JP3282501B2 - 耐エッジクリープ性に優れた塗装Al−Zn系合金めっき鋼板 - Google Patents

耐エッジクリープ性に優れた塗装Al−Zn系合金めっき鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐エッジクリープ
性に優れた塗装Al−Zn系合金めっき鋼板に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】溶融Al−Zn系合金めっき鋼板は、ア
ルミニウムの有する耐熱性、耐食性や亜鉛の有する犠牲
防食性を合わせ持つ防錆鋼板で、従来の溶融亜鉛めっき
鋼板に比べて、無塗装で数倍から十数倍の耐食性を有す
ることは、例えば特公昭46−7161号公報に記載さ
れるAlを25〜70wt%含むAl−Zn系合金めっ
き鋼板に見られるように公知である。
【0003】従って、Al−Zn系合金めっき鋼板は、
耐食性に優れるという特徴を活かして、無塗装のまま、
あるいは、美観付与を目的として、さらに塗装を施した
後、建屋の屋根材や壁材を主体に加工されて使用されて
いる。
【0004】通常、亜鉛めっき鋼板の塗装はロールコー
ターまたはカーテンフローコーターを用いて、乾燥膜厚
で約2〜10μmの下塗塗料を塗装・焼付乾燥後、乾燥
膜厚で5〜40μmの上塗塗料を塗装・焼付乾燥させた
2コート・2ベークの塗装系が用いられている。
【0005】Al−Zn系合金めっき鋼板についても、
亜鉛めっき鋼板と同様の塗装系によっている。しかし、
塗装されたAl−Zn系合金めっき鋼板は、腐食性雰囲
気下において、鋼板の切断部(以下、端面という)から
の塗膜ふくれ(以下、エッジクリープという)が、塗装
された溶融亜鉛めっき鋼板の場合に比較して著しく大き
く、Al−Zn系合金めっき鋼板の優れた耐食性を充分
に活かせないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑
みて成されたものであって、鋼板の切断部よりエッジク
リープが生じ難い、すなわち耐エッジクリープ性に優れ
た塗装Al−Zn系合金めっき鋼板を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】塗装Al−Zn系合金め
っき鋼板が塗装亜鉛めっき鋼板よりエッジクリープが発
生しやすい理由は、以下のように考えられる。
【0008】塗装鋼板のエッジクリープは、腐食性雰囲
気下においてめっき層の亜鉛と端面の鉄で電池を形成し
腐食し、生じた水素ガスや腐食生成物で塗膜が押し上げ
られるために生じると考えられる。
【0009】塗装Al−Zn系合金めっき鋼板のAl−
Zn系合金めっき層は、アルミニウムと亜鉛が均一に分
散せず、アルミニウムが亜鉛よりも多く含まれている部
分(アルミリッチ部)と、逆に亜鉛がアルミニウムより
も多く含まれている部分(亜鉛リッチ部)が偏在し、か
つ亜鉛リッチ部があたかも石垣状に積層したアルミリッ
チ部の間隙を埋める構造になっている。そのため、腐食
性雰囲気下では、亜鉛リッチ部がアルミリッチ部に優先
して局所的に腐食消失して、端面から内部に及ぶ比較的
広い範囲にわたって腐食が虫食い状に進み、腐食が進ん
だ領域で塗膜が押し上げられると考えられる。
【0010】一方、塗装亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき
層の腐食が端面から全面的かつ均一に進行するため、腐
食の起こる範囲が比較的狭い領域に限られるので、塗膜
が押し上げられることが少ないと考えられる。本発明者
らは、前記したように、めっき層の亜鉛リッチ部の存在
状態が塗装鋼板の端面の品質に大きく影響する点に着目
して、めっき層の亜鉛リッチ部の存在状態と塗装鋼板の
端面の品質との関係について鋭意検討した。
【0011】その結果、めっき層の亜鉛リッチ部の偏析
を防止してめっき層を均一化すること、すなわちめっき
層組織をα相(アルミニウムに亜鉛が固溶した相)マト
リックス中にβ相(亜鉛にアルミニウムが固溶した相)
を微細に分散させた組織にすることによって、耐エッジ
