JP3219682B2 - 酢酸の精製方法、及び酢酸の製造方法 - Google Patents

酢酸の精製方法、及び酢酸の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酢酸と水とを含む
原料液から低熱量で効率よく精製酢酸を回収する酢酸の
精製方法、及びこの酢酸の精製方法により酢酸を精製す
る工程を有する酢酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酢酸の工業的製法としては従来から、
チレンを酸化して一旦アセトアルデヒドを生成し、次い
でこのアセトアルデヒドを酢酸マンガン、または酢酸銅
と酢酸コバルトとの混合物を触媒とした液相均一系で酸
化して酢酸とするエチレン2段酸化法、また金属パラジ
ウムとヘテロポリ酸とを主触媒としてエチレンと酸素と
を気相で反応させ酢酸を合成する方法(特願平6−65
161号)などが知られている。
【0003】これらのいずれの方法によるにせよ、酢酸
は水溶液として得られるので、脱水された精製酢酸を得
るためには、この水溶液から可能な限り安価な方法で水
を除去しなければならない。工業的に酢酸水溶液から精
製酢酸を得るには、一般に蒸留法が採用される。しかし
通常の蒸留法によって酢酸から水を分離しようとする
と、水と酢酸(沸点117.8℃/標準圧)の沸点が接
近しているため、70段以上の高い段数の蒸留塔が必要
となり、しかも蒸発潜熱が大きい大量部の水を塔頂から
溜出させることになるので大規模な設備と多大の熱量が
必要である。更に、酢酸に対する水の比揮発度が小さい
ため、塔頂における還流比を大きくとる必要があり、効
率も悪いものとなる。
【0004】この問題を解決するために従来から種々の
提案がなされている。その一例として、例えば、酢酸水
溶液(以下、「原料液」と記す)を、水と最低共沸混合
物を形成する共沸剤の存在下に共沸蒸留し、塔頂から水
と共沸剤との最低共沸混合物を溜出させ、塔底から濃縮
された酢酸を得る方法が知られている(例えば特公昭4
3−16965号公報、特公昭61−31091号公
報)。この方法は、塔頂における還流比を下げて水の溜
出に要する熱量を低減できる利点はあるものの、大量部
の水を塔頂から溜出させなければならない点では通常の
蒸留と変わりがないので熱量の低減効果が十分とはいえ
ない。
【0005】共沸蒸留以外の方法としては、抽出法が知
られている。この方法は、一般には水不溶性の有機溶剤
を抽出剤として原料液と接触させて酢酸を抽出剤相に抽
出し、この抽出液から蒸留などによって酢酸を分離精製
するものである。この抽出法においては、水との分配係
数が小さく、酢酸をよく溶解する抽出剤の選択が重要な
課題となる。
【0006】抽出剤の選択に関しては、一般に、高沸点
の溶剤が水との分配係数が小さいことから、酢酸より沸
点が高く、酢酸をよく溶解する溶剤を抽出剤として用い
る多くの提案がある。例えば特開昭60−25949号
公報は、抽出剤としてC7 脂肪族ケトンを主成分とする
高沸点溶剤を用いて原料液から酢酸を抽出し、抽出液に
含まれる水はストリッピングしたのち、酢酸を高沸点溶
剤から蒸留分離している。また例えば特公昭59−35
373号公報は、酢酸より沸点が高い第3アミンと酢酸
より沸点が高い含酸素有機溶剤とを併用して抽出し、抽
出液を蒸留して脱水し、脱水混合物を再度蒸留して酢酸
を溜出させている。特公昭60−16410号公報は、
特定の2級アミドを抽出剤として用い、抽出液から酢酸
を蒸留により分離している。また、米国特許第4143
066号は、選択的に酢酸を抽出する高沸点溶剤として
トリオクチルホスフィンオキシドの使用を提案してい
る。
【0007】一方、抽出剤として低沸点溶剤と高沸点溶
剤とを混合して用いる方法も知られている。例えば特公
平1−38095号公報は、酢酸エチルとジイソブチル
ケトンとの混合溶剤を用いている。また、抽出と共沸蒸
留とを並行して実施する方法として、米国特許第217
5879号は、原料液を2分割し、一方は低沸点溶剤に
よる抽出を行い、他方は酢酸ブチルなどの共沸剤を用い
て共沸蒸留し、この共沸蒸留塔頂ガスの凝縮熱を多重効
用で用いて、抽出液中の低沸点溶剤を酢酸から蒸留分離
することによって熱量の節減を図っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の抽出法、または
抽出法と共沸蒸留法とを並用した方法において、抽出剤
として高沸点溶剤を使用する場合には、一般に抽出剤相
中への水の持込みは少なくなるものの、酢酸との分配係
数も低下するので大量の抽出剤が必要となり、装置が大
型化するばかりでなく、後工程で酢酸と抽出剤とを蒸留
分離する際に、比較的蒸発潜熱が大きい酢酸を塔頂から
