JP3213189B2 - ヒアルロン酸産生促進剤 - Google Patents

ヒアルロン酸産生促進剤

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  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト皮膚線維芽細胞の
ヒアルロン酸産生能を促進させることにより、皮膚の老
化防止またはヒアルロン酸の異常分解を伴う疾病の治療
に使用できる所の、且つ人体に対して安全なヒアルロン
酸産生促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒアルロン酸は、細胞間隙への水分の保
持、組織内にジェリー状のマトリックスを形成すること
に基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持、機
械的障害などの外力への抵抗、および、細菌感染の防止
など多くの機能を有している(BIO INDUSTR
Y、8巻、346頁、1991年)。
【0003】たとえば、皮膚のヒアルロン酸は、齢をと
るにつれて減少し、その結果、小ジワやかさつきなどの
老化をもたらすといわれている。
【0004】このような老化した皮膚の改善剤として、
コラーゲンやヒアルロン酸を配合した化粧料が数多く提
案されているが、表面の保湿効果が改善されるだけであ
り、本質的に老化肌を改善するものではない。その他、
皮膚細胞賦活剤としてビタミン類や生薬類が使用されて
いるが、やはり、老化肌の治療にまでは至っていないの
が現状である。
【0005】また、関節液中のヒアルロン酸は、関節軟
骨の表面を覆い、関節機能の円滑な作動に役立ってい
る。正常人関節液中のヒアルロン酸濃度は約2.3mg
/mlであるが、慢性関節リウマチの場合、関節液中の
ヒアルロン酸濃度は約1.2mg/mlへと低下し、同
時に関節液の粘度も著しく低下する(Arthriti
s Rheumatism、10巻、357頁、196
7年)。
【0006】また、化膿性関節炎や痛風性関節炎などで
も慢性関節リウマチの場合と同様、ヒアルロン酸含量の
低下が起こることが知られている〔結合組織(金原出
版)、481項、1984年〕。
【0007】上記疾患において、潤滑機能の改善、関節
軟骨の被覆・保護、疼痛抑制および病的関節液の性状改
善をするために、関節液中のヒアルロン酸量を増加させ
ることが考えられる。たとえば、慢性関節リウマチ患者
にヒアルロン酸ナトリウムの関節注入療法を行うと、上
記の改善が認められている(炎症、11巻、16頁、1
991年)。
【0008】同様に、外傷性関節症、骨関節炎や変形性
関節症においても、ヒアルロン酸の関節注入療法により
上記の改善効果が報告されている〔結合組織と疾患(講
談社)、246頁、1980年〕。
【0009】しかし、上記疾患の治療は長期にわたり、
しかも医師の処方を必要とする。従って、日常の生活の
中で手軽に治療できるヒアルロン酸産生促進剤を含有さ
せた軟膏あるいはゲルが望まれていた。
【0010】また、熱傷受傷後の治癒過程で、壊死組織
の下方から増生してくる肉芽組織の初期から組織全体が
肉芽組織に置き換えられるまでの期間では、肉芽中にヒ
アルロン酸が著しく増加することが知られており〔結合
組織と疾患(講談社)、153頁、1980年〕、熱傷
の初期の治療薬としても、ヒアルロン酸産生促進剤が期
待されている。
【0011】ヒト細胞のヒアルロン酸を産生促進する薬
剤としてはインシュリン様成長因子−1や上皮成長因子
(Biochimica Biophysica Ac
ta、1014、305頁、1989年)およびインタ
ーロイキン−1(日本産科婦人科学会雑誌、41巻、1
943頁、1989年)などのサイトカイン、あるいは
フォルボールエステル(Experimental C
ell Research、148巻、377頁、19
83年)などが知られているが、いずれも化粧品、入浴
剤や医薬品として安心して使用できるものではない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
とするところは、ヒト皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸産
生能を促進させることにより、皮膚の老化防止またはヒ
アルロン酸の異常分解を伴う疾病の治療に使用できる所
の、且つ人体に対し安全なヒアルロン酸産生促進剤を提
供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、酵母エキ
スを有効成分として含有することを特徴とするヒアルロ
ン酸産生促進剤によって達成される。
【0014】以下、本発明の構成について詳説する。
【0015】本発明に用いられる酵母エキスとしては、
サッカロマイセス属(Saccharomyces 属)などの培養液
の乾燥末または市販の酵母エキスであればいずれでも良
く、具体的には、エビオス社製酵母エキス、BRROK
S社製酵母エキス、DIFCO社製酵母エキス、OXI
DO社製酵母エキスなどが挙げられる。
