JP3256943B2 - 皮膚貼付用粘着シート及び救急絆創膏 - Google Patents

皮膚貼付用粘着シート及び救急絆創膏

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JP3256943B2 JP27145799A JP27145799A JP3256943B2 JP 3256943 B2 JP3256943 B2 JP 3256943B2 JP 27145799 A JP27145799 A JP 27145799A JP 27145799 A JP27145799 A JP 27145799A JP 3256943 B2 JP3256943 B2 JP 3256943B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟質塩化ビニル系
樹脂からなる基材フィルム上に粘着剤層を設けてなる皮
膚貼付用粘着シートとその利用に関し、詳しくは、長期
間の経過後にも、基材フィルム上の粘着剤の粘着力が大
幅には低下せず、ほぼ当初の粘着力を保持している皮膚
貼付用粘着シートとその製造方法とその利用、例えば、
救急絆創膏としての利用に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、柔軟な基材フィルム上に粘着剤層
を設けてなる皮膚貼付用粘着シートは、ドレッシング、
巻絆等として用いられているほか、粘着剤層の表面の中
央域にガーゼ等の吸液性パッドを設けることによって、
救急絆創膏として、一般家庭において、広く用いられて
いる。更に、種々の薬剤を含有させた粘着剤からなる層
を基材フィルム上に設けた粘着性皮膚貼付薬シートは、
種々の医療用途に用いられている。
【0003】このような皮膚貼付用粘着シートのための
基材フィルムとしては、従来、柔軟で皮膚になじみよい
ほか、印刷性にすぐれる等の点から、所謂軟質塩化ビニ
ル系樹脂からなるフィルムが広く用いられている。この
ような軟質塩化ビニル系樹脂は、安全性の観点から、安
定剤としては、従来、一般的に、脂肪酸カルシウム−脂
肪酸亜鉛系安定剤とエポキシ化大豆油の組合わせが用い
られている。しかしながら、このような塩化ビニル系樹
脂からなる基材フィルムに、例えば、アクリル系粘着剤
を塗布して絆創膏とするとき、基材フィルムの粘着力が
時間の経過と共に低減し、従って、このように、粘着剤
の粘着力が低減した後は、皮膚に貼付しても、その端部
が皮膚から浮いたり、場合によっては、皮膚から剥がれ
るので、救急絆創膏としての機能を果たさないことさえ
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、従来の
塩化ビニル系樹脂フィルムを基材フィルムとする皮膚貼
付用粘着シートにおけるこのような問題を解決するため
に鋭意研究した結果、従来の塩化ビニル系樹脂フィルム
においては、可塑剤として配合されているエポキシ化大
豆油が経時的に基材フィルムから粘着剤層に移行して、
例えば、アクリル系粘着剤を架橋、硬化させ、かくし
て、粘着剤が初期の粘着力を喪失して、粘着力が経時的
に低減することを見出した。
【0005】そこで、本発明者らは、可塑剤として、エ
ポキシ化大豆油に代えて、ポリエステル系可塑剤を用い
ると共に、安定剤として、金属石ケンとハイドロタルサ
イトの組合わせを用いることによって、カレンダー加工
によるフィルムの製造に際しては、熱安定性にすぐれ、
しかも、得られるフィルムを基材フィルムとし、これに
粘着剤を塗布し、皮膚貼付用粘着シートとするとき、長
期間の経過の後にも、可塑剤の粘着剤層への移行がな
く、皮膚貼付用粘着シートがほぼ初期の粘着力を保持す
ることを見出して、本発明に至ったものである。
【0006】従って、本発明は、カレンダー加工による
基材フィルムの製造に際しては、熱安定性にすぐれ、し
かも、得られた基材フィルムに粘着剤を塗布して、皮膚
貼付用粘着シートとするとき、長期間が経過した後に
も、その粘着剤の粘着力が大幅には低下せず、ほぼ当初
の粘着力を保持している皮膚貼付用粘着シートとその
造方法とその利用としての救急絆創膏を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、基材フ
ィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が設けられている粘着
シートであって、上記基材フィルムが塩化ビニル系重合
体100重量部に対して、数平均分子量が1500〜3
000の範囲のポリエステル系可塑剤40〜70重量部
と、脂肪酸カルシウム−脂肪酸亜鉛の組合わせからなる
安定剤0.5〜2.5重量部と、ハイドロタルサイト0.1〜
1.0重量部とからなる樹脂組成物(エポキシ化大豆油を
含まない。)をカレンダー加工にてフィルムに成形して
なることを特徴とする皮膚貼付用粘着シートが提供され
【0008】また、本発明によれば、上記基材フィルム
上の粘着剤層の表面の中央域に吸液性パッドが設けられ
なることを特徴とする救急絆創膏が提供される
に、本発明によれば、基材フィルム上に皮膚貼付用の粘
着剤層が設けられている粘着シートの製造方法であっ
て、上記基材フィルムが塩化ビニル系重合体100重量
部に対して、数平均分子量が1500〜3000の範囲
のポリエステル系可塑剤40〜70重量部と、脂肪酸カ
ルシウム−脂肪酸亜鉛の組合わせからなる安定剤0.5〜
2.5重量部と、ハイドロタルサイト0.1〜1.0重量部と
からなる樹脂組成物(エポキシ化大豆油を含まない。)
をカレンダー加工にてフィルムに成形し、かくして、得
られた基材フィルム上に粘着剤層を設けることを特徴と
する皮膚貼付用粘着シートの製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、塩化ビニル系重
合体としては、塩化ビニルの単独重合体、即ち、ポリ塩
化ビニルのほか、塩化ビニルと種々の共単量体との共重
合体が用いられる。そのような共単量体として、例え
ば、エチレン、プロピレン等のような炭素数2〜4のエ
チレン性不飽和炭化水素、酢酸ビニル、アクリル酸、ア
クリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステ
ル、マレイン酸、フマル酸、アクリロニトリル、塩化ビ
ニリデン、スチレン等を挙げることができる。上記アク
リル酸エステルとメタクリル酸エステルはアルキルエス
テルであることが好ましく、特に、上記アルキル基は炭
素数が1〜10の範囲にあることが好ましい。このよう
なアルキル基の具体例として、例えば、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチ
ル、ノニル、デシル等を挙げることができる。これら共
単量体は単独で、又は2種以上が組合わせて用いられ
る。
【0010】従って、本発明において、塩化ビニル系重
合体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−
エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等
が好ましい具体例として挙げられ、特に、本発明におい
ては、ポリ塩化ビニルが好ましく用いられる。これら塩
化ビニル系重合体の平均重合度は、通常、500〜15
00の範囲が好ましく、特に、700〜1300の範囲
が好ましい。平均重合度が500よりも小さいときは、
得られる基材フィルムが機械的強度において十分ではな
く、他方、平均重合度が1500を越えるときは、可塑
剤との相溶性が低下する傾向を有するようになる。
【0011】このような塩化ビニル系重合体に可塑剤や
安定剤等を配合して、樹脂組成物とし、これをカレンダ
ー加工して、軟質塩化ビニル系樹脂からなるフィルムと
することによって、本発明による皮膚貼付用粘着シート
のための基材フィルムを得ることができる。
【0012】本発明によれば、上記可塑剤として、従来
のエポキシ化大豆油に代えて、ポリエステル系可塑剤が
用いられる。ポリエステル系可塑剤とは、例えば、アジ
ピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフ
タル酸、テレフタル酸等のような炭素数2〜10の脂肪
族及び芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチ
ルグリコール等のような炭素数2〜10のグリコールと
の縮重合によるポリエステルからなり、特に、本発明に
よれば、数平均分子量が1500〜3000の範囲にあ
るものが塩化ビニル系重合体100重量部に対して40
〜70重量部、好ましくは、45〜65重量部の範囲で
用いられる。
【0013】ポリエステル系可塑剤の数平均分子量が1
500よりも小さいときは、これを配合した基材フィル
ムから粘着剤層に移行し、経時的に粘着剤の粘着力を低
減させる。しかし、ポリエステル系可塑剤の数平均分子
量が3000よりも大きいときは、塩化ビニル系重合体
との相溶性が悪く、カレンダー加工による基材フィルム
の製造が困難であるのみならず、得られた基材フィルム
において、可塑剤が表面にブリードアウトして、粘着剤
の基材フィルムへの接着力を低減させる。
【0014】また、ポリエステル系可塑剤の配合量は、
特に、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとし
て、柔軟で皮膚になじみよい適切な弾性率を有するよう
に、塩化ビニル系重合体100重量部に対して、通常、
40〜70重量部の範囲で用いられる。
【0015】皮膚貼付用粘着シートのための基材フィル
ムとしての塩化ビニル系樹脂フィルムにおいては、従来
より、安定剤として、金属石ケンが用いられているが、
しかし、金属石ケンのみでは、カレンダー加工によるフ
ィルムの製造に際して、樹脂組成物の熱安定性が不十分
であり、樹脂組成物の変色や分解を生じる。しかし、金
属石ケンを徒に多量に配合しても、ブルームやブリード
が生じて、基材フィルムに対する粘着剤の接着力が低減
することとなる。
【0016】そこで、本発明によれば、安定剤として
属石ケンとハイドロタルサイトとが組合わせて用いら
れる。上記金属石ケンのなかでは、特に、組合わせによ
る相乗効果による安定化効果の高い脂肪酸カルシウム−
脂肪酸亜鉛の組合わせからなる安定剤(以下、Ca−Z
n系安定剤という。)が好ましく用いられる。
【0017】上記金属石ケンとしては、例えば、ラウリ
ン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール
酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ス
テアリン酸亜鉛等が好ましく用いられる。
【0018】ハイドロタルサイトは、カレンダー加工に
おいて、樹脂組成物に求められる熱安定性を与えるほ
か、使用や保管中のフィルムに酸化や分解に対する抵抗
性をも与えて、フィルムの寿命を長くすることができ
る。しかし、ハイドロタルサイトのみを安定剤として用
いるときは、その配合量の如何にかかわらず、樹脂組成
物のカレンダー加工時の樹脂組成物の熱安定性が著しく
悪く、樹脂が変色や分解を起こすので、樹脂組成物をフ
ィルムに成形することができない。
【0019】ハイドロタルサイトは、一般に、次の組成
式 Mg1-x Alx (OH)2(CO3) x/2 ・ m H2O で表わされる不定比の塩基性炭酸マグネシウムアルミニ
ウムであって、通常、xは、0<x≦0.33、mは、0
≦m≦0.5の範囲であり、市販品を入手することができ
る(「石灰と石膏、」第187巻第47〜53頁(19
83年))。
【0020】本発明において、Ca−Zn系安定剤の配
合量は、特に、限定されるものではないが、好ましく
は、塩化ビニル系重合体100重量部に対して、0.5〜
2.5重量部の範囲である。Ca−Zn系安定剤の配合量
が塩化ビニル系重合体100重量部に対して0.5重量部
よりも少ないときは、安定剤として、ハイドロタルサイ
トと組合わせて用いても、樹脂組成物がカレンダー加工
時、熱安定性が不足する場合がある。しかし、Ca−Z
n系安定剤の配合量が塩化ビニル系重合体100重量部
に対して2.5重量部よりも多いときは、ブルームやブリ
ードを生じて、基材フィルムに対する粘着剤の接着力を
低減させる場合がある。
【0021】本発明においては、上記Ca−Zn系安定
と組合わせて用いるハイドロタルサイトは、塩化ビニ
ル系重合体100重量部に対して、0.1〜1.0重量部の
範囲で用いられる。ハイドロタルサイトの配合量が塩化
