JP3287531B2 - 義歯固定用磁性アタッチメントおよびその製造方法 - Google Patents
義歯固定用磁性アタッチメントおよびその製造方法Info
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いて、義歯の固定に使用される磁性アタッチメントに関
する。
組立体とキーパーとから構成される。このうち磁石組立
体は、永久磁石と、これから発生する磁束をキーパー側
に誘導するヨークを基本的構成部品としている。これ
を、軟磁性材料からなるキーパーに対向させ、磁石組立
体とキーパー間の吸引力によって、義歯を固定するもの
である。従来、図2のように、磁石1、ヨーク10、キ
ーパー11から構成される種々の形式のものが検討され
ていた(木内ほか「閉磁路型磁性アタッチメントの吸引
力解析」電気学会研究会資料、SA-84-10(1984)、図2を
引用)。これらの形式のうち、カップヨーク型といわれ
る図2(a)の形式の磁性アタッチメントは図3に示す
構造が主流となっている。図3は、磁石1を内包するカ
ップヨーク2がプレート4により密封されている磁石組
立体5とキーパー3とから構成される磁性アタッチメン
トであり、磁石組立体外側のキーパー3に対向するプレ
ート4部分を同心構造とし、中央部は磁性材料からなる
ディスクヨーク42、また周辺部は非磁性材料からなるシ
ールドリング41とし、接合部をそれぞれ溶接により密封
した構造である。磁石からの磁束(図中、矢印で示す)
は点線の経路を通って流れるが、磁束の大部分は、プレ
ート4のうち磁性材料からなるディスクヨーク42を通
り、吸引力のほとんどはこの部分と、カップヨーク2、
キーパー3の対向部分で発生する。シールドリング41と
キーパー3の対向部は、この部分の磁気抵抗が大きいた
め通過磁束も少なく、吸引力をほとんど生じない。
ントは実用上十分な吸引力を示し現在広く使用されてい
るが、アタッチメントに対する小型化、大吸引力化の要
望がより強まってくると、磁気回路の一層の効率化が望
ましいことは明らかであるが、図3の磁性アタッチメン
トはシールドリング41の大きさを小さくしにくい。有限
要素法を用いた検討によれば、シールドリングが非磁性
であり、この部分の磁気抵抗が高いために、磁石1のう
ち図中にPで示した部分では、磁石が十分な磁束を発生
していないことが示される。したがって総体的に効率が
低下することになる。これを避けるには、シールドリン
グの横方向の寸法Wをできるだけ小さくすることが望ま
しい。ところが、この横方向寸法を小さくしたアタッチ
メントを試作してみると、かえって吸引力が低下するこ
とが明きらかとなった。すなわち、横方向寸法W0.0
5mm〜0.4mmについて検討をした結果、0.25
mm付近でピークがあり、0.2mm以下だとむしろ吸
引力が低下する傾向にあることが示されている。図4は
この理由を説明したものである。耐食性を確保するため
に、組立完了後カップヨーク2、シールドリング41、デ
ィスクヨーク42の接合部はレーザービーム溶接される
が、このとき、互いの材料が溶け込んだ溶接部、すなわ
ちビード部は磁性をもった状態となり、磁路の短絡部と
なることが判明した(奥野ほか「カップヨーク型磁性ア
タッチメントにおけるシールドリングの改良について」
日本磁気歯科学会雑誌 2巻 1号 (1993)に詳細が報
告されている。)。すなわち、シールドリング41の横方
向寸法は、溶接後ビード部がつながらない程度に広くと
る必要があるが、これが磁気回路の効率化を妨げてい
た。したがって、本発明は、義歯固定用磁性アタッチメ
ントの永久磁石組立体の非磁性部を小さくし、磁気回路
の効率化を図ることを目的とする。
を解決する手段として、はじめは、溶接後にビード部が
磁性をもたないよう、この部分の材料の組成を制御する
ことを考えた。しかし結局、これとは逆に、シールドリ
ング41を廃止し、カップヨーク2、プレート4を直接接
合させること、さらに、溶接部に、溶接後この部分が非
磁性となるような他部材をあらかじめ介在させておくこ
とに想到した。すなわち、本発明は、一方に開口部を有
する軟磁性材料からなるカップヨーク内部に磁石を収納
し、カップヨーク開口部を軟磁性材料からなるプレート
で密封した磁石組立体を、軟磁性材料からなるキーパー
と対向させ、磁石組立体とキーパーとの吸引力により義