【0016】本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、それ
自身で、培養細胞または生体細胞に適用して、ヒアルロ
ン酸産生を促進することができるが、酵母エキスの種類
に応じて通常の化粧料、医薬に使用される公知の成分と
任意に組み合わせて使用することができ、また通常の化
粧料、医薬の組成物形態にするのも良い。
【0017】本発明のヒアルロン酸産生促進剤および組
成物の形態は、液剤、固形剤あるいは半固形剤のいずれ
でもよく、好ましくは軟膏、ゲル、クリーム、スプレー
剤、貼付剤、ローション、パック類、乳液、パウダーお
よび入浴剤等が挙げられる。
【0018】これらの組成物を製造するのに使用される
賦形剤または補助剤は、通常、同目的に使用されるもの
から剤形に応じて適宜選択すればよく、特に限定される
ものではないが、たとえば、ワセリン、スクワラン等の
炭化水素、ステアリルアルコール等の高級アルコール、
ミリスチン酸イソプロピルなどの高級脂肪酸低級アルキ
ルエステル、ラノリン酸等の動物性油脂、グリセリン、
プロピレングリコール等の多価アルコール、グリセリン
脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコ
ール、ポリエチレンアルキルエーテルリン酸等の界面活
性剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸
ブチル等の防腐剤、蝋、樹脂、各種香料、各種色素、ク
エン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸等の各種無機
塩や各種酸、水、およびエタノール等が挙げられ、得ら
れた組成物の例としては、化粧品、入浴剤あるいは医薬
品等が挙げられる。
【0019】酵母エキスの適用組成物中における含有量
は、適用対象物により異なり、一概には規定できない
が、0.01〜0.3%(W/W)が好ましく、さらに
好ましくは0.03〜0.1%(W/W)である。ただ
し、入浴剤のように使用時に希釈されるものの場合は、
さらに含有量を増やすことができる。
【0020】また、本発明のヒアルロン酸産生促進剤に
よって培養細胞にヒアルロン酸を産生させる時は、細胞
の培養液中に、酵母エキス量として0.01%(W/
V)以上含有させるのが好ましく、さらに好ましくは
0.03〜0.1%(W/V)である。
【0021】本発明で言うヒアルロン酸の異常分解を伴
う疾病とは、例えばリウマチ、変形性関節症、歯肉炎な
どを意味する。
【0022】
【発明の効果】本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、ヒ
ト皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸産生能を促進させ、且
つ人体に対して安全である(後記試験例1および2)こ
とから、皮膚の老化防止またはヒアルロン酸の異常分解
を伴う疾病の治療に使用でき、る。
【0023】
【実施例】実施例に先立って、本発明の効果を示す試験
例を記載する。なお、各試験に用いる試薬の調製法およ
び測定法は次の通りである。
【0024】(a)MEM培地の調製法 Minimum Essential Medium
(大日本製薬製、10−101) 10.6gにそれぞれ
終濃度として1%(V/V)Non Essentia
l Amino Acid(大日本製薬製、16−81
0) 、1mMピルビン酸ナトリウム(大日本製薬製、1
6−820)、1.2%(W/V)炭酸水素ナトリウム
を添加し、蒸留水を加えて1lとした後、炭酸ガスを吹
き込んでpHを約7にした(以下MEM培地と略記す
る)。
【0025】(b)ウシ胎仔血清(FBS)の非働化 FBS(Irvine Scientific製) を5
6℃で30分間加熱処理した。
【0026】(c)PBSの調製法 塩化ナトリウム8g、塩化カリウム0.2g、リン酸水
素二ナトリウム・12水塩2.9g、リン酸二水素カリ
ウム0.2gを精製水1lに溶解し、Phosphat
e Buffered Saline(以下PBSと略
す)とした。
【0027】(d)トリプシン溶液 0.1%トリプシン(シグマ製)含有PBS。
【0028】(e)緩衝液H 0.1M酢酸ナトリウムおよび0.02%(W/V)ア
ジ化ナトリウム含有0.5M 2−(N−モルフォリ
ン)エタンスルフォン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(p
H6.0)。
【0029】(f)緩衝液C 0.15M塩化ナトリウム、0.02%(W/V)アジ
化ナトリウムおよび0.05%ブリッジ−35含有50
mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)。
【0030】(g)プロナーゼ溶液 200μg/mlプロナーゼ(カルビオケム−ベーリン
グ・コーポレイション製、Streptomyces
griseus由来)、0.15M塩化ナトリウムおよ
び0.02%アジ化ナトリウム含有0.5Mトリス塩酸
緩衝液(pH8.0)。
【0031】(h)ヒアルロニダーゼ溶液 6TRU/mlヒアルロニダーゼ(EC 4.2.2.
