JP3225130B2 - チロシナーゼ阻害剤、美白化粧品および変色防止剤 - Google Patents

チロシナーゼ阻害剤、美白化粧品および変色防止剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、メラニン色素の生成を
防止するのに有効なチロシナーゼ阻害剤、美白作用を有
する化粧品、および、チロシナーゼによる変色を起こし
易い食品等のための変色防止剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アミノ酸の一種であるチロシンは、チロ
シナーゼの作用により黒褐色の色素・メラニンを生じ、
シミ、ソバカスの原因となったり、キノコ類、甲殻類、
果実、野菜等の食品が褐色に変色する原因となったりす
る。そこで、上記機構によるメラニンの生成を防止する
ため、チロシナーゼの作用を阻害することができる種々
の物質が化粧料や食品の分野で従来から使われ、または
提案されている。その代表的なものは、アスコルビン
酸、硫黄類、ハイドロキノン、コウジ酸、天然の植物抽
出物等である。
【0003】しかしながら、アスコルビン酸は、水分が
存在する場合、安定性の点で問題があり、硫黄類は臭い
の点で問題がある。ハイドロキノンは、効果は顕著であ
るが、毒性が強いという欠点がある。コウジ酸や天然の
植物抽出物は、安全性は高いがチロシナーゼ阻害活性が
弱く、また、植物抽出物には味、匂い、色等の点で問題
があるものが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、健康維持に大き
なかかわりを持つ食品や化粧品の安全性に対する社会的
関心が高まるにつれ、メラニンの生成を防止するために
使用するチロシナーゼ阻害剤についても、安全性の高い
天然物系のもので、味や匂いの点でも添加対象物の品質
に悪影響を及ぼさず化粧品や食品に広く使用可能なもの
が、強く求められるようになった。本発明は、かかる要
望に応え得る新規チロシナーゼ阻害剤を提供することを
目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、水、親水性有
機溶媒またはこれらの混合物によりエリカを抽出処理し
て得られた抽出物を有効成分とするチロシナーゼ阻害剤
を提供するものである。本発明はまた、上記本発明によ
るチロシナーゼ阻害剤を含有させた美白化粧品および食
品変色防止剤を提供するものである。
【0006】リカから得られる上記抽出物は、その
の真の有効成分はまだ確認されていないが、顕著なチロ
シナーゼ阻害作用を示す。
【0007】
【0008】エリカ(Erica)は、ヒースとも呼ばれる
ツツジ科の植物であって、ジャノメエリカ(Erica cana
liculata)、スズランエリカ(Erica formosa)等の種
がある。
【0009】本発明のチロシナーゼ阻害剤は、これらの
植物の葉、茎、花等、地上部であれば任意の部分を原料
にして製造することができる。原料植物体は、適当に粉
砕してから、水、親水性有機溶媒またはこれらの混合物
を溶媒にして抽出処理する。抽出用の親水性有機溶媒と
しては、特にメタノール、エタノール等の低級アルコー
ル、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレン
グリコール等の多価アルコール、およびアセトンが最も
適している。抽出方法は特に制限がなく、簡単には常温
ないし沸騰点付近の温度に維持した溶媒中に浸漬するこ
とにより、有効成分を抽出することができる。
【0010】抽出液から溶媒を留去して得られる抽出物
は、そのままでもチロシナーゼ阻害剤として使用可能で
あるが、チロシナーゼ阻害作用に悪影響のない範囲で、
脱臭、脱色等のための精製処理を施してもよい。さら
に、液液分配抽出、各種クロマトグラフィー、イオン交
換、膜分離等の分離精製処理を施して、より活性の強い
チロシナーゼ阻害剤として使用することができる。
【0011】本発明のチロシナーゼ阻害剤には他のチロ
シナーゼ阻害剤を併用することもできる。本発明のチロ
シナーゼ阻害剤の好適使用量は、添加対象物の種類によ
っても異なるが、未精製のエリカ抽出物を用いる場合で
約0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜1.
