JP3253013B2 - 熱間圧延における板クラウン・形状制御方法 - Google Patents

熱間圧延における板クラウン・形状制御方法

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JP3253013B2 JP27246597A JP27246597A JP3253013B2 JP 3253013 B2 JP3253013 B2 JP 3253013B2 JP 27246597 A JP27246597 A JP 27246597A JP 27246597 A JP27246597 A JP 27246597A JP 3253013 B2 JP3253013 B2 JP 3253013B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間仕上圧延機に
おける板クラウン・形状制御方法、特にスタンド間及び
最終スタンド出側の少なくとも一つに配置された板クラ
ウン計及び平坦度計で測定した実測値に基づいて予測モ
デルを学習することにより、板クラウン・形状のセット
アップ精度を向上し、安定した通板及び歩留りの向上を
実現する際に適用して好適な、熱間圧延における板クラ
ウン・形状制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タンデム圧延機からなる熱間仕上圧延機
(設備)により、板幅方向に均一な板厚分布を有する高
品質な製品を製造すると共に、その歩留りを向上するた
めには板クラウンを精度良く制御する必要がある。又、
板形状を良好として安定な通板による安定操業を実現す
るためには、板形状(平坦度)を精度良く制御する必要
がある。
【0003】近年、計測技術の発達と共に、圧延機出側
に鋼板の幅方向板厚分布を測定する板クラウン計や板形
状を測定する平坦度計が導入されるようになり、これら
を積極的に活用したダイナミックなフィードバック制御
等が採用され、高品質な鋼板の製造が行われている。
【0004】しかし、圧延材(コイル)の最先端部は板
クラウン計や平坦度計によるダイナミックなフィードバ
ック制御が適用できないため、最先端部の製品の品質及
び通板性は依然として圧延開始時に設定する板クラウン
・形状のセットアップ精度に依存している。従って、コ
イルの最先端部より高品質な鋼板及び良好な板形状を得
るためには、板クラウン・形状予測モデルの精度向上が
重要な課題である。
【0005】板クラウン・形状予測モデルに関しては、
例えば、Shoet等によるJ.Iron and Steel Ins
t.,206(1968)11,1088,第33回塑
性加工連合講演会集第143頁、塑性と加工:Vol.3
6,No.417(1995−10)等に紹介されるよ
うに、従来様々な検討が行われている。
【0006】一般に、板クラウン予測モデルは、圧延機
変形モデル、板の3次元変形を補正する板変形モデル、
ロールプロフィルを予測するロール熱膨脹及び摩耗モデ
ル等で構成される。その中でも、特に熱膨脹や摩耗等に
より時々刻々変化するワークロールのプロフィルの予測
は難しく、その精度の良い予測は困難であった。
【0007】このような予測誤差を補償する方法とし
て、学習制御を取り入れたセットアップ方法が有効であ
り、これまでにも多くの検討が行われてきた。例えば、
特開昭61−283407、特開平07−32331
5、特公昭63−025845等に、上記のようなセッ
トアップ方法が開示されている。
【0008】即ち、特開昭61−283407では、設
定したピッチで幅方向に板厚プロフィルを分割し、板厚
プロフィルの遺伝特性を利用して各スタンドの板プロフ
ィルを幅方向に学習する方法である。又、特開平07−
323315は、板クラウン・形状予測モデルにおける
板の塑性変形及び圧延中のロールプロフィル変化の誤差
を分離して制御する方法を提案している。この方法は、
圧延される板のエッジ部にはロールプロフィル誤差と板
の塑性変形誤差の両方が混在しており、非エッジ部では
ロールプロフィル誤差のみが生じているものとして、両
者を分離するものである。又、特公昭63−02584
5は、板クラウン及び板形状の双方又はいずれか一方を
測定し、計算により求められた板クラウン及び板形状の
