JP3264317B2 - 光触媒性親水性部材及びその製造方法 - Google Patents

光触媒性親水性部材及びその製造方法

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JP3264317B2 JP32465496A JP32465496A JP3264317B2 JP 3264317 B2 JP3264317 B2 JP 3264317B2 JP 32465496 A JP32465496 A JP 32465496A JP 32465496 A JP32465496 A JP 32465496A JP 3264317 B2 JP3264317 B2 JP 3264317B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、部材表面を高度の
親水性になし、かつ維持する技術に関する。より詳しく
は、本発明は、鏡、レンズ、ガラス、プリズムその他の
透明部材の表面を高度に親水化することにより、部材の
曇りや水滴形成を防止する防曇技術に関する。本発明
は、また、建物や窓ガラスや機械装置や物品の表面を高
度に親水化することにより、表面が汚れるのを防止し、
又は表面を自己浄化(セルフクリ−ニング)し若しくは
容易に清掃する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】寒冷時に自動車その他の乗物の風防ガラ
スや窓ガラス、建物の窓ガラス、眼鏡のレンズ、および
各種計器盤のカバ−ガラスが凝縮湿分で曇るのはしばし
ば経験されることである。また、浴室や洗面所の鏡や眼
鏡のレンズが湯気で曇ることも良く遭遇される。更に、
車両の風防ガラスや窓ガラス、建物の窓ガラス、車両の
バックミラ−、眼鏡のレンズ、マスクやヘルメットのシ
−ルドが降雨や水しぶきを受け、離散した多数の水滴が
表面に付着すると、それらの表面は翳り、ぼやけ、斑模
様になり、或いは曇り、やはり可視性が失われる。言う
までもなく、上記“曇り”は安全性や種々の作業の能率
に深い影響を与える。例えば、車両の風防ガラスや窓ガ
ラス、車両のバックミラ−が、寒冷時や雨天に翳り或い
は曇ると、視界の確保が困難となり、交通の安全性が損
なわれる。内視鏡レンズや歯科用歯鏡が曇ると、的確な
診断、手術、処置の障害となる。計器盤のカバ−ガラス
が曇るとデ−タの読みが困難となる。
【0003】上記“曇り”の解消のために、表面を親水
性にすることが提案されている。例えば、実開平3−1
29357号には、基材の表面にポリマ−層を設け、こ
の層に紫外線を照射した後アルカリ水溶液により処理す
ることにより高密度の酸性基を生成し、これによりポリ
マ−層の表面を親水性にすることからなる鏡の防曇方法
が開示されている。しかし、この方法で得られる程度の
酸性基では、表面極性が充分でなく、表面に付着する汚
染物質により時間が経つにつれて表面は親水性を失い、
防曇性能が次第に失われるものと考えられる。
【0004】他方、建築及び塗料の分野においては、環
境汚染に伴い、建築外装材料や屋外建造物やその塗膜の
汚れが問題となっている。大気中に浮遊する煤塵や粒子
は晴天には建物の屋根や外壁に堆積する。堆積物は降雨
に伴い雨水により流され、建物の外壁を流下する。更
に、雨天には浮遊煤塵は雨によって持ち運ばれ、建物の
外壁や屋外建造物の表面を流下する。その結果、表面に
は、雨水の道筋に沿って汚染物質が付着する。表面が乾
燥すると、表面には縞状の汚れが現れる。建築外装材料
や塗膜の汚れは、カ−ボンブラックのような燃焼生成物
や、都市煤塵や、粘土粒子のような無機質物質の汚染物
質からなる。このような汚染物質の多様性が防汚対策を
複雑にしているものと考えられている(橘高義典著“外
壁仕上材料の汚染の促進試験方法”、日本建築学会構造
系論文報告集、第404号、1989年10月、p.1
5−24)。
【0005】従来の通念では、上記建築外装などの汚れ
を防止するためにはポリテトラフルオロエチレン(PT
FE)のような撥水性の塗料が好ましいと考えられてい
たが、最近では、疎水性成分を多く含む都市煤塵に対し
ては、塗膜の表面を出来るだけ親水性にするのが望まし
いと考えられている(高分子、44巻、1995年5月
号、p.307)。そこで、親水性のグラフトポリマ−
で建物を塗装することが提案されている(新聞“化学工
業日報”、1995年1月30日)。報告によれば、こ
の塗膜は水との接触角に換算して30〜40゜の親水性
を呈する。しかしながら、粘土鉱物で代表される無機質
塵埃の水との接触角は20゜から50゜であり、水との
接触角が30〜40゜のグラフトポリマ−に対して親和
性を有しその表面に付着しやすいので、このグラフトポ
リマ−の塗膜は無機質塵埃による汚れを防止することが
できないと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、部材表面
を親水性にすることにより、部材の曇りや水滴形成を防
止したり、また、建物や窓ガラスや機械装置や物品の表
面が汚れるのを防止し、又は表面を自己浄化(セルフク
リ−ニング)し若しくは容易に清掃することができる提
案は存在するものの、表面を高度の親水性に長期にわた
り維持できないため、その効果は充分でなかった。そこ
