JP3267567B2 - マイクロ波管の電源回路 - Google Patents

マイクロ波管の電源回路

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマイクロ波大電力増
幅装置におけるマイクロ波管の電源回路に関し、特にマ
イクロ波管の劣化によるマイクロ波大電力増幅装置の伝
送信号特性への悪影響を解消するための経済性の向上、
および前記悪影響を解消する際の作業性および保守性を
向上させたマイクロ波管の電源回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のマイクロ波大電力増幅装置のマイ
クロ波管の電源回路では、マイクロ波管のヒータに電流
を流すとカソードが加熱され、カソード混合材料である
バリウムが蒸発し、この蒸発したバリウムがカソード周
辺の管壁内側に付着する。そして、時間の経過とともに
前記蒸発したバリウムが堆積し、カソードとアノード間
の距離が接近し微小放電が発生し、伝送信号特性に悪影
響を及ぼす。このため、マイクロ波管に動作電圧以上の
高電圧を一時的に印加することにより堆積したバリウム
を取り除く高圧電源装置が別に必要となる。
【0003】また、マイクロ波管に動作電圧以上の高電
圧を一時的に印加するためには、マイクロ波管を装置本
体に実装した状態では行えず、装置本体へ取り付けたマ
イクロ波管を再び装置本体から取り外すことで行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のマイクロ波管の
電源回路は以上のように構成されていたので、蒸発した
バリウムによるカソードとアノード間の距離の接近によ
る伝送信号特性への悪影響の解消には、マイクロ波管に
動作電圧以上の高電圧を一時的に印加する高圧電源装置
が別に必要となり、設備費の増大につながり不経済であ
る課題があった。
【0005】また、前記電源装置によりマイクロ波管に
高圧を印加する際には前記マイクロ波管を取り外す必要
があり、このためのマイクロ波管の装置本体に対する着
脱に手間を要し作業性が良くない課題があった。
【0006】また、電源装置によりマイクロ波管へ高圧
を印加する際の作業には時間を要することになり、比較
的、長時間、装置本体の機能を停止させなければなら
ず、保守性がよくない課題もあった。
【0007】そこで、本発明の目的は、マイクロ波管に
動作電圧以上の高電圧を一時的に印加するための別途備
えなければならなかった電源装置を不要にして経済性を
向上させ、またマイクロ波管を装置本体から取り外す作
業を不要にして作業性および保守性を向上させたマイク
ロ波管の電源回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、高圧電源トラ
ンス二次側の整流された直流電圧がマイクロ波管壁およ
びマイクロ波管のアノード部へ印加される経路について
シリーズドロッパ部を迂回させ、前記シリーズドロッパ
部で発生する電圧降下量分、前記マイクロ波管壁および
マイクロ波管のアノード部へ印加する電圧を上昇させる
バイパス制御回路を備えたことを特徴とする
【0009】本発明のマイクロ波管の電源回路は、シリ
ーズドロッパ部で発生する電圧降下量分、マイクロ波管
壁およびマイクロ波管のアノード部へ印加する電圧を上
昇させ、前記マイクロ波管壁およびマイクロ波管の前記
アノード部へ高電圧を印加し、カソード周辺のマイクロ
波管壁内側に付着した蒸発したバリウムを取り除き、前
記マイクロ波管壁内側に付着したバリウムによるカソー
ドとアノード間の距離の接近を解消させ、マイクロ波管
に動作電圧以上の高電圧を一時的に印加する高圧電源装
置を不要にし、設備費の増大を抑制し、さらに作業性、
保守性を向上させる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態につ
いて説明する。本実施の形態のマイクロ波管の電源回路
は、マイクロ波管電源回路二次側のヘリックス電源安定
化回路シリーズドロッパ部にシリーズドロッパ分の電圧
を上昇させるバイパス制御回路を付加し、これを動作さ
せることによりマイクロ波管内のアノードとカソード間
に印加される電圧が通常動作時電圧より前記シリーズド
ロッパ分高くなるようにして、アノード部に堆積してい
るバリウム蒸着物を破壊し、除去するものである。
【0011】図1は、本実施の形態のマイクロ波大電力
増幅装置におけるマイクロ波管の電源回路の構成を示す
回路図である。符号6はマイクロ波管の電源回路であ
り、高圧電源トランス1、整流器2,3、シリーズドロ
ッパ部4、およびバイパス制御回路(アノード部印加電
圧切替回路)5などから構成されている。また、マイク
ロ波管は、コレクタ部7、ヘリックス部8、アノード部
9、カソード部10、およびヒータ部11などを備えて
いる。符号12はマイクロ波管本体の内側の壁(以下、
マイクロ波管壁という)を示す。
【0012】高圧電源トランス1は、1次側へ印加され
た入力電圧を所要の値の高電圧まで昇圧するものであ
る。
【0013】整流器2,3は、高圧電源トランス1によ
り昇圧された2次側の高電圧を整流し直流電圧へ変換す
るものである。
【0014】シリーズドロッパ部4は、整流器2により
変換された直流電圧を安定化させるものである。
【0015】バイパス制御回路5は、シリーズドロッパ
部4をスイッチ回路(アノード部印加電圧切替回路)5
aによりバイパスすることで、シリーズドロッパ部4に
おいて発生する電圧降下量に相当する分、整流器2から
マイクロ波管へ印加される直流電圧を上昇させるもので
ある。また、前記スイッチ回路5aは例えば電磁リレー
回路または半導体リレー回路などを用いて構成され、さ
らにマイクロ波大電力増幅装置の電源立ち上げ時に所定
の期間出力される電源投入信号により、一定の期間、閉
成される。
【0016】次に、動作について説明する。高圧電源ト
ランス1により所要の電圧値まで昇圧された高電圧は整
流器2および整流器3を介して整流され直流電圧に変換