双方又はいずれか一方との差異をロールプロフィル推定
誤差に起因するものとして学習し、次回圧延材の設定計
算に反映させる方法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、板厚プ
ロフィルのみを測定して板クラウンを学習する、前記特
開昭61−283407や特開平07−323315に
開示されている方法では、板クラウン計が設置されてい
るスタンド出側の板クラウンは実測値に計算値が一致す
ることになるが、同スタンド若しくはその上流スタンド
では板クラウンを変更するに伴って板形状が変化するこ
とになる。ところが、この方法では、板形状を特に制御
していないため、板形状が逆に悪化してしまうことがあ
るという問題があった。
【0010】又、板プロフィル及び板形状の双方を測定
して学習する、前記特公昭63−025845に開示さ
れている方法では、板クラウン予測誤差及び板形状予測
誤差の双方をロールプロフィル誤差として学習するた
め、板形状を修正することにより板クラウンが変化し、
又、板クラウンを修正することにより板形状が変化する
ため、板クラウンと板形状の相互干渉が避けられず、板
クラウン及び板形状の双方を同時に良好にすることが困
難であるという問題があった。
【0011】本発明は、前記従来の問題点を解決するべ
くなされたもので、次回圧延材に対して、最先端部から
良好な板クラウン及び板形状で圧延することができる熱
間圧延における板クラウン・形状制御方法を提供するこ
とを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の圧延ス
タンドが連続的に配置されているタンデム圧延機により
圧延するに当り、最終スタンド出側あるいはさらにスタ
ンド間の少なくとも一つに設置されている板クラウン計
及び平坦度計による測定値と、対応する予測モデルによ
る予測値とのそれぞれの偏差に基づいて、各予測モデル
内の補正項を学習し、次回圧延材のセットアップに反映
させる学習制御方法であって、前記板クラウン計により
測定される板クラウン測定値と、板クラウン予測モデル
により算出される板クラウン予測値の偏差に基づいて、
同モデル内の補正項を学習する板クラウン学習制御と、
前記平坦度計により測定された伸び差率測定値と、伸び
差率予測モデルにより算出される伸び差率予測値との偏
差に基づいて、同モデル内の補正項を学習する形状学習
制御を併用すると共に、前記伸び差率予測値を、学習後
の前記板クラウン予測値を用いて、次式 Δεi=ξ×(Cri/Hi−Cri-1/Hi-1) …
(1) (Δεi:iスタンド出側伸び差率、Cri,Cri-1
学習後のi、i−1スタンド出側の板クラウン予測値、
i,Hi-1:i、i−1スタンド出側板厚、ξ:圧延材
寸法等によって決定される補正係数) により算出することにより、前記課題を解決したもので
ある。
【0013】即ち、本発明においては、板クラウン計に
より測定された板クラウン実測値と板クラウン予測モデ
ルによる板クラウン計算値との差異に基づいて、該モデ
ルを学習すると同時に、平坦度計により測定された伸び
差率実測値と、伸び差率予測モデルによる伸び差率計算
値との差異に基づいて該モデルを学習し、それぞれの学
習結果を次回圧延材の設定計算に反映させるに当り、前
記(1)の伸び差率予測モデルによる計算を、学習した
板クラウン予測モデルで算出された板クラウン計算値を
用いて行うようにしたので、板クラウン予測モデルの学
習結果を、伸び差率の予測値にも反映させることが可能
となる。その結果、板クラウンと板形状の相互干渉を避
けることが可能となり、こにより、コイルの最先端部
より板クラウン及び板形状を共に良好とし、歩留り向上
及び通板の安定化による稼動率向上を実現することが可
能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態について詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明の一実施形態に適用される
熱間仕上圧延設備を示す概略構成図である。
【0016】上記圧延設備は、F1〜F7の7スタンド
からなるタンデム圧延機であり、第4スタンドF4の出
