JP3272802B2 - 均質なフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

均質なフォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性珪素鋼板、特
に均質で密着性の優れたフォルステライト絶縁被膜を有
する、方向性珪素鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性珪素鋼板は、変圧器の積層鉄心、
又は巻鉄心として使用され、その層間の絶縁性を保持す
るために、鋼板表面に絶縁性被膜をそなえる。この被膜
は、絶縁性に加え、地鉄との密着性、外観の均質性、高
占積率性等、多くの特性を満足するものでなければなら
ない。このような被膜を形成するには、一般に次のよう
な方法がとられている。
【0003】まず所定の最終厚みまで冷間圧延した珪素
鋼帯を、アルカリ脱脂浴中で電解脱脂する。そして 700
〜 900℃の温度範囲の水素中で、脱炭焼鈍を連続して施
し、鋼板表面に主としてSiO2からなるサブスケールを形
成させる。さらに、この酸化膜上にMgO を主成分とする
焼鈍分離剤を塗布して、乾燥後、ストリップをコイル状
に巻取り、水素中で再び1100〜1250℃の温度範囲内の高
温度で仕上焼鈍を行う。このとき、MgO とSiO2とを反応
させてフォルステライト被膜を鋼板表面に生成させる。
【0004】このフォルステライト被膜に関し、特公昭
58−46547 号公報には、均質で平滑なフォルステライト
被膜を形成するために、脱炭焼純前にSi、O、Hから成
る化合物を、Si重量で鋼板片面1m2 当たり 0.5〜7.0m
g 付着させることが、示されている。そして、このSi化
合物の付着に、珪酸塩を主成分とする水溶液中で電解す
る方法が用いられている。しかし、Si化合物の電着量の
ばらつきや、水溶液中のいくつかの成分の変化が、電着
Si化合物に影響を与え、その結果被膜品質がばらつくと
いう問題があった。
【0005】そこで特開平3-243795号公報には、電解脱
脂浴中にFe、Cu、Al、Sn、Se、Ni、Cr、Mn、およびTiか
ら選ばれた少なくとも1種以上のイオンを 0.1〜10g/
l電解液に含有させることにより、Si化合物の電着量を
制御することが示されている。しかし、この方法をもっ
てしても、依然、Si化合物の電着量のばらつきは大き
く、したがってフォルステライト被膜の品質を安定させ
ることが難しかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、欠
陥の少ない、均質なフォルステライト被膜を有する方向
性珪素鋼板を工業的に安定して製造する方法を提案する
ことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電解脱脂
浴中に含まれる成分がSi化合物の電着量に及ぼす影響に
ついて詳細に検討した。その結果、脱脂浴中にハロゲン
イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンが一定
濃度以上存在すると、鋼板の極性が陽極になった時に、
表面がこれらのイオンによってアタックされ、電着した
Si化合物が一部剥脱され不均一になるため、Si化合物の
電着量にばらつきを生じることを発見し、本発明に至っ
た。
【0008】すなわち、本発明は、方向性珪素鋼の冷延
板をアルカリ脱脂浴中で電解脱脂した後、脱炭焼鈍を施
して鋼板表面にSiO2を主体とするサブスケールを形成
し、さらにMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布し、次い
で仕上げ焼鈍することにより、該鋼板表面にフォルステ
ライトからなる絶縁被膜を形成するに当たり、該アルカ
リ脱脂浴中のハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオ
ン、リン酸イオンの濃度の合計を 500mg/l以下とする
ことを特徴とする均質なフォルステライト被膜を有する
方向性珪素鋼板の製造方法である。
【0009】
【作用】図1〜4は3%オルト珪酸ソーダ中で電解脱脂
を行ってSi化合物を電着させた板を、さらに電解したと
きの、ハロゲンイオン濃度、硫酸イオン濃度、硝酸イオ
ン濃度、リン酸イオン濃度とSi化合物電着量の関係を示
すグラフである。Si化合物の電着量は蛍光X線分析装置
でSiのX線強度を測定し、予め作成した検量線を用いて
Si重量に換算した。サンプルとしてはSi重量として3.5
mg/m2 のSi化合物を電着させた板を用いた。電解条件
は20C/dm2 とし、また電解の極性は+−+−又は−+
−+の交番とした。
【0010】同図から、交番極性の+−+−、−+−+
ともに、いずれのイオンの場合でも、濃度 500mg/l以
上になるとSi化合物の電着量が大きく減少していること
がわかる。このことから、本発明者らは、浴中にハロゲ
ンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンが一
定濃度以上存在すると、陽極では表面がこれらのイオン
によってアタックされ、電着したSi化合物の一部が除去
