JP3275418B2 - 有機繊維で補強されたゴム製品およびその製造方法 - Google Patents

有機繊維で補強されたゴム製品およびその製造方法

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JP3275418B2
JP3275418B2 JP01636393A JP1636393A JP3275418B2 JP 3275418 B2 JP3275418 B2 JP 3275418B2 JP 01636393 A JP01636393 A JP 01636393A JP 1636393 A JP1636393 A JP 1636393A JP 3275418 B2 JP3275418 B2 JP 3275418B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用タイヤ、コン
ベヤー用ベルト、ホースなどに用いられる有機繊維で補
強されたゴム製品、およびその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】自動車タイヤ、コンベヤー用ベルト、ホ
ースなどには通常、製品の強度、耐久性の向上および維
持のために、補強材としてポリエステル、ポリアミド、
アラミドなどの有機繊維が広く使用されている。なかで
もポリエステル繊維は、耐熱性および耐疲労性に優れ、
かつ寸法安定性が良好であり、タイヤに使用した場合に
は横剛性が大きく、操縦安定性に優れるといった特徴を
有し、自動車タイヤ用ゴムをはじめ多くのゴム製品に広
く使用されている。
【0003】ところがポリエステル繊維の問題点とし
て、被覆用ゴム組成物との接着性が良好でないことが挙
げられる。そこで、ポリエステル繊維をレゾルシンやレ
ゾルシン系樹脂などの接着剤で前処理する方法、ゴム加
工時にこれらの接着剤を配合する方法などが採用されて
きた。しかし、これら接着剤の使用によりゴムとポリエ
ステル繊維との初期の接着力は向上するものの、ポリエ
ステルコード自身が著しく熱劣化しやすく、さらにはゴ
ムの耐熱性および耐屈曲亀裂性が著しく劣る傾向にあっ
た。
【0004】一方、ゴムの耐熱性および耐屈曲亀裂性を
向上させる手段として、種々のアミン系劣化防止剤を配
合する手法が知られている。アミン系劣化防止剤として
は、例えばN−イソプロピル−N′−フェニル−p−ジ
アミノベンゼン、N−(1,3−ジメチルブチル)−
N′−フェニル−p−ジアミノベンゼン、N,N′−ジ
トリル−p−ジアミノベンゼン、アセトンとジフェニル
アミンの縮合物などが知られている。
【0005】ところが、これら従来の劣化防止剤では、
ゴムの耐熱性などの劣化防止性能が十分でないばかり
か、劣化防止剤を配合することによって、ゴムと有機繊
維との初期接着力の不良、さらに熱老化後の接着力の低
下を引き起こすなど、接着性能に悪影響を及ぼすという
問題を有していた。このため、劣化防止剤の種類および
添加量が大きな制約を受け、ゴムとポリエステルコード
との接着性能およびゴムの耐熱性という両面を十分満足
させることができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはかかる事
情に鑑み、公知の劣化防止剤が有していた欠点を解決す
べく種々研究を重ねた結果、所定の原料ゴムに、特定組
成の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリ
ン重合物を特定量配合することによって、ゴムとポリエ
ステル繊維との接着性の改良のみならず、ポリアミド繊
維、アラミド繊維など、一般の有機繊維との接着性も改
良され、またゴムの耐熱性が著しく改良される事実を見
出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、天然
ゴムおよびジエン系ゴムから選ばれる原料ゴム100重
量部に対し、1級アミン含量が1重量%以下、モノマー
含量が3重量%以下、そしてダイマー成分が30重量%
以上である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロ
キノリン重合物を0.5〜5重量部配合してなるゴム組成
物、およびそのゴム組成物に接触して存在する有機繊維
からなり、両者が接触した状態で前記ゴム組成物が加硫
されているゴム製品を提供するものである。
【0008】また本発明は、天然ゴムおよびジエン系ゴ
ムから選ばれる原料ゴム100重量部に対して、1級ア
ミン含量が1重量%以下、モノマー含量が3重量%以
下、そしてダイマー含量が30重量%以上である2,
2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物
