JP3247688B2 - 高強度アルミナ・シリカ系セラミックスの製造方法 - Google Patents

高強度アルミナ・シリカ系セラミックスの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はアルミナ・シリカ系セラミックス焼結体にお
いて、再加熱処理を施すことにより、常温および高温に
おける強度を向上させる方法に関するものである。
従来の技術 高温強度が優れた高純度アルミナ・シリカ系セラミッ
クスの製造方法については、特開昭60−161371号公報、
特開昭61−281065号公報等に述べられている。要約する
と、,Al2O3とSiO2以外の不純物量をNa2OとK2Oを含め
て2500ppm以下とすること。,シリカとアルミナの含
量に対するAl2O3の割合を55−70重量%の範囲で調整す
ることで、1300℃までの高温強度が常温強度よりも優れ
たアルミナ・シリカ系セラミックスが得られる、という
ものであった。しかし、強度の絶対値は、代表的な非酸
化物セラミックスである窒化珪素セラミックスと比較し
て、高温強度においてはほぼ同等であるものの、常温強
度が約半分であり、高温構造材料としてシリカ・アルミ
ナ系セラミックスを考えた場合、十分な特性を持ってい
るとは言いがたかった。特に、アルミナ重量比が60−72
%の組成範囲をもつアルミナ・シリカ系セラミックス
の、高温下に於ける強度の増大挙動については、ムライ
トの化学量論組成がAl2O371.8重量%、SiO238.2重量%
であることから、焼結体中にムライトと、SiO2が高純度
シリカガラス相として共存しているため、高温下におい
ては、このシリカガラスの軟化により外部からの応力を
吸収するための見掛上の現象であると説明されている。
従って、従来の高温強度が優れたアルミナ・シリカ系セ
ラミックスを高温構造材料として用いる場合には、上記
の点を配慮しなければならなかった。
また一般に、セラミックスの高度向上策としては他の
材料との複合化が行なわれる。しかし、通常複合化はプ
ロセスコストが高くなる場合が多く、さらにムライトの
場合、前述のようにシリカガラスが共存している組成の
系では、複合化の為に添加した他材料とシリカが高温下
で反応して低融点のガラスを容易に形成するため、アル
ミナ・シリカ系セラミックス系の特徴である高温に於け
る高強度という特性が損なわれてしまうという欠点が生
じる。
さらに近年、窒化珪素を代表とする非酸化物セラミッ
クスに於いては、粒界に存在するガラス相を他成分の添
加により結晶化させることで高温強度の改善を図る方法
が提案されている。しかし、高純度アルミナ・シリカ系
セラミックスに於いては、前述のように低融点ガラスの
形成の問題がある。
発明が解決しようとする課題 本発明の目的は、従来の高純度アルミナ・シリカ系セ
ラミックスの欠点である、常温強度が、高温に於ける強
度より低いという特性を上述のような欠点のある複合化
という手法を用いず、向上させるための方法を提供する
ことにある。
このような本発明の目的は、一度焼結したムライト結
晶の他に高純度シリカガラス相を含有する組成のアルミ
ナ・シリカ系セラミックスを焼結温度より低い温度にお
いて再加熱処理することによって達成される。
課題を解決するための手段及び作用 本発明の方法において、アルミナ・シリカ系セラミッ
クス製造のための原料粉末はその組成範囲がAl2O360−7
1.8重量%、SiO240−28.2重量%であれば、特開昭60−1
61371号公報および特開昭61−281065号公報で述べられ
ているいずれの方法で合成したものでもよい。ただし、
ムライトの粒界に生成するシリカガラス相の純度を保つ
ためには、特開昭61−281065号公報で述べられているよ
うに、Al2O3、SiO2以外の不純物すなわちFe2O3、CaO、M
gO、Na2O、K2O、Li2O、TiO2などを総量で2500ppmより少
なくする必要があり、特にNa2OおよびK2Oの総量を1000p
pm以下、好ましくは500ppm以下になるように調整する必
要がある。原料粉末は、か焼、粉砕、成形したのち1500
−1700℃、好ましくは1600−1650℃の温度で大気雰囲気
中で焼結もしくは、真空中または不活性ガス雰囲気中で
焼結される。さらにその焼結体は、シリカとムライトの
共融温度(1587±10℃)以下の1500℃4−96時間再加熱
処理を行なうことにより、再加熱処理を行なわないもの
に比較して5−35%高い強度のアルミナ・シリカ系セラ
ミックスが得られる。
この再加熱処理は、焼結体中のムライト粒子同志の粒
子境界部に100−200nmの大きさのガラス相として存在す
るシリカをクリストバライトに結晶化させるためのもの
である。再加熱により結晶化したクリストバライトと主
な結晶相であるムライトとの膨張係数差あるいは、クリ
ストバライトの結晶転移による膨張係数差により、焼結
体中のクリストバライト結晶が周囲のムライトから残留
引っ張り応力をうけるプレストレス効果をアルミナ・シ
リカ系セラミックスに与えるものであり、それが常温付
近における強度向上に寄与している。
一方、シリカ成分がクリストパライトに結晶化するこ
とによりその本質的な強度が向上することと、ムライト
結晶との粒界部の結合強度が向上することで、アルミナ
−シリカ系の共融温度(1580℃)以下の温度領域におけ