溜出させることになるので熱量コストが嵩む。この蒸留
分離を、水との最低共沸を用いて行おうとしても、抽出
剤が酢酸より高沸点であることから、その最低共沸温度
が酢酸の沸点に接近し、高純度酢酸を高い回収率で得る
ことが困難になる。
【0009】抽出剤として低沸点溶剤と高沸点溶剤とを
用いる方法は、低沸点溶剤のみを用いるより有利である
ものの、抽出剤相への水の持込みが大きいので共沸蒸留
の負荷が大きくなるとともに、更に高沸点溶剤と酢酸と
の蒸留分離を要するので、熱量的に必ずしも有利になら
ない。本発明は上記の問題を解決するためになされたも
のであり、従ってその目的は、原料液から低熱量で効率
よく精製酢酸を回収する酢酸の精製方法を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに本発明は、請求項1において、エチレンを酸化して
得られる酢酸の濃度が10重量%ないし50重量%の範
囲内である酢酸水溶液を原料液として抽出装置に導入
し、この抽出装置に前記原料液の0.6重量倍ないし
3.0重量倍の範囲内の酢酸イソプロピルを含む抽出剤
を供給して原料液と接触させ、酢酸を抽出剤相に抽出す
るとともに酢酸を含む抽出液と抽出残液とに分離し、こ
の抽出液を共沸蒸留塔に供給し、この共沸蒸留塔の塔頂
から、酢酸イソプロピルと水との共沸混合物を溜出さ
せ、塔底から、脱水された精製酢酸を回収することを特
徴とする酢酸の精製方法を提供する。ここで、エチレン
を酸化して得られる酢酸の合成方法としては、具体的に
は、エチレンを酸化して一旦アセトアルデヒドを生成
し、次いでこのアセトアルデヒドを酢酸マンガン、また
は酢酸銅と酢酸コバルトとの混合物を触媒とした液相均
一系で酸化して酢酸とするエチレン2段酸化法、若しく
は金属パラジウムとヘテロポリ酸とを主触媒としてエチ
レンと酸素とを気相で反応させ酢酸を合成する方法を例
示することができる。
【0011】以上の本発明の酢酸の精製方法において、
共沸蒸留塔の塔頂から溜出した酢酸イソプロピルと水と
の共沸混合物を凝縮した後、この凝縮液を酢酸イソプロ
ピルに富む貧水相と水に富む豊水相とに分離し、この貧
水相の少なくとも一部は、抽出剤として前記抽出装置に
循環することが好ましい。
【0012】前記精製方法において、前記抽出装置の抽
出残液と前記豊水相の少なくとも一部とを回収蒸留塔に
供給し、これらの供給液に含まれる酢酸イソプロピルと
水とを共沸蒸留し、塔頂より溜出した溜出物を凝縮した
後、この凝縮液を酢酸イソプロピルに富む貧水相と水に
富む豊水相とに分離し、貧水相の少なくとも一部は抽出
剤濃縮液として排出し、回収蒸留塔の塔底から水を排出
することが好ましい。
【0013】更にこの場合に、前記の抽出剤濃縮液は、
酢酸とともにエステル化反応器に導入し、酢酸イソプロ
ピルの加水分解によって生成したイソプロピルアルコー
ルを酢酸イソプロピルに転化して回収することが好まし
い。
【0014】以上の本発明の酢酸の精製方法において、
共沸蒸留塔の塔頂から溜出した酢酸イソプロピルと水と
の共沸混合物を凝縮した後、この凝縮液を酢酸イソプロ
ピルに富む貧水相と水に富む豊水相とに分離し、この豊
水相の少なくとも一部をストリッパーに供給し、このス
トリッパーの塔頂から、供給液に含まれる酢酸イソプロ
ピルを溜出させ、この溜出物を前記共沸蒸留塔から溜出
した共沸混合物と合流させることが好ましい
【0015】また、以上の本発明の酢酸の精製方法にお
いて、抽出装置の抽出残液は、抽出剤回収塔に供給し、
供給液に含まれる酢酸イソプロピルを塔頂から溜出さ
せ、この溜出物を凝縮した後、この凝縮液の少なくとも
一部は、前記抽出装置に循環することが好ましい。さら
に、本発明は、以上の本発明の酢酸の精製方法により酢
酸を精製する工程を有することを特徴とする酢酸の製造
方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態につい
て、図面を参照して詳しく説明する。 (実施例1)図1は、実施例1の酢酸の精製方法を示す
工程図である。この工程の装置は概略、抽出装置2、共
沸蒸留塔6、回収蒸留塔20およびエステル化反応器
(以下、「反応器」と略記する)32からなる。このう
ち抽出装置2は棚段式の液液向流抽出塔であり、共沸蒸
留塔6および回収蒸留塔20は、塔頂部にそれぞれ、冷
却器8,22、デカンタ9,23、および塔底部にそれ
ぞれ、リボイラ16,30が付設された蒸留装置であ
る。
【0017】図1において、まず、酢酸の濃度が10重
量%ないし50重量%の範囲内である原料液が、ライン
1から抽出装置2の塔頂近傍に導入される。この抽出装
置2の塔底近傍からは、酢酸イソプロピルを主成分とす
る抽出剤がライン3を経て供給される。この酢酸イソプ
ロピルの供給量は、原料液1の0.6重量倍ないし3.
