JP3261018B2 - オージェ電子分光装置 - Google Patents
オージェ電子分光装置Info
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Description
電子を照射し、試料面から発生したオージェ電子を分光
して試料表面の分析を行うオージェ電子分光装置に関す
る。
ズと試料付近の構成例を示す図、図7は分光器の磁気シ
ールド構造を説明するための図である。オージェ電子分
光装置は、数keVから数10keVに加速された電子
を試料に照射し、試料面から発生したオージェ電子を分
光して電子照射部位の元素を特定するものである。その
ための分光器は、1次電子線の励起によって試料面から
発生する電子を効率良く集め、分光器内を走るエネルギ
ーの違いによって電子の軌道が変わるような偏向場を設
けることによって分析を行うようにするのが普通であ
る。オージェ電子分光装置における照射部位の空間分解
能は、プローブ径と外乱による電子照射部位のずれによ
って決まる。特に空間分解能が100nmより小さな場
合に外乱による影響が問題になる。外乱としては、磁界
型レンズ(対物レンズ)からの漏れ磁場や、電子照射系
や分光器から引き込んでくる外部磁場によるものがあ
り、外部磁場には、地磁気や各種設備から生じる商用周
波数の交流磁場等がある。
る場所の空間に存在する50Hzまたは60Hz(電源
ラインによるもの)の磁場によるものの影響が大きい。
このような影響は、2次電子像の観察によって確認でき
る。オージェ電子分光装置では、図6に示すように対物
レンズ2と試料4との間で十分なシールドができず、こ
の空間で磁場の影響を受け空間分解能の低下が起きるた
め、磁場の影響をなるべく小さくするように、対物レン
ズ2の下部に鉄製の防磁筒3を設けることがある。この
防磁筒3は、外乱磁場の影響を小さくする効果があるこ
とが確認されている。
は、小さい方では数eV程度、大きい方では3000e
V程度までが一般的であるが、この範囲のうち特に50
eV程度までの低エネルギーの電子を分光する場合に
は、分光器内部での電子の軌道が外部に存在する地磁気
などの影響で偏向される現象が発生する。そこで、図7
に示すようにこのような磁場が分光器内部に入り込まな
いようにするための磁気シールド25が必須となり、こ
の磁気シールドの形状は、分光器全体を覆うようにしな
ければ効果がない。分光器自身は、図7に示すように一
次励起用の電子線照射装置21やイオンエッチング用の
イオン照射装置22等の、オージェ電子分光装置に必須
の要素との占有空間の取り合いの関係から、試料23面
に近くなるほど細い形状となるため、磁気シールド25
もまた試料23面に近いほど細くなっている。
すように外乱磁場の影響を小さくするため防磁筒3を設
けても、対物レンズ2の磁気回路と磁気的に結合し試料
4の付近に大きな磁場を漏らすことがある。このように
対物レンズ2から防磁筒3を経由して試料4の付近に漏
れた磁場により、オージェ電子分光装置において、試料
4から発生する低速の電子を分光器に導きエネルギース
ペクトルを得、その結果を基に元素の定性・定量を行う
場合に、低速の電子の軌道を変えてしまい、分解能が低
下して正確な分析を行うことができなくなるという問題
が生じる。
影響を及ぼすのは、対物レンズ2からの磁場の漏れだけ
でなく、地球磁場によるものも無視できない。しかし、
対物レンズ2と防磁筒3の幾何学的形状のためにこの地
球磁場が試料4上に集められ、その結果スペクトルを歪
ませてしまう。
を設ける構成では、試料面に最も近い部分で電子を取り
込むように開口部が設けられているため、結局、外部の
磁場は、シールド全体によって吸収されると同時に、図
8に示すように磁気シールド41の開口部付近に集中し
て吐き出される結果となる。従って、本来磁場などの存
在しない空間であるべき試料面付近に、通常よりも大き
な磁場が存在することになってしまう。
対する十分なシールドを行っているのに対し、対物レン
ズと試料の間、分光器の磁気シールドの開口部と試料と
の間は、十分なシールドができず、また、外部には商用
周波数成分を持つ浮遊磁場が存在するから、これらはい
ずれも試料面に集中してしまうことになる。そのため、
この空間で磁場の影響を受けて一次電子線が一定の周波
数で振られ空間分解能の低下やスペクトルの歪みが起こ
るだけでなく、二次電子線の軌道を曲げる作用をするの
で、低エネルギー側の電子が効率良く分光器に入射でき
なくなり、像を観察したり、点分析を行ったりするとき
に問題となる。
って、試料付近における磁場の影響を排除し、空間分解
能の低下、スペクトルの歪みをなくし高精度の分析がで