を0.5〜5重量部配合し、得られるゴム組成物を有機繊
維との接触下で加硫することにより、有機繊維で補強さ
れたゴム製品を製造する方法を提供するものである。
【0009】こうした特定組成の2,2,4−トリメチ
ル−1,2−ジヒドロキノリン重合物を特定量配合する
ことにより、ゴムと有機繊維の間の高い接着性能を保持
しつつ、耐熱性に優れたゴム製品が得られる。
【0010】本発明の第一の特徴は、ゴムと有機繊維と
の接着性能に劣化防止剤が悪影響を及ぼさないようにす
るという観点より、劣化防止剤中の1級アミン含量を1
重量%以下とした点にある。すなわち、劣化防止剤中の
1級アミン成分は、ゴムと有機繊維の初期接着力を低下
させ、また大きな問題点として熱履歴後の接着力を大き
く低下させること、さらにこの1級アミン成分は、未加
硫ゴム中でゴム表面に容易にブルームし、ゴムと有機繊
維との接着性低下を引き起こすことが見出された。そこ
で本発明では、劣化防止剤中の1級アミン成分を1重量
%以下に抑える必要がある。
【0011】本発明の第二の特徴は、ゴムの耐熱性を高
めるという観点より、長期にわたって優れた劣化防止性
能を発揮する2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒド
ロキノリンダイマーを30重量%以上含有し、かつ低分
子量で揮発しやすいモノマーの含量を3重量%以下とし
た2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン
重合物を劣化防止剤として用いる点にある。すなわち、
ゴムに劣化防止剤を配合した場合、劣化防止剤のゴムへ
の分散性が高いことが必要であり、またゴム製品使用時
の耐熱性能の長期にわたる持続性を考慮すると、熱老化
条件下でも劣化防止剤がゴムから蒸散しにくいことが必
要である。したがって、低分子量の劣化防止剤は揮発し
やすいため好ましくない。こうした観点より本発明で
は、モノマー含量が少なく、かつダイマー含量が多い
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重
合物を劣化防止剤として所定量配合する。モノマー含量
は少ないほど好ましく、例えば1重量%以下であればよ
り好ましい。またダイマー含量は多いほど好ましく、例
えば35重量%以上であればより好ましい。
【0012】2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒド
ロキノリン重合物は通常、酸性触媒の存在下、アニリン
に、アセトン、ジアセトンアルコールまたはメシチルオ
キシドを加熱状態で反応させることにより、製造されて
いる。そして一般には、次式(I)で示される構造のも
のが主体である。
【0013】
【化1】
【0014】式中、nは1以上の整数を表す。
【0015】本発明でいうモノマーとは、上記式(I)
においてn=1の化合物であり、またダイマーとは、上
記式(I)においてn=2の化合物であり、以下、n=
3、4、……と増えていくに従って、トリマー、テトラ
マー、……となる。また1級アミンは主として原料のア
ニリンに起因して生成し、各種の構造をとりうるが、代
表例としては次式のような構造のものが挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】式中、mは1以上の整数を表す。
【0018】市販の2,2,4−トリメチル−1,2−
ジヒドロキノリン重合物は、メーカーや品名によって各
種の品位であるため、本発明で用いるものは注意深く選
定されなければならない。本発明においては、前述のよ
うに1級アミン含量およびモノマー含量が少なく、かつ
ダイマー含量の多い2,2,4−トリメチル−1,2−
ジヒドロキノリン重合物を用いる必要があり、こうした
本発明で特定する条件を満たすものを選定すればよい
が、かかる重合物は、好ましくは例えば次のようにして
製造される。
【0019】すなわち、まず塩酸、臭化水素酸、弗化水
素酸、ヨウ素、有機スルホン酸、三弗化ホウ素など、あ
るいはこれらの2種もしくはそれ以上の混合物のような
酸性触媒の存在下、アニリンに、アセトン、ジアセトン
アルコールまたはメシチルオキシドを加熱状態で反応さ
せ、得られる反応生成物を蒸留して精製することによ
り、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリ
ンモノマーを製造する。蒸留によってモノマー純度を高
くするほど好ましく、一般には85重量%以上のモノマ
ー純度となるようにするのが好ましく、さらには90重
量%以上のモノマー純度まで精製するのがより好まし
い。
