JP3278275B2 - 地中の鞘管内に本管を挿入する方法 - Google Patents

地中の鞘管内に本管を挿入する方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は地中に鞘管を埋設したの
ち、該鞘管内に水道管やガス管等の本管を挿入する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】適宜間隔を存して掘削形成した両立坑間
の地中に水道管やガス管等の本管を敷設する場合、直
接、推進埋設すると地盤との摺接等によって本管が損傷
し、腐食が生じやすくなって長期の使用に供することが
できなくなる。このため、まず両立坑間にヒューム管等
の鞘管を推進工法によって埋設し、次いで、この鞘管内
に一方の立坑側から他方の立坑側に向かって本管を挿
通、敷設したのち、鞘管と本管との間に軽量モルタル等
を充填して一体化させることが行われているが、従来か
ら、鞘管内に本管を挿入する方法として、図6に示すよ
うに、本管31の下周面を受台32によって支持し、この受
台32の下面に取付けているローラ33を鞘管34の下周部内
面に転動させながら挿入する方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本管31
の下周部に受台32を介してローラ33を取付けると、これ
らの受台32とローラ33との高さによって鞘管34に対する
本管31の挿入可能な径が制限され、挿入し得る本管31が
鞘管34に比して著しく小径となり、必然的に鞘管34と本
管31との間の隙間も大きくなってその隙間に充填する軽
量モルタル35の使用量が増大するという問題点がある。
本発明はこのような問題点を解消すると共に小さな推力
で正確な挿入を可能にすることを目的とする地中の鞘管
内に対する本管の挿入方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明における地中の鞘管内に本管を挿入する方法
は、両立坑間に亘って地中に埋設された鞘管内の一方開
口端を密封し、他方の開口端から本管を挿入するに際し
て、本管を挿入する他方の開口端側の坑口に環状パッキ
ン材の外周部を固着し、この環状パッキン材の内周面に
本管の外周面を摺接させながら本管における密封状態に
閉止された先端部を鞘管内に挿入すると共に鞘管内に水
を入れてその水の量を調整することにより、本管の中心
を鞘管の中心に略一致させた状態にして本管を浮かせな
がら鞘管内に挿入することを特徴とするものである。
【0005】上記方法において、請求項2に記載してい
るように、本管内にも適量の水を入れて鞘管内の水に対
する本管の浮力を調整することもできる。さらに、これ
らの方法において、請求項に記載しているように、鞘
管を一方開口端に向かって該鞘管の内径寸法内の高低差
でもって下方に傾斜させておいてもよい。
【0006】
【作用】一方開口端が密封されている鞘管内に適量の水
を注入、滞留させた状態にして鞘管の他方の開口端か
ら、挿入側開口端を密閉している本管を鞘管の他方の開
口端側の坑口に固着した環状パッキン材によりシール状
態にして挿入すると、鞘管内の水に対して本管に浮力が
発生し、本管の外周面が鞘管の内周面に摺接することな
く、本管を浮遊状態にして小さな推進力でもって鞘管内
に挿入していくことができる。
【0007】この際、本管を挿入する他方の開口端側の
坑口に環状パッキン材の外周部を固着してこのパッキン
材の内周面に本管の外周面を摺接させた状態で本管を挿
入していくので、鞘管内に封入する水の量、即ち、水位
を調整することによって水中に浮遊する本管の中心を全
長に亘って鞘管の中心に略一致させた状態にして挿入し
ていくことができ、従って、本管の外周面と鞘管の内周
面との隙間を全周に亘って略等しい隙間に形成すること
ができて大径の本管であっても、鞘管内に容易に挿入し
得ると共に鞘管と本管との隙間を少なくすることができ
て挿入後における軽量モルタル等の充填材料の使用量が
減少する。なお、鞘管内の水に対する本管の浮力調整
は、鞘管内に一定水位以上まで水で充満させた状態に
し、本管に生じる浮力を本管内に注入する水量によって
容易に調整し得る。
【0008】さらに、鞘管をその一方開口端に向かって
