JP3259318B2 - バリスタ素子の製造方法 - Google Patents

バリスタ素子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアクティブマトリクス方
式の液晶表示装置に用いる二端子素子型の非線形素子の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば液晶テレビの画像表示装置には大
別して単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式
とがある。
【0003】単純マトリクス方式は直交して設けられた
一対の帯状電極群(行電極群と列電極群)の間に複数の
液晶画素を行列状に配して接続したものであり、これら
帯状電極間に駆動回路によって所定の電圧を印加して液
晶画素を作動させる。この方式は、構造が簡単なため低
価格でシステムを実現できるという利点があるが各液晶
画素間でのクロストークが生じるため、画素のコントラ
ストが低く、液晶テレビの画像表示を行う際には画質の
低下が避けられないものであった。
【0004】一方これに対して前記アクティブマトリク
ス方式は、各液晶画素毎にスイッチング素子を設けて液
晶画素にかかる電圧を所定の時間間隔中だけ保持するも
のであり、液晶表示装置を時分割駆動しても液晶画素が
選択時の電圧を保持することができることから、表示容
量の増大が可能であり、またコントラスト等の画質に関
する特性もよく、液晶テレビの高画質表示を実現できる
ものである。
【0005】しかしながら、アクティブマトリクス方式
にあっては構造が複雑になって製造コストが高くなって
しまうという欠点があった。例えば、スイッチング素子
として薄膜トランジスタを用いるTFT型では、その製
造工程において少なくとも通常5層以上の薄膜を重ねて
製造するため、製品歩留まりを上げることが非常に困難
であり、製造コストの増大、低い生産性、長い製造期間
を要する等の問題がある。
【0006】前記のようなことから、コントラスト等の
画質に関する特性がよく、かつ構造が簡単にして製造が
低コストな方式の液晶表示装置の実現が望まれており、
このような要求を実現する方式としてバリスタ素子を用
いた二端子素子型液晶表示装置が注目されている。
【0007】二端子素子型の液晶表示装置は、単純マト
リクス方式に改良を加えて、(図2)に示すように行電
極11と列電極15との間に液晶画素14と所定のしき
い値電圧で導通するバリスタ素子13とを電気的に直列
に配して接続したものであり、(図3)に示すようなバ
リスタ素子13の非線形な電流電圧特性を利用したもの
である。図中、Vcはしきい値電圧を示し、通常はI=
10-6(A)のときにバリスタ素子にかかる電圧値で表
す。尚、バリスタ素子の場合には、しきい値電圧のこと
を特にバリスタ電圧と称するのが一般的である。
【0008】(図4)に一般的な二端子素子型の液晶表
示装置を示す。ここに示すように、行電極11それぞれ
に対して多数の画素電極12が一定の間隔dをもって設
けられ、行電極11と画素電極12とは各バリスタ素子
13で一定のバリスタ電圧Vcをもって接続されてい
る。各液晶画素は、(図5)および(図6)にも示すよ
うに、下側ガラス基板10上に行電極11と画素電極1
2とを所定の間隔dを隔てて設け、これら行電極11と
画素電極12との間を主に酸化亜鉛からなるバリスタ素
子で接続してある。そして、所定の構成要素を介してこ
れらの上方を液晶14で満たし、さらに列電極15、カ
ラーフィルタ16、上側ガラス基板17を設けてある。
【0009】尚、バリスタ素子13は、(図7)に詳示
するように、酸化亜鉛結晶粒子131の表面をマンガ
ン、コバルト酸化物等の無機質絶縁膜132で被覆した
バリスタ粒子13aからなり、(図8)に詳示するよう
に、これらバリスタ粒子13aをガラスフリット13b
で焼結固化したものである。
【0010】次に、バリスタ素子の従来の製法の一例を
述べる。酸化亜鉛の微粉末原料にドーパントとして微量
のアルミニウムを添加混合し、さらに加熱し焼結させて
多結晶化した後、当該焼結体を粉砕、分級して酸化亜鉛
結晶粒子粉末を得る。次に、当該酸化亜鉛結晶粒子を熱
処理して角取りした後、当該酸化亜鉛結晶粒子の表面を
マンガン、コバルト酸化物絶縁膜等の無機質絶縁膜で被
覆してバリスタ粒子の粉末を形成する。
【0011】次に、当該バリスタ粒子の粉末に軟化点が
400℃以下の酸化鉛系のガラスフリットとエチルセル