0重量倍の範囲内とされている。
【0018】抽出装置2において、原料液1と抽出剤3
とは双方とも液状で向流接触し、原料液1中の酢酸は抽
出剤相に抽出され、大量部の酢酸イソプロピルと酢酸と
小量部の水とを含む抽出液と、大量部の水からなり小量
部の酢酸イソプロピルを含む抽出残液とに分離される。
分離された酢酸を含む抽出液は、塔頂からライン4を経
て共沸蒸留塔6に供給される。一方、抽出装置2の塔底
からは、抽出残液5が排出される。
【0019】抽出装置2からの抽出液4は、酢酸イソプ
ロピルと、酢酸と、抽出時に分配された水とを含んでい
る。この抽出液4が共沸蒸留塔6に供給されると、これ
に含まれている酢酸イソプロピルと水とが最低共沸混合
物を形成して塔頂から共沸塔頂ガス7として溜出し、こ
れによって、共沸蒸留塔6の塔底からは、実質的に水も
酢酸イソプロピルも含まない精製酢酸17が得られる。
【0020】共沸蒸留塔から溜出した共沸塔頂ガス7
は、冷却器8によって冷却されて凝縮し、塔頂凝縮液と
して第一デカンタ9に導入される。この第一デカンタ9
は、槽内下部が堰10によって貧水相室11と豊水相室
12とに2分割されている。第一デカンタ9に導入され
た塔頂凝縮液は、豊水相室12に導入され、ここで水を
主成分とし酢酸イソプロピルの一部を含む比重の高い豊
水相と、酢酸イソプロピルを主成分とし水の一部を含む
比重の低い貧水相とに比重差によって液液分離される。
【0021】豊水相室12の底部から調節された量の豊
水相を連続的に抜き出しながら、豊水相と貧水相との界
面の高さを調整すると、貧水相のみが堰10を越えて貧
水相室11に流入するようになり、これによって豊水相
(12)と貧水相(11)とが堰10によって分離され
る。豊水相室12の底部から抜き出された豊水相(1
2)は、一部が場合によってライン15を経由して共沸
蒸留塔6の塔頂近傍に供給段を選択して還流され、少な
くとも一部は、ライン14を経て排出される。
【0022】貧水相室11に流入した貧水相(11)
は、その一部がライン13を経由して共沸蒸留塔6の塔
頂近傍に供給段を選択して還流され、残部は、ライン3
を経由して、前記抽出装置2の抽出剤として循環供給さ
れる。
【0023】抽出装置2の塔底から排出された抽出残液
5、およびデカンタ9の豊水相室12から排出された豊
水相14には、水に分配した酢酸イソプロピルの他に、
酢酸イソプロピルが加水分解して生成したイソプロピル
アルコールが含まれている。そこで、これらを効率よく
回収するために、抽出残液5と豊水相14とを、ともに
回収蒸留塔20の供給段に供給する。
【0024】回収蒸留塔20内では、酢酸イソプロピル
およびイソプロピルアルコールと水が、最低共沸混合物
を形成して共沸蒸留され、塔頂から回収塔頂ガス21と
して溜出する。この回収塔頂ガス21は冷却器22によ
って冷却されて凝縮し、凝縮液として第二デカンタ23
に導入される。この第二デカンタ23は、第一デカンタ
9と同様に槽内下部が堰24によって、貧水相室25と
豊水相室26とに2分割されている。
【0025】第二デカンタ23に導入された凝縮液は、
豊水相室26に導入され、ここで水を主成分とし共沸剤
(酢酸イソプロピルとイソプロピルアルコール)の一部
を含む比重の高い豊水相(26)と、共沸剤を主成分と
し水の一部を含む比重の低い貧水相(25)とに比重差
によって液液分離される。
【0026】この豊水相(26)は、豊水相室26の底
部からライン27を経由して抜き出され、回収蒸留塔2
0の塔頂近傍に供給段を選択して還流される。ただしこ
こで、凝縮液中のイソプロピルアルコールの濃度が高い
などによりデカンタ23において液液分離が起こらない
場合は、豊水相室26の内容物はライン27から回収蒸
留塔20へ還流する必要なく、貧水相室25の内容物と
合流されて処理される。
【0027】デカンタ23内の貧水相(25)は、場合
によってその一部がライン29を経由して回収蒸留塔2
0の塔頂近傍に供給段を選択して還流されるが、残部は
抽出剤濃縮液28として抜き出され、反応器32に送ら
れる。
【0028】この回収蒸留塔20における共沸蒸留によ
って、抽出装置2の抽出残液5と、デカンタ9の豊水相
室12から排出された豊水相14とに含まれる酢酸イソ
プロピルおよびイソプロピルアルコールは、ライン28
から抽出剤濃縮液として回収され、塔底からは水が排水
31として排出される。
【0029】抽出剤濃縮液28は、次に、これに含まれ
るイソプロピルアルコールを酢酸と反応させて酢酸イソ
プロピルとして回収するために、反応器32に導入され
る。このエステル化反応のための酢酸は、共沸蒸留塔6
の塔底液17を一部分岐してライン18を経由して供給
される。
【0030】反応器32には、エステル化反応のための
酸触媒、例えば強酸性イオン交換樹脂またはリンタング
ステン酸などのヘテリポリ酸が充填されている。この反
応によって得られた酢酸イソプロピルに富む反応液34
は、例えば共沸蒸留塔6に供給することによって循環使
用することができる。
【0031】以上、図1を用いて説明した実施例1の精
製方法によって、酢酸の濃度が10重量%ないし50重
量%の範囲内にある原料液1から、実質的に水および酢
酸イソプロピルを含まない精製酢酸が、共沸蒸留塔6の
塔底液19として回収され、また原料液1に含まれた水
は回収蒸留塔20の塔底から排水31として排出され
る。
【0032】この精製方法は、大量部の水や酢酸を蒸留
して塔頂から溜出させる必要がなく、共沸蒸留塔6およ
び回収蒸留塔20の塔頂からは、酢酸より十分に沸点が
低い最低共沸混合物を溜出させるので、還流比を小さく
することができ、熱量消費が少なく、しかも高い回収率
で酢酸を回収できる利点を有する。
【0033】(実施例2)図2は、実施例2の酢酸の精
製方法を示す工程図である。この工程の装置は概略、抽
出装置42、共沸蒸留塔46、ストリッパー60および
抽出剤回収塔64からなる。このうち抽出装置42は、
実施例1の抽出装置2と同様な棚段式の液液向流抽出塔
であり、共沸蒸留塔46は、実施例1の共沸蒸留塔6と
同様に、塔頂部に冷却器48、デカンタ49、および塔