【0020】こうして精製された2,2,4−トリメチ
ル−1,2−ジヒドロキノリンモノマーを、さらに塩
酸、その他前記のような酸性触媒の存在下、加熱状態で
反応させることにより重合体混合物を得、この重合体混
合物から未反応モノマーを除去する。反応にあたって、
例えば塩酸触媒を用いた場合は、塩酸濃度が15〜25
重量%程度の範囲となるようにするのが好ましく、かつ
原料である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロ
キノリンモノマーおよび不純物として含まれる他のアミ
ン類の合計に対して、塩酸を0.2〜0.5モル倍の範囲で
用いるのが好ましい。反応温度は80〜100℃程度が
好ましい。このようなマイルドな条件を採用することに
よって、ダイマー含量の多い重合物を得ることができ
る。また未反応モノマーの除去は通常、蒸留にて低沸点
留分を取り除くことにより行われる。
【0021】本発明では、以上説明したような特定組成
の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン
重合物が使用されるが、特にダイマー、トリマーおよび
テトラマー、すなわち前記式(I)におけるnが2、3
および4である重合物を、合計で75重量%以上含有す
るものが好ましく、さらには、かかるダイマー、トリマ
ーおよびテトラマーを合計で80重量%以上含有するも
のがより好ましい。
【0022】このような、1級アミンおよびモノマーの
含量が少なく、かつダイマー含量の多い2,2,4−ト
リメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物は、本発明
に従って、原料ゴム100重量部あたり0.5〜5重量部
の範囲で配合される。その配合量が0.5重量部より少な
い場合にはゴムの耐熱性が十分でなく、また5重量部よ
り多い場合は接着性能が低下するので、好ましくない。
【0023】本発明に使用される原料ゴムは、天然ゴム
またはジエン系ゴムであり、それぞれ単独で用いること
もできるし、また2種以上のブレンド物として用いるこ
ともできる。ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジ
エン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ク
ロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エ
チレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムなどが例示され
る。
【0024】特定組成の2,2,4−トリメチル−1,
2−ジヒドロキノリン重合物を配合したゴム組成物を補
強するために、補強材として有機繊維を使用する。有機
繊維は、通常自動車用タイヤ、コンベヤーベルト、ホー
スなどに使用されているものであることができ、好まし
いものとしては、ポリエステル、ポリアミド、アラミド
などが挙げられるが、なかでもポリエステル繊維に対し
て特に有効である。用いる有機繊維は、レゾルシン系の
接着剤で前処理しておくのが好ましい。ここでいうレゾ
ルシン系の接着剤とは、レゾルシン自体のほか、レゾル
シン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・アルキルフ
ェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・p−ク
ロロフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・
ホルムアルデヒド樹脂とアルキルフェノール・ホルムア
ルデヒド樹脂との混合物、レゾルシン・ホルムアルデヒ
ド樹脂とレゾルシンスルフィド樹脂との混合物など、レ
ゾルシンを主体とした樹脂でありうる。
【0025】また本発明においては、通常ゴム工業にお
いて使用される各種充填剤、例えばカーボンブラック、
シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維のような
無機充填剤などを、必要に応じてゴムに配合することが
できる。なかでもカーボンブラックが好ましく使用され
る。配合されるカーボンブラックは、通常ゴム工業にお
いて使用されている種類のもの、例えばSAF、ISA
F、HAF、FEF、SRF、GPF、MTなどである
ことができる。その配合量は特に制限されないが、補強
性やゴムの強度などの観点から、ゴム100重量部あた
り20〜150重量部の範囲が好ましい。また、カーボ
ンブラックとは別に、あるいはカーボンブラックに加え
て、接着性向上のため含水シリカを配合することが好ま