該鞘管の内径寸法の高低差以内の傾斜度でもって下方に
傾斜させた状態で埋設し、該鞘管内に所定量の水を注
入、滞留させる一方、この鞘管内に略同じ下向き傾斜度
でもって本管を挿入すると共に該本管内に適量の水を注
入すると、本管内ではその挿入先端側に向かうに従って
水位が高くなるから鞘管内の水に対する浮力が先端側程
減少し、そのため、本管内の対する水の注入量を調整す
ることで鞘管の管軸中心に本管の中心を合わせながら本
管を鞘管と同一傾斜度で円滑に挿入していくことができ
る。
【0009】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面について説明す
ると、図1は発進立坑11から到達立坑12間に亘って地中
に埋設したヒューム管等の鞘管1内に適量の水を封入
し、発進立坑側11から鋼管製水道管やガス管等の本管2
を、その外周面に環状パッキン材3を圧接させることに
よって鞘管1内の水が立坑11内に漏出するのを防止しな
がら挿入していく方法を示している。この方法を実施す
るに際して、鞘管1を発進立坑11から到達立坑12間に埋
設するには、公知のシールド工法によって行うことがで
きる。即ち、発進立坑11側から推進するシールド機に後
続して定尺の鞘管体を順次継ぎ足しながら押し進めれば
よい。
【0010】こうして埋設した鞘管1の両端部は一定長
さだけ、両立坑11、12から突出させた状態にし、該鞘管
1内に挿入後の本管2の端部をその突出端内に位置させ
て次の本管の対向端部との接続が立坑内において容易に
行えるようにする。鞘管1内に本管2を挿入するに先立
ち、まず、到達立坑12側に突出した鞘管1の一方端部の
開口端を盲蓋4によって密封状態に閉止すると共に該盲
蓋4の上下部に鞘管1内に連通する注水管5と排水管6
とを夫々接続する。
【0011】また、発進立坑11側に突出した鞘管1の他
方開口端部側の坑口に上記環状パッキン材3の外周部を
固着し、その内周部を鞘管1の他方開口端から内径方向
に突出させておく。この状態にして発進立坑11側から
パッキン材3の内周面に本管2の外周面を摺接させ
この環状パッキン材3により本管2の中心を鞘管の中心
に略合致させながら本管2の先端部を挿入すると共に
到達立坑12側において注水管5を通じて鞘管1内に水7
を所定水位まで注入し、封入、滞留させた状態にする。
【0012】本管2は鞘管1と同様に、一定長さを有す
る鋼管を発進立坑11内で順次水密的に接続することによ
って長尺に形成しながら鞘管1内に挿入していくもので
あるが、本管2の挿入開始端部の開口端を盲蓋8によっ
て水密的に閉止して鞘管1内の水7が内部に浸入するの
を防止しておく。この状態で本管2を鞘管1内に挿入し
ていくと、自重によって鞘管1内の水7に没入しようと
する本管2が浮力を受け、該本管2の上周部側が水面か
ら突出し且つ水中に没入した下周面が鞘管1の下部内周
面から適宜間隔だけ離れた浮遊状態となる。
【0013】この状態で鞘管1内に本管2を挿入してい
く。その挿入手段は、発進立坑11側から本管2を押し進
めてもよいが、そうすると、本管2の挿入側先端部が振
れて鞘管1の内周面に摺接する虞れが生じるので、図に
示すように、予め、本管2の挿入側先端部、即ち、盲蓋
8の部分にワイヤー等の索条物9の端部を連結してお
き、該索条物9を鞘管1の盲蓋4を貫通させて到達立坑
12内に引き出しておき、この索条物9を引っ張ることに
よって本管2を鞘管1内に挿入する。
【0014】この際、注水管5から鞘管1内に注水する
水7の量によって水位を調整し、図2に示すように、水
中に浮遊する本管2の中心を全長に亘り鞘管1の中心に
略一致させた状態にしてパッキン材3に偏位荷重を生じ
させることなく挿入していく。この時、本管2を挿入す
ることによって水7の水位が上昇するので、バルブ6aを
開いて水7を排除し、水位を所定の高さに維持する。ま
た、鞘管1に多少の曲がりが生じていても本管2を常に
一定の高さ位置に浮かした状態で真っ直ぐに挿入するこ
とができる。なお、鞘管1内に所定量の水7を注入した
後、注水管5のバルブ5aを閉止する。
【0015】こうして本管2が鞘管1の全長に亘って挿
入されてその先端が鞘管1の盲蓋4に達すると、排水管