ビニル系重合体100重量部に対して0.1重量部よりも
少ないときは、樹脂組成物のカレンダー加工時、熱安定
性が不足して、樹脂組成物の変色が生じる。しかし、ハ
イドロタルサイトの配合量が塩化ビニル系重合体100
重量部に対して1.0重量部よりも多いときは、ハイドロ
タルサイトに起因する好ましくない着色を生じる。
【0022】このように、本発明によれば、皮膚貼付用
粘着シートのための基材フィルムとして、可塑剤として
ポリエステル系可塑剤を配合し、安定剤としてCa−Z
n系安定剤と共にハイドロタルサイトを配合してなる塩
化ビニル系樹脂組成物からなるものを用いるが、このよ
うな基材フィルムは、その製造面からみれば、上記樹脂
組成物をカレンダー加工にてフィルムに成形する際、熱
安定性にすぐれており、望ましくない着色等が起こら
ず、しかも、このようにして得られる基材フィルム上に
皮膚貼付用の粘着剤層を設けてなる皮膚貼付用粘着シー
トは、可塑剤が粘着剤層に移行しないので、長期間の経
過の後にも、その粘着力が大幅には低下せず、ほぼ当初
の値を保持している。
【0023】本発明によれば、皮膚貼付用粘着シートの
ための基材フィルムは、必要に応じて、上記Ca−Zn
安定剤と共に、従来より知られている安定剤、例え
ば、有機亜リン酸エステル系安定剤を含んでいてもよ
い。但し、このように必要に応じて用いる安定剤は、基
材フィルムから粘着剤層に移行しないか、又は移行して
も、基材フィルムに対する粘着剤の粘着力を低減させな
いものに限られる。更に、本発明によれば、皮膚貼付用
粘着シートのための基材フィルムは、必要に応じて、塩
化ビニル系樹脂に配合することが従来よりよく知られて
いる種々の添加剤、例えば、着色剤、光安定剤、酸化防
止剤、紫外線吸収剤、改質剤、充填剤、難燃剤、帯電防
止剤、防黴剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0024】本発明による皮膚貼付用粘着シートのため
の基材フィルムは、皮膚に貼付したとき、なじみよく、
皮膚によく追随し、違和感がないように、その厚みは、
40〜100μmの範囲であるのが好ましい。
【0025】このような皮膚貼付用粘着シートのための
基材フィルムは、本発明に従って、好ましくは、前述し
たように、塩化ビニル系重合体100重量部に対して、
数平均分子量が1500〜3000の範囲のポリエステ
ル系可塑剤40〜70重量部と、Ca−Zn系安定剤0.
5〜2.5重量部と、ハイドロタルサイト0.1〜1.0重量
部と、必要に応じて、上述したような添加剤を配合して
なる樹脂組成物をカレンダー加工にてフィルムに成形す
ることによって得ることができる。本発明によれば、可
塑剤として、ポリエステル系可塑剤を含むと共に、安定
剤として、Ca−Zn系安定剤とハイドロタルサイトを
含むので、カレンダー加工に際して、樹脂組成物が熱安
定性にすぐれ、望ましくない着色等が起こらない。
【0026】本発明による皮膚貼付用粘着シートは、上
述したような基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層を
設けることによって得ることができる。
【0027】上記粘着剤としては、従来より知られてい
るアクリル系粘着剤や天然ゴム系粘着剤のほか、合成ゴ
ム系、シリコーン系、ビニルエーテル系の粘着剤等、皮
膚刺激性が少なく、医療用粘着剤として用いることがで
きるものであれば、特に、限定されることなく、任意の
ものが用いられる。
【0028】しかしながら、本発明においては、種々の
粘着剤のなかでも、皮膚に対するアレルギー性が少ない
等の皮膚病理学的見地から、アクリル系粘着剤が好まし
く用いられる。
【0029】なかでも、本発明によれば、ガラス転移点
の低い重合体を与える2−エチルヘキシルアクリレー
ト、イソノニルアクリレート等、アルキル基の炭素数が
4〜12であるアルキルアクリレートを主成分単量体と
し、これに必要に応じて、凝集力を与える成分として、
アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキル(メタ)ア
クリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エ