される。整流器2により整流された直流電圧は、シリー
ズドロッパ部4により安定化される。この安定化された
直流電圧はマイクロ波管壁12およびアノード部9に印
加される。
【0017】また、整流器3により整流された直流電圧
は、電源装置6に接続されたマイクロ波管のヒータ部1
1に電流を流すことでヒータ部11を加熱し、さらにバ
リウム等混合材料により構成されたカソード部10を加
熱して、カソード部10からの二次電子の放出を促す。
この際、カソード部10から放出された二次電子はコレ
クタ部7へ向かってヘリックス8の内側を通って放射さ
れる。
【0018】一方、カソード部10が加熱されると、二
次電子放出以外にカソード部10の混合材料であるバリ
ウムが蒸発し、蒸発したバリウムはアノード部9および
周辺のマイクロ波管壁12の内側に蒸着する。蒸着した
バリウムは時間の経過とともに堆積し、やがてアノード
部9とカソード部10との間の距離を短縮させ、アノー
ド部9とカソード部10との間で微小放電を起こす。
【0019】この微小放電の発生が、伝送信号特性に悪
影響を及ぼしてしまうため、この微小放電が発生する前
に電源装置6内のシリーズドロッパ部4に設けられたバ
イパス制御回路5を動作させ、シリーズドロッパ部4へ
供給される直流電圧をシリーズドロッパ部4を迂回さ
せ、マイクロ波管壁12およびアノード部9へ印加す
る。
【0020】このバイパス制御回路5では、マイクロ波
大電力増幅装置の電源立ち上げ時、所定の期間出力され
る電源投入信号により電磁リレー回路または半導体リレ
ー回路などを一定の期間、閉成し、シリーズドロッパ部
4において発生する電圧降下量に相当する分、整流器2
からマイクロ波管へ印加される直流電圧を上昇させ、こ
の上昇した直流電圧をマイクロ波管壁12およびアノー
ド部9へ印加する。
【0021】シリーズドロッパ部4では、整流器2によ
り変換された直流電圧を安定化させるためにシリーズド
ロッパ部4内部での電圧降下量を調整しており、この安
定化のために発生させている電圧降下量に対応した分の
電圧上昇を、マイクロ波管壁12およびそのアノード部
9へ印加する直流電圧に与える。この結果、通常の動作
電圧より高い高電圧がマイクロ波管壁12およびアノー
ド部9へ印加され、マイクロ波管壁12およびアノード
部9に堆積しているバリウムが破壊され取り除かれる。
【0022】以上のように、本発明によれば、マイクロ
波大電力増幅装置の電源が立ち上がるたびに自動的に通
常の動作電圧より高い高電圧がマイクロ波管壁12およ
びアノード部9へ印加され、マイクロ波管壁12および
アノード部9に堆積しているバリウムが破壊され取り除
かれるため、従来のように別途備えなければならなかっ
た電源装置が不要になり、この結果、経済性が向上し、
またマイクロ波管12を装置本体から取り外すことなく
マイクロ波管壁12の内側およびアノード部9に堆積し
ているバリウムを破壊し取り除くことが可能になるため
作業性および保守性の向上が期待できる。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、高圧電
源トランス二次側の整流された直流電圧がマイクロ波管
壁およびマイクロ波管のアノード部へ印加される経路に
ついてシリーズドロッパ部を迂回させ、前記シリーズド
ロッパ部で発生する電圧降下量分、前記マイクロ波管壁
およびマイクロ波管のアノード部へ印加する電圧を上昇
させるバイパス制御回路を備えるように構成したので、
前記バイパス制御回路により前記マイクロ波管壁および
アノード部へ印加される高い電圧によりマイクロ波管壁
およびアノード部に堆積しているバリウムを破壊し取り
除くことが出来るため、従来のように高圧印加用の電源
装置を別に備える必要がなくなり、経済性が向上する効
果がある。
【0024】また、マイクロ波管を取り付けた状態でマ
イクロ波管壁およびアノード部に堆積しているバリウム
を破壊し取り除くことが出来るため、作業性および保守
性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のマイクロ波大電力増幅装
置におけるマイクロ波管の電源回路の構成を示す回路図
である。
【符号の説明】
1……高圧電源トランス、4……シリーズドロッパ部、
5……バイパス制御回路(アノード部印加電圧切替回
路)、5a……スイッチ回路(アノード部印加電圧切替
回路)、6……マイクロ波管の電源回路、9……アノー
ド部、11……ヒータ部、12……マイクロ波管壁。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高圧電源トランス二次側の整流された直
    流電圧によりマイクロ波管のヒータ部を加熱するととも
    に、前記高圧電源トランス二次側の整流された直流電圧
    をシリーズドロッパ部で安定化してマイクロ波管壁およ
    びマイクロ波管のアノード部へ印加するマイクロ波管の
    電源回路において、高圧電源トランス二次側の整流された直流電圧がマイク
    ロ波管壁およびマイクロ波管のアノード部へ印加される
    経路についてシリーズドロッパ部を迂回させ、前記シリ
    ーズドロッパ部で発生する電圧降下量分、前記マイクロ
    波管壁およびマイクロ波管のアノード部へ印加する電圧
    を上昇させるバイパス制御回路 を備えたことを特徴とす
    る請求項1記載のマイクロ波管の電源回路。
  2. 【請求項2】 前記バイパス制御回路は、マイクロ波大
    電力増幅装置の電源立ち上げ時に所定の期間出力される
    電源投入信号により一定の期間、閉成される、シリーズ
    ドロッパ部に並列接続されたスイッチ回路を備えている
    ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波管の電源回
    路。
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