JP3256460B2 - 酸化物磁性材料およびその製造方法 - Google Patents

酸化物磁性材料およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、比抵抗が高く、
コアロスの少ない酸化物磁性材料およびその製造方法に
関し、特に2MHz 〜10MHz の高周波帯域で使用されるス
イッチング電源用メイントランス、中でもチップトラン
スや薄膜トランスのように巻線と磁性材料が一体構造と
なっているトランス用のコア材料として好適なものであ
る。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源は、100kHz〜200kHz帯
域の変換周波数で使用されるのが一般的であり、このよ
うなスイッチング電源のトランス材料としては、従来か
らMnZnフェライトが用いられている。ところが、最近で
は、電子機器の小型軽量化に伴い、さらに高い周波数域
でもコアロスが低い値を示す酸化物磁性材料に対する要
求が高まっている。
【0003】上記の要求に対し、従来から用いられてい
る上記MnZnフェライトであっても、基本成分組成や微量
添加物、粉砕方法、焼成方法等に工夫を加えることによ
り、2〜3MHz 程度の周波数域までであれば、コアロス
が小さく、かつ所望の温度特性を有する材料を得ること
ができる。しかしながら、従来のMnZnフェライトでは、
それ以上の高周波数域でコアロスが小さいものを安定し
て得ることは困難であった。ここに、コアロスとは、ヒ
ステリシス損失、うず電流損失および残留損失の和を意
味する。
【0004】そこで、2〜3MHz を超える高周波数域で
は、MnZnフェライトに代わるトランス材料として、高周
波数域でのコアロスが小さくかつ高抵抗のNiZn系フェラ
イトが注目されている。
【0005】なお、部品の小型化、自動実装化という最
近の傾向に伴い、小型インダクタンス素子のチップ化が
進んでおり、このようなチップインダクタでは、巻線と
磁性材料を一体構造とするため、それに用いる磁性材料
として高抵抗を示すNiZn系フェライトが既に使用されて
いる。しかしながら、上記のNiZn系フェライトは、励磁
電流の微弱な信号処理用に開発されたものであるため、
スイッチング電源用トランスのように大電流で励磁する
とヒステリシス損失が大きくなるという問題があった。
【0006】この点、発明者らは先に、上記の問題を解
決するものとして、特願平8−22579号明細書にお
いて、高周波数域で低いコアロスを示すNiZn系フェライ
トを提案した。しかしながら、携帯電子機器の急激な普
及に伴い、電池の長寿命化を図るために、より消費電力
が少なく、コアロスの低いトランス材料が望まれてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の要
望に有利に応えるもので、高抵抗(比抵抗≧1 MΩcm)
で、かつ2MHz 〜10MHz の高周波数域にて大電流で励磁
してもコアロスの小さい〔100 ℃、Bm ×f≦60 kHz・
T(ここでBm : 飽和磁束密度、f:周波数)の条件下
で1000 kW/m3未満)NiZn系フェライトを、その有利な製
造方法と共に提案することを目的とする。ここに、コア
ロスの値が小さいほど発熱し難く、また比抵抗が高いほ
ど優れた絶縁性を呈する。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の内容を要旨
構成とするこの発明を開発するに至ったのである。すな
わち、この発明の要旨構成は次のとおりである。 1. Fe2O3:48〜51 mol%、ZnO:1〜25 mol%、Ni
O:24〜51 mol%からなる基本成分中に、MoO3換算で0.