側には板クラウン計(プロフィル計)10が、最終の第
7スタンドF7の出側には板クラウン計10と平坦度計
12が、それぞれ配設されている。
【0017】この圧延設備を構成する各スタンドは、ペ
アクロス式の4HI圧延機であり、形状制御用のアクチ
ュエータとして、ロールクロス装置(図示せず)及びワ
ークロールベンディング装置14を備えている。
【0018】本実施形態では、図2に示したフローチャ
ートに従って、板クラウン予測モデルと、板形状(伸び
差率)の予測モデルの学習を行った後、次回圧延材のた
めの板クラウン・形状のセットアップ計算を行う。
【0019】即ち、スタンド出側に設置されている板ク
ラウン計10により、板クラウンを測定し、次いで当該
スタンド出側の板クラウン計算値(予測値)を算出し、
上記板クラウンの測定値と計算値を比較し、その誤差分
を各スタンドのクラウン学習項に配分すると共に、各ス
タンド毎に得られた学習値の平滑化処理を行う(ステッ
プ1〜4)。以上の各ステップの処理を板クラウン計が
設置されているスタンドの全てについて行う(ステップ
5)。
【0020】その後、スタンド出側に設置されている平
坦度計12により伸び差率を測定し、次いで当該スタン
ド出側の伸び差率の計算値(予測値)を、前記学習後の
板クラウン値を用いて算出し、上記伸び差率の測定値と
計算値を比較し、その誤差分を用いて当該スタンドの伸
び差率予測モデル内の学習項を修正すると共に、得られ
た学習値の平滑化処理を行う(ステップ6〜9)。平坦
度計12が複数スタンドに設置されている場合は、以上
の各ステップの処理を、出側に平坦度計が設置されてい
るスタンドの全てについて行う(ステップ10)。そし
て、以上の学習結果を基に次回圧延材のための板クラウ
ン・形状のセットアップ計算を行う。
【0021】次に、前記ステップ1〜5の板クラウン予
測モデルの学習について詳述する。
【0022】一般に、iスタンド出側の板クラウンCr
i は、同スタンドの負荷時のロールクラウンCrR
i と、同スタンド入側(前段スタンド出側)の板クラウ
ンCri- 1 を用いて、次の(2)式で予測される。
【0023】 Cri =α・CrRi +β・Cri-1 …(2) ここで、αは転写率、βは遺伝係数と呼ばれ、それぞれ
ロールクラウンの出側板クラウンに対する影響係数、入
側板クラウンの出側板クラウンに対する影響係数であ
る。
【0024】負荷時のロールクラウンCrRは、圧延荷
重によるワークロールの撓み、偏平等を要素とする圧延
機の変形モデルと、ワークロールのイニシャルプロフィ
ルや熱膨脹、摩耗等を要素とするロールプロフィルモデ
ルとによって算出される。
【0025】板クラウンの学習方法には、学習項Lを
(3)式のように加算して板クラウン自体を学習する方
法と、(4)式のように与えてロールプロフィル(ロー
ルクラウン)を学習する方法がある。
【0026】 Cri =α・CrRi +β・Cri-1 +Li …(3) Cri =α・(CrRi +Li )+β・Cri-1 …(4)
【0027】どちらの学習方法を用いても本発明におけ
る効果は変わらないが、ここではロールプロフィルの学
習、即ち(4)式を用いる学習方法について説明する。
【0028】板クラウン学習では、スタンド出側に設置
された板クラウン計により測定された板クラウン測定値
Crmes と、同スタンドについて上記クラウン予測モデ
ルより算出された計算値Crcal との差異から、この誤
差を補償するために、それより上流側の各スタンドの学
習項Li を求める。
【0029】即ち、前記図1に示した圧延設備では、第
4スタンドF4出側の板クラウンが測定可能であるた
め、仕上圧延機出側(第7スタンド出側)における板ク
ラウン誤差は第5スタンドF5〜第7スタンドF7のロ
ールプロフィル誤差で補償し、第4スタンドF4出側に
おける板クラウン誤差は第1スタンドF1〜第4スタン
ドF4で補償すればよい。(従って、最終スタンド出側
のみに板クラウン計がある場合には、第1スタンドF1
〜第7スタンドF7の全スタンドのロールプロフィル学
習項により補償することになる。)
【0030】又、ロールバレル方向については、板クラ
ウン計では板端から所定寸法位置の板厚を測定すること
から、圧延サイクル内の圧延材の板幅構成の変化に合わ
