JP3209367B2 - 透湿性防水布帛の製造方法 - Google Patents

透湿性防水布帛の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は透湿性、防水性を有す
る布帛の製造方法に係り、詳しくは優れた透湿性を有
し、風合いが柔軟で防水性と耐久性に優れたコーティン
グ布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】これまで透湿性、防水性コー
ティング布帛としては例えば繊維基材上にポリウレタン
樹脂を主体とした重合体を用いて微多孔質皮膜を形成し
た布帛が多数提案されている。その製造方法としては、
例えば繊維基材上にポリウレタン重合体の水混和性溶媒
溶液を塗布し、次いで水浴中に浸漬してポリウレタン微
多孔質皮膜を形成する、所謂湿式凝固法が挙げられる
(特公昭60−47955号公報)。
【0003】しかしながら、この製造法で微多孔質皮膜
を形成した布帛は、通気性、透湿性には優れているもの
の、防水性の点で満足するまでに至っておらず、また表
面の滑性が不足すると共に摩耗強度も劣っている為、洗
濯による耐水圧の低下が著しい。即ち、JIS Z 0
208による透湿度が6000g/m2 ・24時間以上
であっても,防水性能はJIS L 1079による耐
水圧測定で1500mmH2 O程度のものしか得られて
いない。また、耐水圧だけを見た場合でも6500mm
2 Oが最高で10000mmH2 O以上の高耐水圧の
ものは得られていない。
【0004】その他、アミノ酸変性ポリウレタン樹脂溶
液を用いた湿式凝固による透湿性防水布帛の製造法(特
開昭60−162872号公報、特開昭61−4031
5号公報)やフッ素変性ポリウレタン樹脂溶液を用いて
微多孔質皮膜を形成したコーティング布帛も知られてい
るが(特開平4−146275号公報)、コスト的に高
価であり、また透湿度、耐水圧の双方がともに満足しう
る高い値のものは未だ得られていない。
【0005】本発明者等は上記した従来のコーティング
布帛の製造法に於ける問題点を解消して透湿性、防水性
ともに良好な数値を示すコーティング布帛を得るべく検
討の結果、この発明に至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、この発明は繊維基
材上にポリウレタン樹脂を主体とする重合体から構成さ
れた微多孔質皮膜を形成し、更に該微多孔質皮膜上に親
水性ポリウレタン樹脂溶液を主体とするオーバーコート
剤を塗布することを特徴とする透湿性防水布帛の製造方
法を提供するものであり、オーバーコート剤が末端にヒ
ドロキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂とポリイ
ソシアネートまたはアミノプラストなどの架橋剤を混合
してなる架橋型樹脂であって、微多孔質皮膜のウレタン
層を溶解せず、かつ微多孔質皮膜のセルを破壊しない有
機溶剤溶液からなることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】この発明で繊維基材上にポリウレタン樹脂溶液
の湿式凝固により得たコーティング布帛の上に施すオー
バーコート剤の備えるべき要件としては、上記の湿式凝
固で得たコーティング布帛の有する優れた透湿性能を保
持しつつ、防水性能を向上させるということであり、透
湿性能を低下させないためには、オーバーコート剤の主
体である親水性ポリウレタン樹脂の硬度は低いほうが好
ましく、オーバーコート剤の皮膜として100%伸長時
のモジュラスが20〜60kg/cm2 である事が好ま
しい。また、オーバーコート剤の塗布によりコーティン
グ布帛上に無孔質の皮膜が形成されることになるので親
水性の高いポリウレタン樹脂とすることが必要である。
【0008】このためポリウレタン樹脂の製造に当たっ
ては親水性の大きなポリオールを用いることが好まし
く、例えばポリエーテルポリオールとしては、ポリプロ
ピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテ
ルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコー
ル、ポリエチレングリコールあるいはテトラメチレンエ
ーテルグリコールのエチレンオキサイド付加物などが使
用でき、またポリエステルポリオールとしてはエチレン
グリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコー
ルなどのアルキレングリコール類とアジピン酸、セバチ
ン酸、コハク酸などの二塩基酸を反応して得られるポリ
エステル、更にはε−カプロラクトンを重合して得られ
る末端ヒドロキシル基を有するポリエステルが使用でき
る。
【0009】有機ジイソシアネートとしては4,4’−
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレ
ンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネ
ート(XD1)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ
ート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジ
イソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシア
ネート(IPDI)などが用いられる。
【0010】また、鎖伸長剤としてはエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキ
サメチレングリコールなどのグリコール類、エチレンジ
アミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミ
ン、無水ピペラジンなどのジアミン類が使用できる。そ
して、重合溶媒としてはメチルエチルケトン(ME
K)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、キ
シレン、イソプロピルアルコール(IPA)、第2級ブ
チルアルコール、第3級ブチルアルコール、シクロヘキ
サノン、テトラヒドロフラン等の各種の有機溶媒が使用
できるが、繊維基材上の微多孔質のウレタン層を溶解、
破壊させないためには、溶解力の弱いトルエン、キシレ
ンなどの芳香族溶媒、IPA、第2級ブチルアルコール
などのアルコール系溶媒(ソフトソルベント)を用いる
事が好ましい。
【0011】上記したポリオール、有機ジイソシアネー
ト、鎖伸長剤、重合溶媒を用いて親水性のポリウレタン
樹脂を得るには、ポリオールと有機ジイソシアネートを
反応させて末端NCOのプレポリマーを得たのち、アミ
ンを添加して末端のNCOをヒドロキシル基に置換する
通常の重合法によればよい。かくして得られる末端にヒ
ドロキシル基を有し、その皮膜の100%伸長時のモジ
ュラスが60kg/cm2 以下である親水性のポリウレ
タン樹脂をコーティングに適した濃度或いは粘度にソフ
トソルベントで調整して微多孔質ウレタン皮膜上に塗布
した場合、この親水性のポリウレタン樹脂液が非常に軟
らかいために、その塗布面が他の塗布面と接触した時ブ
ロッキング現象を起こしたり、ソフトソルベントを用い
ているために微多孔質ウレタン皮膜面との密着性が悪
く、簡単に剥離するという問題がある。この発明は上記
のような末端にヒドロキシル基を有する親水性のポリウ
レタン樹脂に架橋剤を加えて架橋型のオーバーコート剤
とすることによって、上記した問題を解決したのであ
る。
【0012】上記で用いる架橋剤としては、TDI 3
モルとトリメチロールプロパン1モルの付加物、HDI
3モルとトリメチロールプロパン1モルの付加物など
のポリイソシアネートが用いられ、また、これらのポリ
イソシアネート類はイソシアネート基が遊離した形のも
のであっても、或いはこれらのポリイソシアネートにメ
チルエチルケトオキシム、フェノール等を付加させて残
存イソシアネートを封鎖したブロックイソシアネートで
あってもよい。このほか、メトキシメチルメラミン、メ
トキシメチル尿素等のアミノプラストを架橋剤として用
いてもよい。また、これらの架橋剤はジブチル錫ジラウ
レートやパラトルエンスルホン酸などの架橋促進剤を併
用することで架橋温度や架橋時間を調整することが出来
る。
【0013】かくして得られるこの発明で用いるオーバ
ーコート剤を架橋して得た皮膜の強度は、100%伸長
時のモジュラスで20〜60kg/cm2 が好ましい。
これは100%モジュラスが60kg/cm2 以上を示
す皮膜が得られるオーバーコート剤ではたとえ薄く塗布
しても6000g/m2 ・24時間以下の透湿度しか得
られない。また、20kg/cm2 以下では皮膜の表面
粘着が強く、架橋された皮膜となってもブロッキングを
引き起こし、磨耗強度も非常に弱い。皮膜の強度が、1
00%モジュラスで20〜60kg/cm2 の範囲であ
っても更に表面粘着性を少なくするためにシリカ微粉末
等を加えてもよい。尚、上記したポリウレタン樹脂のモ