50wt%以下のMo酸化物とCoO換算で1.0 wt%以下のCo酸
化物を含有する組成になり、平均結晶粒径が1〜3μm
で、かつ焼結密度が理論密度の85%以上であることを特
徴とする酸化物磁性材料。
【0009】2. Fe2O3:48〜51 mol%、ZnO:1〜25
mol%、CuO:8 mol%未満かつ(NiO+CuO):24〜
51 mol%からなる基本成分中に、MoO3換算で0.50wt%以
下のMo酸化物とCoO換算で1.0 wt%以下のCo酸化物を含
有する組成になり、平均結晶粒径が1〜3μm で、かつ
焼結密度が理論密度の85%以上であることを特徴とする
酸化物磁性材料。
【0010】3.上記1または2において、ZnOの量お
よびCoOの量を、トランスの駆動周波数f(MHz)に応じ
て、下記式の範囲に調整することを特徴とする酸化物磁
性材料。 記 −1.7 ×f+30−2.0 ≦ZnO+10×CoO≦−1.7 ×f+
30+2.0 ただし、2≦f≦10 (MHz) 1≦ZnO≦25 (mol%) CoO≦1.0 (wt%)
【0011】4.基本成分として、 Fe2O3,ZnOおよび
NiO、さらにはCuOを所定量混合し、仮焼して得られる
フェライト仮焼粉に副成分を添加して粉砕し、ついで、
造粒して成形した後、焼成することによって酸化物磁性
材料を製造するに当たり、上記副成分として、MoO3換算
で0.50wt%以下のMo酸化物とCoO換算で 1.0wt%以下の
Co酸化物を添加し、1000〜1130℃の温度範囲に保持して
焼成することを特徴とする酸化物磁性材料の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明す
る。まず、この発明に係る酸化物磁性材料について、基
本成分を上記の範囲に限定した理由について説明する。 Fe2O3 : 48〜51 mol% Fe2O3 の含有量が、48 mol%に満たないと、トランスの
磁心などに使用する場合に、安全性の観点から重視され
る高周波駆動時の 100℃におけるコアロスに関し、ヒス
テシス損失を低減することができない。一方、51 mol%
を超えると、電気抵抗が急激に低下するために、渦電流
損失が高くなるだけでなく、NiZn系フェライトの長所の
1つであるコアへの直接巻線ができなくなる不利が生じ
る。従って、この発明では、 Fe2O3含有量につき、48〜
51 mol%の範囲に限定したのである。なお、より好まし
い Fe2O3量は、48.5〜50.0 mol%であり、この範囲で最
も低いコアロスを安定して得ることができる。
【0013】ZnO:1〜25 mol% ZnOの含有量が、1 mol%未満では、ヒステリシス損失
を低減することができず、一方、25 mol%を超えると高
周波数域でのコアロスが大きくなり、 100℃での残留損
失が著しく増大する(特に4MHz 以上で顕著となる)の
で、ZnO含有量は1〜25 mol%の範囲に限定した。な
お、より好ましいZnO含有量は、以下に述べるとおり、
トランスの駆動周波数および添加成分であるCoO含有量
によって変化する。ここに、トランスの駆動周波数とは
トランスに印加する電流の周波数である。
【0014】より好ましいZnOの含有量とトランスの駆
動周波数の関係について、発明者らは先に特願平8−2
2579号明細書において、以下の最適範囲を示した。
すなわち、トランスの駆動周波数f (MHz)と最適ZnO量
(mol%) との関係は、次式(1) ZnO=−1.7 ×f+30(mol%) --- (1) ただし、2≦f≦10 (MHz) 11≦ZnO≦25(mol%) で表わすことができる。さらに、高周波数域でのコアロ
スは、焼結密度や結晶粒径、結晶粒径分布および粒界構
造などにも依存するため、最適ZnO含有量の範囲は上掲
した (1)式で与えられる最適値±2.0 (mol%) の幅を持
つことが確認されている。
【0015】上掲 (1)式は、CoOを含有しないNiZn系フ
ェライトにおける関係式であるが、この発明のようにCo
Oを含有するNiZn系フェライトでは、CoOを含有しない
NiZn系フェライトと比較して、コアロスが最小となる温
度 (Tmin )が低温側にシフトする。発明者らの実験に
よれば、CoO:0.5 wt%を添加すると、同一の基本成分
の無添加材に比べて、約50℃だけTmin が低下する。一
般に高周波電源用トランスはTmin : 80〜100 ℃となる
BR>ように材料設計する(というのは、トランスは使用
時にトランス自体と周囲の部品の発熱により80〜100 ℃
程度になるから)ため、CoO添加に伴うTmin の低下を
他の成分で補正する必要がある。
【0016】発明者らの実験によれば、Tmin は基本成
分であるZnO含有量が少ないほど増大する傾向にあり、
