JP3232765B2 - 高純度テレフタル酸の製造方法 - Google Patents

高純度テレフタル酸の製造方法

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JP3232765B2 JP09155293A JP9155293A JP3232765B2 JP 3232765 B2 JP3232765 B2 JP 3232765B2 JP 09155293 A JP09155293 A JP 09155293A JP 9155293 A JP9155293 A JP 9155293A JP 3232765 B2 JP3232765 B2 JP 3232765B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高純度テレフタル酸の製
造方法に関する。詳しくは、パラキシレンの酸化反応に
より得られた粗テレフタル酸を白金族金属の存在下、水
素と接触させて精製する際に、不純物の生成を抑制する
ことにより高純度のテレフタル酸を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】パラキシレンの酸化によって得られる粗
テレフタル酸中には、通常、4−カルボキシベンズアル
デヒド(「4CBA」と略して示す)をはじめとする各
種不純物が比較的多量に含まれており、従来、これを精
製した後、ポリエステルの原料として用いている。
【0003】このような粗テレフタル酸の精製方法とし
ては、粗テレフタル酸を水素化処理あるいは、酸化処理
する方法が知られている。このうち、テレフタル酸を水
素化処理する方法として、高温、高圧下において粗テレ
フタル酸の水溶液を水素化触媒の存在下に水素還元処理
し、かつ、処理された水溶液からテレフタル酸の結晶を
回収する方法が提案されている(特公昭41−1686
0号公報)。
【0004】かかる粗テレフタル酸を水素添加して精製
する方法によれば、粗テレフタル酸中の無機性不純物で
ある金属イオン、及び、有機性不純物の中で最も含有量
の多い4CBAの混入量を著しく低下させることができ
る。しかしながら、4CBA以外の構造不明の有機性不
純物(以下「着色原因不純物」という)を完全に除去す
ることはできず、精製テレフタル酸中にこの着色原因不
純物が一部残存し、例えば、ポリエステル製造時に着色
を引き起こしポリマーの白色度を低下させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の高純
度テレフタル酸の製造における上記した問題を解決する
ためになされたものであって、高温、高圧下、粗テレフ
タル酸の水溶液を水素と接触させて精製する方法、即
ち、水素還元精製する方法において、水素還元精製する
前の高温下で着色原因不純物が生成するのを抑制して高
純度の精製テレフタル酸を製造する方法を提供すること
を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題に
鑑み、鋭意検討を行った結果、水素還元精製前の粗テレ
フタル酸が高温にさらされる時間、特に250℃以上に
さらされる時間を限定することにより、着色原因不純物
の生成を抑制でき、極めて高純度の精製テレフタル酸を
得ることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】即ち、本発明の要旨は、パラキシレンの酸
化反応により得られた粗テレフタル酸を加熱して、水に
溶解し、260〜320℃の温度で、白金族金属触媒の
存在下、水素と接触させて精製する方法において、該水
溶液が加熱過程で250℃以上に達してから精製を開始
するまでの時間を3分以下とすることを特徴とする高純
度テレフタル酸の製造方法に存する。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。パラキシ
レンの酸化反応は、通常、低級脂肪族カルボン酸から成
る溶媒中、特に酢酸溶媒中で、触媒として遷移金属化合
物及び臭素化合物の存在下、分子状酸素により液相酸化
することにより実施される。触媒としての遷移金属化合
物としては、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、クロ
ム等の遷移金属の臭素塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、
酢酸塩等のカルボン酸塩、アセチルアセトナート等が、