きるオージェ電子分光装置を提供することを目的とする
ものである。
料に加速された電子線を照射し、試料面から発生したオ
ージェ電子を分光して試料表面の分析を行うオージェ電
子分光装置において、対物レンズの下部に設けられた防
磁筒の周りに磁場キャンセルコイルを巻き付け、該磁場
キャンセルコイルにより対物レンズから防磁筒を経由し
て試料付近に漏れる磁場、あるいは分光器を覆う磁気シ
ールドの周りに磁場キャンセルコイルを巻き付け、該磁
場キャンセルコイルにより磁気シールドを経由して試料
付近に漏れる磁場をキャンセルするためのキャンセル磁
場を発生させるようにしたことを特徴とするものであ
る。
ズと試料と分光器との間に現れる磁場をキャンセルする
ための磁場キャンセルコイルを、対物レンズの周りや、
対物レンズの下部に設けた防磁筒の周り、分光器を覆う
磁気シールドの周りに巻き付けるので、試料面付近に現
れる地球磁場や外部の浮遊磁場の影響を除くためのキャ
ンセル磁場を発生することができ、これらの磁場による
悪影響を有効にキャンセルすることができる。
明する。図1は本発明に係るオージェ電子分光装置の1
実施例を示す図、図2は磁場キャンセルコイルの電流と
対物レンズ基準信号との関係を示す図であり、1は対物
レンズコイル、2は対物レンズ、3は防磁筒、4は試
料、5は分光器、6は対物レンズ基準信号発生器、7は
対物レンズ電源、8は地磁気基準信号発生器、9は磁気
キャンセルコイル電源、10は磁気キャンセルコイルを
示す。
レンズコイル1をドライブするものであり、その基準信
号を発生するのが対物レンズ基準信号発生器6である。
磁場キャンセルコイル10は、防磁筒3の周りに巻き付
け、対物レンズ2からの磁場の漏れと、地球磁場の影響
を小さくするためのキャンセル磁場を発生するコイルで
ある。磁場キャンセルコイル電源9は、磁場キャンセル
コイル10をドライブするものであり、そのために地磁
気基準信号発生器8の地磁気基準信号と対物レンズ基準
信号発生器6の対物レンズ基準信号が用いられる。
磁場キャンセルコイル電源9において加算・減算回路で
足し合わされ、必要な電流量に換算されて磁場キャンセ
ルコイル10に流す電流が決定される。磁場キャンセル
コイル10に流す電流は、次のように決められる。先
ず、対物レンズコイル1を励磁した時に試料上で磁場が
変化しないように磁場キャンセルコイル電源9の増幅率
を決める。つぎに対物レンズコイル1の励磁を0にし、
試料上での磁場(これは地磁気による影響)が0になる
ように地磁気基準信号の大きさを決める。このようにす
れば試料付近に漏れる磁場をキャンセルするためのキャ
ンセル磁場を発生させることができ、対物レンズ2のど
のような励磁に対しても常に試料上の磁場が0になるよ
うな磁場キャンセルが実現できる。
磁場キャンセルコイル10の電流量との関係は例えば図
2のようになる。この図2に示す例は、対物レンズ2に
よる磁場の補正のための電流の方向と地磁気の補正のた
めの電流の方向が異なるものを敢えて示したものであ
る。
発明に係るオージェ電子分光装置の他の実施例を示す図
である。図3に示す実施例は、典型的な分光器の場合に
ついて分光器24自身と磁気シールド25の形状で示し
たものであり、この磁気シールド25の一部分の外側に
キャンセルコイル26を巻き付けて、このキャンセルコ
イル26に直流および商用周波数に同期した交流電流を
流すことによって、試料23面付近に集中している静磁
場および浮遊磁場を小さくしようとするものである。こ
のキャンセルコイル26を巻き付ける磁気シールド25
の位置は、キャンセルコイル26によって発生する磁場
が効率良く試料面上に放出されるような場所が選ばれ
る。このようにすれば、外部から磁気シールドが集めて
くる磁場と、キャンセルコイルで発生させる磁場とは、
共に磁気シールドの先端部分では同じ磁路をたどって集
束し、端部で発散する。したがって、このシールドの端
部で発散する磁場は、外部から磁気シールドが集めてく
る磁場の方向と逆で大きさが等しい磁場をキャンセルコ
イル26で発生させることによって完全に消去すること
ができる。
きるようにしてあり、低エネルギー側の電子が最も効率
良く分光器に入射してくるように調整されることはいう
までもない。交流電流もまたその電流の量と方向を可変
できるようにし、例えば二次電子像などのような浮遊磁
場の影響を観察可能な像を見ながら、その影響が最小に
なるように電流量を調整することができる。
オージェ電子分光装置の他の実施例を示す図、図5は対
物レンズに適用した本発明に係るオージェ電子分光装置
のさらに他の実施例を示す図である。
のための地磁気基準信号と対物レンズドライブのための