ロースと溶剤を加えてペースト化し、当該ペーストを電
極を配した絶縁基板上にスクリーン印刷法により所定の
形状に印刷した後に、焼成固化してバリスタ素子が得ら
れる。
【0012】特に、表示ムラがなく高画質の二端子素子
型の液晶表示装置を実現するためには、バリスタ素子は
高性能を有し、安定性も高く、かつその性能が液晶表示
装置内の全面に渡って素子間で一定していることが要求
される。
【0013】しかしながら、従来技術によるバリスタ素
子は、軟化点が400℃以下のガラスフリットが用いら
れていたことから、焼成の際に、前記ペーストの一組成
であるエチルセルロースが十分には燃焼除去されてしま
わないうちに、ガラスフリットが溶融、個化してしま
い、結果としてエチルセルロースの燃焼残留成分がバリ
スタ素子内に含まれてしまっていた。そして、この燃焼
残留成分がバリスタ素子特性に悪影響を及ぼす一因とも
なっていた。つまり、バリスタ素子特性の素子間でのバ
ラツキは大きくなり、結果として表示ムラが発生し、高
画質の液晶表示装置を得ることを困難なものにしてい
た。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来の問
題点に鑑みなされたものであり、液晶表示装置の全面に
渡ってバリスタ素子間のバリスタ電圧特性のばらつきが
小さく、かつ個々のバリスタ素子特性にも優れたバリス
タ素子の製造方法を提供し、高コントラストで表示ムラ
がない、高画質の液晶表示装置を容易に得られるように
することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明が提供する手段は、すなわち、二端子素子型の
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置に用いるバリ
スタ素子の製造方法において、少なくとも、酸化亜鉛結
晶粒子の表面が無機質絶縁膜で被膜された粉末と、絶縁
性でかつ軟化点が400乃至460℃であり、少なくと
も酸化鉛85乃至35重量部、酸化ホウ素6乃至25重
量部、酸化亜鉛3乃至20重量部、および酸化アンチモ
ン3乃至20重量部からなるガラスフリットと、エチル
セルロースと、および溶剤とを加えてペースト化された
インクが、予め所定形状に電極を配してある絶縁基板上
にスクリーン印刷法により所定のパターンに印刷され、
しかる後に焼成固化されることを特徴とするバリスタ素
子の製造方法である。
【0016】また別の実施態様としては、二端子素子型
のアクティブマトリクス方式の液晶表示装置に用いるバ
リスタ素子の製造方法において、少なくとも、酸化亜鉛
結晶粒子の表面が無機質絶縁膜で被膜された粉末と、絶
縁性でかつ軟化点が400乃至460℃であり、少なく
とも酸化鉛85乃至35重量部、酸化ホウ素6乃至25
重量部、酸化亜鉛3乃至20重量部、酸化マンガン3乃
至10重量部、酸化コバルト3乃至10重量部からなる
ガラスフリットと、エチルセルロースと、および溶剤と
を加えてペースト化されたインクが、予め所定形状に電
極を配してある絶縁基板上にスクリーン印刷法により所
定のパターンに印刷され、しかる後に焼成固化されるこ
とを特徴とするバリスタ素子の製造方法である。
【0017】
【0018】ところで、焼成温度は(軟化点+50)℃
程度が通常は必要とされる。そして、これに対して本発
明にかかわるガラスフリットの軟化点に関しては前記の
ように400乃至460℃であり、特に好ましくは40
0乃至450℃である。
【0019】これはガラスフリットの軟化点が400℃
より低い場合には、焼成の際の温度がエチルセルロース
の燃焼温度と比較して同等もしくはそれ以下となり、こ
のため焼成固化の終盤に溶融したガラスフリットの存在
によって、エチルセルロースが十分には燃焼除去されな
いで残留成分が素子内に残り、バリスタ素子特性のバラ
ツキを増加させるという前記の結果につながる。
【0020】一方、前記軟化点が460℃よりも高い場
合には、必要とされる焼成温度とはすなわち510℃程
度以上となる。そして、前記絶縁基板として使用されて
いる低コストの青板ガラスの実用耐熱温度は約500℃
である。つまり、前記ガラス基板に課せられる要求、す
なわち、熱膨張や歪みが液晶表示装置の品質に与える影
響を極力回避したいという要求を考慮すると、前記51
0℃の焼成温度はもう上限に達しており、青板ガラスの
仕様によっては焼成温度はせいぜい500℃止まりとな
る。したがってガラスフリットの軟化点が460℃を越