る高温強度も向上するものである。
尚、前述の再加熱処理の温度、時間は、被処理物の大
きさ、厚さなどによって、きめられるべきものである。
また、再加熱の方法は一度焼結されて室温まで冷却され
たものを被処理物として用いる場合の他、焼結後の冷却
過程において、所定の温度、時間処理する方法もある。
アルミナの含有量を60−71.8重量%に規定したのは、
ムライトと共存するクリストバライト結晶の大きさが大
きくなりすぎると、ムライト結晶との熱膨張係数差によ
り、結晶粒子境界部に微細な亀裂が発生し、強度の低下
が起こるため、クリストバライト(シリカガラス相)が
300nm以下の大きさでムライトの粒子境界に存在する上
述の組成領域が望ましい。70重量%以上のアルミナ含有
量の組成では、クリストバライト相が存在しないか、あ
るいは存在するとしても微量であり、プレストレス効果
などが発現しないためである。
実施例 以下、本発明を実施例に基いて説明する。
(実施例1) アルミニウムイソプロポキシド〔Al(CO3H7〕と
オルソケイ酸エチル〔Si(OC2H5〕をAl2O3含有量60
−71.8重量%の範囲でそれぞれイソプロパノール中に溶
解、混合した。混合して得られた溶液を、希薄アンモニ
ア溶液にて加水分解し、乾燥して粉末を合成した。この
合成粉末を1000℃、1時間か焼することによりムライト
化し、粉砕後、1000Kg/cm2の圧力で成形してから、大気
圧下で1600℃2時間焼成して焼結体を作った。ついでこ
の焼結体から3×4×40mmの試験を作成した。さらにこ
の試験片を大気中にて1500℃、96時間再加熱処理を行っ
た試験片も作成した。これらの試験片の常温に於ける3
点曲げ強度を測定した結果を第1図に示す。
第1図において○印は再加熱処理を行っていない試験
片の強度を、●印は大気中で1500℃、96時間再加熱処理
を行った試験片の曲げ強度を示している。この図からわ
かるように、96時間の再加熱処理試験片は、いずれの化
学組成においても再加熱前のものに比べて強度は5−22
%向上している。
アルミナ含有量64重量%試料の1600℃、4時間焼結体
について、再加熱処理を施さない試料と、1500℃、96時
間再加熱処理を施した試料の常温と、1300℃に於ける3
点曲げ強度を表1に示す。
曲げ強度は、常温、1300℃いずれの条件に於いても、
再加熱処理を行なうことにより40−110MPa向上してい
る。
さらに、第2図に示した、1300℃に於ける曲げ強度測
定時の、応力と変位の関係から、再加熱処理を行なうこ
とにより、塑性変形挙動が相当低減することがわかる。
発明の効果 以上述べたごとく、本発明の高純度アルミナ・シリカ
系セラミックス焼結体の再加熱処理による高強度化の方
法では、従来の常識を破って、他材料との複合化や、他
成分の添加によるガラス相の結晶化等の方法に依らず、
単純な再加熱処理だけで常温から1300℃の温度範囲に於
いて、高純度アルミナ・シリカ系セラミックスの曲げ強
度を高くすることが出来る。さらに、この熱処理に依っ
て、シリカガラス相を結晶化させるため、従来の、高純
度アルミナ・シリカ系セラミックスに於いて問題となっ
ていた、高温度に於ける、塑性変形をともなう破壊挙動
をも軽減できる。従って、本発明の方法は、工業的にき
わめて有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、アルミニウムイソプロポキシドとオルト珪酸
エチルを種々のAl2O3/SiO2比になるように混合した溶液
を加水分解して合成した粉末からえられた1600℃、4時
間焼結体とそれを1500℃、96時間再加熱処理したもの
の、常温における3点曲げ強度試験結果である。 第2図は、第1表に示された試料(Al2O3含有量64重量
%)の1300℃における再加熱処理の影響を示す応力−変
位図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大矢 豊 神奈川県横浜市南区大岡5―2―9― 203 (72)発明者 沢辺 佳成 神奈川県横浜市緑区長津田4123―8B室 (56)参考文献 特開 昭62−265166(JP,A) 特開 昭64−72961(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミナ・シリカ系セラミックスのAl2O3
    とSiO2との合量に対するAl2O3の割合が60−71.8重量%
    の範囲に調整され、且つアルミナ・シリカ系セラミック
    スに含まれるAl2O3とSiO2以外の不純物がNa2O及びK2Oを
    含めて2500ppm以下に調整された原料粉末を仮焼、粉
    砕、成形した後1600−1650℃の温度で焼結してアルミナ
    ・シリカ系セラミックス焼結体を製造する方法におい
    て、 得られた焼結アルミナ・シリカ系セラミックスを前記焼
    結温度より低い温度の1500℃において96時間再加熱処理
    し、1300℃までの高温における強度だけでなく、常温に
    おける強度を再加熱処理を行わないものに比較して5−
    35%高い強度に向上させたアルミナ・シリカ系セラミッ
    クス焼結体を得ることを特徴とする方法。
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