クリープ性に優れた塗装鋼板が得られることを知見し
た。
【0012】本発明はこの知見に基づくものであり、そ
の要旨は、Alを20wt%以上75wt%以下含むA
l−Zn系合金めっき層を有する塗装Al−Zn系合金
めっき鋼板であって、めっき層中のβ相をα相マトリッ
クス中に微細分散したAl−Zn系合金めっき鋼板を基
板とした塗装鋼板である。
【0013】本発明の塗装Al−Zn系合金めっき鋼板
のめっき層組織およびその作用、限定理由について、以
下に説明する。先ず、本発明の塗装Al−Zn系合金め
っき鋼板のめっき層の状態および腐食性雰囲気下におけ
るめっき層の腐食挙動について、従来技術による塗装A
l−Zn系合金めっき鋼板のめっき層の場合と対比し
て、図1〜図3を用いて説明する。
【0014】図2は、従来技術のAl−Zn系合金めっ
き鋼板のめっき層の断面組織を示す走査型電子顕微鏡写
真(以下、SEM写真)である。めっき層の成分組成
は、Al:55wt%、Si:1.5wt%、残部がZ
nと不可避不純物である。図2において、1はAl−Z
n系合金めっき層、2はAl−Zn系合金めっき鋼板、
3はアルミリッチ部、4は亜鉛リッチ部、5はSi相、
6は界面合金相、7は母材鋼板である。
【0015】また、図1は本発明のAl−Zn系合金め
っき鋼板のめっき層の断面組織を示すSEM写真であ
る。めっき層の成分組成が、Al:55wt%、Si:
1.5wt%、残部はZnと不可避不純物からなるAl
−Zn系合金めっき鋼板を、バッチ焼鈍炉において大気
雰囲気中で350℃で24時間加熱保持後、200℃ま
で約1℃/秒で冷却し、熱処理して得られたものであ
る。図1において、8の黒または黒灰色部はα相、9の
白色部はβ相である。
【0016】また、図3は、腐食性雰囲気下における塗
装Al−Zn系合金めっき鋼板の腐食挙動を説明するた
めの図である。図3において、(A)は従来技術の塗装
Al−Zn系合金めっき鋼板の断面組織の模式図、
(B)はこの鋼板の腐食性雰囲気下における腐食状態を
示す模式図であり、また、(C)は本発明の塗装Al−
Zn系合金めっき鋼板の断面組織の模式図、(D)はこ
の鋼板の腐食性雰囲気下における腐食状態を示す模式図
である。図3の1〜は、図1または図2の同じ符号に
対応しており、また10は化成処理層、11は塗膜層、
12は腐食生成物、13は端面である。
【0017】従来技術の塗装Al−Zn系合金めっき鋼
板のめっき層組織は、図2や図3(A)に見られるよう
に、アルミリッチ部3と亜鉛リッチ部4が偏在し、かつ
亜鉛リッチ部4があたかも石垣状に積層したアルミリッ
チ部3の間隙を埋めるような構造になっている。腐食性
雰囲気下では、図3(B)に示すように、端面13より
亜鉛リッチ部4が優先的に腐食し、端面より離れためっ
き層の内部まで腐食が進行する。鋼板の切断端部を犠牲
防食するので、端面からの赤錆の発生が抑制されるが、
腐食が進行した領域で発生した水素ガスや腐食生成物に
より塗膜が押し上げられるため、図に示すように塗膜が
凹凸状態になり、エッジクリープ幅が比較的広くなる。
【0018】一方、本発明の塗装Al−Zn系合金めっ
き鋼板のめっき層組織は、図1や図3(C)に見られる
ように、β相9がα相マトリックス8中に微細に分散し
た組織を呈している。腐食性雰囲気下では、図3(D)
に示すように、端面13から全体的に均一に腐食が進行
するため、前記した従来技術の塗装鋼板に見られるよう
な端面より離れためっき層の内部で腐食が起こらないの
で、エッジクリープ幅が比較的狭くなる。また、鋼板の
切断端部は犠牲防食されるので、端面からの赤錆発生が
抑制される。
【0019】このように、亜鉛リッチ部をβ相、アルミ
リッチ部をα相として、β相をα相マトリックス中に微
細に分散させることにより、従来技術の塗装Al−Zn
系合金めっき鋼板の問題点である端面からのエッジクリ
ープを抑制することができる。
【0020】β相の分散状態は図1に観察されるとおり
であり、β相は出来るだけ均一に分散させるのが好まし
い。また、β相の粒径は0.01〜1μmが好ましい。
【0021】めっき層中にAlを20wt%以上75w
