JP3260329B2 - マイタケ由来の活性酸素消去剤 - Google Patents

マイタケ由来の活性酸素消去剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は活性酸素による生体
内酸化的傷害を防御することのできる活性酸素消去剤の
開発に関する。
【0002】
【従来の技術】酸素は地球上の殆どの動植物にとって必
須不可欠の物質であるが、一方では過剰な酸素の存在に
より引き起こされる酸素毒は生体に傷害を与え、老化の
促進やガンをはじめとする様々な成人病等の原因の一つ
として最近注目されるようになってきた。
【0003】即ち大気中に存在する酸素は、三重項酸素
と呼ばれる安定した物質であるが、生体内では酸素の一
部が「活性酸素」とよばれる反応性の高い物質に変化す
る。この活性酸素は、生体内に侵入した有害なウイルス
や細菌を殺すのに必要で、生体防御の立場から極めて重
要な役割を果たす反面、必要以上に生じた活性酸素は、
タンパク質、脂質さらには核酸等に作用して多種多様な
生体に対する損傷を引き起こし、老化の促進、ガンをは
じめ動脈硬化、糖尿病、さらにはアルツハイマー病、ク
ローン病等様々な疾病の原因の一つになっていることが
明らかにされつつある。
【0004】生体内で生成する狭義の活性酸素としては
スーパーオキシド アニオンラジカル(O2 -)、過酸化
水素(H22)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一
重項酸素(12)の4種が、これらに加えてアルコキシ
ラジカル(LO・)、脂質ペルオキシラジカル(LOO
・)、一酸化窒素(NO)或いは一酸化窒素とスーパー
オキシドとの反応産物であるペルオキシナイトライト
(ONOO-)などを含め広義の活性酸素と呼ぶ場合も
ある。
【0005】これらに対する消去物質(スカベンジャ
ー)としては、 1)スーパーオキシド アニオンラジカルに対してはス
ーパーオキシド デイスムターゼ(SOD)2)過酸化水
素にたいしてはカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダ
ーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ等 3)一重項酸素にたいしてはカロチノイド、トコフェロ
ール等 4)アルコキシラジカル、脂質ペルオキシラジカルに対
してはトコフェロール、フラボノイド、アスコルビン
酸、グルタチオン、カロチノイド、等が知られている。
【0006】しかし、上記スーパーオキシド ディスム
ターゼ(SOD)は、タンパク質であるため、細胞や動
植物を用いる実験への応用は難しく、また過酸化酸素に
対するカタラーゼ等の酵素もSODと同様の理由で使い
難く、一重項酸素に対するカロチノイド、トコフェロー
ル等は、選択性が低い等の欠点を有している。
【0007】そして、ヒドロキシラジカル(・OH)は
多彩な生体成分と拡散律速で反応するため、特異的な消
去物質は知られていない。マンニトール、ジメチルスル
フォキシド(DMSO)、エタノール、チオウレア等が
知られているが、1種類の消去剤の実験では、不十分で
あり複数の効果を検討する必要がある。従って、現時点
では必ずしも満足すべき消去物質は開発されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、活性酸素、
特にヒドロキシラジカル若しくは/及びスーパーオキシ
ド アニオンラジカルを消去できる物質の開発に関す
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は日常食品と
して摂取されされている物の中で、活性酸素、特にヒド
ロキシラジカルを消去するような物はないか広範囲に亙
って検索した結果、マイタケ由来の物にすぐれた作用が
あることを見い出し、加えてスーパーオキシドアニオン
ラジカルの消去活性、スーパーオキシド ディスムター
ゼ(SOD)活性もあることを見い出し本発明をなすに到
った。
【0010】即ち、(1)マイタケの乾燥粉末若しくは
/及びマイタケ抽出エキスを含有することを特徴とする
活性酸素消去剤、(2)マイタケ抽出エキスが、生マイ
タケ、乾燥マイタケ若しくは/及び乾燥マイタケ粉末を
水乃至熱水で抽出したものであることを特徴とする
(1)記載の活性酸素消去剤、(3)マイタケ抽出エキ
スが、生マイタケ、乾燥マイタケ若しくは/及び乾燥マ