で、本発明では、上記事情に鑑み、表面を長期にわたり
高度の親水性に維持できる部材を提供することを目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段、及び作用】本発明は、光
触媒を含有する表面層を形成した部材において、光触媒
を光励起すると、部材の表面が高度に親水化されるとい
う発見に基づく。この現象は以下に示す機構により進行
すると考えられる。すなわち、光触媒の価電子帯上端と
伝導電子帯下端とのエネルギ−ギャップ以上のエネルギ
−を有する光が光触媒性酸化物に照射されると、光触媒
の価電子帯中の電子が励起されて伝導電子と正孔が生成
し、そのいずれかまたは双方の作用により、おそらく表
面に極性が付与され、水や水酸基等の極性成分が集めら
れる。そして伝導電子と正孔のいずれかまたは双方と、
上記極性成分の協調的な作用により、吸着表面と表面に
化学的に吸着した汚染物質との化学結合を切断すると共
に、表面に化学吸着水が吸着し、さらに物理吸着水層が
その上に形成されるのである。
【0008】本発明では、光触媒性酸化チタンと、酸化
タングステンを含有する表面層が固定され、かつ前記層
の表面の少なくとも一部には電子吸引体が化学吸着され
ている、或いは光触媒性酸化チタン含有層が形成され、
さらにその上に酸化タングステンを含有する表面層が形
成され、かつ前記層の表面の少なくとも一部には電子吸
引体が化学吸着されていることを特徴とする光触媒性親
水性部材を提供する。表面層に光触媒性酸化チタン以外
に酸化タングステンが含有されていると、一旦親水化さ
れた表面の遮光時の親水維持性が向上する。これは、酸
化タングステンが含有されていると、表面の極性が、光
の有無にかかわらず大きな状態になるために、疎水性分
子よりも極性分子である水分子を選択的に吸着させやす
く、そのために安定な物理吸着水層が形成されやすいた
めと考えられる。さらに、スルホン酸基、ニトロ基、硫
酸基又は硝酸基等の水酸基より強い電子吸引性を有する
基を含む電子吸引体が表面に化学吸着されていると、前
記電子吸引体が固体表面の電子を吸引して、金属酸化物
の金属部分の電子受容性が向上するために、より一層表
面の極性が、光の有無にかかわらず大きな状態になり、
より安定な物理吸着水層が形成されやすくなる。従っ
て、表面層に光触媒性酸化物と、酸化タングステン及び
電子吸引体の双方が含有されるようにすることにより、
暗所において長期にわたり高度の親水性を維持できるよ
うになるとともに、親水性が失われてきても光触媒性酸
化物の光励起により高度な親水状態を回復できる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の第一実施態様において
は、図1に示すように、基材表面に、光触媒性酸化チタ
ンと、酸化タングステンを含有する表面層が固定され、
かつ前記層の表面の少なくとも一部には電子吸引体が化
学吸着されている。本発明の第二実施態様においては、
図2に示すように、基材表面に、光触媒性酸化チタン含
有層が形成され、さらにその上に酸化タングステンから
なる表面層が形成され、かつ前記層の表面の少なくとも
一部には電子吸引体が化学吸着されている。
【0010】本発明における高度の親水性とは、水との
接触角に換算して10゜以下、好ましくは5゜以下の水
濡れ性を呈する状態をいう。PCT/JP96/007
33号に示したように、部材表面が水との接触角に換算
して10゜以下の状態であれば、空気中の湿分や湯気が
結露しても、凝縮水が個々の水滴を形成せずに一様な水
膜になる傾向が顕著になる。従って、表面に光散乱性の
曇りを生じない傾向が顕著になる。同様に、窓ガラスや
車両用バックミラ−や車両用風防ガラスや眼鏡レンズや
ヘルメットのシ−ルドが降雨や水しぶきを浴びた場合
に、離散した目障りな水滴が形成されずに、高度の視界
と可視性を確保し、車両や交通の安全性を保証し、種々
の作業や活動の能率を向上させる効果が飛躍的に向上す
る。また、同様にPCT/JP96/00733号に示
したように、部材表面が水との接触角に換算して10゜
以下、好ましくは5゜以下の状態であれば、都市煤塵、
自動車等の排気ガスに含有されるカ−ボンブラック等の
燃焼生成物、油脂、シ−ラント溶出成分等の疎水性汚染
物質、及び無機粘土質汚染物質双方が付着しにくく、付
着しても降雨や水洗により簡単に落せる状態になる。
【0011】部材表面が上記高度の親水性を維持できれ
ば、上記防曇効果、表面清浄化効果の他、帯電防止効果
(ほこり付着防止効果)、断熱効果、水中での気泡付着
防止効果、熱交換器における効率向上効果、生体親和性
効果等が発揮されるようになる。
【0012】本発明が適用可能な基材としては、上記防
曇効果を期待する場合には透明な部材であり、その材質
はガラス、プラスチック等が好適に利用できる。適用可
能な基材を用途でいえば、車両用バックミラ−、浴室用
鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レ
ンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明
用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレ
ンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄
道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロ−プウエイ
のゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の
窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、
雪上車、スノ−モ−ビル、オ−トバイ、ロ−プウエイの
ゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風
防ガラス;防護用ゴ−グル、スポ−ツ用ゴ−グル、防護
用マスクのシ−ルド、スポ−ツ用マスクのシ−ルド、ヘ
ルメットのシ−ルド、冷凍食品陳列ケ−スのガラス;計
測機器のカバ−ガラス、及び上記物品表面に貼付させる
ためのフィルムを含む。本発明が適用可能な基材として
は、上記表面清浄化効果を期待する場合にはその材質
は、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチッ
ク、木、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、そ
れらの組合せ、それらの積層体が好適に利用できる。適
用可能な基材を用途でいえば、建材、建物外装、建物内
装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、
機械装置や物品の外装、防塵カバ−及び塗装、交通標
識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音
壁、橋梁、ガ−ドレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装
及び塗装、碍子、太陽電池カバ−、太陽熱温水器集熱カ
バ−、ビニ−ルハウス、車両用照明灯のカバ−、住宅設
備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバ−、台所
用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レン
ジ、キッチンフ−ド、換気扇、及び上記物品表面に貼付
させるためのフィルムを含む。本発明が適用可能な基材
としては、上記帯電防止効果を期待する場合にはその材
質は、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチ
ック、木、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、
それらの組合せ、それらの積層体が好適に利用できる。
適用可能な基材を用途でいえば、ブラウン管、磁気記録
メディア、光記録メディア、光磁気記録メディア、オ−
ディオテ−プ、ビデオテ−プ、アナログレコ−ド、家庭
用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機
器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、建材、建物
外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外
装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバ−及び塗
装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含
む。
【0013】光触媒性酸化物とは、酸化物結晶の伝導電
子帯と価電子帯との間のエネルギ−ギャップよりも大き
なエネルギ−(すなわち短い波長)の光(励起光)を照
射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)によ
って、伝導電子と正孔を生成しうる酸化物をいい、アナ
タ−ゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化錫、酸
化亜鉛、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化
第二鉄、チタン酸ストロンチウム等が好適に利用でき
る。ここで光触媒性酸化物の光励起に用いる光源として
は、蛍光灯、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ラ
ンプのような室内照明、太陽、それらの光源からの光を
低損失のファイバ−で誘導した光源等が好適に利用でき
る。光触媒性酸化物の光励起により、基材表面が高度に
親水化されるためには、励起光の照度は、0.001m
W/cm2 以上あればよいが、0.01mW/cm2
上だと好ましく、0.1mW/cm2 以上だとより好ま
しい。
【0014】上記表面層の膜厚は0.2μm以下にする
のが好ましい。そうすれば、光の干渉による表面層の発
色を防止することができる。また表面層が薄ければ薄い
ほど部材の透明度を確保することができる。更に、膜厚
を薄くすれば表面層の耐摩耗性が向上する。上記表面層
の表面に、更に、親水化可能な耐摩耗性又は耐食性の保