6のバルブ6aを開いて鞘管1内の水7を排出する。この
排水によって本管2が徐々に降下し、排水が完了すると
鞘管1の下部内周面に載置された状態となる。しかるの
ち、鞘管1の内周面と本管2の外周面との間の隙間に図
3に示すように、軽量モルタル10を充填する。この充填
作業はパッキン材3を取り外して発進立坑11側から行
い、軽量モルタル10が適宜養生後、盲蓋4、8を取り外
してその状態で硬化させる。
【0016】上記方法においては、鞘管1内の水位によ
って鞘管1の中心に対する本管2の中心の浮遊高さ位置
を調整したが、次に、本管2内に注入する水量によって
鞘管1に対する本管2の浮遊位置を調整する方法につい
て述べる。図4はその実施例を示すもので、両立坑11、
12間の地中に埋設した鞘管1内に注水管5を通じて適宜
量の水7を注入すると共に盲蓋4を通じて本管2を鞘管
1内に索条物9で引っ張りながら挿入していく点は上記
方法と同様である。
【0017】この方法においては、鞘管1内に中空本管
2を挿入して浮かした場合、該本管2の中心が鞘管1の
中心よりも上位となるように水位を上げておき(鞘管1
内に水7を充満させた状態であってもよい)、挿入する
鞘管1の挿入終端側(後端側)の開口部に板状パッキン
材13を装着すると共にこの板状パッキン材13の上下部を
貫通して発進立坑11側に配管した給水管14と排水管15と
を連通させ、鞘管1内に挿入する本管2内に給水管14を
通じて適量の水7aを注入して本管2の盲蓋8と板状パッ
キン材13とで該水7aを本管2内に封入した状態とする。
【0018】そうすると、本管2内に封入される水量の
多少によって鞘管1内の水7に対する本管2の浮力が大
小に変化し、その注水量が多い場合には排水管15のバル
ブ15a を開いて排除することにより本管2内の水位を下
げ、本管2の中心を鞘管1の中心に略一致させながら索
条物9の牽引によって本管2を鞘管1内に挿入していく
ものである。その他の実施例は上記方法と同様である。
この実施例は本管2の重量が、その体積に比して著しく
小さい場合に適する。望ましくは、本管2の中心が鞘管
1内の水面より下に位置するように水7、7aの量を調節
する。
【0019】図5は鞘管1を発進立坑11側から到達立坑
12に向かって下向きに傾斜させた状態で貫通、埋設し、
この鞘管1内に本管2を挿入する方法の実施例を示すも
のである。この方法においては、鞘管1の傾斜度、即
ち、両端の高さ寸法差を該鞘管1の内径寸法差以内にし
ておく。その他は上記図4に示した方法と同様であるが
鞘管1は到達立坑12側に向かって下向きに傾斜している
ために、注水管5から該鞘管1内に水7を注入すると、
鞘管1の下周端からの水位は、到達立坑12側が高く発進
立坑11側が低くなる。しかしながら、水面は常に水平面
となるために、本管2をそのまゝ傾斜鞘管1内に挿入し
ても水平方向に浮動するだけで鞘管1の傾斜方向に挿入
することができない。
【0020】このため、本管2を鞘管1の傾斜方向に傾
斜させながら挿入すると共にパッキン材13を貫通した給
水管14を通じて適量の水を本管2内に供給する。本管2
は挿入先端側に行くに従って下向きに傾斜しているの
で、供給された水7aはその先端部側に向かうに従って多
量滞留し、その分だけ浮力が減少して鞘管1内の水中に
深く没入する。従って、本管2内に供給する水の量を調
整することによって、鞘管1の中心に本管2の中心を合
わせながら同一傾斜方向に本管2を挿入していくことが
できるものである。その他の実施例は上記方法と同様で
ある。
【0021】
【発明の効果】以上のように本発明の方法によれば、両
立坑間に亘って地中に埋設された鞘管内の一方開口端を
密封し、他方の開口端から本管を挿入するに際して、
管を挿入する他方の開口端側の坑口に環状パッキン材の
外周部を固着し、この環状パッキン材の内周面に本管の
外周面を摺接させながら本管の密封状態に閉止された先
端部を鞘管内に挿入すると共に鞘管内に水を入れてその
水の量を調整することにより、本管の中心を鞘管の中心
に略一致させた状態にして本管を水で浮かせながら鞘管
内に挿入することを特徴とするものであるから、本管を
鞘管の内周面に摺接させることなく小さな推進力でもっ
て容易且つ迅速に挿入することができ、その上、鞘管に