イタケ粉末を水乃至熱水で抽出して得られる抽出液に、
アルコールを加え放置後液面若しくは液中に浮遊又は壁
面に付着する物質を取り除いたものであることを特徴と
する(1)記載の活性酸素消去剤、(4)マイタケ抽出
エキスが、生マイタケ、乾燥マイタケ若しくは/及び乾
燥マイタケ粉末を水乃至熱水で抽出して得られる抽出液
に、アルコールを加え放置後液面若しくは液中に浮遊又
は壁面に付着する物質を取り除き、該溶液よりアルコー
ルを除いた後乾燥したものであることを特徴とする
(1)記載の活性酸素消去剤。
【0011】(5)活性酸素がヒドロキシラジカル若し
くは/及びスーパーオキシド アニオンラジカルである
ことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の
活性酸素消去剤、(6)生マイタケ、乾燥マイタケ若し
くは/及び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱水で抽出して得
られる抽出液に、アルコールを加え放置後液面若しくは
液中に浮遊又は壁面に付着する物質を取り除いて製造す
ることを特徴とする活性酸素消去剤の製造方法、(7)
生マイタケ、乾燥マイタケ若しくは/及び乾燥マイタケ
粉末を水乃至熱水で抽出して得られる抽出液に、アルコ
ールを加え放置後液面若しくは液中に浮遊又は壁面に付
着する物質を取り除き、該溶液よりアルコールを除いた
後乾燥して製造することを特徴とする活性酸素消去剤の
製造方法、(8)(6)又は(7)においてアルコール
を、その最終容量濃度が20〜70容量%になるように加え
ることを特徴とする活性酸素消去剤の製造方法、(9)
活性酸素がヒドロキシラジカル若しくは/及びスーパー
オキシド アニオンラジカルであることを特徴とする
(6)、(7)又は(8)の何れかに記載の活性酸素消
去剤の製造方法に関する。
【0012】本発明において、マイタケはマイタケ(G
rifola frondosa ) 、白マイタケ(Grifola albican
s)チョレイマイタケ(Dendropolyporus umbellatus)、
トンビマイタケ(Grifola gigantea)等いずれも用いる
ことが出来る。又これらマイタケ類の子実体及び菌糸体
いずれも用いる事が出来るが、最近ではマイタケ(Gri
fola frondosa)の子実体の人工栽培が可能となり、安
定した原料確保の面から該マイタケの子実体を使用する
のが好ましい。
【0013】乾燥マイタケとしては、天日、熱風乾燥、
或いは凍結乾燥したものいずれも用いることが出来る。
乾燥マイタケ粉末は製粉機で乾燥品を粉末にする。乾燥
マイタケ粉末を直接用いる場合は大体100メッシュ以上
の粒度にして用いるのが好ましい。
【0014】抽出の方法は常温〜135℃で15分〜3時間行
う。短時間で行うには圧力下、100℃以上、例えば圧力
釜を用いて1〜2気圧下120℃前後で30分〜1時間前後で抽
出を行う。水としては蒸留水、精製水、イオン交換水、
水道水、天然水等いずれも使用出来る。乾燥マイタケ若
しくは乾燥マイタケ粉1重量に対して水を4〜20倍容量程
度を使用する。生マイタケを使用する場合は1重量に対
して2〜10倍容量程度の水を使用する。
【0015】アルコールとしてはメタノール、エタノー
ル等が使用しうる。抽出液にアルコールを最終容量濃度
が20〜70%になるように添加する。水分含量0〜50%ア
ルコールが使用出来る。添加後は1〜25℃の温度で1〜20
時間放置すると液面若しくは液中に浮遊または容器の壁
面に付着する物質が現れるので濾過、ピペッテイング或
いは網状のもので掬う等により採取除去する。
【0016】上記の様にして得られた抽出液はそのまま
直接に、濃縮した流動エキス或いは濃縮乾燥、噴霧乾
燥、真空乾燥若しくは凍結乾燥等常套の乾燥手段により
乾燥抽出エキス末として用いることが出来る。また抽出
液中にはβ-グルカン等の多糖体或いは多糖体とタンパ
ク質との複合体が含まれており、精製物を得るに当たっ
て沈殿法或いはクロマトグラフ法等、通常実施されてい
る精製法を用いうる事は言うまでもない。
【0017】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕製造方法 (1)乾燥マイタケ粉末(A) 人工栽培で作った生マイタケの枝部、傘部を棚型乾燥室
の棚にならべ約60℃〜約80℃の熱風を送り乾燥した。最
初は60℃から段階的に温度を上げ最終的には80℃でほぼ