CoO:0.5 wt%添加による約50℃のTmin の低下は、Zn
O配合比を5 mol%減らし、NiO配合比を5 mol%増や
すことにより補正可能であることが明らかになった。以
上の結果より、トランスの駆動周波数f(MHz)、最適Zn
O含有量(mol%) 、CoO添加量 (wt%) の関係は、次式
(2) −1.7 ×f+30−2.0 ≦ZnO+10×CoO≦−1.7 ×f+30+2.0 --- (2) ただし、2≦f≦10 (MHz) 1≦ZnO≦25(mol%) CoO≦1.0(wt%) で表せることが究明されたのである。
【0017】例えば、駆動周波数fが3MHz 、CoOの添
加量が 0.5wt%の場合のZnO含有量は、17.9〜21.9 mol
%が好ましい。また、駆動周波数fが6MHz 、CoOの添
加量が 0.4wt%の場合のZnO含有量は、13.8〜17.8 mol
%が好ましく、さらに駆動周波数fが10MHz 、CoOの添
加量 0.6wt%の場合のZnO含有量は 5.0〜9.0mol%が好
ましい。
【0018】NiO:24〜51 mol% NiOの含有量が、24 mol%未満では、高周波でのコアロ
スが高くなるために、100 ℃での残留損失が増大し、一
方、51 mol%を超えると、ヒステリシス損失の増大を招
くので、NiO含有量は24〜51 mol%の範囲に限定した。
より好ましいNiOの含有量は、トランスの駆動周波数お
よびCoO添加量に依存し、駆動周波数が高くなると、最
適ZnO含有量の低下に伴い、最適NiO含有量の範囲は増
大する。また、CoO添加量が多くなると、Tmin の低下
を補正するためにZnO含有量を低減する必要があるた
め、最適NiO含有量の範囲は増大する。
【0019】ここに、最適なNiO含有量範囲は次式(3)
で表される。 1.7×f+19−2.0 ≦NiO−10×CoO≦ 1.7×f+22+2.0 --- (3) ただし、2≦f≦10 (MHz) 24≦NiO≦51(mol%) CoO≦1.0(wt%) 従って、例えば、駆動周波数fが3MHz 、CoOの添加量
が 0.5wt%の場合における好適NiO含有量は27.1〜34.1
mol%であり、駆動周波数fが10MHz 、CoO添加量が
1.0wt%の場合における好適NiO含有量は44〜51 mol%
である。
【0020】CuO:8 mol%未満 この発明では、焼成温度の低減(焼結促進)と原料コス
トの削減をするために、上記NiO成分の一部を8 mol%
未満(より好ましくは6 mol%以下)のCuO成分で置換
することができる。NiO成分のCuO成分による置換量を
8 mol%未満とする理由は、8 mol%以上のCuOで置換
すると、結晶粒内の結晶磁気異方性定数および磁歪定数
が大きく変化すること、さらには焼成温度が低下して後
述するようなMoO3添加による粒界応力緩和効果が得られ
なくなるため、高周波数域でのコアロスが著しく高くな
るからである。
【0021】以上、基本成分について説明したが、この
発明では、コアロスの低い酸化物磁性材料を得るため
に、上述したようなNiZn系フェライトの基本成分に加え
てさらに、副成分としてMo酸化物とCo酸化物を添加す
る。ここで、重要なことは、Mo酸化物とCo酸化物の両方
を添加することであり、どちらか一方のみの場合には、
十分満足いくようなコアロスの低下が望めない。なお、
基本成分は、上述してきたとおり mol%で表したが、副
成分については基本成分量に対するwt%で表示するもの
とした。
【0022】Mo酸化物:MoO3換算で0.50wt%以下 Mo酸化物は、上述したとおり、コアロスの低減に有効に
寄与するが、含有量が0.50wt%を超えると、結晶粒の異
常粒成長を起こし易くなり、損失低減効果が得られなく
なるので、Mo酸化物はMoO3換算で0.50wt%以下の範囲に
限定した。なおより好ましくは0.15〜0.45wt%、さらに
好ましくは0.25〜0.40wt%である。
【0023】Co酸化物:CoO換算で1.0 wt%以下 Co酸化物も、上記のMo酸化物と同様、コアロスの低減に
有効に寄与するが、含有量が 1.0wt%を超えると、T
min 低下を補正するためにZnO配合量が少なくする必要
が生じ、その結果、飽和磁束密度Bm が低下し、大電流
で励磁する用途に使用できなくなるので、Co酸化物はCo
O換算で 1.0wt%以下の範囲に限定した。なお、より好
ましい範囲は 0.3〜0.8 wt%である。
【0024】以上、成分組成について説明したが、この
発明では、MoO3添加による損失改善作用をより効果的に
引き出す上で、平均結晶粒径を1〜3μm の範囲に制限
することが重要である。というのは、平均結晶粒径が1
μm より小さいとヒステリシス損失が増大し、一方、平