多少の曲げが生じていても全く影響されることなく挿入
することができ、鞘管内に対する本管の埋設作業が能率
よく行えるものである。
【0022】また、本管を挿入する他方の開口端側の坑
口に環状パッキン材の外周部を固着してこのパッキン材
の内周面に本管の外周面を摺接させた状態で本管を挿入
していくので、鞘管内に封入する水の量、即ち、水位を
調整することによって水中に浮遊する本管の中心を全長
に亘って鞘管の中心に略一致させた状態にして挿入して
いくことができ、従って、本管の外周面と鞘管の内周面
との隙間を全周に亘って略等しい隙間に形成することが
できて大径の本管であっても、鞘管内に容易に挿入し得
ると共に鞘管と本管との隙間を少なくすることができて
挿入後における本管と鞘管との隙間に対する軽量モルタ
ル等の充填材の充填量を減少させることができ、経済的
であると共に作業性の向上を図ることができる。
【0023】さらに、本発明方法においては、鞘管内に
封入する水の量、即ち、水位を調整することによって、
鞘管内における本管の高さを所定位置に正確に調整で
き、大径の本管であっても、鞘管内に容易に挿入し得る
ものである。また、鞘管内の水に対する本管の浮力調整
は本管内に適量の水を注入することによっても行うこと
ができ、この場合、鞘管内の高水位まで水を充満させた
状態で、本管に生じる浮力を本管内に注入する水量によ
って調整することにより可能となる。
【0024】さらに、鞘管をその一方開口端に向かって
該鞘管の内径寸法の高低差以内の傾斜度でもって下方に
傾斜させた状態で埋設しておき、該鞘管内に所望量の水
を注入する一方、この鞘管内に略同じ下向き傾斜度でも
って本管を挿入すると共に該本管内に適量の水を注入す
ることにより、本管をその挿入先端側に向かうに従って
浮力を減少させた状態にして、本管を鞘管と同一傾斜度
でもって円滑に挿入していくことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施例を示す簡略縦断側面図、
【図2】その拡大縦断正面図、
【図3】鞘管と本管との隙間に軽量モルタルを充填した
状態の縦断正面図、
【図4】本発明方法の別な実施例を示す簡略縦断側面
図、
【図5】本発明方法の更に別な実施例を示す簡略縦断側
面図、
【図6】従来方法を説明するためる縦断正面図。
【符号の説明】
1 鞘管 2 本管 3 パッキン材 4、8 盲蓋 5 注水管 6 排水管 7、7a 水 9 索条物 11 発進立坑 12 到達立坑
フロントページの続き (72)発明者 和田 洋 大阪市阿倍野区松崎町2丁目2番2号 株式会社奥村組内 (56)参考文献 特開 昭50−119414(JP,A) 特開 昭55−78878(JP,A) 特開 昭63−255425(JP,A) 特公 昭51−365(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16L 1/00 E03F 3/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両立坑間に亘って地中に埋設された鞘管
    内の一方開口端を密封し、他方の開口端から本管を挿入
    するに際して、本管を挿入する他方の開口端側の坑口に
    環状パッキン材の外周部を固着し、この環状パッキン材
    の内周面に本管の外周面を摺接させながら本管における
    密封状態に閉止された先端部を鞘管内に挿入すると共に
    鞘管内に水を入れてその水の量を調整することにより、
    本管の中心を鞘管の中心に略一致させた状態にして本管
    を浮かせながら鞘管内に挿入することを特徴とする地中
    の鞘管内に本管を挿入する方法。
  2. 【請求項2】 本管内にも適量の水を入れて鞘管内の水
    に対する本管の浮力を調整することを特徴とする請求項
    1記載の鞘管内に本管を挿入する方法。
  3. 【請求項3】 鞘管を一方開口端に向かって該鞘管の内
    径寸法内の高低差でもって下方に傾斜させていることを
    特徴とする請求項1または請求項2に記載の鞘管内に本
    管を挿入する方法。
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