JP3244804B2 - 樹脂被覆鋼管の前処理方法 - Google Patents

樹脂被覆鋼管の前処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂被覆鋼管の前処理
方法に係り、特にポリエチレンなどのポリオレフィン被
覆鋼管および粉体エポキシ被覆鋼管の被覆に先立つ鋼管
の前処理方法に関するものであり、さらに詳しくはブラ
スト処理で発生した粉塵などのよごれを完全に除去し
て、品質特に耐陰極剥離性能などの2次密着性にすぐれ
た樹脂被覆鋼管を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂被覆、特にポリエチレンやポリプロ
ピレンなどを用いたポリオレフィン系被覆鋼管および粉
体エポキシ樹脂を用いた粉体エポキシ被覆鋼管は、天然
ガスや原油などの輸送用パイプラインに広く使用されて
いる。このようなパイプラインは、通常20年以上の耐久
性を要求されるため、樹脂被覆とともに電気防食が併用
される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような樹脂被覆鋼管は、輸送,敷設時の損傷などにより
樹脂被覆層に鋼管素地にまで達する貫通孔が発生する場
合があり、上記電気防食を適用すると、貫通孔に流れる
電流によって環境中の水分が電気分解を起こして、発生
したアルカリなどによって接着が劣化していく現象、い
わゆる陰極剥離が発生するという問題がある。
【0004】このような耐陰極剥離性能などの2次密着
性を向上させる目的では、ブラスト処理後クロメート処
理を実施する方法が用いられている。ところがブラスト
処理を行うと、鋼管の外面にはブラスト粒から発生した
微細な粉塵などが付着する。粉塵などのよごれは密着性
を低下させるため、取り除くことが必要である。この粉
塵除去には従来、エアブローやナイロンブラシによるブ
ラッシングとか減圧吸引などの方法、あるいはこれらの
組合せによる方法が実施されているが、効果は小さく、
工業的設備ではブラスト処理によるショット粒の残存に
よりクロメート処理の特性を十分生かし切れていないの
が現状である。
【0005】また、ブラスト後の粉塵などのよごれを取
り除くためにリン酸系の化成処理液を用いる方法(たと
えば特開昭62−294183号公報など参照)が考えられる。
しかしこの方法では、確かに粉塵などのよごれは激減す
るが、化成処理液の回収設備や廃液処理設備などの設備
的な面でのデメリットが大きく実施が困難なのが現状で
ある。
【0006】本発明は、上記したような従来技術の課題
を解決すべくしてなされたものであって、ブラスト処理
後の粉塵などのよごれを簡便にかつ完全に除去でき、ク
ロメート処理の性能を最大限に引き出し、耐陰極剥離性
能などの2次密着性にすぐれた樹脂被覆鋼管の形成を可
能にする前処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、素材鋼管に樹
脂被覆を施す際の前処理する方法であって、前記鋼管外
面をブラスト処理したあと、10 kgf/cm 2 以上の高圧水
を吹き付けてよごれを除去し、さらに5分以内に水分を
除去してからクロメート処理を施すことを特徴とする樹
脂被覆鋼管の前処理方法である。
【0008】
【作 用】本発明によれば、ブラスト処理後の粉塵など
のよごれ処理を高圧水の吹き付けによって実施するもの
であるから、エアブローなどの気体の吹き付けでは除去
困難なブラスト面のアンカーなどに食い込んだ粉塵をも
除去することができ、粉塵などのよごれの完全除去が可
能である。
【0009】ここで、本発明での高圧水の吹き付け圧力
は、水圧で5kgf/cm2 以上、より好ましくは10kgf/cm2
以上が望ましい。高圧水の圧力が5kgf/cm2 未満の場合
は、粉塵の除去が不十分で、その効果がほとんど得られ
ないのである。また、水量は1〜10l/m2が適当である。
水量が1l/m2以下では水が完全に鋼管表面を濡らすこと
ができないから十分な性能が得られず、10l/m2を超える
ものは実際上不要であるばかりか、設備コストや省スペ
ースの観点からも望ましくない。
【0010】水洗後は、エアブローにより鋼管表面の水
を除去する必要がある。水洗の水は5分以内にエアブロ
ーにより除去する必要があり、エアブローまでの時間が
5分を超えるとブラスト面に発錆が生じ、むしろ性能が
低下する場合もある。また、エアブロー後は、10分以内
にクロメート処理などの化成処理を実施する必要があ
る。
【0011】クロメート処理液は、特に限定するもので
はないが、場合に応じてシリカ,リン酸,樹脂などのい
ずれか、あるいはその2つ以上のものを添加したものが
使用可能である。なお、クロメート処理液の付着量とし
