脂環式エポキシ
    基を有する不飽和単量体(b2(ただし、グリシジル
    化合物は除く)および任意成分としてエチレン系不飽和
    単量体(b3)をラジカル重合触媒を用いて共重合させ
    ることにより得られる共重合体(B)1〜80重量部を
    配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 芳香族ポリエステル樹脂(A)100重
    量部に対し、α−オレフィン(b1)、脂環式エポキシ
    基を有する不飽和単量体(b2(ただし、グリシジル
    化合物は除く)および任意成分としてエチレン系不飽和
    単量体(b3)をラジカル重合触媒を用いて共重合させ
    ることにより得られる共重合体(B)1〜50重量部、
    およびエチレン40〜99モル%と炭素数3以上のα−
    オレフィン60〜1モル%からなるエチレン系共重合体
    (C)1〜50重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 芳香族ポリエステル樹脂(A)95〜3
    0重量%および芳香族ポリカーボネート樹脂(D)5〜
    70重量%(両者の合計100重量%)からなる樹脂1
    00重量部に対し、α−オレフィン(b1)、脂環式エ
    ポキシ基を有する不飽和単量体(b2(ただし、グリ
    シジル化合物は除く)および任意成分としてエチレン系
    不飽和単量体(b3)をラジカル重合触媒を用いて共重
    合させることにより得られる共重合体(B)1〜80重
    量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 芳香族ポリエステル樹脂(A)100重
    量部に対し、α−オレフィン(b1)、脂環式エポキシ
    基を有する不飽和単量体(b2(ただし、グリシジル
    化合物は除く)および任意成分としてエチレン系不飽和
    単量体(b3)をラジカル重合触媒を用いて共重合させ
    ることにより得られる共重合体(B)0.5〜30重量
    部、およびステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バリ
    ウム、エポキシステアリン酸ナトリウム、エポキシステ
    アリン酸バリウム、テレフタル酸モノメチルモノナトリ
    ウム、イソフタル酸モノメチルモノナトリウムおよびエ
    チレン−α,β−不飽和酸共重合体ナトリウム塩からな
    る群から選ばれる化合物(E)0.1〜5重量部を配合
    してなる熱可塑性樹脂組成物。
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