チル(メタ)アクリレート等)、酢酸ビニル、N−メチ
ル−2−ピロリドン等のビニルエステルや、更に、凝集
力と共に架橋点を与える成分として、(メタ)アクリル
酸や、例えば、炭素数2〜10のアルキル基を有するヒ
ドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒド
ロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル
等)等の水酸基又はカルボキシル基等の極性基を有する
単量体を共単量体成分として、これらを共重合してなる
アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤が好ましく
用いられる。このように、水酸基又はカルボキシル基等
の極性基を有する単量体を共単量体成分として含むと
き、アクリル系粘着剤は水酸基又はカルボキシル基を含
有し、基材フィルムに対する粘着力にすぐれるので好ま
しい。これらの単量体を適宜の脂肪族炭化水素、脂環族
炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族カルボン酸エステル
等の有機溶剤、例えば、酢酸エチルやトルエン中で共重
合させることによって、有機溶剤系のアクリル系粘着剤
を得ることができる。
【0030】しかしながら、本発明によれば、皮膚貼付
用の粘着剤は、上記有機溶剤系に限らず、エマルジョン
系、ホットメルト系等、任意の形態で用いられる。ま
た、これらの粘着剤は、単独で用いられてもよく、ま
た、2種以上の複数が併用されてもよい。粘着剤層の厚
みは、皮膚に対する接着性の点から、通常、20〜80
μmの範囲であり、好ましくは、30〜60μmの範囲
である。
【0031】本発明によれば、必要に応じて、粘着剤に
架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ト
リレンジイソシアネート−トリメチロールプロパン付加
物のような変性ポリイソシアネートや、アルミニウムト
リス(エチルアセトアセテート)のようなキレーターと
呼ばれる有機金属化合物を例示することができる。この
ような架橋剤を少量、例えば、0.05〜1重量%、粘着
剤に配合し、基材フィルムに塗工、乾燥させた後、必要
に応じて、加熱することによって、アクリル系粘着剤を
架橋させて、その粘着力を調節することができる。
【0032】更に、本発明によれば、基材フィルム上に
皮膚貼付用の粘着剤層を形成するに先立って、基材フィ
ルムの表面をコロナ放電処理したり、既に知られている
種々のプライマーを塗布したりして、基材フィルムと粘
着剤との間の濡れ性や投錨効果を高めてもよい。
【0033】基材フィルム上に粘着剤層を設けるには、
基材フィルム上に粘着剤の溶液を直接、塗布し、乾燥さ
せ、また、基材フィルム上にホットメルト粘着剤を溶融
させ、直接、押出機にて塗布してもよい。しかし、基材
フィルムの不必要な伸びや曲がり(カール)を防止する
ためには、適宜の方法にて剥離紙の片面に予め粘着剤層
を形成し、この粘着剤層の上に基材フィルムを貼り合わ
せて、上記粘着剤層を基材フィルムに転写する所謂転写
法によるのが好ましい。
【0034】本発明による皮膚貼付用粘着シートは、ド
レッシングや巻絆等として用いることができるほか、粘
着剤層の表面の中央域にガーゼ等の布帛やスポンジパッ
ド等の創傷部を保護するための吸液性パッドを設けるこ
とによって、救急絆創膏とすることができる。
【0035】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。尚、以下の実施例及び比較例において、Ca−Zn
系安定剤として、大日本インキ化学工業(株)製Mシリ
ーズを用い、ポリエステル系可塑剤として、大日本イン
キ化学工業(株)製ポリサイザーWを用いた。
【0036】実施例1 表1に示すように、ポリ塩化ビニル(平均重合度130
0)にCa−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト(協和
化学工業(株)製アルカマイザーI、前記式において、