対物レンズ基準信号を加算・減算回路で合成したが、こ
の場合には図2に示すように対物レンズ2の励磁によっ
て電流方向が変わる電源の設計をしなければならない。
そこで、このような設計をしなくてもよいようにしたの
が図4に示す実施例である。このように対物レンズ磁場
キャンセルコイル10−1と地磁気キャンセルコイル1
0−2の2つを防磁筒に巻き、対物レンズ磁場キャンセ
ルと地磁気キャンセルを別々に行うようにしてもよい。
なお、上記の各実施例において防磁筒3の周りに巻き付
けたキャンセルコイル10、10−1、10−2は、真
空中に置かれるので、その周りをモールドしたり非磁性
の金属で覆ってもよい。
漏洩磁場をキャンセルするためのさらに他の変形例であ
り、図5(a)、(b)に示すように磁場キャンセルコ
イル10−3、10−4を防磁筒3の周りではなく、む
しろ対物レンズ2の上方に巻き付けるようにしたもので
ある。通常、真空チャンバは、図示点線のように対物レ
ンズの中間部分より下側に配置されるので、磁場キャン
セルコイル10−3は、真空外に配置することができる
ため、より実用的である。
るものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記
の実施例では、対物レンズか分光器のいずれかにキャン
セルコイルを設けるようにしたが、これらの両方に設け
るようにしてもよいし、さらにイオン照射装置の周りそ
の他、試料付近で外部磁場を引き込んでくるような部位
に任意に設けてもよい。
によれば、磁場キャンセルコイルを防磁筒の外側に巻き
付けるので、外乱磁場による照射部位の空間分解能の劣
化を防ぎながら、同時に対物レンズや地磁気によるオー
ジェ電子スペクトルの歪みをなくし、定性・定量の精度
向上を行うことができる。また、磁気が分光器内部に進
入するのを防止する目的で設置された磁気シールドが、
その端部で自ら集中した磁場を吐き出す点に着目し、そ
こで、この磁場をキャンセルするために、磁気シールド
自身の一部分に磁場キャンセルコイルを巻いて直流また
は交流電流を流すので、端部での静磁場および浮遊磁場
の集中を緩和することができる。したがって、磁気シー
ルドの端部が一次電子線の軌道や分光の対象となる電子
の入射口に近いため、集中した磁場による悪影響を免れ
ることができなった問題を解消することができる。
例を示す図である。
準信号との関係を示す図である。
るオージェ電子分光装置の他の実施例を示す図である。
電子分光装置の他の実施例を示す図である。
電子分光装置のさらに他の実施例を示す図である。
近の構成例を示す図である。
図である。
される磁場を説明するための図である。
4…試料、5…分光器、6…対物レンズ基準信号発生
器、7…対物レンズ電源、8…地磁気基準信号発生器、
9…磁気キャンセルコイル電源、10…磁気キャンセル
コイル
Claims (2)
- 【請求項1】 試料に加速された電子線を照射し、試料
面から発生したオージェ電子を分光して試料表面の分析
を行うオージェ電子分光装置において、対物レンズの下
部に設けられた防磁筒の周りに磁場キャンセルコイルを
巻き付け、該磁場キャンセルコイルにより対物レンズか
ら防磁筒を経由して試料付近に漏れる磁場をキャンセル
するためのキャンセル磁場を発生させるようにしたこと
を特徴とするオージェ電子分光装置。 - 【請求項2】 試料に加速された電子線を照射し、試料
面から発生したオージェ電子を分光して試料表面の分析
を行うオージェ電子分光装置において、分光器を覆う磁
気シールドの周りに磁場キャンセルコイルを巻き付け、
該磁場キャンセルコイルにより磁気シールドを経由して
試料付近に漏れる磁場をキャンセルするためのキャンセ
ル磁場を発生させるようにしたことを特徴とするオージ
ェ電子分光装置。
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Cited By (1)
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JP2992688B2 (ja) * | 1998-05-19 | 1999-12-20 | セイコーインスツルメンツ株式会社 | 複合荷電粒子ビーム装置 |
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1995
- 1995-08-30 JP JP22162195A patent/JP3261018B2/ja not_active Expired - Fee Related
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