護層や他の機能膜を設けてもよい。上記表面層は、基材
と比較して屈折率があまり高くないのが好ましい。好ま
しくは表面層の屈折率は2以下であるのがよい。そうす
れば、基材と表面層との界面における光の反射を抑制で
きる。基材がナトリウムのようなアルカリ網目修飾イオ
ンを含むガラスや施釉タイルの場合には、基材と上記表
面層との間にシリカ等の中間層を形成してもよい。そう
すれば、焼成中にアルカリ網目修飾イオンが基材から表
面層へ拡散するのが防止され、光触媒機能がよりよく発
揮される。上記表面層にはAg、Cu、Znのような金
属を添加することができる。前記金属を添加した表面層
は、表面に付着した細菌を死滅させることができる。更
に、この表面層は、黴、藻、苔のような微生物の成長を
抑制する。従って、微生物起因の部材表面の汚れ付着が
より有効に抑制されるようになる。上記表面層にはP
t、Pd、Rh、Ru、Os、Irのような白金族金属
を添加することができる。前記金属を添加した表面層
は、光触媒による酸化活性を増強させることができ、部
材表面に付着した汚染物質の分解を促進する。
【0015】図1の親水性部材の形成方法は、例えば光
触媒性酸化チタン粒子と、タングステン酸を混合して塗
布液を調製し、前記塗布液を基材表面上に、スプレ−コ
−ティング、フロ−コ−ティング、スピンコ−ティン
グ、ディップコ−ティング、ロ−ルコ−ティング等の方
法で塗布する。さらに、その上に硫酸、硝酸、硫酸アン
モニウム、硝酸アンモニウム等の電子吸引体を上記方法
で塗布し、表面の化学吸着水が離脱する400〜800
℃の温度で熱処理して表面層を基材に固定する。
【0016】図2の親水性部材の形成方法は、例えば光
触媒性酸化チタン粒子を懸濁したゾルを基材表面上に、
スプレ−コ−ティング、フロ−コ−ティング、スピンコ
−ティング、ディップコ−ティング、ロ−ルコ−ティン
グ等の方法で塗布、乾燥後、タングステン酸を塗布し、
さらに、その上に硫酸、硝酸、硫酸アンモニウム、硝酸
アンモニウム等の電子吸引体を上記方法で塗布し、表面
の化学吸着水が離脱する400〜800℃の温度で熱処
理して表面層を基材に固定する。図2の親水性部材を形
成する他の方法においては、例えばテトラエトキシチタ
ン、テトラメトキシチタン、テトラプロポキシチタン、
テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン;チ
タンキレ−ト、アセテ−トチタン;硫酸チタン、四塩化
チタン等の溶解性無機チタン化合物;水酸化チタン;無
定型酸化チタンなどの結晶性酸化チタンの前駆体を基材
表面上に、スプレ−コ−ティング、フロ−コ−ティン
グ、スピンコ−ティング、ディップコ−ティング、ロ−
ルコ−ティング、電子ビ−ム蒸着等の方法で塗布、乾燥
後、タングステン酸をさらにその上に上記いずれかの方
法で塗布し、さらに、その上に硫酸、硝酸、硫酸アンモ
ニウム、硝酸アンモニウム等の電子吸引体を上記方法で
塗布し、表面の化学吸着水が離脱し、かつ光触媒性酸化
チタンの上記前駆体が、光触媒性酸化物に変化する温度
(アナタ−ゼ型酸化チタンの結晶化温度)である400
〜800℃の以上の温度で熱処理し、表面層を基材に固
定する。図2の親水性部材においては、光触媒性酸化チ
タン層の膜厚が10nm以上だと特に光触媒の光励起に
よる親水化性能に優れ、好ましい。
【0017】
【実施例】
実施例.10cm角のソ−ダライムガラス板を濃度3.
5重量%のテトラエトキシシラン溶液(希釈剤:エタノ
−ル、加水分解抑制剤:エタノ−ルアミン)に浸漬後、
毎分24cmの速度で引き上げて、溶液をディップコ−
ティング法により、ガラス板の表面に塗布し、乾燥させ
た。ここまでの工程により、テトラエトキシシランは加
水分解を受けてまずシラノ−ルになり、続いてシラノ−
ルの脱水縮重合により無定型シリカの薄膜がガラス板の
表面に形成された。次に、3.5重量%のテトラエトキ
シチタン溶液(希釈剤:エタノ−ル、加水分解抑制剤:
エタノ−ルアミン)に浸漬後、毎分24cmの速度で引
き上げて、溶液をディップコ−ティング法により、表面
に塗布し、乾燥させて、#1試料を得た。ここまでの工
程により、テトラエトキシチタンは加水分解を受けてま
ず水酸化チタンになり、続いて水酸化チタンの脱水縮重
合により無定型酸化チタンの薄膜(膜厚50nm程度)
が表面に形成された。次に、0.25重量%のタングス
テン酸と0.33重量%の硫酸アンモニウムを溶解させ
た1%アンモニア水溶液に浸漬後、毎分24cmの速度
で引き上げて、溶液をディップコ−ティング法により、
表面に塗布し、500℃で焼成して、#2試料を得た。
焼成により無定型酸化チタンが結晶化してアナタ−ゼ型
酸化チタンが生成するとともに、表面の化学吸着水が離
脱し、代わりに硫酸が化学吸着した。焼成直後の#2試
料の表面にオレイン酸を塗布し、中性洗剤でこすり、水
道水及び蒸留水で濯いだ後、乾燥器により50℃で30
分乾燥されることにより、表面を故意に汚染させた。そ
の結果、水との接触角は35゜まで上昇した。ここで水
との接触角は、接触角測定器(協和界面科学、CA−X
150)により、水滴をマイクロシリンジにより滴下し
た後、30秒後の値を測定した。次に、光源にBLBラ
ンプ(三共電気、ブラックライトブル−ランプ)を用
い、1日照度0.3mW/cm2 の紫外線を照射した。