底部にリボイラ56が付設された蒸留装置である。スト
リッパー60は、塔底にリボイラ61が付設された蒸留
装置であり、抽出剤回収塔64は、塔頂部に冷却器6
5、還流ドラム66、および塔底部にリボイラ67が付
設された蒸留装置である。
【0034】図2において、まず、酢酸の濃度が10重
量%ないし50重量%の範囲内である原料液が、ライン
41から抽出装置42の塔頂近傍に導入される。この抽
出装置42の塔底近傍からは、酢酸イソプロピルを主成
分とする抽出剤が、一部はライン43を経て、残部はラ
イン70を経て供給される。この酢酸イソプロピルの供
給量は、原料液41の0.6重量倍ないし3.0重量倍
の範囲内とされている。
【0035】抽出装置42において、原料液41と抽出
剤43,70とは双方とも液状で向流接触し、原料液4
1中の酢酸は抽出剤相に抽出され、大量部の酢酸イソプ
ロピルと酢酸と小量部の水とを含む抽出液と、大量部の
水からなり小量部の酢酸イソプロピルを含む抽出残液と
に分離される。分離された酢酸を含む抽出液は、塔頂か
らライン44を経て共沸蒸留塔46に供給される。一
方、抽出装置42の塔底からは、抽出残液45が排出さ
れる。
【0036】抽出装置42からの抽出液44は、酢酸イ
ソプロピルと、酢酸と、抽出時に分配された水とを含ん
でいる。この抽出液44が共沸蒸留塔46に供給される
と、これに含まれている酢酸イソプロピルと水とが最低
共沸混合物を形成して塔頂から共沸塔頂ガス47として
溜出し、これによって、共沸蒸留塔46の塔底からは、
実質的に水も酢酸イソプロピルも含まない精製酢酸58
が回収される。
【0037】共沸蒸留塔から溜出した共沸塔頂ガス47
は、後に説明するストリッパー60の塔頂からの共沸混
合ガス62と合流され、冷却器48によって冷却されて
凝縮し、塔頂凝縮液としてデカンタ49に導入される。
このデカンタ49は、槽内下部が堰50によって貧水相
室51と豊水相室52とに2分割されている。デカンタ
49に導入された塔頂凝縮液は、豊水相室52に導入さ
れ、ここで実施例1の場合と同様に比重差によって、水
を主成分とし酢酸イソプロピルの一部を含む比重の高い
豊水相(52)と、酢酸イソプロピルを主成分とし水の
一部を含む比重の低い貧水相(51)とに液液分離され
る。
【0038】豊水相室52の底部から抜き出された豊水
相は、水を主成分とし、水に分配した酢酸イソプロピ
ル、および酢酸イソプロピルが加水分解して生成したイ
ソプロピルアルコールを含んでいる。そこで、これらを
効率よく回収し、不純物を含まない水を系外に排出する
ために、この豊水相(52)の一部は、場合によってラ
イン55を経由して共沸蒸留塔46の塔頂近傍に供給段
を選択して還流され、残部は、ライン54を経由してス
トリッパー60の塔頂近傍に供給される。
【0039】ストリッパー60の塔頂からは、酢酸イソ
プロピル、イソプロピルアルコールと水との共沸混合ガ
ス62が溜出する。この共沸混合ガス62は、前記の共
沸蒸留塔46から溜出した共沸塔頂ガス47と合流され
て凝縮後にデカンタ49に導入され貧水相(51)と豊
水相(52)とに分離される。ストリッパー60の塔底
からは、不純物を含まない水が排水63として系外に排
出される。
【0040】共沸蒸留塔46から溜出した共沸塔頂ガス
47とストリッパー60の塔頂から溜出した共沸混合ガ
ス62の合流物から分離された貧水相(51)は、貧水
相室51から、一部はライン53を経由して共沸蒸留塔
46の塔頂近傍に供給段を選択して還流され、残部は、
ライン43を経由して、前記抽出装置42に、抽出剤の
一部として塔底近傍から循環供給される。
【0041】抽出装置42の塔底から排出された抽出残
液45は、水を主成分とし、水相に分配した酢酸、酢酸
イソプロピル、およびイソプロピルアルコールを含んで
いる。この抽出残液45は、抽出剤を回収するために抽
出剤回収塔64の供給段に供給される。
【0042】抽出剤回収塔64では、塔頂から、酢酸イ
ソプロピルおよびイソプロピルアルコールと水との共沸
混合物が回収ガス68として溜出する。この回収ガス6
8は、冷却器65で凝縮され、還流ドラム66に導入さ
れる。還流ドラム66からは、一部がライン69を経由
して抽出剤回収塔64の塔頂近傍に供給段を選択して還
流され、残部は、ライン70を経由して、前記抽出装置
42に、抽出剤の一部として、供給段を選択して循環供
給される。抽出剤回収塔64の塔底からは、抽出剤を含
まない水が排水71として系外に排出される。
【0043】以上、図2を用いて説明した実施例2の酢
酸の精製方法によって、酢酸の濃度が10重量%ないし
50重量%の範囲内にある原料液41から、実質的に水
および酢酸イソプロピルを含まない精製酢酸が、共沸蒸
留塔46の塔底液58として回収され、ストリッパー6
0の塔底から不純物を含まない水が排水63として排出
され、また抽出剤回収塔64の塔底からは、抽出剤を含
まない水が排水71として系外に排出される。
【0044】この精製方法は、大量部の水や酢酸を蒸留
して塔頂から溜出させる必要がなく、共沸蒸留塔46、
ストリッパー60および抽出剤回収塔64の塔頂から
は、いずれも酢酸より十分に沸点が低い最低共沸混合物
を溜出させるので、還流比を小さくすることができ、熱
量消費が少なく、しかも高い回収率で酢酸を回収できる
利点を有する。
【0045】本発明の酢酸の精製方法において、原料液
としては、酢酸の濃度が10重量%ないし50重量%の
範囲内の水溶液を使用する。この濃度範囲は、抽出剤と
して酢酸イソプロピルを選択したことによる最適範囲で
あり、酢酸濃度が10重量%未満では、酢酸の回収率を
上げるために抽出剤となる酢酸イソプロピルを大量に用
いなければならず、この回収のために共沸蒸留塔(図1
の6または図2の46)などにおいて多大の熱量を消費
することになる。また原料液中の酢酸濃度が50重量%
を越えると、抽出装置において抽出液中に分配する水の
量が抽出残液中の水量に対して比較的大きくなるので、
実質的に酢酸の選択的な分離能が低下することになる。
【0046】本発明において、抽出剤として特に酢酸イ
ソプロピルを選択する理由は、抽出に際して酢酸イソプ