ジュラスは組成中のハードセグメント(ジイソシアネー
トと鎖延長剤)とソフトセグメント(ポリオール)の種
類と使用割合の選択によって調整可能である。
【0014】上記で得たオーバーコート剤は、繊維基材
上に形成したポリウレタン樹脂主体の合成重合体よりな
る微多孔質皮膜上にナイフコーターやコンマコーター、
リバースロールコーター等のコーティング法で固形分に
して5〜20g/m2 コーティングし、乾燥する所謂乾
式コーティング法で皮膜を形成し、その後100〜16
0℃で5分間程度加熱して架橋を促進し、さらに48時
間程度の熟成を行うのが好ましい。
【0015】この発明で用いる繊維基材としては、ポリ
アミド系、ポリエステル系などの合成繊維あるいはこれ
らの合成繊維と木綿等の混紡、混織からなる織物、編
物、不織布などがある。また、この発明で得られた透湿
性防水布帛は、ゴルフウエア、スキーウエア等のスポー
ツウエアや防寒衣、雨衣などの各種衣料素材として有用
である。
【0016】
【実施例】以下、この発明を実施例により詳細に説明す
る。尚、実施例中の部数は全て重量部である。 実施例1 (A)繊維基材への微多孔質皮膜の形成 ポリエステル系ポリウレタンエラストマー15部、非イ
オン系界面活性剤1部をDMF84部に溶解した溶液
を、予め撥水処理を施したナイロンタフタの上に、リバ
ースロールコーターにて約200g/m2 塗布し、直ち
にDMFを10重量%含有する水溶液中に導いて20℃
にて5分間浸漬しゲル化させたのち、80℃の湯洗槽
30分間浸漬した。次にマングルにて絞り、120℃に
て熱風乾燥を行った。かくして得られたコーティング布
帛は微多孔質層を有していて8000g/m2 ・24時
間の高い透湿度を示したが、耐水圧は1000mmH2
Oと低く、防水性が著しく劣っていた。
【0017】(B)オーバーコート剤の製造 分子量2000のポリエチレングリコール92部、分子
量2000のポリテトラメチレングリコール92部、
1,4−ブタンジオール3.5部、トルエン105部を
フラスコに仕込み、均一に攪拌したのち、IPDI 5
8部とジブチル錫ジラウレート0.01部を加え、10
0〜110℃の加熱攪拌を180分間行い、末端NCO
のプレポリマーを得た。次いで、このプレポリマーにト
ルエン269部を加え、40℃に冷却したのち、第2級
ブチルアルコール250部を投入し、攪拌中に鎖伸長剤
としてイソホロンジアミン22部を分割投入して300
00cps/30℃の重合液を得た。次に、この重合液
中にモノエタノールアミンを加え、末端NCOをヒドロ
キシル基に置換して反応を完了した。
【0018】かくして得られた親水性のポリウレタン樹
脂溶液100部にトリメチロールプロパン1モルとヘキ
サメチレンジイソシアネート3モルの付加物をトルエン
に溶解して75%濃度とした架橋剤5部、IPA50
部、トルエン50部、ジブチル錫ジラウレート0.1部
を混合して粘度が1500cps/30℃のオーバーコ
ート剤を得た。
【0019】(C)オーバーコート処理 上記(A)で得た微多孔質布帛に(B)で調製したオー
バーコート剤をナイフコーターにより約40g/ 2
一に塗布したのち、120℃×1分間の乾燥を行った。
その後48時間放置した。得られた布帛は透湿度700
0g/m2 ・24時間で耐水圧は10000mmH2
以上のよい性能を示した。また、オーバーコート層と微
多孔質層との密着性も良好で、処理面同志を合わせて3
kg/36cm2 ・70℃×24時間の荷重テストを行
ったが、ブロッキング現象は全く見られなかった。この
他、家庭洗濯を10回繰り返した後の耐水圧を測定して
も6000mmH2 Oを保持していた。尚、このオーバ
ーコート剤の架橋フィルムの100%モジュラスは25
kg/cm2 であった。
【0020】比較のために、(B)において架橋剤と架
橋促進剤を加える前の親水性ポリウレタン樹脂のみを
(A)で得た微多孔質布帛に上記と同様の条件で処理し
たが、両者の密着性は悪く、セロハンテープで簡単に剥
離した。また、この親水性ポリウレタン樹脂にDMFを
20部加えて処理したものは両者の密着性は多少良くな
ったが、微多孔質層がDMFによって侵され、透湿度が
3000g/m2 ・24時間に低下した。
【0021】実施例2 (D)オーバーコート剤の製造 分子量1800のテトラメチレンエーテルグリコールの
エチレンオキサイド付加物(日本油脂社製、商品名ユニ
セーフDC−1800)126部、分子量2000の
1,4−ブチレンアジペート60部、1,4−ブタンジ
オール2.7部、トルエン50部、DMF50部をフラ
スコに仕込み、均一に攪拌したのち、H12MDI15.