また、臭素化合物としては、マンガン、コバルト、鉄、
ニッケル、クロム等の臭素塩、臭化水素酸、臭化ナトリ
ウム、ジブロモエチレン、テトラブロモエタン等が用い
られている。なお、遷移金属の臭素塩は、遷移金属化合
物成分と臭素化合物成分とを兼ねることができる。ま
た、分子状酸素としては、純酸素、空気、純酸素と不活
性ガスとの混合物等が用いられる。
【0009】より具体的には、例えば、パラキシレンを
酢酸中で液相酸化してテレフタル酸を製造する場合に
は、原料パラキシレンは、通常、酢酸溶媒に対して1〜
50重量%の割合で用いられる。触媒としてコバルト化
合物またはマンガン化合物と臭素化合物が用いられると
きは、これらの化合物は、溶媒に対して、通常コバルト
原子が10〜5000重量ppm、マンガン原子が10
〜5000重量ppm、臭素原子が10〜10000重
量ppmとなるように用いられる。また、酸化反応器に
供給する分子状酸素は、通常、パラキシレン1モルに対
して酸素として3〜20モルの割合となるように用いら
れる。そして、反応は、通常、反応温度160〜260
℃、反応圧力4〜50kg/cm2 G、滞留時間10〜
200分の範囲で行なわれる。
【0010】このようにして得られる粗テレフタル酸
は、不純物として4CBAを通常50〜10000重量
ppm含んでおり、ポリエステルの原料として用いるた
めに水素還元精製することが好ましい。即ち、粗テレフ
タル酸の水スラリーを加熱し、スラリー中のテレフタル
酸を水に完全に溶解させ、高温、高圧下、水素の存在下
に白金族金属と接触させ、この後、晶析によって精製テ
レフタル酸を得る方法が採用される。
【0011】より詳細には、水100重量部に対して粗
テレフタル酸を、通常1〜80重量部、好ましくは15
〜65重量部からなる水スラリーを加熱して粗テレフタ
ル酸を水に溶解させ、260〜320℃、好ましくは2
70〜300℃で水素添加反応を行う。320℃を越え
ると水素還元反応中での副生物の生成が顕著となり、ま
た、250℃未満では水添加率が低下するので好ましく
ない。
【0012】また、粗テレフタル酸水溶液1t/hrあ
たり、分子状水素を0.05〜10Nm3/hr、好ま
しくは0.1〜3Nm3/hr用い、ルテニウム、ロジ
ウム、パラジウム、白金、オスミウム等の白金族金属触
媒と、通常1〜100分間、接触する。この際の圧力は
通常、50kg/cm2 以上である。これら白金族金属
触媒は、通常、テレフタル酸熱水溶液に不溶性の担体、
例えば、活性炭等に担持させて用いられる。これらのな
かでは、特に、活性炭に担持させたパラジウム(以下、
「Pd/C」と略す)を固定床として用いるのが精製効
果の点から好ましい。このようにして精製処理したテレ
フタル酸の熱水溶液は、次いで、70〜180℃迄冷却
され、テレフタル酸を晶析させ、分離される。
【0013】以上のような水素還元のプロセスにおい
て、粗テレフタル酸を水に溶解し、水溶液として反応器
へ供給するためには、通常260〜320℃の反応温度
に事前に加温しておく必要がある。また、粒子状のテレ
フタル酸の未溶解物が残存した状態で反応器に供給され
ると水添精製ができないばかりか、Pd/Cの固定床で
閉塞のトラブルが起こり、強いてはプラントの停止にも
至る。従って、従来は、未溶解の粗テレフタル酸が反応
器へ供給されないように水スラリー中の粗テレフタル酸
の濃度に見合った溶解温度より若干高めの温度を保つこ
とにより滞留時間を長くして溶解の押しきりを行ってい
た。具体的には、スラリーを加熱し始め、反応温度であ
る260〜320℃の温度に到達するまでに0.5〜3
分、反応温度に達してから溶解の押し切りを行い水素還
元精製する前までの時間に3〜10分程度要していた。
【0014】ところが、本発明者等が詳細に検討を行っ
た結果では、このような高温下、特に250℃以上にテ
レフタル酸を曝すことにより熱的変質が起こり、分子量
が数百から数万の高分子量の着色原因不純物が生成する
ことを見いだし、かつ、これら着色原因不純物は高温下
に曝される時間が短い程生成する量が少なくなる関係が
あることを見いだした。
【0015】そこで、本発明が特徴とするところは、パ
ラキシレンの酸化により得られた粗テレフタル酸の水ス
ラリーを加熱して溶解させる際、250℃以上の温度に
加熱された状態から水素雰囲気下、白金族金属と接触さ
せ水素還元精製を開始するまでの時間(保持時間、滞留
時間)を3分以下、好ましくは2分以下、更に好ましく
は、1分以下で行うことにより、高温に曝される時間を