x=0.33、m=0.50)、種々の数平均分子量を有す
るポリエステル系可塑剤(大日本インキ化学工業(株)
製ポリサイザーW)を配合した後、ヘンシェルミキサー
にて十分混合した後、密閉式混練機で混練し、ストレー
ナーを通過させ、逆L型4本カレンダー装置(ロール表
面温度180℃)を用いて、塩化ビニル樹脂からなる厚
み70μmの粘着シート用基材フィルムを得た。
【0037】別に、市販のアクリル系粘着剤(リキダイ
ン(株)製AR−2045)100重量部に架橋剤とし
て変性ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業
(株)製コロネートL)0.02重量部(固形分)を配合
して粘着剤を調製した。この粘着剤を上記基材フィルム
に乾燥厚み35μmに塗布した。
【0038】このようにして、基材フィルムの表面上に
粘着剤層を設けた皮膚貼付用粘着シートからなる試料に
ついて、常温(23℃)で放置し、又は70℃で15日
間放置して促進劣化させた後、試料を19mm幅でステ
ンレス板に貼付し、測定前、23℃で24時間放置した
後、定速伸長引張試験機を用いて、JIS Z 023
7に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/
分で測定した。試料の経時粘着力は、促進劣化後の剥離
力の常態剥離力に対する維持率によって評価した。結果
を表1に示す。
【0039】実施例2及び3 表1に示す樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同
様にして、基材フィルムを得、これに粘着剤を塗布した
皮膚貼付用の粘着シートの試料について、実施例1と同
様にして、常態剥離力と促進劣化後の剥離力の維持率を
求めた。結果を表1に示す。
【0040】実施例4 表1に示すように、ハイドロタルサイトの配合量を変え
た以外は、実施例1と同様にして、基材フィルムを得、
これに粘着剤を塗布した皮膚貼付用の粘着シートの試料
について、実施例1と同様にして、常態剥離力と促進劣
化後の剥離力の維持率を求めた。結果を表1に示す。
【0041】比較例1 表1に示すように、数平均分子量1000のポリエステ
ル系可塑剤(大日本インキ化学工業(株)製ポリサイザ
ーW−1000)を用いて、樹脂組成物を調製した以外
は、実施例1と同様にして、基材フィルムを得、これに
粘着剤を塗布した皮膚貼付用の粘着シートの試料につい
て、実施例1と同様にして、常態剥離力と促進劣化後の
剥離力の維持率を求めた。結果を表1に示す。
【0042】比較例2 表1に示すように、可塑剤として、ポリエステル系可塑
剤に代えて、フタル酸ジオクチルを用いて、樹脂組成物
を調製した以外は、実施例1と同様にして、基材フィル
ムを得、これに粘着剤を塗布した皮膚貼付用の粘着シー
トの試料について、実施例1と同様にして、常態剥離力
と促進劣化後の剥離力の維持率を求めた。結果を表1に
示す。
【0043】比較例3 表1に示すように、安定剤として、Ca−Zn系安定剤
のみを配合し、ハイドロタルサイトを用いなかった以外
は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、基材
フィルムを得、これに粘着剤を塗布した皮膚貼付用の粘
着シートの試料について、実施例1と同様にして、常態
剥離力と促進劣化後の剥離力の維持率を求めた。結果を
表1に示す。
【0044】比較例4 表1に示すように、可塑剤として数平均分子量2300
のポリエステル系可塑剤(大日本インキ化学工業(株)
製ポリサイザーW−2310)を用いると共に、安定化
剤として、Ca−Zn系安定剤とエポキシ化大豆油(大
日本インキ化学工業(株)製W−100EL)の組合わ
せを用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物
を調製し、基材フィルムを得、これに粘着剤を塗布した
皮膚貼付用の粘着シートの試料について、実施例1と同
様にして、常態剥離力と促進劣化後の剥離力の維持率を
求めた。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】参考例1 2−エチルヘキシルアクリレート100重量部と酢酸ビ