しく、その配合量は、ゴム100重量部あたり5〜80
重量部の範囲が好ましい。
【0026】本発明で用いるゴム組成物は、有機繊維と
の接触下で加硫されることから、通常は加硫剤、好まし
くはイオウが配合される。加硫剤としてのイオウは、通
常ゴム工業で使用されている不溶性イオウや各種の可溶
性イオウであることができ、またその配合量は、原料ゴ
ム100重量部あたり、通常0.5〜8重量部程度の範囲
である。
【0027】有機繊維がレゾルシン系の接着剤で処理さ
れている場合は、ゴム組成物に改めて接着剤を配合しな
くても応分の接着性が得られるが、有機繊維がレゾルシ
ン系の接着剤で処理されていない場合、あるいはより十
分な接着性を確保したい場合には、ゴム組成物に接着剤
を配合するのが好ましい。ここで用いる接着剤もレゾル
シン系のものであり、レゾルシン自体のほか、レゾルシ
ン系樹脂、例えばレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、
レゾルシン・アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹
脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂とアルキルフェ
ノール・ホルムアルデヒド樹脂との混合物などであるこ
とができる。レゾルシン系の接着剤を用いる場合は、原
料ゴム100重量部あたり通常8重量部以下、好ましく
は0.5〜5重量部の範囲で配合される。
【0028】また接着力をより確実にするためには、レ
ゾルシン系の接着剤とともに、ホルムアルデヒド発生
剤、すなわち加熱によりホルムアルデヒドを発生する化
合物を配合するのも有効である。ここでいうホルムアル
デヒド発生剤は、従来からホルムアルデヒド受容体であ
るレゾルシンやレゾルシン系樹脂などとともに使用され
ているものであることができ、例えば、メラミンとホル
ムアルデヒドの縮合物、すなわちジメチロールメラミ
ン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミ
ン、ヘキサメチロールメラミンのようなもの、メラミン
とホルムアルデヒドとメタノールの縮合物、すなわちヘ
キサキス(メトキシメチル)メラミン、ペンタキス(メ
トキシメチル)メチロールメラミンのようなもの、さら
にはヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。ホル
ムアルデヒド発生剤を用いる場合は、原料ゴム100重
量部あたり通常8重量部以下、好ましくは0.5〜5重量
部の範囲で配合される。
【0029】さらに本発明においては、ゴム工業で通常
使用されているその他の各種ゴム薬品、例えば他の劣化
防止剤、架橋剤、加硫促進剤、リターダー、しゃっ解
剤、軟化剤、石油樹脂、滑剤、可塑剤、粘着付与剤など
を、必要に応じて併用してもよいことはいうまでもな
い。
【0030】かくして配合されたゴム組成物は、前述し
たような有機繊維との接触下で加硫される。加硫条件に
特別な制限はなく、従来から一般に採用されている条件
で行えばよい。用いるゴム組成なり目的とする製品なり
によって、適切な加硫条件はかなり変動するが、通常は
温度100〜200℃程度、時間1分〜2時間程度の範
囲から、ゴム組成なり製品なりに適した条件が選択され
る。すなわちゴム組成物は、通常行われている方法によ
り、有機繊維と接触させた状態で成形、加硫工程を経
て、タイヤなどのゴム製品とされる。こうして有機繊維
で補強されたゴム製品は、自動車用タイヤの各種部材や
その他ゴム製品に適用した場合に優れた接着性および耐
熱性を発揮する。
【0031】
【実施例】次に、本発明について実施例をもって詳述す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。以下の例中、添加量ないしは含有量を表す%
および部は、特にことわりがないかぎり、それぞれ重量
%および重量部である。
【0032】参考例1
【0033】アセトン導入装置、温度計、攪拌機および
コンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、アニ
リン121g(1.3モル)、p−トルエンスルホン酸一
水塩12.4g(p−トルエンスルホン酸として0.065
モル)を仕込み、加熱した。内温を95〜100℃に保
ちながら、755gのアセトンを8時間で導入した。反
応物はトルエン100mlで希釈し、85〜95℃に保ち
ながら苛性ソーダ2.6gおよび水50mlで中和し、静置
後分液して水層を除去した。油層は100mlの水で数回
洗浄し、溶液が中性になったらトルエン層を分取し、ト