t%以下を含む必要がある。Alが75wt%を超える
場合は母材鋼板に対する犠牲防食性が不充分になり、端
面から赤錆が発生しやすく耐食性が低下する。また、A
lが20wt%未満の場合、Alの耐食性が充分に発揮
できなくなり、β相が短時間で腐食し消失してしまうた
め、端面に赤錆が発生しやすく長期にわたる耐食性が得
られない。
【0022】なお、めっき層の性状を調整するために、
Al−Zn系合金めっきに、Si、Fe、Ti、Sr、
V、Mg、Cu、Sn、Cr等の成分元素を1種類以上
添加する場合がある。本発明のZn−Al系合金めっき
には、前記目的のための成分元素を10wt%を超えな
い範囲で添加したものを含む。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の塗装Al−Zn系合金め
っき鋼板の母材となる鋼板に特に制限はなく、常法によ
り製造した鋼板を使用することができる。
【0024】本発明の塗装Al−Zn系合金めっき鋼板
は、常用される溶融亜鉛めっき設備を利用して、溶融め
っき浴成分をAlを20wt%以上75wt%以下含む
溶融Al−Zn系合金めっき浴により、常法により鋼板
に浸漬めっきを施した後、めっき層の均一化処理を行
い、めっき層のAlリッチ相からβ相を析出させて、め
っき層をα相のマトリックスとこの中にβ相を微細に分
散した組織とすることにより得られる。
【0025】めっき層の均一化処理としては、例えば焼
鈍炉でめっき層を熱処理し、引き続いて炉内で徐冷する
方法によることができる。焼鈍炉はバッチ焼鈍炉でも連
続焼鈍炉でもよく、めっき鋼板を焼鈍できる炉であれば
その設備を特に限定するものではない。可能なら、めっ
きラインでめっきに引き続き行う均一化処理であっても
よい。また、熱処理の雰囲気も特に限定するものではな
い。
【0026】必要に応じて調質圧延を施すことができ
る。調質圧延は、熱処理前後の一方または両方で施して
もよい。なお、必要に応じて、めっき層の性状を調整す
るために、Si、Fe、Ti、Sr、V、Mg、Cu、
Sn、Cr等の成分元素を10wt%を超えない範囲で
めっき浴に添加してもよい。
【0027】次いで、均一化処理を行った鋼板に常法に
より塗装を施して本発明の塗装鋼板を得る。通常、均一
化処理後のめっき鋼板に、脱脂処理、必要に応じて更に
酸洗を施し、次いでクロメート処理やリン酸塩処理など
の化成処理を施して化成処理層を形成した後、塗装を施
す。
【0028】塗料は前記で形成した化成処理層の上に直
接塗装することも可能であるが、耐食性や塗膜密着性を
向上させるために、塗装鋼板に通常用いられる下塗り塗
料、すなわちプライマーを塗装して焼き付けた上に上塗
り塗料を塗装することが望ましい。また、下塗り塗料に
は耐食性や耐磨耗性を向上させるために防錆顔料または
防錆顔料+骨材を含有させることが好ましい。
【0029】乾燥塗膜厚は、通常5〜40μmである。
塗膜厚が5μm未満では、塗膜中の骨材の保持が困難に
なったり、塗膜の耐候性低下を招くので好ましくない。
一方、40μmを超えると、塗装作業時の低下や塗膜外
観の低下を招き、さらにコストの上昇を招くため好まし
くない。
【0030】塗装方法に特に制限はなく、一般に行われ
ているロールコーター法、カーテンフローコーター法、
スプレー塗装、はけ塗り等の塗装方法を適用できるが、
塗装鋼板の塗装においてはロールコーター法が最も一般
的である。
【0031】塗料組成物を塗布した後の焼付処理は、3
0〜180秒間加熱して鋼板温度を200℃以上に到達
させることによって行われる。焼付時間30秒未満では
樹脂成分の溶融硬化が不十分であり、一方、180秒を
超えると下塗り塗料成分を含めた塗料の熱劣化が始ま
り、いずれの場合にも塗料本来の性能が発揮されなくな
るため好ましくない。焼付時の加熱方式については特別
な制限はなく、熱風加熱方式、高周波加熱方式等の方法
を適用できる。
【0032】
【実施例】板厚0.5mmの低炭素アルミキルド鋼板を
母材鋼板として、溶融亜鉛めっき設備で、表1に記載し
たAl重量%、およびこのAl量の3%のSiと残部が