せて圧延材の学習点がバレル位置に対して変化するの
で、それに合わせて各点のプロフィル誤差を学習すれば
よい。
【0031】最初に、最終スタンド出側の板クラウン計
による測定を用いて行う、F5〜F7の後段スタンドに
おける板クラウン学習について説明する。最終スタンド
F7の出側における板クラウン誤差ΔCr7 =Crmes
−Crcal は、次の(5)式で表わされる。但し、Ai
はiスタンドのロールクラウンの最終スタンド出側の板
クラウンに対する影響係数である。
【0032】 ΔCr7 =A5 ・L5 +A6 ・L6 +A7 ・L7 …(5)
【0033】この(5)式の影響係数Ai は、前記
(4)式をi=5〜7について連立することにより容易
に算出できる。影響係数Aは転写率及び遺伝係数により
表わされ、例えばA5 =α5 β6 β7 である。
【0034】又、上記(5)式の学習項Li は、第5ス
タンドF5、第6スタンドF6については出側板クラウ
ンを測定できないことから、これら各スタンド出側にお
ける板クラウンの誤差は分からないので、これら各スタ
ンドについて学習項を算出するためには、L5 、L6
7 間の関係について、次式のように仮定を置く必要が
ある。
【0035】 L5 =k5 ・L7 ,L6 =k6 ・L7 …(6) ここで、k5 、k6 は定数であり、それぞれL5
7 、L6 とL7 の比を示している。これらの定数の決
め方は任意であり、各スタンドのプロフィル誤差は同程
度と考えてk5 =k6 =1としてもよく、又、各スタン
ドのプロフィル誤差は板厚に比例するとして、k5 =H
5 /H7 、k6 =H6 /H7 としてもよい。
【0036】前記(5)、(6)式を連立して解くこと
により、各スタンドの学習項L5 、L6 、L7 は算出で
きる。又、第4スタンドF4の出側に設置されている板
クラウン計10を用いる場合には、第1スタンドF1〜
第4スタンドF4の各スタンドに対して、上述した第5
スタンドF5〜第7スタンドF7の場合と同様の方法を
用いることによって、各スタンドの学習量を算出するこ
とができる。
【0037】以上のようにして算出される学習値は、圧
延材毎に変化するが、測定ノイズ等により大きく変化す
ることもあるので、この変化が原因で次回圧延材に対す
る設定計算が大きく変化して通板のトラブル等を生じな
いようにするために、学習値は平滑化処理をして行うの
が望ましい。平滑化の方法としては、例えば次の(7)
式のように、算出された学習値の瞬時値Lに学習ゲイン
γ(=0〜1の値)を乗じ、更に前回までの学習値L
old に1−γを乗じて加算し、次回圧延材の学習値L
new を算出する方法等でもよい。又、その他の平滑化方
法を用いても勿論良い。
【0038】 Lnew =γ・L+(1−γ)・Lold …(7)
【0039】次に、前記図2のフローチャートにおける
ステップ6〜10の板形状(伸び差率)予測モデルの学
習について説明する。
【0040】一般に、一定区間lにおける板幅中央部と
板端近傍(形状評価点)での圧延に伴う伸びの差Δlの
lに対する比率Δl/lを、伸び差率Δεと定義する
と、iスタンド出側の伸び差率は、次の(8)式で表わ
されることが知られている。
【0041】 Δεi =ξ・(Cri /Hi −Cri-1 /Hi-1 ) …(8)
【0042】又、板形状不良の度合いを表わす指標とし
て、通常は急峻度が用いられる。これは、板の波高さδ
とそのピッチpを用いてλ=δ/pで定義されたもので
あり、上記伸び差率Δεと急峻度λとの間には、次の
(9)式で表わされる周知の関係がある。
【0043】 λ=(2/π){|Δε|}1/2 ×100[%] …(9)
【0044】本実施形態における形状学習は、前記
(8)式に示した伸び差率を学習するものであり、学習
するに当っては該(8)式中の板クラウンCri 、Cr
i-1 として学習後の計算値を用いるようにしたものであ
る。即ち、平坦度計が出側に設置されているスタンドに
おける圧延材の伸び差率を学習するに当り、該平坦度計
により実測された伸び差率Δεmes と予測モデルにより
算出された伸び差率Δεca l の差を学習値Mとした場
合、次回圧延材の学習後の伸び差率を、次の(10)式
を用いて計算するようにしている。
