JP3280017B2 - 珪酸カルシウム焼結体 - Google Patents

珪酸カルシウム焼結体

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Description

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野) この発明は珪酸カルシウム焼結体に関し、特に曲げ強
度、硬度などの機械的強度の極めて優れた珪酸カルシウ
ム焼結体に係わるものである。 (従来の技術) ゾノトライトその他の珪酸カルシウム系材料は、不燃
性、耐火性、保温性、加工性などに優れ、しかも比較的
低価格であるためにこれまでも建材、工業材料などに広
く使用されているが、その用途はなお限られていたのが
実状であった。 即ち、従来の珪酸カルシウムは、主に板材、パイル、
耐火被覆材、保温材などとして使用され、曲げ強度など
の機械的強度の点で、さらに付加価値の高い製品、例え
ば、成形型、耐熱構造材の適用といった高度利用の面で
はなお不十分であった。 このため、珪酸カルシウム材料の機械的強度を向上さ
せるための研究もなされ、それに関するいくつかの提案
もすでになされている。 本願発明者も、高比重の成形体を高温で焼結すること
により、加工性を保持しつつ耐熱性、高強度の珪酸カル
シウム成形体とし、もって珪酸カルシウム材を従来では
考えられなかった成形用型に適用できるような提案をお
こなった(特開平1−164767号)。さらに、本願の発明
者は、珪酸カルシウム材料を熱間で加圧焼成すること
で、低比重の珪酸カルシウム成形体から高比重の珪酸カ
ルシウム焼結体とし、耐熱性および切削性を有したまま
で高強度の珪酸カルシウム焼結体を得る方法を提案した
(特開平1−270569号)。 また、別に特開昭63−134554号、特開昭64−79066
号、特開平1−317165号などには、ガラス成分、繊維物
質などを添加し比重2.5程度で曲げ強度600〜1000kgf/cm
2が得られるよう大幅に改善した技術が開示されてい
る。 しかしながら、これらの技術ではいずれも高比重の焼
結体とすることにより上記の強度向上を得るもので、焼
結体の比重との関係でみると、必ずしも満足すべき強度
の向上が達成されていたとすることは出来なかった。 また、これらに開示されているものはアルカリを含む
フラックス成分が添加されているので、珪酸カルシウム
が有する本来の耐熱性が犠牲にされ、900℃〜1000℃前
後の耐熱性が限度という問題があった。従って、こうし
た技術によっては、高強度の点では満足し得ても、ウォ
ラストナイトの耐熱性、例えば焼結温度にも依存する
が、βウォラストナイトならば1100℃、αウォラストナ
イトならば1200℃の耐熱性を得ることは出来なかった。 (発明が解決しようとする課題) この発明は、比重との関係においても高い機械的強度
を有し、耐熱性、切削性を損なうことのない珪酸カルシ
ウム焼結体を得ようとするものである。 (課題を解決するための手段) 本発明は、ジルコニアとウォラストナイトとCa3ZrSi2
O9の副生成物とからなり、ジルコニアを1〜35重量%含
み、比重が2.23以下、曲げ強度が590kgf/cm2以上で、し
かも荷重5kgfで保持時間15秒のビッカース硬度が180以
上であることを特徴とする珪酸カルシウム焼結体であ
る。以下に、この発明をさらに説明する。 この発明になる珪酸カルシウム焼結体は、ジルコニア
とウォラストナイトからなり、ジルコニアが1〜35重量
%含まれているものである。この発明においては、混合
されたジルコニアが、焼成時、ウォラストナイト結晶の
粒成長を抑制し、ウォラストナイト結晶の粒径を微細化
し、結果的に緻密で高強度の珪酸カルシウム焼結体が得
られるようにしたものである。この点についてさらに説
明すれば以下の通りである。 珪酸カルシウム結晶は、焼成時、高温状態における結
晶粒子の物質移動により著しい粒成長を引き起こす。例
えば、ゾノトライトは、1000〜1200℃の温度範囲におい
て、多数の針状結晶が凝集して徐々に太く短く形態変化
し、さらに頸部成長が生じ針状結晶が柱状又は板状結晶
にまで成長する。その際、結晶体は結晶成長に伴う体積
