JP3228356B2 - 蒸着用材料 - Google Patents

蒸着用材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蒸着VTRテープなど
を製造する工程で用いられる、Co−Ni基合金の蒸着
用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Co−Ni合金は、磁気特性、即ち保磁
力、残留磁束密度が優れているため、近年特にVTR等
の磁気記録材料として用いられている。
【0003】従来のその蒸着方法は、10-5〜10-6
orr程度に真空引きした真空チャンバー内で行われ、
るつぼ中の蒸着材料を電子ビームで2000℃程度に加
熱、溶融、蒸発させ、ベースフィルムに蒸着させてい
た。
【0004】ここで、蒸着材料は、蒸発した分補給しな
ければならない。その補給には、約10mmφ×10〜
30mmのいわゆるペレット状のものを用い、るつぼの
溶湯中に落下させて行うのが一般的であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の供給方
法によった場合、ペレットの落下に伴い、蒸着材料湯面
の乱れ、溶湯の飛散、溶湯内温度分布の不均一など、蒸
着条件が不安定となる。これらは、材料の蒸発方向や蒸
着量を不安定にするため、安定した品質のテープを製造
することができないという問題があった。
【0006】このような問題の対策として、蒸発材料を
長尺の線材とし、これをるつぼ内に連続供給して、蒸着
条件を安定化し、信頼性の高いテープを製造することが
考えられる。この場合、長時間の連続蒸着作業が可能に
なるというメリットもあるため、Co−Ni合金の線材
化が要望されていた。
【0007】しかし、Co−Ni合金は難加工性材料で
あるため、伸線加工などにより長尺化することは極めて
困難である。尚、特開昭59−64734号公報に示さ
れるように、Co−Ni合金中にFeを添加し、線材の
加工性や靱性を改善する方法がある。しかしながら、こ
のような技術では、Co−Ni合金の優れた磁気特性を
低下させるなど、別の問題が発生した。又、特開平3−
236435号公報に示されるように、合金中の不純物
限定を行い、靱性などを改善する技術もある。しかし、
合金組成の検討のみで、これだけでは十分な加工性の向
上は図れなかった。
【0008】本発明は、このような技術的背景のもとに
なされたもので、安定した蒸着条件が得られるよう、加
工性や靱性に優れたCo−Ni合金の蒸着用材料を提供
することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明蒸着材料は、Niが10〜30wt%,残
部実質的にCoであるCo−Ni合金の蒸着用材料にお
いて、結晶構造を示すX線回析で、その回析ピーク高さ
(強度)、fcc(200)/{fcc(200)+hcp(101)+hcp(100)}
が0.3以上で、酸素量が40ppm以下、結晶粒径が
80μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】(蒸着材料としての条件)以下に本発明に
至った背景から順に説明する。Co−Ni合金の長尺化
が望まれていることは先に述べたが、さらに、蒸着材料
としての適正を考えた場合、次のような条件が必要と思
われる。 優れた磁気特性を得るため、合金組成は、Niが10
〜30wt%,残部が実質的にCoであること。 合金材料の不純物が極めて低レベルであること。特
に、材料表面の汚染を少なくすること。 不純物を除去するための処理(理想的には皮はぎダイ
スによるシェービングなど)が可能な強度,靱性を有す
ること。 製品形状としては線材で、操業し易いようコイル巻き
ができ、かつコイルからの伸直,供給が可能な靱性,強
度を有すること。
【0011】さらに、以上の条件を満たす靱性,強度と
は、具体的には次のようなものである。 一回の加工で、減面率10%程度の線引きが可能なこ
と。 一回の加工で、0.2mm程度のシェービング加工が
可能なこと。 巻き径が300mmφ程度のリールにコイル巻きで
き、そこから線材の引き出し,供給を行った際、断線や
折損が起こらないこと。
【0012】(試験例)このような条件を前提に、種々
の試験を行ってみた。先ず、Co−Ni合金の機械的特
性と加工性の関係について検討した。