【0045】 Δεi =ξ×(Cri /Hi −Cri-1 /Hi-1 )+Mi …(10) Mi =Δεi,mes −Δεi,cal (Δεi :iスタンド出側伸び差率、Cri ,C
i-1 :学習後のi、i−1スタンド出側の板クラウン
計算値、Hi ,Hi-1 :i、i−1スタンド出側板厚、
ξ:圧延材寸法等によって決定される補正係数)
【0046】本実施形態における前記図1に示した圧延
設備の場合には、第7スタンド出側に平坦度計12が設
置されており、従って上記形状学習は最終スタンド第7
スタンド(F7)に適用されることになる。
【0047】この形状学習における上記学習値Mは、前
述した板クラウン学習の場合と同様に平滑化して使用す
るのが望ましい。平滑化の方法は、前記(7)式に示し
た板クラウン学習と同様に、学習の瞬時値Mに0〜1の
学習ゲインを乗じ、学習の前回値に加算する方法でよい
が、勿論他の方法を用いてもよい。
【0048】このようにして学習された伸び差率予測モ
デルを用いることにより、平坦度計12による伸び差率
の測定値と予測値は一致するようになる。これにより次
圧延材の設定計算には学習結果が反映され、目標とする
形状の圧延材が得られるようになる。
【0049】以上のように算出された各スタンドの学習
項を用い、次回圧延材に対する所望の平坦度及び板クラ
ウンを得るための形状制御用アクチュエータの設定計算
が、常法に従って行われる。
【0050】以上詳述した本実施形態によれば、以下の
ような効果が得られる。
【0051】前述した如く、板クラウン学習を行った場
合、板クラウン計設置スタンドにおける板クラウンの学
習値と実測値の誤差を補償するために、各スタンドにそ
れぞれ学習量を配分しているため、当然学習の前後でス
タンド間の関係が変化し、結果として板形状が変化する
ことになる。即ち、板クラウン学習と形状学習を併用し
た場合には、実測の板形状とそのモデル予測値を一致さ
せようとする形状学習と、実測の板クラウンとそのモデ
ル予測値を一致させるために、各スタンドに学習量を配
分し、結果として各スタンド間の関係を変えてしまう板
クラウン学習とが、互いに干渉することになる。
【0052】本実施形態では、この相互干渉を防止する
ために、前記(1)式により形状学習において伸び差率
を算出するときに用いる板クラウン値として、板クラウ
ン学習後の計算値を用いるようにしたため、これによ
り、板クラウン学習によって生じる形状変化の影響を、
形状学習の中で考慮することが可能になり、上記干渉を
避けることが可能となった。
【0053】又、従来の形状学習方法では、スタンド出
側に設置されている形状計(平坦度計)によって測定し
た予測誤差を、当該スタンドのロールプロフィル予測誤
差に起因するとしてそのロールプロフィルを学習してい
た。この場合、形状学習することにより当該スタンド出
側の板クラウンを変化させてしまうことがあった。
【0054】しかし、本実施形態では、伸び差率、即ち
当該スタンドの入出側のクラウン比率変化の関係を直接
学習するため、形状学習を行うことにより出側の板クラ
ウンを変化させることがないという利点がある。又、当
該スタンドより上流の各スタンドの形状を変化させるこ
ともない。
【0055】次に、本実施形態の具体例である実施例に
ついて説明する。
【0056】
【実施例】前記図1に示すような連続仕上圧延設備を用
いて、本発明による効果を検証するために熱間圧延を実
施した。この仕上圧延機は、7基の全スタンドがペアク
ロスミル(最大角度1.5度)で構成され、各スタンド
がワークロールベンダー(最大1200kN/c)を備
えている。板クラウン計10は、前記のように最終スタ
ンド出側及び第4スタンド出側に配置してあり、平坦度
計は最終スタンド出側に配置してある。
【0057】図3は、この実施例において実際に圧延し
た圧延サイクルの板厚、板幅、鋼種の構成を示したもの
である。その前半部は極低炭素鋼板からなる広幅材の、
後半部は低炭素鋼からなる狭幅材の圧延サイクルであ
り、総圧延数84本のコフィンサイクルである。
【0058】上記図3の圧延サイクルにおいて、本実施
形態による板クラウン学習及び形状学習を同時に適用し
た。板クラウン学習は第4スタンドF4出側における測