ロピルが水との分配係数が比較的小さく、酢酸との相容
性が良好であるために水と酢酸との分離効率が良好で、
しかも、単体での沸点(88.5℃)および水との最低
共沸温度(76.6℃)が酢酸の沸点(117.8℃)
より十分に低いために、蒸留分離に要する熱量が低減で
きるばかりでなく、蒸留分離工程において還流比を大き
くとる必要がないので、効率も良好になるからである。
【0047】抽出装置における酢酸イソプロピルの供給
量は、原料液の0.6重量倍ないし3.0重量倍の範囲
内とされる。0.6重量倍未満では、酢酸の回収率が低
下し、3.0重量倍を越えると、共沸蒸留塔などで酢酸
イソプロピルを蒸留分離するのに余分な熱量を要するこ
とになる。
【0048】抽出装置における抽出温度は、10℃ない
し80℃の範囲内とすることが好ましい。この範囲内で
あれば酢酸イソプロピル相と水相とにおける液液抽出が
円滑に進行する。また、実施例1または実施例2の実施
形態においては、デカンタを用いて貧水相と豊水相との
液液分離が行われる。この液液分離は、0℃ないし70
℃の温度範囲内で円滑に進行させることができる。
【0049】酢酸イソプロピルは、エステル化合物であ
るから水の存在下に加水分解を受け、イソプロピルアル
コールを生成する。この加水分解反応は、下式に示すよ
うに平衡反応であり、その平衡定数は0.45である。
【0050】
【数1】
【0051】生成したイソプロピルアルコールは、それ
自体が水より低沸点の化合物(沸点82.3℃)であ
り、また水、酢酸イソプロピルとともに、3成分の最低
共沸混合物(最低共沸温度75.5℃、共沸組成は水1
1.0重量%:酢酸イソプロピル76.0重量%:イソ
プロピルアルコール13.0重量%)を形成するので、
蒸留によって容易に酢酸と分離することができる。
【0052】しかし、イソプロピルアルコールが循環系
の中で次第に蓄積されてくると、イソプロピルアルコー
ルは水との分配係数が大きいので、抽出装置における抽
出分離やデカンタにおける液液分離に支障を来すように
なる。そこで、実施例1に示した本発明の実施形態にお
いては、生成したイソプロピルアルコールを酢酸と反応
させて酢酸イソプロピルに転化して循環使用している。
【0053】すなわち、図1に示した実施例1の実施形
態においては、このイソプロピルアルコールを酢酸イソ
プロピルに転化して循環使用するために、抽出装置2の
抽出残液5と、共沸蒸留塔6の第一デカンタ9で分離さ
れた豊水相(12)の一部14とを、回収蒸留塔20に
おいて共沸蒸留し、その塔頂から得られ、イソプロピル
アルコールが濃縮された抽出剤濃縮液28を酢酸18と
ともに反応器32に供給し、イソプロピルアルコールを
酢酸イソプロピルに転化している。この反応によって得
られた酢酸イソプロピルに富む反応液34は、抽出装置
2に循環することもできるが、過剰量の酢酸を含んでい
るので、共沸蒸留塔6に循環することがより好ましい。
【0054】実施例2の実施形態においてもイソプロピ
ルアルコールは生成するが、このイソプロピルアルコー
ルを酢酸と反応させて酢酸イソプロピルに転化する反応
工程は、実施例2では採用されていない。これは、イソ
プロピルアルコールが循環系である程度の濃度に蓄積さ
れると、前記の平衡濃度より低い一定の濃度で定常状態
になり、この定常状態では抽出分離に支障がないので、
必ずしも酢酸イソプロピルに転化しなくてよいことがわ
かったからである。
【0055】実施例2の実施形態において、イソプロピ
ルアルコールの濃度が平衡濃度より低い濃度で安定する
理由については明確でないが、図2の共沸蒸留塔46や
抽出剤回収塔64においては、塔内に気相部があって、
気相部における加水分解の平衡定数が液相のそれに比較
して著しく小さいため、イソプロピルアルコールの濃度
が一定値を越えると、逆反応であるエステル化反応が優
位となり、実質的な平衡定数を低い方に移行させること
によると考えられる。
【0056】本発明の酢酸の精製方法に用いる装置およ
びその形式は、上記実施例1および実施例2の実施形態
において用いたものに限定されない。例えば、抽出装
置、共沸蒸留塔、回収蒸留塔、ストリッパー、抽出剤回
収塔は、棚段式、充填式、回転筒式などいずれでもよ
く、これらに付帯する冷却器、デカンタ、リボイラなど
も、例えば塔本体と一体化されたものであってもよく、
または別体として付属されたものであってもよい。実施
例1における反応器の形式、触媒の構成も、エステル化
が円滑に進行するものであれば、特に制限はない。
【0057】次に、上記実施例1および実施例2の実施
形態において、酢酸の濃度が10重量%ないし50重量
%の範囲内である原料液から精製酢酸を回収する運転例
を示す。以下の運転例において、運転例1および運転例
2は、図1に示した実施例1の実施形態によるものであ
り、運転例3は、図2に示した実施例2の実施形態によ
るものである。以下の説明において、「重量部」はすべ
て、原料液を100重量部としたときの値である。
【0058】(運転例1)この運転例では、図1におけ
る抽出装置2として、ダウンカマーを有し、開孔率が3
%ないし5%の多孔板を30枚用いた液液向流抽出塔
(理論段数4段ないし6段に相当)を用いた。また、原
料液1としては、酢酸(42.0重量%)と水(58.
0重量%)との混合物を用いた。
【0059】抽出装置2の塔頂近傍から上記の原料液1
(100重量部)を、また塔底近傍から酢酸イソプロピ
ルを主成分とする抽出剤3(105.0重量部)を、そ
れぞれ30℃で導入した。
【0060】抽出装置2の塔頂から流出した抽出液4
(168.8重量部)を共沸蒸留塔6の供給段に供給
し、共沸蒸留を行った。このとき同時に、反応器32か
らの反応液34(3.4重量部)も同じ供給段に供給し
た。この共沸蒸留塔6としては、濃縮部30段、回収部
30段からなるオルダーショウ型蒸留器を用いた。
【0061】共沸蒸留塔6の共沸塔頂ガス7は、冷却器
8で30℃に冷却し、得られた凝縮液を第一デカンタ9
で貧水相(11)と豊水相(12)とに液液分離した。
この貧水相の一部(172.0重量部)は、ライン13
から共沸蒸留塔6の塔頂近傍に還流し、残部(105.
