JP3209280B2 - ポリエステル樹脂シール材 - Google Patents

ポリエステル樹脂シール材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリエステル樹脂シール
材に関するものである。更に詳しくはヒートシール性、
フレーバー性、フイルム成形性(押出加工性)に極めて
優れた食品用紙容器、プラスチック容器などに使用され
るポリエステル樹脂シール材に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、食品容器の軽量化、生産、流通コ
ストの軽減から、食品用紙容器、プラスチック容器が多
用されている。従来より紙容器、プラスチック容器等の
最内層はヒートシール性を付与するためにポリエチレン
が使用されてきた。ポリエチレンは優れたヒートシール
性を有し、しかも紙やプラスチックに積層する際にフィ
ルム成形性がよいために、加工作業が容易であり生産性
に優れていることから、この用途において幅広く使用さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、最近では消
費者の好みの多様化と紙容器プラスチック容器の内容物
が、天然果汁、酒類までに広がるにつれてポリエチレン
よりも優れたヒートシール材が求められるようになって
きた。その背景には、ポリエチレンが前述の特徴を有し
ている反面、飲料の香料を吸着し、飲料の味や香りが変
化したり、あるいはポリエチレン特有の臭気が飲料に移
行するため、飲料本来の風味が損なわれるという欠点、
すなわちガラス瓶、PETボトルなどの容器に比べる
と、いわゆるフレーバー性(保香性)が悪いという指摘
があり、その改良が強く求められていることが挙げられ
る。
【0004】一方、ポリエステル樹脂は、ポリエチレン
に比べるとフレーバー性がよく、すでに例えば特開昭6
0−206859号、特開昭63−81042等で食器
容器用ヒートシール材が提案されている。ところが、こ
うしたポリエステル樹脂はヒートシール性、フレーバー
性の点では優れた性能を有しているものの、紙あるいは
プラスチックフィルム上に、溶融押出しすると、Tダイ
の下部で大幅なネックイン現象を起こしポリエチレンの
ように高速でフィルム状に成形することが極めて困難で
あり、生産性が極めて悪いのが実状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題点
を鑑み、ヒートシール性、フレーバー性に優れ且つ優れ
たフィルム成形性(押出加工性)を有するポリエステル
樹脂シール材について鋭意研究を重ねた結果、適量の分
岐鎖を有し、適切な還元粘度とZ平均分子量をもつ特定
のポリエステル樹脂が、食品容器用最内層シール材とし
て極めて優れていることを見出し本発明を完成するに到
った。すなわち本発明は、グリコール成分に占めるエチ
レングリコールの割合が90〜100モル%であり、分
岐鎖を有し、還元粘度(ηsp/c)およびZ平均分子
量(Mz)が下記式(I)および(II)を満足するこ
とを特徴とするポリエステル樹脂シール材である。 ηsp/c≧0.80 (I) 600×103 ≧Mz≧280×103 (II)
【0006】本発明において前記式を満足するポリエス
テル樹脂としては、例えば酸成分としてテレフタル酸を
主成分とする芳香族ジカルボン酸、エチレングリコール
を主体とするグリコール成分からなり且つ全酸成分もし
くは全グリコール成分に対し、3官能以上のポリカルボ
ン酸またはポリオールを0.1〜1.5モル%含有する
ポリエステルが好ましい。前記ポリエステル樹脂は、酸
成分としてテレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボ
ン酸の割合は95〜100モル%であり、5モル%未満
の割合で脂肪族または/および脂環族ジカルボン酸を併
用することができる。芳香族ジカルボン酸のうちテレフ
タル酸の占める割合は全酸成分に対し60〜90モル%
であり、さらに好ましくは65〜85モル%である。ま