1、生化学工業製、Streptomyces hya
lurolyticus由来)を含む緩衝液H。
【0032】(試験例1)酵母エキスのヒアルロン酸産
生促進作用細胞培養 正常ヒト線維芽細胞株〔デトロイト551株(ATCC
CCL 110)〕の細胞数を10%(V/V)の非
働化FBSを含むMEM培地にて1x105 個/mlに
調整し、12穴プレート(ファルコン製)に1mlずつ
播種し、95%(V/V)空気−5%(V/V)炭酸ガ
スの雰囲気下、37℃で3日間静置培養した。
【0033】培養上清を吸引除去し、PBSで2回およ
びMEM培地で1回それぞれ1ml/ウェルで洗浄後、
終濃度0.1%(W/V)の酵母エキスを含むMEM培
地(10%(V/V)非働化FBSを含む)を1mlず
つ各ウェルに添加し、ヒアルロン酸産生量の測定用とし
た。
【0034】上記2種類のプレートを95%(V/V)
空気−5%(V/V)炭酸ガスの雰囲気下、37℃で3
日間静置培養した。
【0035】ヒアルロン酸産生量の測定1(バインディ
ングプロテインアッセイ法) ヒアルロン酸産生量の測定用各ウェルから培養上清を回
収し、100℃で10分間加熱した後、ウシ鼻軟骨由来
のヒアルロン酸結合タンパク質を利用したバインディン
グプロテインアッセイ法(基礎と臨床、26巻、8号、
269頁、1992年)で培養上清中のヒアルロン酸を
定量した。
【0036】各社製造の酵母エキス(DIFCO社製、
OXIDO社製、エビオス社製)を添加したときの培養
上清中のヒアルロン酸産生量を測定した(表1)。その
結果、いずれの酵母エキスもデトロイト551株のヒア
ルロン酸産生量が上昇することがわかった。
【0037】
【表1】
【0038】(試験例2)酵母エキスのヒアルロン酸産
生促進作用細胞培養 試験例2と同様にして、正常ヒト繊維芽細胞を培養し
た。
【0039】培養上清を吸引除去し、PBSで2回およ
びMEM培地で1回それぞれ1ml/ウェルで洗浄し
た。
【0040】つぎに、終濃度0.03%、0.1%、
0.3%(W/V)となるように酵母エキス(BROO
KS社製)を添加した10μCi/mlグルコサミン塩
酸塩D−〔1,6─ 3H(N)〕(デュ・ポン製、NE
T−557A:以下[3H]グルコサミンという)を含むM
EM培地(10%(V/V)非働化FBSを含有)を1
mlずつ各ウェルに添加し、ヒアルロン酸の測定用とし
た(n=3)。
【0041】上記のプレートを95%(V/V)空気−
5%(V/V)炭酸ガスの雰囲気下、37℃で3日間静
置培養した。
【0042】ヒアルロン酸産生量の測定2([3H]グルコ
サミン取り込み活性法) ヒアルロン酸産生量の測定用ウェルから培養上清を回収
し、100℃で10分間加熱した後、その中の0.72
mlにプロナーゼ溶液0.08mlを加え、ヒアルロン
酸に結合した蛋白質を分解させた。
【0043】37℃で18時間静置した後、100℃で
10分間加熱処理し、プロナーゼを失活させた。
【0044】次に、上記反応液0.8mlのうち0.3
mlずつを2つのチューブにいれ、一方には緩衝液H
0.3mlを、他方にはヒアルロニダーゼ溶液0.3m
lを加え37℃で18時間静置した後、100℃で10
分間加熱処理し、ヒアルロニダーゼを失活させた。
【0045】ヒアルロニダーゼ無添加およびヒアルロニ
ダーゼ添加の上記各反応混液0.6mlのうち、それぞ
れ0.5mlを、0.15M塩化ナトリウム、0.02
%アジ化ナトリウムおよび0.05%ブリッジ−35含
有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化し
たSephadexG−50カラム(ファルマシア製)