ルエンを蒸留によって除き、さらに減圧下で精留するこ
とにより、沸点100℃/10mmHgまでで未反応のアニ
リン留分が20g得られ、また100℃/10mmHgから
90℃/2mmHgの間でモノマー留分142.4gが得られ
た。
【0034】このモノマー留分をガスクロマトグラフィ
ーにより分析したところ、その組成比は次のとおりであ
った。
【0035】 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン 97.0% アニリン 0.2% 低沸点不純物 2.8%
【0036】引き続き、温度計、攪拌機およびコンデン
サーを備えた500ml四つ口フラスコに、上記で得られ
たモノマー留分100g、濃塩酸20.9gおよび水20
mlを仕込み、90℃まで昇温した。さらに90〜100
℃で6時間保温攪拌した。その後、反応物を100mlの
トルエンで希釈し、85〜90℃に保ちながら45%苛
性ソーダ水溶液19.8gを加えて中和し、静置分液して
水層を除去した。トルエン層は100mlの水で数回洗浄
した。
【0037】トルエン層を分取し、トルエンを蒸留によ
って除いたのち、さらに内温200℃および減圧度2mm
Hgまでの条件で蒸留して21.8gの低沸分を留去するこ
とにより、残分として73.2gの2,2,4−トリメチ
ル−1,2−ジヒドロキノリン重合物を得た。この重合
物を劣化防止剤Aとする。劣化防止剤Aの成分を定量し
たところ、表1のとおりであった。
【0038】なお、モノマー、ダイマー、トリマーおよ
びテトラマーの定量は、ガスクロマトグラフィーを用
い、フタル酸ジブチルを内標準として、以下の条件で行
った。
【0039】カラム:担体のクロモソルブWAWに、液
層の3%シリコンOV−1をコートし、これを詰めた3
mmφ×0.5mの分離管(ジーエルサイエンス社製) インジェクション温度:350℃ カラム温度:100℃より350℃まで昇温速度10℃
/分で昇温 キャリヤーガス:窒素(50ml/分) 検出器:フレームイオン化検出器
【0040】また1級アミン含有量は、重合物をクロロ
ホルムに溶解させ、さらに塩酸およびp−ジメチルアミ
ノベンズアルデヒドを加えて試料溶液を調製し、この試
料溶液の吸光度を分光光度計(測定波長440nm)にて
測定し、得られた吸光度から空試験値を差引き、検量線
より求めた。
【0041】参考例2
【0042】アセトン導入装置、温度計、攪拌機および
上部で還流冷却器に連結した水分離器を装着した500
ml四つ口フラスコに、アニリン93.1g(1モル)、濃
塩酸27g(0.27モル)およびn−ヘキサン3gを仕
込み、加熱した。水分離器内には予めn−ヘキサンを入
れておいた。内温が85℃に達した時点でアセトンの導
入を開始し、内温を70〜90℃に保ちながら174g
(3モル)のアセトンを8時間かけて導入した。縮合反
応によって生成した水は、n−ヘキサンとともに共沸し
てフラスコから除かれ、水分離器内でn−ヘキサンと水
が上下に分離するので、分液して連続的に系外へ除去し
た。アセトンの導入終了後、60〜80℃に保ちなが
ら、28%苛性ソーダ水溶液15gおよび水100mlで
中和し、トルエン100mlで希釈したあと、ラジオライ
トをプレコートしたG3グラスフィルターを用いて濾過
し、触媒残渣を除去した。濾液は静置後分液して、水層
を除去した。
【0043】油層は100mlの水で数回洗浄し、溶液が
中性になったら油層を分取し、n−ヘキサン、トルエ
ン、未反応アセトン等の低沸分を蒸留によって除き、さ
らに減圧下で精留することにより、沸点100℃/10
mmHgまでで未反応のアニリン留分が23g得られ、また
100℃/10mmHgから90℃/2mmHgの間で2,2,
4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンモノマー留
分57.5g(ガスクロマトグラフィーによる純度96.8
%)が除去され、82.6gの2,2,4−トリメチル−
1,2−ジヒドロキノリン重合物を得た。この重合物を
劣化防止剤Xとする。劣化防止剤Xを、参考例1と同様
にして定量したところ、表1のとおりの成分であった。
【0044】参考例3
【0045】参考例1と同様にしてモノマー留分を得た
あと、そのモノマー留分100gを濃塩酸60.8g
(0.6モル)および水30mlとともに仕込んだ以外は、
参考例1と同様に重合反応および後処理を行い、 1
4.5gの低沸分を留去することにより、残分として8
0.5gの2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキ
ノリン重合物を得た。この重合物を劣化防止剤Yとす
る。劣化防止剤Yを、参考例1と同様にして定量したと