ニル40重量部とアクリル酸5重量部とを酢酸エチル中
で共重合させて、固形分濃度35重量%のアクリル系粘
着剤Aの溶液を得た。
【0047】参考例2 イソノニルアクリレート65重量部と酢酸ビニル35重
量部を酢酸エチル中で共重合させて、固形分濃度35重
量%のアクリル系粘着剤Bの溶液を得た。
【0048】参考例3 天然ゴム100重量部、スチレン−ブタジエン共重合体
100重量部、テルペン樹脂170重量部、低重量平均
分子量ポリイソプレン(重量平均分子量30000)1
00重量部及び安定剤としてのビスフェノール3重量部
をトルエン中で均一に混合して、固形分濃度25重量%
のゴム系粘着剤Cの溶液を得た。
【0049】実施例5 ポリ塩化ビニル(平均重合度1300)100重量部に
Ca−Zn系安定剤1.0重量部、ハイドロタルサイト
(協和化学工業(株)製アルカマイザーI)0.7重量
部、数平均分子量2300のポリエステル系可塑剤(大
日本インキ化学工業(株)製ポリサイザーW−231
0)を配合した後、ヘンシェルミキサーにて十分混合し
た後、密閉式混練機で混練し、ストレーナーを通過さ
せ、逆L型4本カレンダー装置(ロール表面温度180
℃)を用いて、厚み70μmの塩化ビニル樹脂からなる
基材フィルムを得た。
【0050】別に、片面をシリコーン樹脂で剥離処理し
て得た剥離紙上に上記参考例1で調製した粘着剤Aの溶
液を乾燥厚み約40μmとなるように塗布し、乾燥させ
て、粘着剤層を形成した。次に、この粘着剤層の上に上
記基材フィルムを重ね、粘着剤層を基材フィルムに転写
して、皮膚貼付用粘着シートを得た。
【0051】このようにして得た皮膚貼付用粘着シート
から19mm幅、150mm長さの試料を調製し、これ
をフェノール樹脂板に貼付した後、粘着シートの粘着力
の初期値と、50℃又は70℃の恒温器中に30日間放
置した後の粘着力とを測定した。粘着力は、温度23±
2℃、相対湿度65±15%の条件下に、定速伸長引張
試験機を用いて、JIS Z 0237に準じて、30
0mm/分の引張強さ速度にて180度ピーリング試験
を行なった。結果を表2に示す。
【0052】実施例6及び7 前記参考例2及び3で調製した粘着剤B及びCからなる
層をそれぞれ実施例5で調製した基材フィルムに厚み約
40μmとなるように形成して、皮膚貼付用粘着シート
を得、これらについて、実施例5と同様にして、その粘
着力を測定した。結果を表2に示す。
【0053】比較例5 比較例4で調製した基材フィルム上に、実施例5と同様
にして、粘着剤層を形成して、皮膚貼付用粘着シートを
得、これについて、実施例5と同様にして、粘着力を測
定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】実施例8 実施例5で調製した皮膚貼付用粘着シートを50℃で3
0日間放置した後、19mm幅、72mm長さに裁断し
て試料とした。この試料を試験者10人の指第二関節に
それぞれ8時間貼付し、日常の水仕事を行なった後、皮
膚への接着性と指からの剥離時の皮膚への糊残りを調べ
た。
【0056】評価基準を5がよい、3が普通、1が悪い
の5段階で評価したところ、皮膚への接着性の評価は5
であり、糊残りの評価は4であった。
【0057】比較例6 比較例5で調製した皮膚貼付用粘着シートを50℃で3
0日間放置した後、19mm幅、72mm長さに裁断し
て試料とした。この試料について、実施例8と同様にし
て、皮膚への接着性と指からの剥離時の皮膚への糊残り
を調べたところ、皮膚への接着性の評価は2(3人につ
いて、貼付中に剥がれが生じた。)であり、糊残りの評
価は5であった。
【0058】実施例9 表3に示すように、ポリ塩化ビニル(平均重合度130
0)にCa−Zn系安定剤、ハイドロタルサイト(協和
化学工業(株)製アルカマイザーI)、数平均分子量2
300のポリエステル系可塑剤(大日本インキ化学工業
(株)製ポリサイザーW−2310)を配合し、ヘンシ
ェルミキサーにて十分混合し、樹脂組成物を調製した。
この樹脂組成物について、表面温度180℃のロールを
用いて、15分間、混練する耐熱試験を行なって、変色
(ΔE)の程度を調べた。結果を表2に示す。ΔEが1.