定値と計算値(予測値)との偏差に基づき第1〜第4ス
タンドF1〜F4のロールプロフィルを、仕上出側にお
ける測定値と計算値の偏差に基づき第5〜第7スタンド
F5〜F7のロールプロフィルをそれぞれ学習する前述
した方法を用いた。学習は板端から(図中エッジ)10
0mmの点、及び同25mmの点の2点について実施し
た。その際、学習ゲインは0.5とし、各スタンドの学
習量の配分は等配分(各スタンドの学習量は同一)とし
た。
【0059】図4、5には、第7スタンドF7につい
て、クラウン実測値(実線)と共にクラウン学習を行っ
た場合と行わない場合の予測モデルによる計算値の変化
を併せて示した。これら図4、5より、学習したモデル
による計算値は実測値と一致することが分かる。図示は
省略するが、第4スタンドF4でも同様の結果が得られ
た。
【0060】又、図6〜8には、このときの後段スタン
ドF5〜F7における計算形状(急峻度)の変化をそれ
ぞれ示した。板形状は板端より100mmの点につい
て、前記(8)、(9)式により評価した。これら図6
〜8より、学習しない場合よりした場合の方が計算値の
変動が大きいことから、クラウンの学習を行うことによ
りスタンド間の関係が変化し、計算形状が変化している
ことが分かる。
【0061】図9、10に、伸び差率の実績値と形状学
習(学習ゲイン0.5)した予測モデルによる計算値の
変化を示す。
【0062】図9は、本発明法による予測計算値(○印
でプロット)を、伸び差率の実測値(実線)に対比させ
て示したものであり、図10は、比較例Aによる予測計
算値(同じく○印でプロット)を、同実測値に対比させ
て示したものである。
【0063】ここで、本発明法は、前記(1)式に適用
する板クラウン値Cri 、Cri-1にクラウン学習後の
クラウン計算値を使用した場合に当り、比較例Aは、ク
ラウン学習後のクラウン計算値を使用しなかった場合に
当る。
【0064】又、図9及び図10の△印は、本発明法及
び比較例Aのそれぞれに使用した前記(10)式におい
て学習値を考慮しない、即ちMi =0とした場合の結果
を、それぞれ比較例B及びCとして示したものである。
【0065】上記図9、図10を比較すると、比較例A
では、図中に円で囲んで示したクラウン学習により計算
形状が変化する箇所においては、クラウン学習による形
状変化と干渉し予測値がばらつくため、実績値と計算値
が一致しない圧延材が発生した。これに対して、本発明
による場合には、実績伸び差率と計算値は良く一致して
いることが分かる。又、いずれの場合も、形状学習値M
i を考慮しないと、予測値(△印)は実績値と一致しな
いことが分かる。これにより、本発明で形状学習Mi
考慮している理由が理解される。
【0066】図11には、本実施例で得られた最終スタ
ンド出側における板クラウンの予測精度を示す。図12
には、本実施例の形状学習によるモデル精度向上効果を
示す。この図12の比較例は、前記図10の比較例と同
様に、板クラウンの学習を行っていない場合である。
【0067】このように、本発明を適用することにより
モデルの予測精度は向上し、圧延サイクル内の各圧延材
について、目標通りの板クラウン及び板形状を得ること
ができるようになった。
【0068】以上、本発明を具体的に説明したが、本発
明は、前記実施形態に示したものに限られるものでな
く、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0069】例えば、前記実施形態では、板クラウン学
習方法の例として、前記(4)式に示すロールプロフィ
ルを学習する方式について説明したが、これに限定され
ず、本発明においては(3)式に示す板クラウンを学習
する方式や、他のクラウン学習方式を用いても同様の効
果を得ることができる。
【0070】又、前記実施形態では最終スタンド出側
(F7出側)に板クラウン計と平坦度計、第4スタンド
F4出側に板クラウン計を設置した場合について説明し
たが、板クラウン計及び平坦度計の配置場所は限定され
ず、その配置場所によらず同様の効果を得ることができ
る。
【0071】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
コイル最先端部より板幅方向に均質な板厚分布を有する