均結晶粒径が3μm より大きいと、残留損失が増大し高
周波数でのコアロスが高くなるからである。
【0025】さらに、焼結密度は、理論密度の85%以上
とする必要がある。というのは、焼結密度が85%未満で
は、実効的な磁性体占有率が低いため、十分に損失を低
減することができないからである。
【0026】なお、理論密度は、以下の式より算出する
ことができる。 ・ Fe2O3, ZnO, NiOを基本成分とするもの 理論密度=(ZnFe2O4の密度) ×{ZnO(mol%)÷(NiO(mol%)+ZnO(mol%)) } +(NiFe2O4の密度) ×{NiO(mol%)÷(NiO(mol%)+ZnO(mol%)) } ここで、 ZnFe2O4の密度:5.33g/cm3 NiFe2O4の密度:5.38g/cm3 ・ Fe2O3, ZnO, NiO, CuOを基本成分とするもの 理論密度=(ZnFe2O4の密度) ×{ZnO(mol%)÷(NiO(mol%)+ZnO(mol%)+ CuO(mol%)) }+(NiFe2O4の密度) ×{NiO(mol%)÷(NiO(mol%) +ZnO(mol%)+CuO(mol%)) }+(CuFe2O4の密度) ×{CuO(mol%) ÷(NiO(mol%)+ZnO(mol%)+CuO(mol%))} ここで、 ZnFe2O4の密度:5.33g/cm3 NiFe2O4の密度:5.38g/cm3 CuFe2O4の密度:5.35g/cm3
【0027】上述のMoO3およびCoO添加によるNiZn系フ
ェライトのコアロス改善機構は、発明者らの検討によれ
ば、以下のように説明できる。すなわち、焼成温度域に
沸点を持つMoO3(単体での沸点:1257℃)を添加する
と、焼成時に、MoO3の一部が粒界から蒸発し、粒界に残
留する圧縮応力が緩和され、これによりヒステリシス損
失が低減されるものと推測できる。また、MoO3は、低融
点酸化物(単体での融点:795 ℃) であり、焼成時の昇
温過程で液相を生じて焼結体の緻密化を促進し、保持過
程では結晶粒径の均一化に寄与する。その結果、ヒステ
リシス損失の原因となる1μm 未満の焼結粒の比率およ
び残留損失の原因となる3μm 超の結晶粒の比率が低減
し、高周波数でのコアロスが低くなると推測される。さ
らに、CoOは、NiZn系フェライトのスピネル格子に固溶
する成分であるが、NiZn系フェライトは負の結晶磁気異
方性を持ち、Coフェライトは正の結晶磁気異方性を持つ
ため、NiZn系フェライトの一部にCoOが固溶することに
より、結晶粒内の結晶磁気異方性がゼロに近くなり、こ
の結果、高周波数でのコアロスが低減するものと推測さ
れる。
【0028】このように、この発明の酸化物磁性材料
は、MoO3の上記熱的性質とCoOの固溶効果を利用してコ
アロスの低減を実現したものである。それ故、この発明
に係る酸化物磁性材料の製造方法は、焼成過程における
保持温度を1000〜1130℃の範囲に維持することが重要で
ある。というのは、保持温度が1000℃未満では、焼結密
度および結晶粒径が小さく、また、CoOの結晶粒内への
固溶が均一に進行しないために、ヒステリシス損失の増
大を招き、一方、1130℃を超えると、結晶粒径が大きく
なって残留損失が増大すると共に、焼結体の緻密化が急
激に進み過ぎることでMoO3の蒸発が抑制され、ヒステリ
シス損失低減効果も得られなくなるからである。
【0029】かくして、この発明の酸化物磁性材料によ
れば、比抵抗が1 MΩcm以上で、かつ2〜10 MHzの高周
波数域で大電流で励磁してもコアロスの小さい〔100
℃、Bm ×f≦60 kHz・T(ここでBm : 飽和磁束密
度、f:周波数)の条件下で1000kW/m3 未満)NiZn系フ
ェライトを得ることができるのである。
【0030】
【実施例】
実施例1 表1に示す基本成分組成比となるように、主要酸化物原
料であるFe2O3, ZnOおよびNiOを秤量し、湿式混合し
たのち、850 ℃で3時間仮焼してNiZn系フェライト仮焼
粉を得た。次に、上記仮焼粉に対し、MoO3を0.30wt%、
CoOを 0.5wt%添加した後、湿式粉砕し、乾燥後、バイ
ンダーとしてPVAを添加して造粒した後、成形圧力:
1ton/cm2 で成形し、外径:24mm、内径:12mm、高さ:
5mmのトロイダル形状の成形体を得た。このようにして
得られた成形体を、大気中にて、1100℃の温度で3時間
焼成して、NiZn系フェライトを得た。得られたNiZn系フ
ェライトの焼結密度(アルキメデス法により測定)、平
均結晶粒径、3MHz, 20mT, 100℃の条件下でのコアロス
および室温、10V 印加条件下での比抵抗について調べた
結果を、表1に併記する。
【0031】なお、平均結晶粒径は、次のようにして求
