JP3246901B2 - ペーパーモルタルセメント組成物、ペーパーモルタルセメント固化体、及びペーパーモルタルセメント組成物の製造方法 - Google Patents

ペーパーモルタルセメント組成物、ペーパーモルタルセメント固化体、及びペーパーモルタルセメント組成物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般家庭並びにオ
フィス、学校等から排出される古新聞紙や古雑誌等の紙
類、及び製紙工場から排出される製紙パルプスラッジを
焼却処理することなく再生、利用するものであって、鋲
さし性に優れた建築材料として利用できるようにしたペ
ーパーモルタルセメント組成物、ペーパーモルタルセメ
ント固化体、及びペーパーモルタルセメント組成物の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、家庭並びにオフィス、学校等から
排出される各種紙類(新聞紙、コピー紙、段ボール等)
は、一部は再生古紙として再利用されているが、バージ
ンパルプから作成される紙に比べて相対的に固く、また
脆いため、需要は多くない。さらに、古紙の再生に際し
ては、製紙工場で古紙を離解する工程、再抄造する工程
など、バージンパルプから紙を作成する場合に比べて、
処理が面倒であるため、処理コストが高い。このように
再生古紙は、バージンパルプから作成された紙に比べて
特性的にもコスト的にも商品競争力が低く、自治体の助
勢なくしては成立しないのが現状である。
【0003】そのため、多くの原料古紙は、焼却廃棄処
理されていた。また、工場から排出された製紙パルプス
ラッジは、焼却或いは埋立処理されていた。また、特開
平10−37390号公報には、セメントと、ペーパー
スラッジとを構成材料とするセメント瓦が提案されてい
る。尚、このペーパースラッジとは、製紙工場の排水を
浄化する装置に溜まる汚泥を、一定条件下で燃焼させて
得られる粉体で、炭酸カルシウム、硅砂、タルク、カオ
リン等の集合物質である。さらに、特公昭59−256
52号公報には、オレフィン系熱可塑性樹脂及び古紙か
らなる配合物に対してパルプスラッジを焼成した炭化物
を添加、混合してなる黒色の成形用複合材料が提案され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年で
は、簡易焼却炉等による低温焼却によってダイオキシン
等の環境ホルモンが発生し、環境や人体に重大な悪影響
を及ぼしたり、燃焼に伴う二酸化炭素の発生による地球
温暖化が懸念され、社会的な問題となっている。尚、紙
類には基本的に塩素系化合物が含有されないので、ダイ
オキシンの発生は考えられないが、紙の表面処理、フィ
ルムラミネート、接着剤等の使用、等に際して塩素系化
合物や塩素含有ポリマー等が含有され、ダイオキシンを
発生させることもある。また、前記特開平10−373
90号公報に記載の方法も、汚泥を燃焼処理して得られ
る原料を用いるものであって、上述の問題を回避するも
のではない。さらに、前記特公昭59−25652号公
報に記載の方法も、パルプスラッジを焼成した炭化物を
原料として用いる点では同様である。但し、この方法で
は、古紙からなる配合物も用いている点では古紙の有効
利用がなされている一例といえる。しかし、この方法で
はポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂と古新聞紙、
古雑誌等の古紙を配合した後に開繊機(ミキサー)にか
けるもので、古紙は十分に樹脂に絡み合うものではな
く、折れ易く、はげ易く、低強度の材料になり易いもの
であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記に鑑み提
案されたもので、粉砕古紙を、水性合成樹脂エマルジョ
ンによりペーパースラリー化し、該ペーパースラリーと
水硬性セメントと混練してなるペーパーモルタルセメン
ト組成物を提供するものである。
【0006】また、本発明は、上記組成物を任意寸法及
び任意形状に成形して固化してなるペーパーモルタルセ
メント固化体をも提案する。この固化体は、空隙が少な