ころ、表1のとおりの成分であった。
【0046】参考例4
【0047】参考例1の操作を繰り返すが、モノマー縮
合後の精留において、沸点100℃/20mmHgまでを未
反応アニリン留分とし、14gを得、さらに100℃/
20mmHgから90℃/2mmHgの間でモノマー留分14
8.6gを得た (モノマー純度84.2%、アニリン含量
4.8%)。その後、参考例1と同様に重合反応および後
処理を行い、残分として71.6gの2,2,4−トリメ
チル−1,2−ジヒドロキノリン重合物を得た。この重
合物を劣化防止剤Zとする。劣化防止剤Zを、参考例1
と同様にして定量したところ、表1のとおりの成分であ
った。
【0048】
【表1】
【0049】これら劣化防止剤A、X、YおよびZのほ
か、以下の実施例では、さらに比較のため、N−(1,
3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−ジアミノ
ベンゼン(劣化防止剤Vとする)も用いた。
【0050】実施例1
【0051】
【表2】 〈配合処方〉 天然ゴム(RSS#1) 70 部 ブタジエンゴム(日本合成ゴム製、BR−01) 15 部 スチレン・ブタジエン共重合ゴム(#1500) 15 部 HAFカーボンブラック(N330) 45 部 ステアリン酸 2 部 アロマ油 12 部 亜 鉛 華 3 部 劣化防止剤 表3記載 レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂 1.5部 加硫促進剤 1.1部 (N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド) イ オ ウ 3 部 メトキシ化メチロールメラミン樹脂 4 部 (住友化学工業製、Sumikanol 507 )
【0052】バンバリーミキサーとして東洋精機製の6
00mlラボプラストミルを用い、オイルバス温度150
℃で、上記配合処方に基づき、3種のブレンドゴムに、
カーボンブラック、ステアリン酸、アロマ油、亜鉛華、
レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂および劣化防止剤を
投入し、50rpm のミキサー回転数で15分間混練し
た。このときのゴム温度は160〜170℃であった。
次にこの配合物をオープンミルに移し、50〜70℃の
温度にて、上記配合処方に示した加硫促進剤、イオウお
よびメトキシ化メチロールメラミン樹脂を添加し、混練
した。
【0053】混練後の試料の一部は、熱老化試験用に直
ちに145℃で40分間加硫して試験片を作成した。さ
らに接着試験用として、未加硫ゴム配合物作成後直ちに
ポリエステル繊維を埋め込み、すぐ加硫プレスにより1
45℃で40分間加硫して試験片を作成した。残りの試
料は、室温にて3日間放置後、ポリエステル繊維を埋め
込み、上記と同条件で加硫して接着試験用試験片を作成
した。この例で用いたポリエステル繊維は、1100d
/3であり、レゾルシン・p−クロロフェノール・ホル
ムアルデヒド樹脂によるラテックス処理を行ったもので
ある。
【0054】そして各試験片について、以下の方法でゴ
ム物性の試験を行い、結果を配合処方の変量値とともに
表3に示した。
【0055】初期接着性 上記のようにして、未加硫ゴム配合物作成後直ちに加硫
接着した接着試験用試験片および未加硫ゴム配合物を3
日間放置後に加硫接着した接着試験用試験片を用い、AS
TM D 2138 に記載のHテスト法にて、接着性を評価し
た。試験結果は、12個の試験片の平均値で表示した。
【0056】熱老化後の接着性 未加硫ゴム配合物作成後直ちに加硫接着した接着試験用
試験片を、100℃で72時間熱老化させたあと、ASTM
D 2138 に記載のHテスト法による接着力の測定に供し
た。試験結果は、12個の試験片の平均値で表示した。
【0057】湿熱老化後の接着性 未加硫ゴム配合物作成後直ちに加硫接着した接着試験用
試験片を、温度50℃および相対湿度80%の条件で7
日間湿熱老化させたあと、ASTM D 2138 に記載のHテス
ト法による接着力の測定に供した。試験結果は、12個
の試験片の平均値で表示した。
【0058】耐 熱 性 JIS K 6301 に準拠して、ダンベル状3号試験片を10
0℃で72時間熱老化させ、老化前後の引張強さを測定
し、引張強さの保持率を算出した。
【0059】
【表3】
【0060】実施例2
【0061】