めた。図1に示すように、顕微鏡写真に対角線を引き、
対角線と交差する結晶粒の数を求め、以下の式で計算す
る。 平均粒径=対角線の長さ÷(対角線と交差する結晶粒の
個数×写真の倍率) なお、通常の測定条件は次のとおりである。 ・対角線の長さ:9〜10 cm ・写真倍率:400 倍(粒の粗いもの) 〜1000倍(粒の細
かいもの) ・対角線と交差する結晶粒の個数:約20〜40個
【0032】
【表1】
【0033】表1から明らかなように、この発明の適正
成分組成範囲を満足するものについては、比抵抗が 500
MΩcm以上で、コアロスが 980 kW/m3以下のNiZn系フェ
ライトを得ることができた。
【0034】実施例2 表2に示す基本成分組成比となるように、主要酸化物原
料であるFe2O3, ZnOおよびNiOを秤量し、湿式混合し
たのち、950 ℃で2時間仮焼してNiZn系フェライト仮焼
粉を得た。次に、上記仮焼粉に対し、MoO3を0.35wt%、
CoOを 0.4wt%添加した後、湿式粉砕し、乾燥後、バイ
ンダーとしてPVAを添加して造粒した後、成形圧力:
1ton/cm2 で成形し、外径:24mm、内径:12mm、高さ:
5mmのトロイダル形状の成形体を得た。得られた成形体
を、大気中にて、1050℃の温度で3時間焼成して、NiZn
系フェライトを得た。このようにして得られたNiZn系フ
ェライトについて、焼結密度(アルキメデス法により測
定)、平均結晶粒径、6MHz, 10mT, 100℃の条件下での
コアロスおよび室温、10V 印加の条件下での比抵抗を測
定した結果を、表2に併記する。
【0035】
【表2】
【0036】表2から明らかなように、この発明に係る
成分組成範囲内において、比抵抗が150MΩcm以上で、か
つコアロスが 990 kW/m3以下のNiZn系フェライトを得る
ことができた。特に、前掲(2) 式で規定した駆動周波数
およびCoO添加量に応じたZnO量の範囲内(No.1〜4)
では、コアロスが 780 kW/m3以下の優れた特性値を得る
ことができた。
【0037】実施例3 表3に示す基本成分組成比となるように、主要酸化物原
料であるFe2O3, ZnOおよびNiOを秤量し、湿式混合し
たのち、925 ℃で2時間仮焼してNiZn系フェライト仮焼
粉を得た。次に、上記仮焼粉に対し、MoO3を0.40wt%、
CoOを 0.6wt%添加した後、湿式粉砕し、乾燥後、バイ
ンダーとしてPVAを添加して造粒した後、成形圧力:
1ton/cm2 で成形して、外径:24mm、内径:12mm、高
さ:5mmのトロイダル形状の成形体を得た。得られた成
形体を、大気中にて、1075℃の温度で3時間焼成して、
NiZn系フェライトを得た。このようにして得られたNiZn
系フェライトについて、焼結密度(アルキメデス法によ
り測定)、平均結晶粒径、10MHz, 5 mT, 100℃の条件下
でのコアロスおよび室温、10V 印加の条件下での比抵抗
を測定した結果を、表3に併記する。
【0038】
【表3】
【0039】表3から明らかなように、この発明に係る
成分組成範囲内において、比抵抗が20 MΩcm以上で、か
つコアロスが 300 kW/m3以下のNiZn系フェライトを得る
ことができた。特に、前掲(2) 式で規定した駆動周波数
およびCoO添加量に応じたZnO量の範囲内(No.2〜4)
では、コアロスが 240 kW/m3以下の優れた特性値を得る
ことができた。
【0040】実施例4 表1のNo.1に示した成分組成のものに対し、焼成温度を
種々に変化させた以外は実施例1と同様にして得たNiZn
系フェライトについて、焼結密度(アルキメデス法によ
り測定)、平均結晶粒径、3MHz, 20mT, 100℃の条件下
でのコアロスおよび室温、10V 印加の条件下での比抵抗
を測定した。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】表4から明らかなように、この発明で限定
した焼結密度、平均結晶粒径を満足する範囲内におい
て、低損失となることが判る。
【0043】実施例5 表1のNo.3の成分組成に対し、NiOの一部をCuOで置換
し、実施例1と同様にして得たNiZn系フェライトについ
て、焼結密度(アルキメデス法により測定)、平均結晶
粒径、3MHz, 20mT, 100℃の条件下でのコアロスおよび
室温、10V 印加の条件下での比抵抗を測定した。その結
果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】表5から明らかなように、この発明に係る
CuOの適正な置換量範囲において、低損失となることが
判る。
【0046】実施例6 表3のNo.1と同じ基本成分組成になるように主要酸化物
原料を仮焼し、得られた仮焼粉に添加するMoO3量および