【0013】(試験例1) (機械的特性と加工性の関係)純度99.95%以上の
Co及びNiの各原料を、重量比で80:20となるよ
う用意し、真空溶解炉にて10-4Torr台の真空中で溶解
した。溶解量は約50kgで、これを内径150mmφ
の鋳型に入れ、押し湯部分を除き150mmφ×250
mmの良好な鋳造材を10チャージ製造した。この鋳造
材を1150℃で加熱し、50mmφまで鍛造した。さ
らにその後、1180℃に加熱し、10mmφまで熱間
圧延した。圧延の最終仕上げ加工温度は、800〜10
00℃の範囲であった。
【0014】この圧延材を長尺化及び表面清浄化のため
穴ダイスで線引きし、その後シェービング加工を行っ
て、断線や折損が発生しないかどうか調べてみた。その
結果、問題なく線引き、シェービングができたものと、
断線や折損が多発するものがあった。これらの原因とし
ては、断線に関しては強度不足、折損に関しては靱性不
足(強度が高すぎる場合も含む)と推定される。そこ
で、折損などの発生の有無と各圧延材の引張強度,絞
り,伸びの関係を調べてみた。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】同表に示すように、引張強度50〜150
kgf/mm2 、伸び、絞り各5%以上であれば製造
中,実使用中、断線,折損が起こらないことが判明し
た。しかしながら、120kgf/mm2 以上では、繰
り返し曲げ時に折損する場合が時折あり、好ましくは5
0〜120kgf/mm2 が良いと判断した。
【0017】このような試験結果をふまえて、前記の機
械的特性を得るための合金特性として、酸素量,結晶粒
径,結晶構造(X線回析によるピーク高さの比率「fcc
(200)/{fcc(200)+hcp(101)+hcp(100)} 」以下fcc 比
という)に注目し、さらに検討を行った。以下の試験例
で、引張試験における目標基準は、全て引張強度50〜
120kgf/mm2 、伸び、絞り各5%以上である。
【0018】(試験例2) (酸素量,結晶粒径,結晶構造,圧延温度と機械的特性
の関係)試験例1と同様に、150mmφ×250mm
の良好な鋳造材を得た。このとき、酸素量は脱酸剤のC
でその量を制御し、酸素量が異なる4種類(サンプルA
〜D)のインゴット各6ケを製造した。各インゴットを
1100℃に加熱して50mmφまで鍛造し、その後6
00〜1100℃の温度範囲で10mmφまで熱間圧延
加工を施した。以上の工程で製造した線材の組成を以下
に示す。
【0019】 サンプル Co(wt%) Ni(wt%) C (wt%) O (ppm) A 残 20.1 0.008 8 B 残 20.0 0.005 13 C 残 19.8 0.004 37 D 残 20.0 0.003 58
【0020】このような各材料ついて結晶粒径,結晶構
造を調べた。その結果を、圧延温度と共に表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】圧延温度、結晶粒径、結晶構造にそれぞれ
幅があるのは、各材料にこれだけの幅があったことを示
している。さらに、これら各材料の靱性を調査するた
め、引張試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】以上の結果を解析すると、次のことが判明
した。 結晶粒径、結晶構造fcc 比は、酸素量の影響をほとん
ど受けていない。つまり、両者の相関関係はあまりない
ものと推測される。従って、結晶粒径,結晶構造fcc 比
は、酸素量とは独立に調べてみるべきである。 靱性に関して、サンプルA〜Cには良好なものもある
が、同Dは不適当であった。従って、酸素量は靱性と関
係があるものと推測される。 又、サンプルA〜Cは、圧延温度により、靱性が良好
なものと劣るものがあり、全般的には低温加工の方が良
い結果が得られる傾向にある。 しかし、800℃以下で圧延した材料の中にも引張強
度、伸び、絞りが比較的低い材料があり、逆に高温加工
の材料でも各機械的特性の比較的高い材料が存在した。
【0025】これらのことから、靱性の判断は加工温度
だけでは正確にできないと考え、さらに詳しく、酸素量
の異なる材料ごとに結晶粒径、結晶構造と機械的特性の
関係を調べることにした。
【0026】(試験例3) (高酸素量材料の靱性)高酸素量の材料としてサンプル
D(酸素量50〜55ppm)を、試験例2と同様の工