ては、100 〜1000mgCr/m2 程度が好ましい。なお、通
常、水洗を行ったのみでは性能の向上は図れないといわ
れていた(たとえば前出の特開昭62−294183号公報など
参照)が、上記のようにクロメート処理を実施するこ
と、および水洗からエアブローまでの時間ならびにエア
ブローからクロメート塗布までの時間をコントロールす
ることにより、従来法に比して格段の2次密着性能を向
上させることができる。
【0012】
【実施例】以下に、本発明の実施例について図1を用い
て詳しく説明する。図1はTダイ法によるポリエチレン
被覆の場合の、本発明に係る前処理装置の実施例の構成
を示す概要図である。この図において、1は被処理材と
しての鋼管で、円周方向に回転しながら矢示F方向に移
送される。2はブラスト処理設備、3は水洗のための高
圧水ノズルであり、それぞれノズル孔が鋼管1の中心に
向けて配列される。4は水洗後の洗浄水を排水する排水
装置である。5は圧縮空気をを噴射するエアブローノズ
ルであり、そのノズル孔は鋼管1の中心に向けて配列さ
れる。なお、高圧水ノズル3とエアブローノズル5のそ
れぞれの幅Wは鋼管1が1回転する間に進む距離より大
きい値とする必要がある。6はクロメート処理液を鋼管
1の表面に塗布するクロメート塗布装置、7はエポキシ
プライマ塗布の前に鋼管1を予熱しポリエチレン被覆に
備える誘導加熱装置である。8は高圧水ノズル3の前後
に設けられる水飛散防止用しきり板である。
【0013】なお、丸ダイ法などの小,中径管の場合
は、鋼管が円周方向に回転しないため、高圧水ノズル3
とエアブローノズル5ノズル孔の取付け位置は円周方向
に均等の間隔で配列する。その間隔は、鋼管全面を洗
浄,エアブローできる距離に設定すればよい。このよう
に構成された前処理装置を用いて、水洗後1分以内にエ
アブローした後5分以内にクロメート処理を実施して、
鋼管1の表面の前処理を行った後ポリエチレンを被覆し
た場合について、そのクロメート処理直前で調べた粉塵
付着率およびクロメート処理後の耐陰極剥離性能を図
2,図3にそれぞれ示した。ここで、高圧水は圧力;50
kgf/cm2 、水量;10 l/m2 とし、エアブローは圧力;10
kgf/cm2 とした。なお、比較のために、従来のエアブロ
ーのみによる場合を従来法1とし、ナイロンブラシによ
るワイピングによる場合を従来法2として、それぞれ併
せて示した。また、クロメート処理直前での粉塵付着率
は、鋼面にセロテープを張り付け、セロテープに付着し
た粉塵の付着面積率とし、耐陰極剥離試験はASTMG
8(印加電圧;−1.5 V(対基準電圧),試験温度;25
℃, 試験時間;60日間) に準じて行った。
【0014】まず、図2において、本発明法の結果は従
来法1(エアブローのみ)および従来法2(ナイロンブ
ラシによるワイピングの場合)に比して粉塵除去が効果
的であることがわかる。また図3からは、本発明法の耐
陰極剥離特性は従来法1,2に比して飛躍的に向上して
いることがわかる。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように本発明の前処理方法
によれば、水洗工程を付加してタイミングよく脱水する
ようにしたので、鋼管表面の粉塵を効果的に除去するこ
とができ、したがってクロメート処理の効果を十分に生
かすことができるから、耐陰極剥離性能などの2次密着
性をも大幅に向上し、高い防食性能を付与した被覆鋼管
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る前処理装置の実施例の構成を示す
概要図である。
【図2】クロメート処理直前で調べた粉塵付着率を示す
特性図である。
【図3】クロメート処理後の耐陰極剥離性能を示す特性
図である。
【符号の説明】
1 鋼管 2 ブラスト処理設備 3 高圧水ノズル 4 排水装置 5 エアブローノズル 6 クロメート塗布装置 7 誘導加熱装置 8 水飛散防止用しきり板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−107785(JP,A) 特開 昭62−294183(JP,A) 特開 昭49−131916(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 素材鋼管に樹脂被覆を施す際の前処理
    する方法であって、前記鋼管外面をブラスト処理したあ
    と、10 kgf/cm 2 以上の高圧水を吹き付けてよごれを除
    去し、さらに5分以内に水分を除去してからクロメート
    処理を施すことを特徴とする樹脂被覆鋼管の前処理方
    法。
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