【表4】 〈配合処方〉 天然ゴム(RSS#1) 100部 HAFカーボンブラック(N330) 45部 ステアリン酸 3部 含水シリカ(日本シリカ工業製 Nipsil VN3 ) 10部 亜 鉛 華 2部 劣化防止剤 表5記載 レゾルシン・アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂 2部 (住友化学工業製、Sumikanol 620 ) 加硫促進剤 1部 (N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド) イ オ ウ 4部 メトキシ化メチロールメラミン樹脂 4部 (住友化学工業製、Sumikanol 507 )
【0062】バンバリーミキサーとして東洋精機製の6
00mlラボプラストミルを用い、オイルバス温度150
℃で、上記配合処方に基づき、天然ゴムに、カーボンブ
ラック、ステアリン酸、含水シリカ、亜鉛華、レゾルシ
ン・アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂および
劣化防止剤を投入し、 50rpm のミキサー回転数で1
5分間混練した。このときのゴム温度は160〜170
℃であった。次にこの配合物をオープンミルに移し、5
0〜70℃の温度にて、上記配合処方に示した加硫促進
剤、イオウおよびメトキシ化メチロールメラミン樹脂を
添加し、混練した。
【0063】混練後の試料の一部は、熱老化試験用に直
ちに145℃で40分間加硫して試験片を作成した。さ
らに接着試験用として、未加硫ゴム配合物作成後直ちに
ポリアミド繊維を埋め込み、すぐ加硫プレスにより14
5℃で40分間加硫して試験片を作成した。残りの試料
は、室温にて3日間放置後、ポリアミド繊維を埋め込
み、上記と同条件で加硫して接着試験用試験片を作成し
た。この例で用いたポリアミド繊維は、1260d/3
であり、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂によるラテ
ックス処理を行ったものである。
【0064】こうして得られた各試験片について、実施
例1と同様の方法でゴム物性の試験を行い、試験結果を
配合処方の変量値とともに表5に示した。
【0065】
【表5】
【0066】
【発明の効果】本発明により有機繊維で補強されたゴム
製品は、ゴムと有機繊維との接着性が改良され、特に熱
老化後や湿熱老化後でも高い接着力を示すとともに、未
加硫ゴムのまま長期間放置したあと有機繊維と加硫接着
した場合であっても良好な接着性が保たれ、さらにはゴ
ムの耐熱性などの諸特性にも優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−18761(JP,A) 特開 昭54−23650(JP,A) 特開 昭53−145854(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 21/00 C08J 5/04 C08K 5/3437

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】天然ゴムおよびジエン系ゴムから選ばれる
    原料ゴム100重量部に対し、1級アミン含量が1重量
    %以下、モノマー含量が3重量%以下、そしてダイマー
    含量が30重量%以上である2,2,4−トリメチル−
    1,2−ジヒドロキノリン重合物を0.5〜5重量部配合
    してなるゴム組成物、および該ゴム組成物に接触して存
    在する有機繊維からなり、両者が接触した状態で該ゴム
    組成物が加硫されていることを特徴とする有機繊維で補
    強されたゴム製品。
  2. 【請求項2】2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒド
    ロキノリン重合物が、ダイマー、トリマーおよびテトラ
    マーを合計で75重量%以上含有する請求項1記載のゴ
    ム製品。
  3. 【請求項3】有機繊維がレゾルシン系の接着剤で処理さ
    れている請求項1または2記載のゴム製品。
  4. 【請求項4】有機繊維が、ポリエステル、ポリアミドお
    よびアラミドから選ばれる請求項1〜3のいずれかに記
    載のゴム製品。
  5. 【請求項5】天然ゴムおよびジエン系ゴムから選ばれる
    原料ゴム100重量部に対して、1級アミン含量が1重
    量%以下、モノマー含量が3重量%以下、そしてダイマ
    ー含量が30重量%以上である2,2,4−トリメチル
    −1,2−ジヒドロキノリン重合物を0.5〜5重量部配
    合し、得られるゴム組成物を有機繊維との接触下で加硫
    することを特徴とする有機繊維で補強されたゴム製品の
    製造方法。
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