程で再度製造,鍛造し、50mmφ材を10本用意し
た。これを700,800,900,1000,110
0℃で圧延して各2本ずつ線材を得た。そして、これら
の線材について結晶粒径,結晶構造fcc 比を調べると共
に引張試験を行った。その結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】同表に示すように、酸素量50〜55pp
mのサンプルDは、結晶粒径,結晶構造fcc 比にかかわ
らず、いずれも目標基準の靱性が得られないことが確認
された。
【0029】(試験例4) (中酸素量材料の靱性)次に、中酸素量の材料としてサ
ンプルC(酸素量32〜36ppm)を、実施例2と同
様に再度製造,鍛造して50mmφ材を10本用意し
た。これを700,800,900,1000,110
0℃で圧延して各2本ずつ線材を得た。そして、これら
の線材について結晶粒径,結晶構造fcc 比を調べると共
に引張試験を行った。その結果を表5に示す。
【0030】
【表5】
【0031】以上の結果を詳細に検討する。全般的に
は、圧延温度の低いものが良好な結果を示す傾向にあ
る。しかし、1000,1100℃で圧延した材料に
は、靱性の目標基準を満たすものとそうでないものがい
ずれも存在する。結晶粒径の大きい1100B材は引張
強度が低く、結晶構造fcc 比が0.25の1000B材
は伸び,絞りの点で劣った。これらのことから、靱性の
目標基準を満たす要素となるのは、圧延温度よりもむし
ろ酸素量,結晶粒径,結晶構造であることが判明した。
即ち、酸素量40ppm以下、結晶粒径80μm以下、
結晶構造fcc 比0.3以上であれば所定の靱性が得られ
ることがわかる。
【0032】(試験例5) (低酸素量材料の靱性)さらに、低酸素量の材料として
サンプルA(酸素量6〜10ppm)及びB(酸素量1
2〜18ppm)を、実施例2と同様に再度製造,鍛造
して50mmφ材を10本用意した。これを700,8
00,900,1000,1100℃で圧延して各2本
ずつ線材を得た。そして、これらの線材について結晶粒
径,結晶構造fcc 比を調べると共に引張試験を行った。
【0033】その結果、試験例4同様、結晶粒径80μ
m以下、結晶構造fcc 比0.3以上であれば、靱性の目
標基準を満たすことが判明した。続いて、このようにし
て得られた圧延材(10mmφ)に、最終加工目標であ
る伸線加工及びシェービング加工を行った。伸線加工の
減面率は、8,10,15%で、シェービング加工の削
り量は、0.2,0.3,0.4mmである。その結
果、引張強度50〜120kgf/mm2 、伸び、絞り
各5%以上のものは、安定して加工できることが確認で
きた。
【0034】さらに、圧延材を1000℃以下で、好ま
しくは400〜800℃で焼鈍した場合、一層靱性が向
上することも確認された。即ち、圧延後において伸線加
工などが不可能な材料でも、この焼鈍により結晶構造な
どが改善され、伸線加工などが可能になる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明蒸着材料
は、極めて靱性に優れたものであり、圧延線材を得た
後、所定の線径に線引きしたり、表面の不純物を除去す
るシェービング加工を安定して行うことができる。従っ
て、材料を線材として蒸着装置に供給することができ、
従来ペレットによる供給で問題となった蒸着条件の不安
定性を改善することができる。さらに、シェービング加
工により一層高純度な蒸着材料を得ることができ、蒸着
層の高品質化を図ることができる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/07 C23C 14/24 G11B 5/70 H01F 10/16 H01F 41/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Niが10〜30wt%,残部実質的に
    CoであるCo−Ni合金の蒸着用材料において、 結晶構造を示すX線回析で、その回析ピーク高さ(強
    度)、fcc(200)/{fcc(200)+hcp(101)+hcp(100)} が
    0.3以上、 酸素量が40ppm以下、 結晶粒径が80μm以下であることを特徴とする蒸着用
    材料。
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