く、鋲さし性に優れ、高強度であるという優れた特性を
有することが見出された。
【0007】さらに、本発明は、前記組成物の製造方法
をも提案するものであり、粉砕古紙に水を加えてのり状
とした後、水性合成樹脂エマルジョンを加えて混合して
ペーパースラリー化し、得られたペーパースラリーと水
硬性セメントとを混練することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】まず、本発明に用いる粉砕古紙、
水性合成樹脂エマルジョン、水硬性セメントについて説
明する。
【0009】本発明における粉砕古紙は、一般家庭並び
にオフィス、学校等から排出される古新聞紙や古雑誌等
の紙類、及び製紙工場から排出される製紙パルプスラッ
ジ(水分30〜45%含有)を微細繊維状にした粉砕微
細粉を指す。粉砕に際しては、回転叩解式粉砕機等の公
知の粉砕装置を用いて粉砕すれば良く、粉砕古紙の大き
さ(粉砕平均粒径)は100〜1500μm程度が望ま
しい。1500μmより大きい場合には樹脂との絡みが
不十分となり易く、強度もまた低くなり易い。さらに、
100μmより小さい場合には十分な鋲さし性が得られ
難い。
【0010】水性合成樹脂エマルジョンとしては、アク
リル共重合樹脂エマルジョン、アクリル・スチレン共重
合樹脂エマルジョン、アクリル・スチレン共重合樹脂エ
マルジョンと酢酸ビニル・エチレン・塩化ビニル共重合
樹脂エマルジョンを組合せた水性合成樹脂エマルジョン
が用いられる。これらの他、紙繊維と十分になじみ易
く、かつセメントモルタル混和性をもつ水性合成樹脂エ
マルジョンであれば、特に限定するものではない。
【0011】水硬性セメントとしては、普通ポルトラン
ドセメント、早強セメント、ホワイトセメント、および
アルミナセメントのいずれでもよいが、特にホワイトセ
メントおよび早強セメントが望ましい。
【0012】次に、前記の各材料を用いた本発明の組成
物、固化体、その製造方法について説明する。
【0013】前記微細繊維状の粉砕古紙に水を加えての
り状とする。これに前記水性合成樹脂エマルジョンを加
え、適宜に混合(混練)することにより、ペーパースラ
リー化させる。このとき粉砕古紙の微細繊維は、水性
成樹脂エマルジョンと密接に絡み合ったペーパースラリ
ーとなる。尚、粉砕古紙に水を加える工程を省略し、直
水性合成樹脂エマルジョンに混合するようにしても良
い。その後、得られたペーパースラリーと水硬性セメン
トとを混練することにより、ペーパーモルタルセメント
組成物が作製される。このとき粉砕古紙の微細繊維、
合成樹脂エマルジョン、水硬性セメントの三成分が最
接近し、密接に絡み合った混練物となる。そして、これ
を圧縮、固化することにより、空隙が少なく、鋲さし性
に優れた高強度のペーパーモルタルセメント固化体を得
ることができる。
【0014】このように本発明は、古紙の再利用及び製
紙パルプスラッジの有効利用に関し、予めこれらを微細
繊維状にした粉砕微細粉(粉砕古紙)としておき、さら
にこれを水に浸し、のり状化した後、水性合成樹脂エマ
ルジョンを加え、十分に混合(混練)することにより、
微細繊維と樹脂とが十分に絡み合うものとなり、これに
水硬性セメントを混練、圧縮固化することにより、紙繊
維、樹脂、水硬性セメントの三成分が緻密に絡み合って
一体化したペーパーモルタルセメント固化体を得ること
ができる。そのため、多量の粉砕古紙を使用した場合で
あっても、高強度のペーパーモルタルセメント固化体が
得られる。
【0015】本発明のペーパーモルタル組成物、固化体
における粉砕古紙、水性合成樹脂エマルジョン、水硬性
セメントの配合割合は、それぞれ以下の範囲であること
が望ましい。 粉砕古紙 5〜 50重量部 水性合成樹脂エマルジョン(固形分20〜40%) 10〜100重量部 水硬性セメント 20〜200重量部 粉砕古紙の量が5重量部より少ない場合は、高い曲げ強
度と圧縮強度が得られるが、鋲さし性が低下する。逆
に、50重量部より多い場合は、強度が劣る。より好ま
しくは10〜30重量部である。水性合成樹脂エマルジ
ョン(固形分20〜40%)の量が100重量部より多