に供し、2.5〜3.5mlの高分子量画分を分取し
た。
【0046】各高分子量画分2.0mlのうちの1ml
に10mlのシンチゾールEX−H(同仁化学研究所
製)を添加し、液体シンチレーション・カウンター(ア
ロカ製)により高分子量画分に取り込まれた[3H]放射
活性を測定した。
【0047】ヒアルロニダーゼ無添加で高分子量画分に
取り込まれた[3H]放射活性値(DPM/ウェル)か
ら、ヒアルロニダーゼによってヒアルロン酸を特異的に
分解したときの高分子量画分に取り込まれた[3H]放射
活性値(ベース)を引いた値をヒアルロン酸産生量(D
PM/ウェル)とした。
【0048】BROOK社製酵母エキスを終濃度0.0
3%、0.1%、0.3%(W/V)で添加したときの
培養上清中のヒアルロン酸産生量を測定した(表2)。
その結果、いずれの濃度においてもデトロイト551株
のヒアルロン酸産生量が上昇していることがわかった。
【0049】
【表2】
【0050】以下に本発明の実施例を挙げる。なお、表
中の値は重量%を示す。
【0051】実施例1〜5(クリーム) 下記に示す組成でクリームを調製した。
【0052】
【表3】
【0053】調製法: 成分(A)を80℃で均一に混
合溶解した後 それに成分(B)を混合溶解した(混合
液I)。これとは別に、成分(D)を80℃で均一に混
合溶解した後、それに成分(C)を混合溶解した(混合
液II)。つぎに、混合液Iに、徐々に混合液IIを加え
て、充分攪拌しながら30℃まで冷却し、クリームを得
た。
【0054】実施例6〜10(ローション) 下記に示す組成でローションを調製した。
【0055】
【表4】
【0056】調製法: 各成分を混合溶解して、ローシ
ョンを調製した。
【0057】実施例11〜14(入浴剤)
【0058】
【表5】
【0059】調製法:各成分を混合し、入浴剤を調製し
た。なお、この入浴剤は使用時に約約3000倍に希釈
される。
【0060】実施例15〜19(軟膏)
【0061】
【表6】
【0062】調製法: 上記(B)の各成分を湯浴で8
0℃に加温しながら混合し、これを、80℃に加温した
上記(A)の各成分の混合物中に攪拌しながら徐々に加
えた。つぎに、ホモジナイザー(Tokusyukik
a Kogyou製)で2.5分間激しく攪拌(250
0rpm)して各成分を充分乳化分散させた後、攪拌し
ながら徐々に冷却して軟膏を得た。
【0063】実施例20〜24(ゲル)
【0064】
【表7】
【0065】調製法: (A)を一部の水(D)で膨潤
させ、残りの水(D)で成分(C)を溶解させた後、両
者を均一に混合した(混合液I)。成分(B)を均一に
混合解させた(混合液II)。混合液Iに混合液IIを加え
て分散し、ゲルを得た。
【0066】実施例25〜29(ヘアトニック)
【0067】
【表8】
【0068】調製法: 香料可溶化剤で香料を溶解した
後、常温で攪拌しながらエタノールに加えて溶解し、成
分(B)を順次加えて溶解した(混合液I)。成分
(C)を溶解させ、攪拌しながら混合液Iに加えて均一
にした後、ろ過してヘアトニックを得た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/26 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵母エキスを有効成分として含有するこ
    とを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤。
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