その結果、試料表面の水との接触角は0゜と低い値を示
した。次に、暗所に1日放置し、試料表面の水との接触
角の変化を測定した。その結果、9゜と低い値に維持さ
れた。
【0018】
【発明の効果】光触媒性酸化チタンと酸化タングステン
からなる層が形成され、さらにその上に電子吸引体が化
学吸着されている、或いは光触媒性酸化チタン含有層が
形成され、さらにその上に酸化タングステンからなる層
が形成され、さらにその上に電子吸引体が化学吸着され
ているようにすることにより、光触媒性酸化チタンの光
励起に応じて表面が高度に親水化されるようになるの
で、表面を恒久的に高度の親水性に維持できるようにな
ると共に、酸化タングステン及び電子吸引体の作用によ
り、おそらく表面の極性が増加して、一旦高度の親水性
を呈するようになった表面の遮光時の親水性が長期にわ
たり維持されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第一実施態様を示す図
【図2】本発明における第二実施態様を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C03C 17/34 C03C 17/34 Z E06B 7/12 E06B 7/12 (56)参考文献 特開 平10−114544(JP,A) 特開 平10−114545(JP,A) 特開 平6−220218(JP,A) 特開 平1−238867(JP,A) 特開 平10−95635(JP,A) 特表 平11−511109(JP,A) 国際公開97/23572(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 15/00 - 23/00 B01J 35/02 WPI/L(QUESTEL) JICSTファイル(JOIS)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面に、光触媒性酸化チタンと、酸
    化タングステンを含有する表面層が固定され、かつ前記
    層の表面の少なくとも一部には電子吸引体が化学吸着さ
    れており、前記光触媒の光励起に応じて表面が親水性を
    呈することを特徴とする光触媒性親水性部材。
  2. 【請求項2】 基材表面に、光触媒性酸化チタン含有層
    が形成され、さらにその上に酸化タングステンを含有す
    る表面層が形成され、かつ前記層の表面の少なくとも一
    部には電子吸引体が化学吸着されており、前記光触媒の
    光励起に応じて表面が親水性を呈することを特徴とする
    光触媒性親水性部材。
  3. 【請求項3】 前記電子吸引体は、スルホン酸基、ニト
    ロ基、硫酸基、硝酸基の水酸基より強い電子吸引性を有
    する基を含む物質であることを特徴とする請求項1又は
    2に記載の光触媒性親水性部材。
  4. 【請求項4】 前記光触媒の光励起に応じた前記表面の
    呈する親水性は水との接触角に換算して10゜以下であ
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つの項に
    記載の光触媒性親水性部材。
  5. 【請求項5】 基材表面を、結晶性酸化チタン粒子とタ
    ングステン酸を含有する溶液で被覆する工程と、前記被
    覆物表面に電子吸引体を塗布する工程と、前記被覆物表
    面の化学吸着水が離脱する温度で熱処理して、前記電子
    吸引体を前記被覆物表面に化学吸着させる工程、を含む
    光触媒性親水性部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 基材表面に、結晶性酸化チタン粒子を含
    有する被覆物を形成する工程と、次いでその上にタング
    ステン酸含有溶液を塗布する工程と、さらにその上に電
    子吸引体を塗布する工程と、前記被覆物表面の化学吸着
    水が離脱する温度で熱処理して、前記電子吸引体を前記
    被覆物表面に化学吸着させる工程、を含む光触媒性親水
    性部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記結晶性酸化チタン粒子を含有する被
    覆物を形成する工程は、基材表面を無定型酸化チタンで
    被覆し、次いで前記無定型酸化チタンを結晶化させる工
    程である請求項6に記載の光触媒性親水性部材の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記タングステン酸含有溶液は、タング
    ステン酸を含む塩基性溶液であることを特徴とする請求
    項5〜7のいずれか一つの項に記載の光触媒性親水性部
    材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記熱処理は400〜800℃の温度で
    の焼成であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか
    一つの項に記載の光触媒性親水性部材の製造方法。
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