収縮を起こし高比重となる。 一般には、焼結体比重が大である方が高密度となる
が、同一比重の焼結体で見た場合では、焼結体の結晶粒
がより小さい方が高強度の焼結体が得られることが認め
られる。これは焼結過程で結晶が焼結して大きな結晶が
出来ると、個々の結晶の間隔を形成する空孔が欠陥とな
って機械的強度が劣化するためである。こうした点を改
善するには、結晶粒が大きく成長するのを回避し多数の
微細結晶を有する焼結体とすることが必要と考えられ
る。 本発明者らは、こうした考察から更に研究を進めた結
果、ジルコニアが珪酸カルシウム結晶の粒成長を抑制す
るのに好適な結晶成長抑制物質であることを見出したも
のである。そして、ジルコニアを1〜35重量%含有させ
た珪酸カルシウム焼結体が、その機械的強度を大幅に向
上することを確認したものである。ここでの主成分のウ
ォラストナイトは、αウォラストナイト、βウォラスト
ナイトのいずれでもよい。このウォラストナイトは、ト
バモライト、ゾノトライトが焼結時転移したものでもよ
い。さらに、これらは初めからαウォラストナイト、β
ウォラストナイトのいずれかであってもよい。 また、ジルコニアの添加量は1重量%以上とし、これ
未満では結晶粒の成長抑制効果が十分でない。また、ジ
ルコニアが35重量%を超えるとビッカース硬度や曲げ強
度などの機械的強度が不十分となり或いは高比重とな
る。その含有量が更に多くなるとジルコニアが凝集した
状態で不均一に分散し、これらが未焼結状態で残存し緻
密化が出来なくなって機械的強度の向上ができなくな
る。機械的強度は、焼結体の比重を2.23以下として、曲
げ硬度が590kgf/cm2以上、ビッカース硬度が180以上
(荷重5kgfで保持時間15秒)が好ましい。これはジルコ
ニアの添加量とともに、焼成温度および保持時間を調整
することで得ることが可能である。ジルコニアの配合比
を焼成温度、焼成時間等の関係でいえば、好ましくは2
〜35重量%である。さらに好ましい範囲は4〜16重量%
で、この場合は、1100℃で5時間での焼成で高強度の焼
結体が得られる。 珪酸カルシウム結晶は天然物を使用してもよく、また
公知な方法で製造して用いることも出来る。例えば、珪
酸原料と石灰原料に水を加え、オートクレーブ中で水熱
反応して製造することが出来る。ここでの珪酸原料とし
ては、硅石、硅砂、シリカフラワー、硅藻土などが使用
でき、また石灰原料としては生石灰、消石灰、セメント
等公知なものがいずれも使用出来る。 珪酸カルシウム結晶としては、トバモライト、ゾノト
ライト、βウォラストナイト及びαウォラストナイトの
中の1種或いは複数の混合物を用いることが出来る。こ
れらの中でもゾノトライト結晶が好ましい。 この発明の珪酸カルシウム焼結体を得るには、上記の
珪酸カルシウム結晶とジルコニアを混合し成形する。成
形法には特に制限はなく、例えば抄造法、湿式プレス
法、乾式プレス法など公知の方法が使用出来る。珪酸カ
ルシウムとジルコニアの配合比は、珪酸カルシウムが保
有する付着水及び結晶水の量を考慮して決めればよい。
珪酸カルシウムが65重量%未満であると、反対にジルコ
ニアの含有量が多くなり、ビッカース硬度や曲げ強度な
どの機械的強度が不十分となり或いは高比重となる。ま
た、珪酸カルシウムが99%を超えると、逆にジルコニア
の含有量が少なくなり、こうした焼結体は結晶を微細化
することが出来ず、高強度の焼結体を得ることが出来な
い。 次に、この成形体は1100から1200℃で焼成する。焼成
温度が1100℃未満であるとウォラストナイトの焼成に要
する時間が長くなり生産性がわるい。また、1200℃を超
えるとウォラストナイトの融点に近くなるため、局部的
にガラス化が進行し好ましくない。焼成時間はジルコニ
アの添加量、焼成温度、得ようとする機械的強度などと
も関係するが、短時間の場合は5時間、長時間の場合は
250時間のときもあるが、これ以上の場合は経済的でな
い。 上記温度および時間での焼成によって、ウォラストナ
イト結晶は粒成長するが、ウォラストナイト粒子間には
ジルコニアが存在するためにその粒成長は抑制され、そ
の結果、焼結体の組織は微細かつ緻密なものとなり、得
られた珪酸カルシウム焼結体は機械的強度も向上するこ