CoO量を変化させること以外は、実施例3と同様にして
得たNiZn系フェライトについて、焼結密度(アルキメデ
ス法により測定)、平均結晶粒径、10MHz, 5 mT, 100℃
の条件下でのコアロスおよび室温、10V印加の条件下で
の比抵抗を測定した。その結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】表6から明らかなように、この発明に係る
MoO3量およびCoO量の範囲内において、低損失となるこ
とが判る。なお、上述した各実施例では、MoO3およびCo
Oの添加は粉砕前に行う場合について示したが、仮焼温
度が1000℃以下であれば、他の成分と共に仮焼前に入れ
ても同様の効果を得ることができる。
【0049】比較例 表7に示す基本組成にMoO3のみまたはCoOのみを添加し
た以外は、実施例1と同様にしてNiZn系フェライトを製
造した。得られたNiZn系フェライトの焼成密度(アルキ
メデス法により測定)、平均結晶粒径、3MHz, 5 mT, 1
00℃の条件下でのコアロスおよび室温、10V 印加の条件
下での比抵抗を測定した結果を、表7に併記する。
【0050】
【表7】
【0051】表7から明らかなように、MoO3やCoOのみ
の単味添加では、コアロスが 1000kW/m3 未満の低損失
材料を得ることができなかった。
【0052】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、比抵抗が
高く、かつ2〜10 MHzの高周波数域で大電流で励磁した
場合においてもコアロスの少ないNiZn系フェライトを安
定して得ることができる。従って、この発明の酸化物磁
性材料は、2〜10 MHzで使用するスイッチング電源用ト
ランスのような高周波、大電流励磁下での用途に対し優
れた特性を発揮し、特にチップトランスや薄膜トランス
のような巻線と磁性体が一体化した構造を有するトラン
スのコア材料として偉効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】平均結晶粒径の算出要領説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−295811(JP,A) 特開 平7−272917(JP,A) 特開 平5−326243(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/12 - 1/375

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe2O3:48〜51 mol%、 ZnO:1〜25 mol%、 NiO:24〜51 mol% からなる基本成分中に、 MoO3換算で0.50wt%以下のMo酸化物とCoO換算で1.0 wt
    %以下のCo酸化物を含有する組成になり、平均結晶粒径
    が1〜3μm で、かつ焼結密度が理論密度の85%以上で
    あることを特徴とする酸化物磁性材料。
  2. 【請求項2】Fe2O3:48〜51 mol%、 ZnO:1〜25 mol%、 CuO:8 mol%未満かつ (NiO+CuO):24〜51 mol% からなる基本成分中に、 MoO3換算で0.50wt%以下のMo酸化物とCoO換算で1.0 wt
    %以下のCo酸化物を含有する組成になり、平均結晶粒径
    が1〜3μm で、かつ焼結密度が理論密度の85%以上で
    あることを特徴とする酸化物磁性材料。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、ZnOの量お
    よびCoOの量を、トランスの駆動周波数f(MHz)に応じ
    て、下記式の範囲に調整することを特徴とする酸化物磁
    性材料。 記 −1.7 ×f+30−2.0 ≦ZnO+10×CoO≦−1.7 ×f+
    30+2.0 ただし、2≦f≦10 (MHz) 1≦ZnO≦25 (mol%) CoO≦1.0 (wt%)
  4. 【請求項4】 基本成分として、 Fe2O3,ZnOおよびNi
    O、さらにはCuOを所定量混合し、仮焼して得られるフ
    ェライト仮焼粉に副成分を添加して粉砕し、ついで、造
    粒して成形した後、焼成することによって酸化物磁性材
    料を製造するに当たり、 上記副成分として、MoO3換算で0.50wt%以下のMo酸化物
    とCoO換算で 1.0wt%以下のCo酸化物を添加し、1000〜
    1130℃の温度範囲に保持して焼成することを特徴とする
    酸化物磁性材料の製造方法。
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