Zn及び不可避不純物からなるめっき浴で合金めっきを
行い、めっき付着量を片面で約75g/m2 のAl−Z
n系合金めっきを行った。
【0033】めっき後、No.1〜No.5、No.7
〜No.11については、バッチ焼鈍炉において大気雰
囲気中で350℃で24時間加熱保持後、200℃まで
約1℃/秒で冷却し、熱処理した。また、比較のため
に、No.6およびNo.12についてはめっき後の熱
処理を行わなかった。
【0034】前記で得ためっき鋼板に塗布型クロメート
処理を付着量が金属クロム換算で30mg/m2 になる
ように施し、次いで、下塗り塗料としてエポキシ樹脂系
塗料を乾燥塗膜厚は5μmになるように塗布した後、約
200℃で60秒間焼き付け、次いで、上塗り塗料のベ
ース塗料として、ポリエステル樹脂:メラミン樹脂=
8:2(重量比)のポリエステル系塗料(日本油脂
(株)製プレカラーNo.HD0030ブラウン)、ま
たはポリフッ化ビニリデン樹脂:アクリル樹脂=8:2
(重量比)のフッ素樹脂系塗料(日本油脂(株)製プレ
カラーNo.8800ブラウン)を用いて塗装を施し
た。
【0035】
【表1】
【0036】得られた塗装Al−Zn系合金めっき鋼板
の任意の位置から長さ150mm、幅70mmの試験片
を採取し、この試験片の三辺のエッジと裏面をテープで
シールした後、JIS−Z2371に規定される塩水噴
霧試験を所定時間行った後、耐エッジクリープ性、端面
耐食性を調査した。
【0037】耐エッジクリープ性は、シールをしていな
い端面からの塗膜のふくれ幅により、端面耐食性は、端
面の赤錆発生状況を目視観察して、赤錆発生の認められ
ないものを「○」、赤錆が発生したものを「×」と評価
した。
【0038】また、めっき層組織を調査して、めっき層
組織が、図1に見られるようにα相マトリックス中に微
細分散したβ相の組織となっているものを「○」、図2
に見られるようにアルミリッチ部と亜鉛リッチ部が偏在
した組織となっているものを「×」とした。耐エッジク
リープ性、端面耐食性、めっき層組織の調査結果を表1
に併せて示す。
【0039】本発明例は、端面耐食性、耐エッジクリー
プ性がともに優れている。β相が微細に分散していない
従来例のNo.6、No.12は、端面耐食性は良好で
あるが、耐エッジクリープ性が劣る。Al含有量が、本
発明範囲を外れる比較例のNo.1、No.5、No.
7、No.11は、耐エッジクリープ性は良好である
が、端面耐食性が劣る。
【0040】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、従来の塗装Al−Zn系合金めっき鋼板の問題点で
あった耐エッジクリープ性を大幅に改善することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のAl−Zn系合金めっき鋼板のめっき
層組織を示す図面代用写真。
【図2】従来技術のAl−Zn系合金めっき鋼板のめっ
き層組織を示す図面代用写真。
【図3】塗装Al−Zn系合金めっき鋼板の端面での腐
食挙動を示す図。
【符号の説明】
1 Al−Zn系合金めっき層 2 Al−Zn系合金めっき鋼板 3 アルミリッチ部 4 亜鉛リッチ部 5 Si相 6 界面合金相 7 母材鋼板 8 α相 9 β相 10 化成処理層 11 塗膜層(下塗り塗膜層+上塗り塗膜層) 12 腐食生成物 13 端面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 安秀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Alを20wt%以上75wt%以下含
    むAl−Zn系合金めっき層を有する塗装Al−Zn系
    合金めっき鋼板であって、前記めっき層の組織がα相マ
    トリックスとその中に微細分散したβ相からなることを
    特徴とする耐エッジクリープ性に優れた塗装Al−Zn
    系合金めっき鋼板。
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