い場合は、曲げ強度と圧縮強度は大きくなるが、鋲さし
性が低下する。逆に、10重量部より少ない場合は、曲
げ強度、圧縮強度がともに低下する。固形分計算では2
〜40重量部であることが望ましい。水硬性セメントの
量が200重量部より多いほど、固化体の曲げ強度、圧
縮強度がともに高い値となるが、鋲さし性は低下する。
逆に20重量部より少ない場合、強度が低下する。より
好ましくは60〜90重量部である。
【0016】
【実施例】[実施例1] 古新聞紙を原料とする粉砕紙平均長800μmの粉砕古
紙10重量部を50重量部の水に浸してのり状とした。
これを、水性合成樹脂エマルジョンとして、アクリル共
重合樹脂エマルジョン(固形分30%)50重量部と混
合、練り合わせて、ペーパースラリーを作成した。この
ペーパースラリーと、水硬性セメントとして、ホワイト
セメント80重量部とを混練した後、型枠に詰め込み、
圧縮成型し、養生固化した。固化体の4週間強度をJI
S R 5201に準じて測定した。その結果、曲げ強度
77kg/cm2、圧縮強度150kg/cm2なる値を
得た。後述する比較例1に比べて明らかに高い強度が得
られた。また、鋲さし性も良好であることが確認され
た。
【0017】[実施例2] 前記実施例1に準じ、粉砕古紙10重量部、水性合成樹
脂エマルジョンとして、アクリル・スチレン共重合樹脂
エマルジョンと酢酸ビニル・エチレン・塩化ビニル共重
合樹脂エマルジョンを組合せた水性合成樹脂エマルジョ
ン50重量部、水50重量部を混合し、ペーパースラリ
ーを作成した。このペーパースラリーと、早強セメント
110重量部とを混練し、圧縮成型した後、養生固化し
た。固化体の4週間強度をJIS R 5201に準じて
測定した。その結果、曲げ強度95kg/cm2、圧縮
強度262kg/cm2なる値を得た。後述する比較例
1に比べて明らかに高い強度が得られた。また、鋲さし
性も良好であることが確認された。
【0018】[比較例1] 石膏モルタル市販品を前記実施例1,2と同様にJIS
R 5201に準じて圧縮強度及び曲げ強度を測定し
た。その結果、曲げ強度19kg/cm2、圧縮強度3
9kg/cm2であった。また、鋲さし性も全く不可で
あった。
【0019】[実施例3] 前記実施例1に準じ、粉砕古紙量10重量部(一定)、
水50重量部(一定)、水性合成樹脂エマルジョン量5
0重量部(一定)とし、水硬性セメント(ホワイトセメ
ントに代えて早強セメントを用いた)の量を50〜11
0重量部の範囲で変化させて得られるペーパーモルタル
セメント固化体の4週間強度を測定した結果を図1(曲
げ強度),2(圧縮強度)に示す。
【0020】[実施例4] 前記実施例1に準じ、水硬性セメント(ホワイトセメン
トと早強セメントの2種を用いた)110重量部(一
定)、粉砕古紙量10重量部(一定)とし、水性合成樹
脂エマルジョン量の量を0〜50重量部の範囲で、水の
量を100〜50重量部の範囲で変化させて得られるペ
ーパーモルタルセメント固化体の4週間強度を測定した
結果を図3(曲げ強度),4(圧縮強度)に示す。その
結果、水性合成樹脂エマルジョンの配合比率が大きくな
るに伴い、曲げ強度及び圧縮強度とも増大する傾向にあ
り、曲げ強度は水性合成樹脂エマルジョン10重量部
で、圧縮強度では30重量部を越えるとその傾向が認め
られる。さらに、セメントの種類によっても差があり、
水性合成樹脂エマルジョン無添加の場合は強度さは認め
られないが、水性合成樹脂エマルジョン添加によりホワ
イトセメントよりも早強セメントの方が曲げ強度及び圧
縮強度ともに大きくなる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明のペーパーモ
ルタルセメント組成物及びその製造方法は、一般家庭並
びにオフィス、学校等から排出される古新聞紙や古雑誌
等の紙類、及び製紙工場から排出される製紙パルプスラ
ッジを、地球温暖化や環境ホルモンの発生等を引き起こ
す燃焼(焼却)処理することなく極めて効率的に再生、
利用するものである。また、本発明のペーパーモルタル
セメント固化体は、従来品に比較して、曲げ強度及び圧