とになる。なお、成形体を焼成中に加圧するのが好まし
い。ここでの加圧は、1〜50kgf/cm2程度でよい。加圧
方法には、負荷、除荷を繰り返す方法が効果的である。
熱間加圧することにより、成形物は一段と高比重となる
ので、高強度の成形体を容易に得ることが出来る。以下
に、この発明の実施例を説明する。 実施例1〜9 石灰質原料として消石灰を用い、珪酸質原料として硅
石を用い、CaO:SiO2がモル比1:1で混合した原料100重量
部に、水400重量部を加え、これを220℃で水熱合成して
ゾノトライトスラリーを得た。これを120℃で乾燥して
ゾノトライト結晶の乾燥粉末を得た。このゾノトライト
粉末とジルコニア(TZ−0,東洋ソーダ社商品名)を表−
1に示した割合で配合し、エタノールを溶媒にしたボー
ルミルで72時間湿式混合し、その後ロータリーエバポレ
ーターを用いて乾燥した。この粉末をラバープレスで静
水圧成形し比重1.2〜1.3の成形体を得た。次いで昇温速
度1.5℃/分で表−1に示した温度まで昇温したのちそ
の温度で所定時間保持し、その後1.6℃/分降温速度で
冷却した。また、得られた焼結体の比重、曲げ強度及び
ビッカース硬度を測定した結果は表−1に通りであっ
た。なお、曲げ強度はJIS R 1601の3点曲げ試験によっ
て求めた。ビッカース硬度は荷重5kgfで保持時間15秒で
求めた。 比較例1及び2 比較例1及び2は、ジルコニアを配合しないこと以外
は実施例1及び2と同様にして焼結体を得てその物性を
測定した。それらの結果を表−1に示した。実施例1及
び比較例1により得られた焼結体のSEM写真を、それぞ
れ第1図及び第2図に示した。
【表1】 原料珪酸カルシウムは、結晶水を有する(ゾノトライ
トの場合は約3%)ので、原料段階での配合と最終焼結
体での配合比、即ちジルコニアの含有量は若干異なる
が、表−1ではその差を無視した。 焼結体の主な結晶相は、実施例2ではαウォラストナ
イトとジルコニアであり、その他の実施例ではβウォラ
ストナイトとジルコニアであった。また、何れの実施例
でも副生成物Ca3ZrSi2O9が生じたが、量的に少なく高温
で安定であった。各実施例において、各焼成温度におけ
る高温曲げ強度を測定した結果、常温強度とあまり相違
なく良好な耐熱性を示した。また、得られた焼結体はい
ずれも良好な切削性を示した。 (発明の効果) 以上の本願の発明によれば、耐熱性、切削性を損なう
ことなく、従来では考えられなかった高い機械的強度を
有する珪酸カルシウム焼結体を得ることが出来るように
なった。これはウォラストナイトとジルコニアからな
り、ジルコニアがウォラストナイトの粒成長を抑制する
効果により、きわめて微細なウォラストナイト結晶組織
を得ることにより成功したものである。 従って、これにより緻密でかつ欠陥のない高強度珪酸
カルシウム焼結体が得られるようになった。これによっ
て本願の発明は、従来技術では適用できなかった熱間成
形型や各種耐熱構造材等への高度利用を可能にしたもの
である。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明になる焼結体の結晶の構造を示す顕微
鏡写真、第2図は従来技術になる焼結体の結晶の構造を
示す顕微鏡写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島田 昌彦 宮城県仙台市青葉区貝ケ森3―29―5 (72)発明者 遠藤 忠 宮城県名取市名取ケ丘1―4―2 (56)参考文献 特開 昭61−26559(JP,A) 特公 昭38−4350(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジルコニアとウォラストナイトとCa3ZrSi2
    O9の副生成物とからなり、ジルコニアを1〜35重量%含
    み、比重が2.23以下、曲げ強度が590kgf/cm2以上で、し
    かも荷重5kgfで保持時間15秒のビッカース硬度が180以
    上であることを特徴とする珪酸カルシウム焼結体。
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