される結果、Si化合物の電着量にばらつきを生じると結
論した。
【0011】したがって、本発明では陽極での電解酸洗
を防止し、Si化合物電着量のばらつきを生じさせない範
囲として、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、
リン酸イオンの濃度の合計を 500mg/l以下と限定す
る。因みに、従来のアルカリ脱脂浴中のハロゲンイオ
ン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンは脱脂浴を
作製する際に用いる水中に不可避的に含まれるものが蓄
積するのであって、その濃度の合計は1000mg/l程度で
ある。
【0012】
【実施例】
実施例1 オルト珪酸ソーダ3%含む脱脂浴中にて0.23mm厚に冷間
圧延された方向性珪素鋼板を、電気量密度20C/dm2
極性+−+−の交番で電解脱脂し、しかるのち湿水素雰
囲気中、 830℃で3分間の脱炭焼鈍を施し、次いで 1.5
%のTiO2を含むMgO を焼鈍分離剤として塗布し、水素
中、1200℃で10時間の高温仕上げ焼鈍することにより、
フォルステライト被膜を形成した。この処理を施すに当
たって、脱脂浴中の塩素イオン濃度をNaClの添加により
50、 100、 200、 400、 600、 800mg/lに調整した。
【0013】かくして得られたフォルステライト被膜の
密着性、およびフォルステライト被膜の外観均質性につ
いて評価した結果を表1に示す。密着性は、方向性珪素
鋼板を円筒に巻いたときに、フォルステライト被膜の剥
離が起こらない最小径で評価した。
【0014】
【表1】
【0015】同表によれば、この発明に従って得られた
フォルステライト被膜は、その外観および密着性ともに
良好であるのに対して、比較例では被膜外観にむらが多
く、密着性も劣っていることがわかる。 実施例2 オルト珪酸ソーダを3%含む脱脂浴中にて0.27mm厚に冷
間圧延された方向性珪素鋼板を、電気量密度10C/dm
2 、極性−+−+の交番で電解脱脂し、しかるのち湿水
素雰囲気中、 830℃で3分間の脱炭焼鈍を施し、次いで
1.5%のTiO2を含むMgO を焼鈍分離剤として塗布し、水
素中、1200℃で10時間の高温仕上げ焼鈍することによ
り、フォルステライト被膜を形成した。この処理を施す
に当たって、脱脂浴中の塩素イオン、硫酸イオン、硝酸
イオン、リン酸イオンの濃度の合計をNaCl、Na2SO4、 N
aNO3、Na3PO4の添加により50、 100、 200、 400、 60
0、 800mg/lに調整した。
【0016】かくして、得られたフォルステライト被膜
の密着性、およびフォルステライト被膜の外観均質性に
ついて評価した結果を表2に示す。密着性は、方向性珪
素鋼板を円筒に巻いたときに、フォルステライト被膜の
剥離が起こらない最小径で評価した。
【0017】
【表2】
【0018】同表によれば、この発明に従って得られた
フォルステライト被膜は、その外観および密着性ともに
良好であるのに対して、比較例では被膜外観にむらが多
く、密着性も劣っていることがわかる。
【0019】
【発明の効果】この発明によれば、密着性がよく、特に
外観にむらのない均質なフォルステライト被膜を確実に
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解脱脂浴中のハロゲンイオン濃度とSi重量と
してのSi化合物電着量との関係を示すグラフである。
【図2】電解脱脂浴中の硫酸イオン濃度とSi重量として
のSi化合物電着量との関係を示すグラフである。
【図3】電解脱脂浴中の硝酸イオン濃度とSi重量として
のSi化合物電着量との関係を示すグラフである。
【図4】電解脱脂浴中のリン酸イオン濃度とSi重量とし
てのSi化合物電着量との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−93875(JP,A) 特開 昭58−93877(JP,A) 特開 昭55−128543(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C21D 9/46 C25F 1/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性珪素鋼の冷延板をアルカリ脱脂浴
    中で電解脱脂した後、脱炭焼鈍を施して鋼板表面にSiO2
    を主体とするサブスケールを形成し、さらにMgO を主体
    とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上げ焼鈍すること
    により、該鋼板表面にフォルステライトからなる絶縁被
    膜を形成するに当たり、該アルカリ脱脂浴中のハロゲン
    イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンの濃度
    の合計を 500mg/l以下とすることを特徴とする均質な
    フォルステライト被膜を有する方向性珪素鋼板の製造方
    法。
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