えると、低コストが最重要課題の一つである液晶表示装
置に低コスト材料としての青板ガラスを使用することが
困難となってくる。
【0021】尚、絶縁基板として使用されているガラス
に関して、何らかの事情で、実用耐熱温度がもっと高い
ものを使用する場合には、それに応じて、ガラスフリッ
トの軟化点および焼成温度をもっと高くすることも可能
である。
【0022】そこで、前記要件を満足する軟化点を有す
るガラスフリットの組成についていくつか検討を行った
結果が前記のガラスフリットの組成である。すなわち、
一組成として酸化鉛85乃至35重量部、酸化ホウ素6
乃至25重量部、酸化亜鉛3乃至20重量部、酸化アン
チモン3乃至20重量部からなるもの、あるいは別の一
組成として酸化鉛85乃至35重量部、酸化ホウ素6乃
至25重量部、酸化亜鉛3乃至20重量部、酸化マンガ
ン3乃至10重量部、酸化コバルト3乃至10重量部か
らなるものがが良好であることがわかった。
【0023】これらのガラスフリットの製造方法は、従
来公知の方法を用いた。すなわち所定のガラス組成分を
配合し、高温で溶融させた後、水中にいれて急冷した後
に、所定の粒径になるまで微粉砕した。ガラスフリット
の粒径も電気特性に影響を与えるので、その平均粒径は
5μm以下におさめることが望ましい。
【0024】
【作用】本発明にかかわるバリスタ素子の製造方法によ
ると、軟化点が400〜460℃であるガラスフリット
を使用することにより、焼成温度の適性値として(前記
軟化点+50)℃を設定すると、450乃至510℃で
の焼成となり、エチルセルロースの燃焼除去が溶融した
ガラスフリットに阻害されることない。つまり、従来は
焼成固化後にバリスタ素子中に含まれていたエチルセル
ロースの残留成分を排除することが可能となる。したが
って、電気特性に悪影響を及ぼす残留異物がバリスタ粒
子間に存在することを回避できるようになる。
【0025】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して詳述する。
【0026】(図1)は、本発明の一実施例に係るバリ
スタ素子作製の工程図である。
【0027】まず、造粒工程101において市販の酸化
亜鉛微粉末(粒径1μm以下)にドーパントとしてアル
ミニウム0.003mol%をV型混合機を用い添加混
合した。次に焼結工程102において、1200℃で1
時間焼結し平均粒径6μm程度の結晶粒子を含む多結晶
体を形成した。次に粉砕工程103において前記多結晶
体を粉砕し、続いて分級工程104において、エアー分
級機を用いて分級し5μm〜8μmの粒径の酸化亜鉛結
晶粒子を得た。次に角取り焼成工程105において、1
000℃で1時間焼成して角取りを施し前記酸化亜鉛結
晶粒子を球状化した。次いで絶縁被膜形成工程106に
おいて、硝酸コバルト0.25mol%及び硝酸マンガ
ン0.50mol%を水に溶解して水溶液とし、この水
溶液に前記酸化亜鉛結晶粒子粉末を分散し、まず120
℃で水分を蒸発させ前記酸化亜鉛結晶粒子に金属被膜を
コーティング後、200℃に昇温し金属被膜を酸化し酸
化物被膜を生成する。さらに1100℃で1時間焼成
し、酸化亜鉛結晶粒子の表面に無機質絶縁膜を形成し、
得られた粉末を乳鉢等で軽くほぐしバリスタ粒子とし
た。
【0028】次にインク化工程107において、前記バ
リスタ粒子16重量部に対し軟化点430℃のガラスフリ
ットを4重量部、有機バインダーとしてエチルセルロー
ス(粘度45cps)を1重量部、有機溶剤としてカル
ビトールを8重量部加えて混練しペースト化した。次に
印刷工程108において、(図5)に示したようにクロ
ムからなる行電極11及び酸化インジウム・酸化スズ
(ITO)からなる画素電極12が予め設けられている
ガラス基板10上に、上記ペーストを400メッシュの
スクリーン印刷版を用いて所定形状に塗布し印刷基板を
得た。最後に焼成工程110において、480℃で1時
間焼成して固化させバリスタ素子13を得た。
【0029】本発明にかかわるバリスタ素子の製造方法
により得られたバリスタ素子の電気特性について以下に
述べる。周知のように、バリスタ素子の電流電圧特性は
次式で示される。
【0030】
【数1】
【0031】ここで、Iはバリスタ素子に流れる電流、
Vはバリスタ素子の電極間の電圧、Kは固有抵抗の抵抗
値に相当する定数、αは電圧非直線特性の指数を示して
いる。バリスタ特性は、バリスタ電圧Vcが小さいほど
良く、また電圧非直線指数α(通常α値と呼ばれる)が