1日かけて乾燥した。ついで乾燥マイタケを製粉機で粉
砕し、微粉末を得た。
【0018】(2)マイタケ抽出エキス(B) 生マイタケ2.5kgを厚さ2〜3cmにスライスし、
10lの湯浴中(95〜100℃)に浸漬して抽出を行
った後、濾過してBrix値1%の黒茶褐色の抽出液を
得た。この抽出液を減圧エバポレーター減圧下、75〜80
℃で濃縮してBrix値5%の濃縮液を得、ついでスプ
レードライ装置を用いて噴霧乾燥し、灰茶褐色を呈する
マイタケ熱水抽出エキス乾燥粉末60gを得た。
【0019】(3)精製マイタケ抽出エキス(C) マイタケ子実体乾燥粉末100gをイオン交換水1000ml
で、2気圧の加圧下120℃で30分間処理して後、濾過して
黒褐色の抽出液600mlを得た。該液を減圧下200mlま
で濃縮して室温で95%エタノール210mlを加え約18時
間放置すると、液面、液中に浮遊又は壁面に付着する茶
褐色の物質が生成した。これらの物質を金網で掬って除
去し、褐色の溶液を得た。該溶液を減圧下にアルコール
を除き、更に減圧下(24〜42kPa)70〜80℃で該液の
Brix値30%になるまで濃縮して黒褐色の濃厚な液を
得た。該溶液をスプレードライ装置を用いて噴霧乾燥
し、マイタケ特有の甘い香りの微細な褐色粉末19gを得
た。
【0020】〔実施例2〕活性の測定 (1) ヒドロキシラジカル消去活性 前記マイタケ由来(A)、(B)、(C)の水溶液各々
濃度0.2mg/ml、2.0mg/ml、20.0mg/m
lを調製し、ヒドロキシラジカル消去活性を測定した。
Fenton反応は上記調製した各群の0.2mg/ml、2.0m
g/ml,20mg/mlの水溶液 50μlに1mMの FeSO4
-DTAPAC溶液 75μlを加え、次いで10倍希釈したDMPO 2
0μlと0.1mMH2275μlを追加した。その後2秒間
撹拌し扁平セルにとり、日本電子社製 ESR(JES-FR30)
によりヒドロキシラジカルの発生量をDMPO-OHとして測
定した。掃引はH22を加えてから60秒後に開始した。
【0021】尚、ESR装置によるスペクトル解析は以下
の条件でおこなった。 磁場掃引幅:335.6mT、磁場変調:0.1mT、増幅率:
125、掃引時間:2min.、応答時間:0.1sec.、測定温
度:室温 測定の結果は図1の通りである。即ち、ヒドロキシラジ
カル消去活性は(A)及び(C)では20mg/ml、
(B)では2mg/mlで70%以上の活性を示すが、
最も高率であるのは、(C)の20mg/mlであるこ
とが分かった。
【0022】(2)スーパーオキシド アニオンラジカ
ル消去活性、スーパーオキシド ディスムターゼ(SO
D)活性 日本電子社製ERS装置(JES−FR30)を用いてマ
イタケ由来の前記(A)、(B)、(C)の各水溶液の
スーパーオキシド ディスムターゼ(SOD)活性の測
定をスピントラップ法により行った。即ち0.2mMの燐
酸緩衝液を溶媒として、ヒポキサンチン(HPX)溶液
2mM,Diethylenetriamine pentaacetic acid(DETAP
AC)溶液5.5mM、SOD溶液 0.1〜50U/ml、Xanthine
oxidase(XOD)溶液0.4U/mlを調製し、HPX、DETAPAC、
SOD溶液50、35、50μlにトラップ剤として5,5-dimethy
l-1-pyrroline-N-oxide(DMPO)を15μl(9.2M)を加
え、XOD溶液50μlと混和後120mmの石英セル内で発生す
るO2 --adduct のスペクトルを計測した。
【0023】O2 --adductの信号強度は内部標準Mnの信
号強度に対する相対強度として算出し、各種濃度のSOD
に対する検量線を作製する。ついで同様の方法で上記マ
イタケの3種の水溶液50μlに対するO2 --adductのスペ
クトルを計測し、コントロールである蒸留水に対する抑
制率(%)を求め、次いでScavenging rate(消去活性
率)を、作製した検量線から検体のスーパーオキシド
ディスムターゼ(SOD)活性に相当するスーパーオキ
シド ディスムターゼ(SOD)濃度として算出した。
【0024】結果は図2及び図3の通りである。即ち、
(A)、(B)、(C)いずれも20mg/mlにおい
て、スーパーオキシド アニオンラジカル消去活性及び
スーパーオキシド ディスムターゼ(SOD)活性が高
いが、中でも(C)が最も高い活性を示した。以上の結
果から、乾燥マイタケ粉末、マイタケ抽出エキス、精製