できる限り短くすることで温度による変質を抑え、着色
原因不純物の生成を抑制した点にある。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。実施例において、GPC成分とは、GPC(ゲルパ
ーミュエーションクロマトグラフィー)分析により、標
準ポリスチレン換算で分子量が数百から数万に相当す
る、テレフタル酸製品における着色原因不純物を意味す
る。GPC成分量の比較としては、GPCのクロマトグ
ラムのピーク面積(相対値)を表示した。また、粗テレ
フタル酸中の4CBAの含有率は液体クロマトグラフィ
ーによって測定し、同じく、アルカリ透過率(「T34
0」と略して示す)は、粗テレフタル酸7.5gを2規
定の水酸化カリウム50mlに溶解して光路長1cmの
石英セルにて340mμでの光線透過率で示した。
【0017】実施例1粗テレフタル酸の水スラリー化
槽、計量槽、スラリーフィードポンプ、スラリー加熱ラ
イン、スラリー溶解槽、0.5重量%のPdを活性炭に
担持させた触媒を充填した水添反応器及び、晶析槽を備
えた装置を用いて固定床流通方式での水添実験を行っ
た。本装置において、各機器や加熱ラインについては閉
塞防止のために電気ヒーターと保温材及び圧力調整器を
装備しており、温度、圧力ができる限り正確に制御され
ている。
【0018】最初に、スラリー化槽を除く全系を窒素ガ
スで十分置換した後、90kg/cm2 Gに加圧した。
次に、計量槽内に仕込んだ水をスラリーフィードポンプ
を用いてスラリー加熱ライン、溶解槽、反応器を経由し
て晶析槽へと順次流通させ、系内の加熱を行った。加熱
ラインの最終部で反応温度の290℃に到達するように
加熱を調整し、次の溶解槽では290℃に保持して溶解
の押し切りを行うように温度を調整した。
【0019】温度が安定したところで予め、容量50l
の撹拌機付きスラリー化槽で4CBAを2850ppm
を含み、T340が38%の粗テレフタル酸を30重量
部、水70重量部に調整したスラリーを計量槽に移送
し、水からスラリーに切り替えてフィード(6l/H)
を開始した。この時、スラリーが250℃に加熱されて
から加熱ラインの最終部に到達するまでの時間は0.5
分、溶解槽での保持時間は1.5分であった。該スラリ
ーを反応器に導入して、水素流量3l/H、反応圧力9
0kg/cm2 G、反応温度290℃で水添反応を行っ
た。
【0020】水添反応処理を受けたテレフタル酸水溶液
は、連続的に晶析槽に送られ、テレフタル酸を晶出さ
せ、100℃の温度で母液を分離後、水洗し、次いで乾
燥させた。得られた精製テレフタル酸中のGPC分析の
結果を表−1に示す。 比較例1 加熱ライン及び、溶解槽での保持時間を表−1に示す様
にした以外は実施例1と全く同じ装置、条件で実験し
た。結果を表1に示す。表−1より明らかなように25
0℃以上の高温保持時間が長い程着色原因不純物である
GPC成分量が著しく増加する。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】以上のように、粗テレフタル酸の水溶液
の水素還元精製までの加熱条件を特定することにより着
色原因不純物の生成が抑制され、色相のよい高純度のテ
レフタル酸を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−79635(JP,A) 特公 昭41−16860(JP,B1) 特公 昭51−32618(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 63/26 C07C 51/487 C07B 61/00 300

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パラキシレンの酸化反応により得られた
    粗テレフタル酸を加熱して、水に溶解し、260〜32
    0℃の温度で、白金族金属触媒の存在下、水素と接触さ
    せて精製する方法において、該水溶液が加熱過程で25
    0℃以上に達してから精製を開始するまでの時間を3分
    以下とすることを特徴とする高純度テレフタル酸の製造
    方法。
JP09155293A 1992-10-13 1993-04-19 高純度テレフタル酸の製造方法 Expired - Lifetime JP3232765B2 (ja)

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