た前記芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸以外
に、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、1,5‐ナ
フタレンジカルボン酸などが挙げられる。特にテレフタ
ル酸とイソフタル酸の併用が望ましく、その際テレフタ
ル酸が60〜90モル%、特に65〜85モル%であ
り、イソフタル酸が10〜40モル%、特に15〜35
モル%の割合で用いるのが好ましい。なお芳香族ジカル
ボン酸と併用しうる脂肪族または/脂環族ジカルボン酸
としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、
アゼライン酸、ドデカンジオン酸、シクロヘサンジカル
ボン酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の占める
割合が、全酸成分に対して95モル%未満であると、樹
脂のガラス転移温度が低下し、それに伴ってフレーバー
性も低下し、またフィルム成形性も悪くなるので好まし
くない。一方芳香族ジカルボン酸のうちテレフタル酸の
占める割合が60モル%未満であるとフィルム成形性が
悪くなり、またフィルムの機械物性も低下するので好ま
しくない。
【0007】前記ポリエステル樹脂のグリコール成分と
しては、グリコール成分に占めるエチレングリコールの
割合は90〜100モル%であることを必須とする。グ
リコール成分に占めるエチレングリコールの割合は好ま
しくは92〜100モル%である。グリコール成分とし
ては、10モル%未満の割合で他のグリコール、例えば
ジエチレングリコール、 1,4‐ブタンジオール、プ
ロピレングリコール、1,4‐シクロヘキサンジメタノ
ールなどを共重合することができる。これらの成分の割
合が10モル%を超えるとフレーバー性が悪くなるので
好ましくない。
【0008】前記ポリエステル樹脂において、分岐鎖を
有するためには全酸成分もしくは全グリコール成分に対
し、3官能以上のポリカルボン酸、ポリオール又はオキ
シカルボン酸を0.1〜1.5モル%、望ましくは0.
2〜1.0モル%含有させることが好ましい。3官能以
上のポリカルボン酸、ポリオール又はオキシカルボン酸
を含有させることは、本発明のポリエステル樹脂シール
材のフィルム成形性(押出加工性)の改良の重要なポイ
ントであり、0.1モル%未満の含有量ではその効果は
なく、1.5モル%を超えるとフィルム成形性は改善さ
れるが、ヒートシール性が極端に低下すると共にゲル状
物質が発生するので好ましくない。なお上記3官能以上
のポリカルボン酸としては、シクロヘキサントリカルボ
ン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸
又はそれらの誘導体、ポリオールとしてはグリセリン、
トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又はそ
れらの誘導体およびオキシカルボン酸としてはβヒドロ
キシプロピオン酸、5−オキシエトキシイソフタル酸、
p−オキシ安息香酸、ビヒドロキシピバリン酸、ε−ヒ
ドロキシプロピオン酸またはそれらの誘導体が挙げられ
る。
【0009】前記ポリエステル樹脂の還元粘度(ηsp
/c)は0.80以上、望ましくは0.85以上である
こと、およびポリスチレン換算Z平均分子量(Mz)が
280×103 以上、600×103 以下、特に330
×103 以上、550×103 以下であることが好まし
い。ポリエステル樹脂の還元粘度が0.80未満である
と押出加工性が低下し、ポリマーの物性も低下する。ま
たZ平均分子量(Mz)も本発明において極めて重要な
因子であり、Z平均分子量が280×103 未満である
とフィルムの押出加工性が悪くなり、フィルム成形時の
ネックイン現象が強く起こり、正常なフィルムを得るこ
とが困難となる。またZ平均分子量が600×103
超えると、ヒートシール性や展延性が低下するので好ま
しくない。