0重量部)は抽出剤3として抽出装置2に循環供給し
た。デカンタ9の豊水相(12)は、共沸蒸留塔6に還
流することなく、全量(25.3重量部)をライン14
から回収蒸留塔20に供給した。
【0062】回収蒸留塔20には、上記の豊水相(1
2)とともに、抽出装置2の抽出残液5(36.2重量
部)も供給し、抽出剤の回収蒸留を行った。回収蒸留塔
20としては、濃縮部25段、回収部25段からなるオ
ルダーショウ型蒸留器を用いた。
【0063】回収蒸留塔20の塔頂ガス21を冷却器2
2で冷却したところ、得られた凝縮液が液液分離しなか
ったので、そのまま一部(4.0重量部)をライン29
から回収蒸留塔20の塔頂近傍に還流し、残りの塔頂液
(2.5重量部)は、抽出剤濃縮液28として反応器3
2に供給した。この抽出剤濃縮液28の組成は、水1
1.1重量%、酢酸イソプロピル67.9重量%、イソ
プロピルアルコール21.1重量%であった。
【0064】反応器32には、抽出剤濃縮液28ととも
に、共沸蒸留塔6の塔底から得られた精製酢酸17の一
部(0.9重量部)を、ライン18から供給した。反応
器32には、酸触媒としてカチオン性イオン交換樹脂
(三菱化成社製PK−212H)を充填して用いた。
【0065】反応器32でエステル化されて得られた反
応液34(3.4重量部)は、水8.3重量%、酢酸2
5.6重量%、酢酸イソプロピル50.9重量%、およ
びイソプロピルアルコール15.3重量%を含んでい
た。反応器32におけるイソプロピルアルコールから酢
酸イソプロピルへの転化率は2.3%であった。得られ
た反応液34は、全量を共沸蒸留塔6の供給段に供給し
た。
【0066】上記の運転によって、共沸蒸留塔6の塔底
から、実質的に水、酢酸イソプロピル、イソプロピルア
ルコールを含まない精製酢酸19(41.0重量部)が
得られ、回収蒸留塔20の塔底からは水が排水31とし
て排出された。上記において、図1に示した各ラインの
組成(重量%)、および原料液1を100重量部とした
ときの各ラインの負荷量(重量部)を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】上記の結果は、運転例1の方法によって、
酢酸を42.0重量%含む原料液1から、酢酸を蒸留塔
の塔頂溜分として取り出すことなく、効率よく水と分離
して純度の高い精製酢酸が回収でき、また抽出剤も無駄
なく循環使用できたことを示している。
【0069】(運転例2)運転例1と同様の装置と方法
を用いて、ただし原料液1の組成を変えて酢酸の精製を
行った。運転例2の原料液1の組成は、酢酸(21.0
重量%)、水(79.0重量%)であった。
【0070】抽出装置2の塔頂近傍から上記の原料液1
(100重量部)を、また塔底近傍から水2.8重量
%、酢酸イソプロピル96.4重量%、イソプロピルア
ルコール0.8重量%からなる抽出剤3(148.0重
量部)を、それぞれ温度30℃で導入し、抽出を行っ
た。
【0071】抽出装置2の塔頂から流出した抽出液4
(174.1重量部)を共沸蒸留塔6の供給段に供給
し、共沸蒸留を行った。このとき同時に、反応器32か
らの反応液34(4.2重量部)も同じ供給段に供給し
た。共沸蒸留塔6の共沸塔頂ガス7を30℃に冷却して
得られた凝縮液を第一デカンタ9で貧水相(11)と豊
水相(12)とに液液分離し、貧水相の一部(44.0
重量部)はライン13から共沸蒸留塔6に還流し、残部
(148.0重量部)は抽出剤3として抽出装置2に循
環供給した。豊水相(12)は、共沸蒸留塔6に還流せ
ず、全量(8.6重量部)をライン14から回収蒸留塔
20に供給した。
【0072】回収蒸留塔20には、上記の豊水相(ライ
ン14)とともに、抽出装置2の抽出残液5(73.9
重量部)も供給し、抽出剤の回収蒸留を行った。回収蒸
留塔20の塔頂ガス21を冷却して得られた凝縮液を液
液分離し、豊水相(26)は全量(0.3重量部)を還
流27として回収蒸留塔20に戻し、貧水相(25)は
その一部(4.3重量部)をライン29から回収蒸留塔
20に還流し、残部(2.9重量部)は抽出剤濃縮液2
8として反応器32に供給した。この抽出剤濃縮液28
の組成は、水8.6重量%、酢酸イソプロピル76.4
重量%、イソプロピルアルコール15.0重量%であっ
た。反応器32には、抽出剤濃縮液28とともに、共沸
蒸留塔6の塔底から得られた精製酢酸17の一部(1.
3重量部)を、ライン18から供給した。
【0073】反応器32でエステル化されて得られた反
応液34(4.2重量部)は、水6.1重量%、酢酸3
0.6重量%、酢酸イソプロピル53.5重量%、およ
びイソプロピルアルコール9.9重量%を含んでいた。
反応器32におけるイソプロピルアルコールから酢酸イ
ソプロピルへの転化率は4.2%であった。得られた反
応液34は、全量を共沸蒸留塔6の供給段に供給した。
【0074】上記の運転によって、共沸蒸留塔6の塔底
から、実質的に水、酢酸イソプロピル、イソプロピルア
ルコールを含まない精製酢酸19(20.4重量部)が
得られ、回収蒸留塔20の塔底からは排水31が排出さ
れた。上記において、図1に示した各ラインの組成(重
量%)、および原料液1を100重量部としたときの各
ラインの負荷量(重量部)を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】上記の結果は、原料液の酢酸濃度が21.