0重量%である。
【0012】本発明のチロシナーゼ阻害剤は、飲用にも
利用されているような植物体を原料とする安全性の高い
ものであるから、化粧料、食品、魚介類養殖用飼料等に
配合したり食品の処理に使用したりすることができる。
すなわち、化粧料に配合して美白作用を有する化粧品を
構成するのに用いることができ、魚介類養殖用飼料に配
合して魚介類の日焼け防止等に使用することもできる。
また、メラニンの生成による変色を起こしやすい食品の
変色防止のため、その食品に添加したり表面処理に使用
したりすることができる。
【0013】美白作用を有する化粧品は、油分、界面活
性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、水、アル
コール、増粘剤、色剤等、化粧品製造に使用される一般
的な原料を常法により処理して乳液、ローション、クリ
ーム、ゼリー、パック等、各種化粧品を製造するに当た
り、製造工程の任意の段階で本発明のチロシナーゼ阻害
剤を添加することにより製造することができる。
【0014】食品の変色防止剤としての利用の代表的な
例は、カニ、エビ等の甲殻類、マッシュルーム、しいた
け等のきのこ類等の褐変防止であって、希薄溶液を浸
漬、噴霧等の方法により表面に付着させるだけで、顕著
な変色防止効果を達成することができる。食品の変色防
止剤としての利用に供する場合は、本発明のチロシナー
ゼ阻害剤を任意の媒体で希釈して液剤または粉末状製剤
にしておくとよい。
【0015】
【実施例】以下、実施例を示して本発明を説明する。な
お、実施例1〜3による植物抽出物のチロシナーゼ阻害
活性を示すのに用いたIC50は下記の方法で求めた数値
であって、この数値が小さいほどチロシナーゼ阻害活性
が強い。
【0016】IC50:チロシナーゼ阻害剤を添加した
0.05%チロシン溶液0.5ml、チロシナーゼ溶液(6
0μg/ml)0.7mlと1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)
1.8mlを加え、よく混合し、37℃で1時間反応さ
せ、475nmにおける吸光度A1を測定する。吸光度A1
はチロシンから生成したメラニン等一連の着色成分の濃
度に比例する。チロシナーゼ阻害剤無添加の場合につい
ても同様に操作して475nmの吸光度A0を測定し、下
記の式からチロシナーゼ阻害率を算出する。 チロシナーゼ阻害率(%)=(1−A1/A0)×100 試料濃度を段階的に変更して上記阻害率を測定し、阻害
率が50%を示す試料濃度を内挿法により求め、それを
IC50とする。
【0017】
【0018】実施例 粉砕したジャノメエリカ地上部100gに50%エタノ
ール1000mlを加え、50℃で24時間静置して可
溶性成分を抽出し、得られた抽出液を減圧下に濃縮乾固
して抽出物を得た。さらに、同じ原料について抽出溶媒
を変えて同様の抽出操作4例(比較例を含む)を行な
い、乾燥抽出物を得た。
【0019】実施例 粉砕したスズランエリカ地上部を用いて実施例1と同様
の抽出処理を行い、抽出物を得た。
【0020】上記実施例1,2で得られた抽出物につい
て、チロシナーゼ阻害活性を調べた。その結果を表1
に示す。
【0021】 表 実施例によるジャノメエリカ抽出物のチロシナーゼ阻害活性 抽出溶媒 IC 50 (μg/ml) 50%エタノール 270 水 650 エタノール 230 80%アセトン 290 塩化メチレン(比較例) >1000
【0022】 表 実施例によるスズランエリカ抽出物のチロシナーゼ阻害活性 抽出溶媒 IC 50 (μg/ml) 50%エタノール 420 水 890 エタノール 700 80%アセトン 500 塩化メチレン(比較例) >1000
【0023】
【0024】実施例 下記の原料をクリーム製造の常法により均一化させて、
美白作用を有する中性クリームを製造した。 ステアリン酸 2重量部 ステアリルアルコール 7 還元ラノリン 2 スクワラン 5 オクチルドデカノール 6 ポリエキシエチレンセチルエーテル 3 新油型モノステアリン酸グリセリン 2 香料 適量 防腐剤・酸化防止剤 適量 プロピレングリコール 5 ジャノメエリカエタノール抽出物(実施例) 0.1 精製水で全量を100重量部とする。
【0025】実施例 下記の原料を乳液製造の常法により均一に乳化させて、
美白作用を有する乳液を製造した。 ステアリン酸 2重量部 セタノール 1.5 ワセリン 3 ラノリンアルコール 2 流動パラフィン 10 ポリエキシエチレンモノオレイン酸エステル 3 香料 適量 防腐剤・酸化防止剤 適量 グリセリン 3 プロピレングリコール 5 トリエタノールアミン 1 スズランエリカ水抽出物(実施例) 0.1 精製水で全量を100重量部とする。
【0026】
【0027】実施例 実施例によるジャノメエリカ50%エタノール抽出物
の1%水溶液をマッシュルーム10個に噴霧し、乾燥防
止のためシートで覆いをして、10℃で7日間保存し
た。比較のため、ジャノメエリカ抽出物水溶液の代わり
に水を噴霧したマッシュルームについても同様の保存試
験を行なった。7日後、マッシュルームを冷蔵庫から取
り出して外観検査を行なったところ、ジャノメエリカ抽
出物処理区では3個に変色が認められたが、対照区は全
部が変色していた。
【0028】
【発明の効果】本発明によるチロシナーゼ阻害剤は安全
性の高い天然物系のものであって、味や匂いの点でも添
加対象物の品質に悪影響を及ぼさないから、美白作用を
有する化粧品を構成するのに用いたり、食品、魚介類飼
料等の変色防止や品質保持のために広く使用することが
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 43/00 111 A61P 43/00 111 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 35/78 A23L 1/27 A61K 7/00 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) MEDLINE(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水、親水性有機溶媒またはこれらの混合
    物によりエリカを抽出処理して得られた抽出物を有効成
    分とするチロシナーゼ阻害剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤を含
    有することを特徴とする美白化粧品。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤を含
    有することを特徴とする変色防止剤。
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