0よりも小さいとき、樹脂組成物はカレンダー加工性が
あると判定できる。更に、上記樹脂組成物について、プ
ラストミル(190℃×60rpm)を用いて、カレン
ダー加工性を調べた。分解時間が15分以上であると
き、樹脂組成物はカレンダー加工性があると判定でき
る。
【0059】比較例7〜9 表3に示す樹脂組成物を調製した以外は、実施例9と同
様にして、樹脂組成物を調製し、カレンダー加工性を調
べた。結果を表3に示す。比較例7及び8の樹脂組成物
は、カレンダー加工性をもたない。比較例9の樹脂組成
物は、カレンダー加工にてフィルムを得ることができる
が、ハイドロタルサイトに代えて、エポキシ化大豆油を
含むので、得られた基材フィルムに粘着剤を塗布した皮
膚貼付用の粘着シートは、その粘着力が経時的に低下す
る。
【0060】実施例10 実施例1〜9の皮膚貼付用粘着シート(19mm×72
mm)の中央域にガーゼからなる吸液性パッド(15m
m×36mm)を貼付して、本発明による救急用絆創膏
を調製した。
【0061】
【表3】
【0062】
【発明の効果】以上のように、本発明による皮膚貼付用
粘着シートは、可塑剤としてポリエステル系可塑剤を配
合し、安定剤としてCa−Zn系安定剤と共にハイドロ
タルサイトを配合してなる軟質塩化ビニル系樹脂からな
る基材フィルムを用い、これに粘着剤層を設けてなるも
のであるので、例えば、長期間の経過の後にも、粘着剤
は、大幅な粘着力の低下がなく、ほぼ当初の粘着力を保
持している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−14973(JP,A) 特開 平7−188490(JP,A) 特開 平10−36784(JP,A) 特開 平9−316403(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 15/00 - 15/64 A61F 13/00 - 13/04 A61K 9/00 - 9/70 C09J 7/00 - 7/04 C08K 3/00 - 3/40 C08K 5/00 - 5/24 C08J 5/00 - 5/24 C08L 27/00 - 27/24

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が
    設けられている粘着シートであって、上記基材フィルム
    が塩化ビニル系重合体100重量部に対して、数平均分
    子量が1500〜3000の範囲のポリエステル系可塑
    剤40〜70重量部と、脂肪酸カルシウム−脂肪酸亜鉛
    の組合わせからなる安定剤0.5〜2.5重量部と、ハイド
    ロタルサイト0.1〜1.0重量部とからなる樹脂組成物
    (エポキシ化大豆油を含まない。)をカレンダー加工に
    てフィルムに成形してなることを特徴とする皮膚貼付用
    粘着シート。
  2. 【請求項2】塩化ビニル系重合体がポリ塩化ビニルであ
    る請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  3. 【請求項3】粘着剤が水酸基又はカルボキシル基を含有
    するアクリル系粘着剤である請求項1に記載の皮膚貼付
    用粘着シート。
  4. 【請求項4】アクリル系粘着剤がアクリル酸アルキルエ
    ステルを主成分単量体とし、これに(メタ)アクリル酸
    ヒドロキシアルキルエステル又は(メタ)アクリル酸を
    共重合してなる共重合体からなる請求項3に記載の皮膚
    貼付用粘着シート。
  5. 【請求項5】請求項1から4のいずれかに記載の皮膚貼
    付用粘着シートの粘着剤層の表面の中央域に吸液性パッ
    ドを設けてなる救急絆創膏。
  6. 【請求項6】基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が
    設けられている粘着シートの製造方法であって、上記基
    材フィルムが塩化ビニル系重合体100重量部に対し
    て、数平均分子量が1500〜3000の範囲のポリエ
    ステル系可塑剤40〜70重量部と、脂肪酸カルシウム
    −脂肪酸亜鉛の組合わせからなる安定剤0.5〜2.5重量
    部と、ハイドロタルサイト0.1〜1.0重量部とからなる
    樹脂組成物(エポキシ化大豆油を含まない。)をカレン
    ダー加工にてフィルムに成形し、かくして、得ら れた基
    材フィルム上に粘着剤層を設けることを特徴とする皮膚
    貼付用粘着シートの製造方法。
  7. 【請求項7】塩化ビニル系重合体がポリ塩化ビニルであ
    る請求項6に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
  8. 【請求項8】粘着剤が水酸基又はカルボキシル基を含有
    するアクリル系粘着剤である請求項6に記載の皮膚貼付
    用粘着シートの製造方法。
  9. 【請求項9】アクリル系粘着剤がアクリル酸アルキルエ
    ステルを主成分単量体とし、これに(メタ)アクリル酸
    ヒドロキシアルキルエステル又は(メタ)アクリル酸を
    共重合してなる共重合体からなる請求項8に記載の皮膚
    貼付用粘着シートの製造方法。
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