0重量%である実施例2の場合においても、酢酸を効率
よく水から分離でき、純度の高い精製酢酸が回収できた
ことを示している。
【0077】(運転例3)この運転例3は、図2に示し
た実施例2の実施形態によるものである。この運転例に
おいて、抽出装置42としては、実施例1の場合と同様
に、ダウンカマーを有し、開孔率が3%ないし5%の多
孔板を30枚用いた液液向流抽出塔(理論段数4段ない
し6段に相当)を用いた。また、原料液41としては、
酢酸(35.0重量%)と水(65.0重量%)との混
合物を用いた。
【0078】抽出装置42の塔頂近傍から上記の原料液
41(100重量部)を供給し、また、塔底近傍から
は、酢酸イソプロピル(94.3重量%)、イソプロピ
ルアルコール(3.0重量%)、および水(2.7重量
%)からなる抽出剤43(104.0重量部)と、酢酸
イソプロピル(29.4重量%)、イソプロピルアルコ
ール(59.0重量%)、および水(11.6重量%)
からなる回収液70(5.4重量部)とを、同一の供給
段から供給した。供給液の温度は、原料液、抽出剤混合
液いずれも、30℃とした。
【0079】抽出装置42の塔頂から流出した抽出液4
4(157.6重量部)を共沸蒸留塔46の供給段に供
給し、共沸蒸留を行った。共沸蒸留塔46としては、濃
縮部30段、回収部30段からなるオルダーショウ型蒸
留器を用いた。
【0080】共沸蒸留塔46の共沸塔頂ガス47(23
1.1重量部)を、ストリッパー60からの共沸混合ガ
ス62(1.2重量部)と合流し、冷却器48で30℃
に冷却し、得られた凝縮液をデカンタ49で貧水相(5
1)と豊水相(52)とに液液分離した。貧水相の一部
(108.0重量部)は、ライン53から共沸蒸留塔4
6の塔頂近傍に還流し、残部(104.0重量部)は抽
出剤43として抽出装置42に循環供給した。豊水相
(52)は、共沸蒸留塔46に還流することなく、全量
(20.3重量部)をライン54からストリッパー60
に供給した。
【0081】ストリッパー60としては、20段からな
るオルダーショウ型蒸留器を用いた。ストリッパー60
の塔頂からの共沸混合ガス62は、前記のように共沸蒸
留塔46の共沸塔頂ガス47と合流して循環した。スト
リッパー60の塔底からは、水63(19.1重量部)
を排出した。この水63には、酢酸、酢酸イソプロピ
ル、イソプロピルアルコールはいずれも含まれていなか
った。
【0082】前記抽出装置42の塔底から排出された抽
出残液45(51.8重量部)は、水(89.9重量
%)、酢酸(0.9重量%)、酢酸イソプロピル(3.
1重量%)、イソプロピルアルコール(6.2重量%)
を含んでいた。この抽出残液45を、抽出剤回収塔64
に供給した。抽出剤回収塔64としては、濃縮部25
段、回収部25段からなるオルダーショウ型蒸留器を用
いた。
【0083】抽出剤回収塔64の塔頂凝縮液21.7重
量部のうち、16.3重量部をライン69から抽出剤回
収塔64に還流し、残部(5.4重量部)を、前記のよ
うに抽出装置42に循環した。抽出剤回収塔64の塔底
からは、46.4重量部の水が排水71として排出され
た。
【0084】前記運転例3によって、酢酸の濃度が3
5.0重量%の原料液41から、実質的に水、酢酸イソ
プロピルおよびイソプロピルアルコールを含まない精製
酢酸58(34.5重量部)が、共沸蒸留塔46の塔底
液58として回収され、ストリッパー60の塔底からは
不純物を含まない水が排水63として排出され、また抽
出剤回収塔64の塔底からも、抽出剤を含まない水が排
水71として排出された。
【0085】前記において、図2に示した各ラインの組
成(重量%)、および原料液41を100重量部とした
ときの各ラインの負荷量(重量部)を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】前記の結果は、エステル化反応工程を持た
ない実施例2の実施形態においても、イソプロピルアル
コールが抽出の障害となる程度には系内に蓄積せず、酢
酸を効率よく水から分離でき、純度の高い精製酢酸が回
収できたことを示している。
【0088】
【発明の効果】請求項1において、本発明の酢酸の精製
方法は、エチレンを酸化して得られる酢酸の濃度が10
重量%ないし50重量%の範囲内である酢酸水溶液を原
料液として抽出装置に導入し、その0.6重量倍ないし
3.0重量倍の酢酸イソプロピルを含む抽出剤で抽出
し、得られた抽出液を共沸蒸留し、共沸蒸留塔の塔頂か
ら酢酸イソプロピルと水との共沸混合物を溜出させ、
底から脱水された精製酢酸を回収するものであるので、
低熱量で効率よく精製酢酸を回収することができる。
【0089】請求項において本発明の酢酸の精製方法
は、共沸蒸留塔の塔頂から溜出した酢酸イソプロピルと
水との共沸混合物を凝縮した後、この凝縮液を貧水相と
豊水相とに分離し、この貧水相の少なくとも一部を抽出
剤として前記抽出装置に循環するものであるので、低熱
量で抽出剤成分を水から濃縮分離することができ、また
抽出剤の損失を低減させることができる。
【0090】請求項において本発明の酢酸の精製方法
は、前記抽出装置の抽出残液と前記豊水相の少なくとも
一部とを回収蒸留塔に供給し、塔頂溜出物を凝縮した
後、この凝縮液を貧水相と豊水相とに分離し、塔底から
水を排出するものであるので、系内で生成した好ましく
ないイソプロピルアルコールをこの貧水相に濃縮するこ
とができる。
【0091】請求項において本発明の酢酸の精製方法
は、前記貧水相を酢酸と反応させ、イソプロピルアルコ
ールを酢酸イソプロピルに転化して回収するものである
ので、抽出剤の加水分解による損失を抑制できると共
に、系内の好ましくないイソプロピルアルコール濃度を
常に低く維持することができる。
【0092】請求項において本発明の酢酸の精製方法
は、共沸蒸留塔の塔頂からの溜出物を凝縮した後、この
凝縮液を貧水相と豊水相とに分離し、豊水相の少なくと
も一部をストリッパーに供給し、このストリッパーの塔
頂から、供給液に含まれる酢酸イソプロピルを溜出さ
せ、この溜出物を前記共沸蒸留塔から溜出した共沸混合
物と合流させるものであるので、低熱量で抽出剤成分を