マイタケ抽出エキスは、いずれもヒドロキシラジカル消
去活性及びスーパーオキシド アニオンラジカル消去活
性、スーパーオキシド ディスムターゼ(SOD)活性
を有していることが明らかである。
【0025】
【発明の効果】マイタケ乾燥粉末、マイタケ抽出エキス
等マイタケ由来の物質により、活性酸素による生体内で
の傷害を防御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒドロキシラジカル消去活性を示す図。
【図2】スーパーオキシド アニオンラジカル消去活性
を示す図。
【図3】スーパーオキシド ディスムターゼ(SOD)活
性を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−65575(JP,A) 特開 平5−317016(JP,A) 特開 平9−238697(JP,A) 特開 昭62−209091(JP,A) 特開 昭59−210901(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 15/34 A61K 35/84 BIOSIS(DIALOG) JOIS

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイタケの乾燥粉末若しくは/及びマイ
    タケ抽出エキスを含有することを特徴とする活性酸素消
    去剤。
  2. 【請求項2】 マイタケ抽出エキスが、生マイタケ、乾
    燥マイタケ若しくは/及び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱
    水で抽出したものであることを特徴とする請求項1記載
    の活性酸素消去剤。
  3. 【請求項3】 マイタケ抽出エキスが、生マイタケ、乾
    燥マイタケ若しくは/及び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱
    水で抽出して得られる抽出液に、アルコールを加え放置
    後液面若しくは液中に浮遊又は壁面に付着する物質を取
    り除いたものであることを特徴とする請求項1記載の活
    性酸素消去剤。
  4. 【請求項4】 マイタケ抽出エキスが、生マイタケ、乾
    燥マイタケ若しくは/及び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱
    水で抽出して得られる抽出液に、アルコールを加え放置
    後液面若しくは液中に浮遊又は壁面に付着する物質を取
    り除き、該溶液よりアルコールを除いた後乾燥したもの
    であることを特徴とする請求項1記載の活性酸素消去
    剤。
  5. 【請求項5】 活性酸素がヒドロキシラジカル若しくは
    /及びスーパーオキシド アニオンラジカルであること
    を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の活性酸
    素消去剤。
  6. 【請求項6】 生マイタケ、乾燥マイタケ若しくは/及
    び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱水で抽出して得られる抽
    出液に、アルコールを加え放置後液面若しくは液中に浮
    遊又は壁面に付着する物質を取り除いて製造することを
    特徴とする活性酸素消去剤の製造方法。
  7. 【請求項7】 生マイタケ、乾燥マイタケ若しくは/及
    び乾燥マイタケ粉末を水乃至熱水で抽出して得られる抽
    出液に、アルコールを加え放置後液面若しくは液中に浮
    遊又は壁面に付着する物質を取り除き、該溶液よりアル
    コールを除いた後乾燥して製造することを特徴とする活
    性酸素消去剤の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7においてアルコールを、
    その最終容量濃度が20〜70容量%になるように加えるこ
    とを特徴とする活性酸素消去剤の製造方法。
  9. 【請求項9】 活性酸素がヒドロキシラジカル若しくは
    /及びスーパーオキシド アニオンラジカルであること
    を特徴とする請求項6、7又は8の何れかに記載の活性
    酸素消去剤の製造方法。
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