大きいほど優れているといえる。またバリスタ素子特性
のバラツキの評価は、バリスタ電圧Vcの平均値に対す
るバリスタ素子特性のバラツキの割合で評価されるのが
通常である。
【0032】
【表1】
【0033】(表1)は、本発明にかかわるバリスタ素
子の製造方法による軟化点が430℃であるガラスフリ
ットを用いたバリスタ素子と、従来技術にかかわる軟化
点が370℃であるガラスフリットを用いたバリスタ素
子との、それぞれのバリスタ電圧Vc、α値、バリスタ
電圧Vcのバラツキを比較し示したものである。(表
1)より、本発明は従来法と比較して、バリスタ電圧V
cのバラツキに関しては大幅に低減され、かつバリスタ
電圧、α値ともに特性は同等であることが明らかであ
る。つまり、本発明によってバリスタ素子特性が素子間
で一定し、かつ高性能であるバリスタ素子の製造方法が
可能となった。
【0034】なお、本発明は液晶表示装置用のバリスタ
素子のみならず、一般的に用いられる厚膜バリスタにも
勿論適用することができる。
【0035】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によ
れば、液晶表示装置の全面に渡ってバリスタ素子間のバ
リスタ電圧特性のばらつきが小さく、かつ個々のバリス
タ素子特性もバリスタ電圧は低く、α値は大きいという
優れたバリスタ素子の製造方法を提供することができ、
これによって高コントラストで表示ムラがない、高画質
の液晶表示装置を容易に得られるようになった。
【0036】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわるバリスタ素子の製造方法の一
実施例の、工程を示す説明図である。
【図2】二端子素子型の液晶表示装置の概略構成図を示
す等価回路図である。
【図3】バリスタ素子の電圧電流特性図である。
【図4】一般的な液晶表示装置を平面図で示す説明図で
ある。
【図5】一般的な液晶表示装置の一区画の画素電極の付
近を平面図で示す説明図ある。
【図6】(図5)中の(イ)−(イ)での断面を示す説
明図である。
【図7】バリスタ粒子の概略の断面を示す説明図であ
る。
【図8】(図6)中のバリスタ素子の要部を拡大して示
す説明図である。
【符号の説明】
10・・・絶縁基板 11・・・行電極 12・・・画素電極 13・・・バリスタ素子 13a・・・バリスタ粒子 13b・・・ガラスフリット 14・・・液晶 15・・・列電極 16・・・配向膜 17・・・絶縁基板(対向側) 18・・・偏光板 131・・・酸化亜鉛結晶粒子 132・・・無機質絶縁膜

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二端子素子型のアクティブマトリクス方式
    の液晶表示装置に用いるバリスタ素子の製造方法におい
    て、少なくとも、酸化亜鉛結晶粒子の表面が無機質絶縁
    膜で被膜された粉末と、絶縁性でかつ軟化点が400乃
    至460℃であり、少なくとも酸化鉛85乃至35重量
    部、酸化ホウ素6乃至25重量部、酸化亜鉛3乃至20
    重量部、および酸化アンチモン3乃至20重量部からな
    るガラスフリットと、エチルセルロースと、および溶剤
    とを加えてペースト化されたインクが、予め所定形状に
    電極を配してある絶縁基板上にスクリーン印刷法により
    所定のパターンに印刷され、しかる後に焼成固化される
    ことを特徴とするバリスタ素子の製造方法。
  2. 【請求項2】二端子素子型のアクティブマトリクス方式
    の液晶表示装置に用いるバリスタ素子の製造方法におい
    て、少なくとも、酸化亜鉛結晶粒子の表面が無機質絶縁
    膜で被膜された粉末と、絶縁性でかつ軟化点が400乃
    至460℃であり、少なくとも酸化鉛85乃至35重量
    部、酸化ホウ素6乃至25重量部、酸化亜鉛3乃至20
    重量部、酸化マンガン3乃至10重量部、酸化コバルト
    3乃至10重量部からなるガラスフリットと、エチルセ
    ルロースと、および溶剤とを加えてペースト化されたイ
    ンクが、予め所定形状に電極を配してある絶縁基板上に
    スクリーン印刷法により所定のパターンに印刷され、し
    かる後に焼成固化されることを特徴とするバリスタ素子
    の製造方法。
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