JP3233807B2 - 固体電解質型燃料電池用基体材 - Google Patents

固体電解質型燃料電池用基体材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、円筒型固体電解質燃料
電池用の基体材に関する。また、平板型固体電解質燃料
電池のマニホールド材質等に応用してもよい。
【0002】
【従来の技術】図1に従来の固体電解質型燃料電池の内
部改質用基体管の概略の一例を示す。同図に示すよう
に、例えば溶射型固体電解質(SOFC)は、CaOで
完全に安定化したZrO2 (カルシア安定化ジルコニ
ア:CSZ)からなる多孔質円筒基体管1に、燃料極2
としてNiとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)と
のサーメットをプラズマ溶射で成膜し、この上に電解質
3として酸素イオン伝導性のYSZをプラズマ溶射で成
膜している。そして、この上に空気極4としてLaCo
3 をアセチレンフレーム溶射で成膜して燃料電池を構
成しており、これらをNiAlとアルミナのサーメット
で成膜したインタコネクタ5で、燃料極2と空気極3と
を接続して直列に接続している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、固体電解質
型燃料電池は、一般に約900℃以上の高温で発電する
システムであるが、各構成膜が異種材料であることか
ら、熱膨張係数が異なり、例えば定期検査等で本システ
ムを常温まで降下させた際に、応力が発生し、この結果
割れ等が生じる、という問題がある。特に基体管1は電
池構成材のなかでも最も厚く、他の構成膜に及ぼす影響
は大きい。
【0004】また、燃料電池の膜構成において、最も重
要な膜はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からな
る固体電解質3であり、この膜に応力を発生させないた
めには、基体管1の熱膨張係数が固体電解質3と一致し
ていればよい。
【0005】しかし、従来の多孔質円筒基体管1の材料
であるCaOで完全に安定化したZrO2 (カルシア安
定化ジルコニア:CSZ)は、その熱膨張係数が9.5
×10-6/Kであり、固体電解質の熱膨張係数が10.
5×10-6/Kであるので、1.0×10-6/Kもの熱
膨張率差があり、昇降温を繰り返すと、この結果熱応力
が発生する、という問題がある。
【0006】本発明は上記問題に鑑み、昇降温後の劣化
率を著しく低減する固体電解質型燃料電池用基体材を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成する固体
電解質型燃料電池用基体材の構成は、Y2 3 で完全に
安定化されたZrO2 を固体電解質とする固体電解質型
燃料電池の電気化学セルの基体材であって、15〜35
vol%のNiOを含むMgAl2 4 よりなることを
特徴とする。
【0008】以下、本発明の内容を説明する。
【0009】ここで、本発明に係る電気化学セルの基体
材は、MgAl2 4 に対して、15〜35vol%の
NiOを含有するものである。
【0010】上記基体材は、接触する他の構成材料と反
応性が低いMgAl2 4 とNiOとを混合してなるも
のであるが、MgAl2 4 単体では熱膨張係数が9.
0×10-6/Kと低く、熱膨張係数が高いNiOを所定
量含有して調整するようにしている。
【0011】上記配合量は、後述するようにNiOの添
加量に応じて熱膨張係数が高くなっていくので、本発明
の好適な添加量の範囲内としては、MgAl2 4 に対
して、15vol%〜35vol%のNiOを含有した
場合が好ましい。これは、上記配合量であると、その熱
膨張係数は後述の実施例に示すように、9.9×10-6
/K〜10.9×10-6/Kとなり、固体電解質の膨張
係数である10.5×10-6/K近傍となり、昇降温後
の応力の発生が少なく、劣化が防止されるからである。
なお、本発明の添加の範囲外であるMgAl2 4 に対
して、15vol%未満含有する場合、又は35vol
%を超えて含有する場合においては、固体電解質の膨張
係数である10.5×10-6/Kからその係数が大幅に
外れてしまうので、降温後の割れ発生比率が増加して電
池性能の低下率も大きくなり、共に好ましくない。
【0012】ここで、本発明で用いる固体電解質は、従
来と同様に、Y2 3 で完全に安定化されたZrO
2 (イットリア安定化ジルコニア;YSZ)からなるも
ので、その熱膨張係数は、10.5×10-6/Kであ
り、上記本発明の構成に係る基体材はその熱膨張係数
が、9.9×10-6/K〜10.9×10-6/Kであ
り、略一致するものとなる。
【0013】上記基体材とは、例えば、円筒型固体電解
質型燃料電池の基体管や、平板型固体電解質型燃料電池
のマニホールド等の材料として用いるものであるが、本
発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
【実施例】以下、本発明の好適な一実施例を説明する。
【0015】基体管のセラミックス原料としては、平均
粒径が30μmのMgAl2 4 と平均粒径が0.8μ
mのNiOとを用意した。上記基体管は押出成形法によ
り成形されるが、押出成形用助剤としてメチルセルロー
ス、グリセリン、水さらには、潤滑剤としてステアリン
酸エマルジョンを用いた。それぞれの助剤の添加量は、
セラミックス原料10重量部に対してそれぞれ、4重量
部,5重量部,10重量部,0.2 重量部である。また、
ステアリン酸エマルジョンは固形分濃度が15wt%
で、ステアリン酸の平均粒径は5μmであり、分散剤と
しては水を用いた。
【0016】次に成形の概略を説明する。 最初に、下記「表1」の所定配合となるような割合
で、MgAl2 4 とNiOとを計量し、メチルセルロ
ースを添加して、高速ミキサーに入れ、3分間混合す
る。 次に、水、グリセリン、ステアリン酸エマルジョン
を計量・添加後、1分間混合する。 次に、二軸ニーダを用いて本混練を行い、押出成形
機を用いて円筒形状に成形する。 成形後、60℃で24時間乾燥し、ガラス炉を用い
て1650℃で4時間焼成し、焼成基体管を成形した。
【0017】上記得られた焼成基体管は、熱膨張係数の
測定と溶射法により燃料電池を構成し、これらのセルに
ついて発電温度と室温との昇降温を5回繰り返して行
い、固体電解質燃料電池の昇降温後の劣化率を求め、セ
ル性能を調べた。なお、比較例として本発明の配合外に
ついても同様にして求めた。この結果を「表1」に示
す。
【0018】
【表1】
【0019】上記「表1」に示すように、基体管のNi
Oの添加比率が高くなると熱膨張係数が大きくなる。こ
れに伴い、固体電解質型燃料電池の昇降温後の劣化率が
急速に改善された。しかし、基体管のNiO添加比率が
35vol%を超えると固体電解質型燃料電池の昇降温
後の劣化率が急激に悪化した。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電
気化学セルの基体材を15〜35vol%のNiOを含
むMgAl2 4 より構成することにより、基体管の材
質の熱膨張係数を固体電解質のそれに近づけられ、燃料
電池の昇降温時に電解質に発生する歪が低減でき、この
結果、固体電解質型燃料電池の昇降温後の劣化率を著し
く低減できた。
【0021】また、従来の基体管のセラミックス原料は
高価なZrO2 系原料であったが、本発明により安価な
MgAl2 4 原料にすることができるので、円筒型固
体電解質型燃料電池用の基体管又は平板型固体電解質型
燃料電池用のマニホールドを安価に製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例に係る基体管の概略図である。
【符号の説明】
1 基体管 2 燃料極 3 電解質 4 空気極 5 インタコネクタ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Y2 3 で完全に安定化されたZrO
    2 を固体電解質とする固体電解質燃料電池の電気化学セ
    ルの基体材であって、 15〜35vol%のNiOを含むMgAl2 4 より
    なることを特徴とする固体電解質型燃料電池用基体材。
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