歯を固定するように構成した磁性アタッチメントであっ
て、前記磁石組立体のプレートとカップヨークとの溶接
部が非磁性またはプレートより磁性が低下していること
を特徴とする。また、本発明は、一方に開口部を有する
軟磁性材料からなるカップヨーク内部に磁石を収納し、
カップヨーク開口部をプレートで密封した磁石組立体
を、軟磁性材料からなるキーパーと対向させ、磁石組立
体とキーパーとの吸引力により義歯を固定するように構
成した磁性アタッチメントの製造方法であって、前記プ
レートを軟磁性材料とし、前記カップヨークとの境界面
に他部材を介在させ、前記カップヨークと密封溶接する
際に、前記他部材が溶接によりとけ込み非磁性または磁
性が低下した溶接部となる構成したことを特徴とする。
介在させる他部材としては、カップヨーク、プレート等
が磁性ステンレス鋼であること、溶接性、人体への影響
などから、ステンレス鋼の成分元素であって、磁性ステ
ンレスの非磁性化に有効なNiを用いることとした。ま
た介在させる方法としては、その材料で円柱状のプレー
ト材料にメッキを施し、この円柱をスライスしてプレー
トとすることを考えた。また、Niは単独では弱いなが
らも磁性を持つことが予想されるので、溶接時にカップ
ヨーク、プレート、Niの溶け込んだビード部の深さは
プレートの厚さいっぱいまでできるだけ奥に達している
ことが必要である。この場合、ビードの幅はキーパーと
対向する側において200〜400μm、磁石組立体内
部側で100〜200μmとなる。Niめっきの厚さは
溶接後ビード部分の非磁性化または低下が十分行われる
ためには少なくとも15μmは必要であり、またあまり
厚すぎて上記ビード幅に近いレベルになると、ヨーク材
料の溶け込みが減って封止の効果もへることから、50
μmを超えないことが望ましい。ビードの深さが浅い場
合、溶けないで残ったNiメッキ層を通して磁束がプレ
ート、カップヨーク間で漏洩するが、有限要素法を用い
た計算によると、この漏洩磁束量が総磁束量の10%を
超えると、吸引力が減少し、本発明の構造を採用する意
味の無くなることがわかった。したがって、漏洩磁束が
総磁束量の10%以下となるようビードを形成すること
が望ましい。また、プレートおよび/またはカップヨー
クとして、組織的に磁性部と非磁性部を形成できる複合
磁性材料を用いることにより、プレートとカップヨーク
との境界面にNi等の他部材を配置せずに溶接部を非磁
性化することもできる。すなわち、プレートおよび/ま
たはカップヨークとしてマルテンサイト系ステンレスに
焼鈍を行ってフェライト組織として十分に高い強磁性と
した部材を用い、溶接時の加熱により溶接部をオーステ
ナイトとし急冷することにより、該溶接部をオーステナ
イト化し、非磁性または十分に低い磁性を得ればよい。
また、非磁性または磁性の低い部分の幅は、加熱急冷を
施すことにより、所望の幅を得ることができる。
性部の大きさを最小とすることができ、磁気回路の効率
を最大として、満足出来る吸引力を得ることが可能とな
る。かつ、溶接はカップヨーク、シールドリング、ディ
スクヨーク間についてそれぞれ行う必要がなくなり、カ
ップヨークとプレートのみを溶接すればよく、構成の簡
素化、工数の低減が同時に実現できる。
固定用磁性アタッチメントの各部の構造寸法を示す。磁
石1には最大エネルギー積 40MGOe の Nd-Fe-B系永久磁
石を使用した。カップヨーク2、プレート4およびキー
パー3には、磁束密度 B8000=1.5Tの SUS 430 ステン
レス鋼を使用し、またプレート4は直径 2.9 mm の丸棒
の表面に、厚さ約 15 μm の、Ni メッキを施したもの
をスライスして作成した。図1において、43 は Ni メ
ッキ部分を示す。スライス厚さは 0.2 mm である。図1
(b)にカップヨーク2とプレート4をレーザー溶接し
た義歯固定用磁性アタッチメントを示すが、ビード部
(溶接部)6はキーパーと対向する側で幅約0.25m
m、内側で約0.12mm、深さ約0.2mm、で、ビ
ード部6先端はプレート内部まで達していた。吸引力を
測定した結果、Ni メッキを施したサンプル(10 個)
の平均値は 820gfであった。従来の構成である図3の外
形寸法をもったアタッチメントの吸引力は平均 720 gf
であるから、本発明により吸引力を著しく向上できるこ