7部、IPDI31.1部とジブチル錫ジラウレート
0.01部を加え、100〜110℃の加熱攪拌を18
0分間行い、末端NCOのプレポリマーを得た。次い
で、このプレポリマーにトルエン228部を加え、40
℃以下に冷却したのち、第2級ブチルアルコール235
部を投入し、攪拌中に鎖伸長剤として無水ピペラジン6
部を分割投入して25000cps/30℃の重合液を
得た。次に、この重合液中にモノエタノールアミンを加
え、末端NCOをヒドロキシル基に置換して反応を完了
した。
【0022】かくして得られた親水性のポリウレタン樹
脂溶液100部にブロックイソシアネート型架橋剤(武
田薬品工業社製、商品名タケネートB−830)6部、
IPA50部、トルエン50部、ジブチル錫ジラウレー
ト0.1部を混合して粘度が1500cps/30℃の
オーバーコート剤を得た。
【0023】(E)オーバーコート処理 実施例1の(A)で得た微多孔質布帛に(D)で調製し
たオーバーコート剤をナイフコーターにより約50g/
2 一に塗布したのち、120℃×1分間の乾燥を行
った。更に160℃×5分間加熱して架橋反応を促進し
た。その後48時間放置した。得られた布帛は透湿度6
500g/m2 ・24時間で耐水圧は10000mmH
2 O以上のよい性能を示した。また、オーバーコート層
と微多孔質層との密着性も良好で、ブロッキング現象は
全く見られなかった。この他、家庭洗濯を10回繰り返
した後の耐水圧を測定しても5000mmH2 Oを保持
していた。尚、このオーバーコート剤の架橋フィルムの
100%モジュラスは50kg/cm2 であった。
【0024】比較例 (F)オーバーコート剤の製造 分子量1800のテトラメチレンエーテルグリコールの
エチレンオキサイド付加物(日本油脂社製、商品名ユニ
セーフDC−1800)106部、分子量2000の
1,4−ブチレンアジペート50.5部、1,4−ブタ
ンジオール7.6部、トルエン105部をフラスコに仕
込み、均一に撹拌したのち、IPDI74.7部とジブ
チル錫ジラウレート0.01部を加え、100〜110
℃の加熱撹拌を180分間行い、末端NCOのプレポリ
マーを得た。次いで、このプレポリマーにトルエン26
9部を加え、40℃以下に冷却したのち、第2級ブチル
アルコール250部を投入し、撹拌中に鎖延長剤として
イソホロンジアミン28.6部を分割投入して3000
0cps/30℃の重合液を得た。次に、この重合液中
にモノエタノールアミンを加え、末端NCOをヒドロキ
シル基に置換して反応を完了した。得られた親水性のポ
リウレタン樹脂溶液にその後実施例1と同様の処理をし
て粘度が1500cps/30℃のオーバーコート剤を
得、また実施例1の(C)と同様にしてオーバーコート
処理を行った。かくして得られた布帛の耐水圧は100
00mmH2 O以上であったが、透湿度が4000g/
2 ・24時間と低かった。この原因はオーバーコート
剤の架橋フイルムの100%モジュラスが80kg/c
2 を示したことから見て、オーバーコート剤製造に際
して用いた材料の使用割合が好ましくなかったためであ
ると考えられる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の方法に
より得られる透湿性防水布帛は、耐水圧が高く、洗濯耐
久性を有し、かつ透湿性能も良好なことから、雨衣、ス
ポーツ衣料、その他各種衣料に用いることができ、特に
雨季においても快適な着心地を保持できる素材として有
用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D06M 15/568 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06N 3/14 - 3/18 B32B 27/12 C08J 9/28 D06M 15/568

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維基材上にポリウレタン樹脂を主体と
    する重合体から構成された微多孔質皮膜を形成し、更に
    該微多孔質皮膜上に、末端にヒドロキシル基を有する親
    水性ポリウレタン樹脂とポリイソシアネートまたはアミ
    ノプラストを混合してなる架橋型樹脂からなるオーバー
    コート剤を塗布して親水性ポリウレタン樹脂の無孔質皮
    膜を形成することを特徴とする透湿性防水布帛の製造方
    法。
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