水から濃縮分離することができ、抽出剤の損失を低減さ
せることができると共に、ストリッパーの塔底からは、
実質的に不純物を含まない水を排水として排出すること
ができる。
【0093】請求項において本発明の酢酸の精製方法
は、前記抽出装置の抽出残液を抽出剤回収塔に供給し、
供給液に含まれる抽出剤成分を塔頂から溜出させ、この
溜出物を前記抽出装置に循環するものであるので、抽出
剤を無駄なく循環使用することができる。また、請求項
9において、本発明の酢酸の製造方法は、本発明の酢酸
の精製方法により酢酸を精製する工程を有するものであ
るので、本発明の酢酸の精製方法と同等の効果を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す工程図。
【図2】 本発明の他の一実施形態を示す工程図。
【符号の説明】
1…原料液 2…抽出装置 3…抽出剤 6…共沸蒸留塔 9…第一デカンタ 11…貧水相 12…豊水相 19…精製酢酸 41…原料液 42…抽出装置 43…抽出剤 46…共沸蒸留塔 49…デカンタ 51…貧水相 52…豊水相 58…精製酢酸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西野 宏 大分県大分市大字中の州2 昭和電工株 式会社 大分工場内 (56)参考文献 特開 昭59−93028(JP,A) 特開 平8−311101(JP,A) 米国特許2028800(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 51/48 C07C 53/08

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンを酸化して得られる酢酸の濃度
    が10重量%ないし50重量%の範囲内である酢酸水溶
    液を原料液として抽出装置に導入し、この抽出装置に前
    記原料液の0.6重量倍ないし3.0重量倍の範囲内の
    酢酸イソプロピルを含む抽出剤を供給して原料液と接触
    させ、酢酸を抽出剤相に抽出するとともに酢酸を含む抽
    出液と抽出残液とに分離し、この抽出液を共沸蒸留塔に
    供給し、この共沸蒸留塔の塔頂から、酢酸イソプロピル
    と水との共沸混合物を溜出させ、塔底から、脱水された
    精製酢酸を回収することを特徴とする酢酸の精製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載した酢酸の精製方法にお
    いて、エチレンを酸化して得られる酢酸の合成方法が、
    エチレンを酸化して一旦アセトアルデヒドを生成し、次
    いでこのアセトアルデヒドを酢酸マンガン、または酢酸
    銅と酢酸コバルトとの混合物を触媒とした液相均一系で
    酸化して酢酸とするエチレン2段酸化法であることを特
    徴とする酢酸の精製方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載した酢酸の精製方法にお
    いて、エチレンを酸化して得られる酢酸の合成方法が、
    金属パラジウムとヘテロポリ酸とを主触媒としてエチレ
    ンと酸素とを気相で反応させ酢酸を合成する方法である
    ことを特徴とする酢酸の精製方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれか1
    に記載した酢酸の精製方法において、共沸蒸留塔の塔
    頂から溜出した酢酸イソプロピルと水との共沸混合物を
    凝縮した後、この凝縮液を酢酸イソプロピルに富む貧水
    相と水に富む豊水相とに分離し、この貧水相の少なくと
    も一部を抽出剤として前記抽出装置に循環することを特
    徴とする酢酸の精製方法。
  5. 【請求項5】 請求項に記載した酢酸の精製方法にお
    いて、前記抽出装置の抽出残液と前記豊水相の少なくと
    も一部とを回収蒸留塔に供給し、これらの供給液に含ま
    れる酢酸イソプロピルと水とを共沸蒸留し、塔頂より溜
    出した溜出物を凝縮した後、この凝縮液を酢酸イソプロ
    ピルに富む貧水相と水に富む豊水相とに分離し、貧水相
    の少なくとも一部を抽出剤濃縮液として排出し、回収蒸
    留塔の塔底から水を排出することを特徴とする酢酸の精
    製方法。
  6. 【請求項6】 請求項に記載した酢酸の精製方法にお
    いて、前記の抽出剤濃縮液を、酢酸とともにエステル化
    反応器に導入し、酢酸イソプロピルの加水分解によって
    生成したイソプロピルアルコールを酢酸イソプロピルに
    転化して回収することを特徴とする酢酸の精製方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6までのいずれか1
    に記載した酢酸の精製方法において、共沸蒸留塔の塔
    頂から溜出した酢酸イソプロピルと水との共沸混合物を
    凝縮した後、この凝縮液を酢酸イソプロピルに富む貧水
    相と水に富む豊水相とに分離し、この豊水相の少なくと
    も一部をストリッパーに供給し、このストリッパーの塔
    頂から、供給液に含まれる酢酸イソプロピルを溜出さ
    せ、この溜出物を前記共沸蒸留塔から溜出した共沸混合
    物と合流させることを特徴とする酢酸の精製方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項7までのいずれか1
    に記載した酢酸の精製方法において、前記抽出装置の
    抽出残液を抽出剤回収塔に供給し、供給液に含まれる酢
    酸イソプロピルを塔頂から溜出させ、この溜出物を凝縮
    した後、この凝縮液の少なくとも一部を前記抽出装置に
    循環することを特徴とする酢酸の精製方法。
  9. 【請求項9】 請求項1から請求項8までのいずれか1
    項に記載した酢酸の精製方法により酢酸を精製する工程
    を有することを特徴とする酢酸の製造方法。
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