とがわかる。
造容易な構成で、十分な信頼性を有しかつ吸引力特性も
満足できる磁性アタッチメントを提供することが可能で
ある。
構造、寸法を示す図である。 (b)本発明義歯固定用磁性アタッチメントの構造、寸
法を示す図である。
図である。 (b)従来の磁性アタッチメントの形式を示す図であ
る。 (c)従来の磁性アタッチメントの形式を示す図であ
る。 (d)従来の磁性アタッチメントの形式を示す図であ
る。 (e)従来の磁性アタッチメントの形式を示す図であ
る。 (f)従来の磁性アタッチメントの形式を示す図であ
る。
に磁性材料、周辺部に非磁性材料を用いた構造の、従来
のカップヨーク型磁性アタッチメントを示す図である。
て、非磁性シールドリングの横方向寸法を小さくした場
合の、問題点を示す図である。
ート、5 磁石組立体 6 ビード部(溶接部)、10 ヨーク、41 シール
ドリング(プレートの非磁性材料部分)、42 ディス
クヨーク(プレートの磁性材料部分)、43プレートの
Ni メッキを施した部分。
Claims (7)
- 【請求項1】 一方に開口部を有する軟磁性材料からな
るカップヨーク内部に磁石を収納し、カップヨーク開口
部を軟磁性材料からなるプレートで密封溶接した磁石組
立体を、軟磁性材料からなるキーパーと対向させ、磁石
組立体とキーパーとの吸引力により義歯を固定するよう
に構成した磁性アタッチメントであって、前記磁石組立
体のプレートとカップヨークとの溶接部が非磁性または
プレートより磁性が低下していることを特徴とする義歯
固定用磁性アタッチメント。 - 【請求項2】 非磁性またはプレートより磁性が低下し
た溶接部のキーパー対向面の幅が200〜400μmで
ある請求項1に記載の義歯固定用磁性アタッチメント。 - 【請求項3】 非磁性またはプレートより磁性が低下し
た溶接部の幅が磁石組立体内部側で100〜200μm
である請求項1または2に記載の義歯固定用磁性アタッ
チメント。 - 【請求項4】 漏洩磁束が総磁束量の10%以下である
請求項1ないし3のいづれかに記載の義歯固定用磁性ア
タッチメント。 - 【請求項5】 一方に開口部を有する軟磁性材料からな
るカップヨーク内部に磁石を収納し、カップヨーク開口
部をプレートで密封した磁石組立体を、軟磁性材料から
なるキーパーと対向させ、磁石組立体とキーパーとの吸
引力により義歯を固定するように構成した磁性アタッチ
メントの製造方法であって、前記プレートを軟磁性材料
とし、前記カップヨークとの境界面に他部材を介在さ
せ、前記カップヨークと密封溶接する際に、前記他部材
が溶接によりとけ込み非磁性または磁性が低下した溶接
部となるよう構成したことを特徴とする義歯固定用磁性
アタッチメントの製造方法。 - 【請求項6】 カップヨーク、プレートは磁性ステンレ
ス材料であり、他材料がNiである請求項5の義歯固定
用磁性アタッチメントの製造方法。 - 【請求項7】 前記他部材の溶接前の厚さが15μm〜
50μmである請求項5または6に記載の義歯固定用磁
性アタッチメントの製造方法。
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JP32023995A JP3287531B2 (ja) | 1995-12-08 | 1995-12-08 | 義歯固定用磁性アタッチメントおよびその製造方法 |
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JPH09154859A JPH09154859A (ja) | 1997-06-17 |
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JP2006081700A (ja) * | 2004-09-16 | 2006-03-30 | Neomax Co Ltd | 磁性アタッチメント |
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1995
- 1995-12-08 JP JP32023995A patent/JP3287531B2/ja not_active Expired - Lifetime
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