高品質の熱延鋼板の製造が可能となり、又、最先端部の
板形状を良好にできることにより、最先端部の通板性を
大きく改善することができ、歩留り向上と安定通板によ
る稼働率の向上を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態に適用される熱間仕上
圧延設備を示す概略構成図
【図2】学習手順を示すフローチャート
【図3】実施形態に採用した圧延サイクルの板厚・板幅
構成を示す線図
【図4】板端から25mm点における板クラウンの実績
値と予測計算値の変化を示す線図
【図5】板端から100mm点における板クラウンの実
績値と予測計算値の変化を示す線図
【図6】板クラウン学習により生じる第5スタンドにお
ける形状変化を示す線図
【図7】板クラウン学習により生じる第6スタンドにお
ける形状変化を示す線図
【図8】板クラウン学習により生じる第7スタンドにお
ける形状変化を示す線図
【図9】本発明による形状の予測値と実測値の変化を示
す線図
【図10】比較例による形状の予測値と実測値の変化を
示す線図
【図11】本発明による最終スタンド出側における板ク
ラウン予測精度を示す線図
【図12】本発明の形状学習によるモデルの予測精度向
上効果を示す線図
【符号の説明】
10…板クラウン計 12…平坦度計 14…ワークロールベンディング装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹林 克浩 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (56)参考文献 特開 平3−32412(JP,A) 特開 昭55−64910(JP,A) 特開 平6−114424(JP,A) 特開 平2−217108(JP,A) 特開 平9−174129(JP,A) 特開 平9−168809(JP,A) 特開 平3−285706(JP,A) 特開 平7−227610(JP,A) 特公 平5−20170(JP,B2) 特公 平3−72364(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 37/28 B21B 37/00 113

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の圧延スタンドが連続的に配置されて
    いるタンデム圧延機により圧延するに当り、最終スタン
    ド出側あるいはさらにスタンド間の少なくとも一つに設
    置されている板クラウン計及び平坦度計による測定値
    と、対応する予測モデルによる予測値とのそれぞれの偏
    差に基づいて、各予測モデル内の補正項を学習し、次回
    圧延材のセットアップに反映させる学習制御方法であっ
    て、 前記板クラウン計により測定される板クラウン測定値
    と、板クラウン予測モデルにより算出される板クラウン
    予測値の偏差に基づいて、同モデル内の補正項を学習す
    る板クラウン学習制御と、 前記平坦度計により測定された伸び差率測定値と、伸び
    差率予測モデルにより算出される伸び差率予測値との偏
    差に基づいて、同モデル内の補正項を学習する形状学習
    制御を併用すると共に、 前記伸び差率予測値を、学習後の前記板クラウン予測値
    を用いて、次式Δεi=ξ×(Cri/Hi−Cri-1/H
    i-1) (Δεi:iスタンド出側伸び差率、Cri,Cri-1
    学習後のi、i−1スタンド出側の板クラウン予測値、
    i,Hi-1:i、i−1スタンド出側板厚、ξ:圧延材
    寸法等によって決定される補正係数) により算出することを特徴とする熱間圧延における板ク
    ラウン・形状制御方法。
  2. 【請求項2】 前記板クラウン学習制御では、スタンド出
    側で求められた前記偏差を、当該スタンドより上流側に
    位置し、出側で板クラウンを測定しない各スタンドの予
    測モデル内の補正項に配分することを特徴とする請求項
    1に記載の熱間圧延における板クラウン・形状制御方
    法。
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