縮強度が約4〜5倍も高く、さらには鋲さし性にも優れ
ているので、壁材、天井材等、各種の建築材料として利
用することができる。さらに、本発明のペーパーモルタ
ルセメント固化体は、粉砕古紙を構成する微細繊維と、
水性合成樹脂エマルジョンを構成する合成樹脂と、水硬
性セメントとの三成分が、十分に緻密に絡み合い、一体
化した構成であるため、従来の古紙を用いたプラスチッ
ク材料のように低強度のものとならず、高強度の新素材
として前記建築材料以外の用途にも適用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における本発明のペーパーモルタルセメ
ント固化体のセメント配合比率と曲げ強度(4週強度)
との関係を示す相関図である。
【図2】実施例における本発明のペーパーモルタルセメ
ント固化体のセメント配合比率と圧縮強度(4週強度)
との関係を示す相関図である。
【図3】実施例における本発明のペーパーモルタルセメ
ント固化体の水性合成樹脂エマルジョン配合比率と曲げ
強度(4週強度)との関係を示す相関図である。
【図4】実施例における本発明のペーパーモルタルセメ
ント固化体の水性合成樹脂エマルジョン配合比率と圧縮
強度(4週強度)との関係を示す相関図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 玉野井 英雄 静岡県榛原郡御前崎町御前崎6177−3 元旦ビューティ工業株式会社 静岡工場 内 (56)参考文献 特開 平7−165454(JP,A) 特表 平7−504392(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 14/00 - 28/36 B09B 3/00 301

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 紙類や製紙パルプスラッジを微細繊維状
    にした粉砕微細粉である粉砕古紙を、水性合成樹脂エマ
    ルジョンによりペーパースラリー化し、該ペーパースラ
    リーと水硬性セメントとを混練してなることを特徴とす
    るペーパーモルタルセメント組成物。
  2. 【請求項2】 粉砕古紙5〜50重量部を、固形分20
    〜40%の水性合成樹脂エマルジョン10〜100重量
    部によりペーパースラリー化し、該ペーパースラリーと
    水硬性セメント20〜200重量部とを混練してなるこ
    とを特徴とするペーパーモルタルセメント組成物。
  3. 【請求項3】 粉砕古紙の大きさが、100〜1500
    μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペ
    ーパーモルタルセメント組成物。
  4. 【請求項4】 水性合成樹脂エマルジョンが、アクリル
    共重合樹脂エマルジョン、アクリル・スチレン共重合樹
    脂エマルジョン、アクリル・スチレン共重合樹脂エマル
    ジョンと酢酸ビニル・エチレン・塩化ビニル共重合樹脂
    エマルジョンを組合わせた水性合成樹脂エマルジョンを
    用いる請求項1又は2又は3の何れか一項に記載のペー
    パーモルタルセメント組成物。
  5. 【請求項5】 紙類や製紙パルプスラッジを微細繊維状
    にした粉砕微細粉である粉砕古紙を、水性合成樹脂エマ
    ルジョンによりペーパースラリー化し、該ペーパースラ
    リーと水硬性セメントとを混練した組成物を、任意寸法
    及び任意形状に成形して固化してなることを特徴とする
    ペーパーモルタルセメント固化体。
  6. 【請求項6】 紙類や製紙パルプスラッジを微細繊維状
    にした粉砕微細粉である粉砕古紙に水を加えてのり状と
    した後、水性合成樹脂エマルジョンを加えて混合してペ
    ーパースラリー化し、得られたペーパースラリーと水硬
    性セメントとを混練することを特徴とするペーパーモル
    タルセメント組成物の製造方法。
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