【0010】前記特徴を有するポリエステル樹脂を得る
方法としては、通常のポリエステルを得る方法を採用す
ることができ、分岐剤としてのポリカルボン酸やポリオ
ールを特定量にすることと、溶融重縮合後、さらに固相
重合するなどの手段が講じられるが、還元粘度およびZ
平均分子量が上記特定範囲になれば、どんな方法を採用
してもよい。なお操作性の改良を目的として、サイロイ
ドその他の無機物や有機物を、本ポリエステル樹脂の特
性を損なわない範囲で添加してもよい。上記のようにし
て得られた本発明のポリエステル樹脂シール材は、ヒー
トシール性に優れていることは勿論のこと、従来使用さ
れてきたシール材の代表であるポリエチレンに比べてフ
レーバー性が極めて優れている。例えば、フレーバー性
の一つの評価として、D−リモネンの吸着量で比較する
と、ポリエチレンの数分の1〜数十分の1の吸着量であ
り、果汁飲料の香料成分の吸着が少なく、香りや味の変
化を起こし難いことを示している。
【0011】さらに本発明で得られるポリエステル樹脂
シール材は、フィルム成形性に優れており、ネックイン
現象が非常に小さいため、従来のポリエステル樹脂のよ
うにネックイン現象が大きく、フィルムの成形が困難で
歩留りが悪い、もしくは特殊な成形機を必要としない。
さらに本発明のポリエステル樹脂は、フィルム成形性の
点ではポリエチレンに匹敵する程度に優れており、特殊
なフィルム成形機を必要としないなど多くの利点を有し
ている。従って本発明ポリエステル樹脂シール材は、こ
れらの特徴を生かして、天然果汁、牛乳、酒類などの飲
料の紙容器、プラスチック容器などのシール材はもとよ
り缶内面コート材等として、幅広く使用することができ
る。
【0012】
【実施例】本発明を更に詳細に説明するために以下実施
例を挙げるが、本発明は実施例によって何ら限定される
ものではない。なお実施例に記載された特性値は次の方
法に従って測定したものである。
【0013】Z平均分子量:ゲルパーミエーションクロ
マトグラフにより、流出曲線を得、ポリスチレン換算の
平均分子量を評価した。ここでは、平均分子量として、
次式で定義されるZ平均分子量(Mz)を評価した。 Mz=ΣWi Mi2/ΣWi Mi (Wi :分子量Mi の分子の重量)
【0014】ネックイン幅:ポリエステル樹脂を、40
mmφ抽出機、ダイスリット幅200mm×ダイギャップ
0.8mm、エアギャップ100mm、温度280℃で製膜
し、ダイ幅と得られたフィルム幅の差をネックイン幅と
した。
【0015】剥離強度:厚さ20μm のポリエチレンテ
レフタレートフィルムを保護層として用い、ポリエステ
ル樹脂シール材同志の面を合わせた後、150℃×2
秒、2Kgf/cm2 の条件で熱接着し、東洋ボールドウィ
ン製テンシロンRTM−100引張り試験機で剥離接着
力を測定した。
【0016】D−リモネン吸着:製膜した厚さ50μm
のポリエステルシール材をサンプル瓶に入れ、果汁飲料
の香料成分の一つであるD−リモネンを加え、30℃で
2週間放置した。浸漬前後のシール材の重量差を求める
ことにより、D−リモネンの吸着量を求め、ポリエチレ
ンの吸着量を100とした時の相対値を得た。
【0017】ポリエステル樹脂A〜Iの製造例 撹はん機、温度計、流出液用冷却機を装備した反応缶中
に、ジメチルテレフタレート34.36kg 、ジメチル
イソフタレート6.72kg 、エチレングリコール2
7.28kg 、酢酸亜鉛87.8g、三酸化アンチモン
174.9gを仕込み、140〜210℃に加熱撹拌し
ながら3時間エステル交換反応を行った。エステル交換
反応終了後、無水トリメット酸192gを投入し、20
0℃から260℃まで昇温しながら1時間かけてエステ
ル化反応させ、次に系内を徐々に減圧していき、40分
後に5mmHg、次いで260℃、0.3mmHgで82分間重
縮合反応を実施し、還元粘度0.90のポリエステル樹
脂Aを得た。エタノール分解後、ガスクロマトグラフに
よる組成分析の結果ポリエステル樹脂の組成は、テレフ
タル酸84.3モル%、イソフタル酸15モル%、トリ
メリット酸0.7モル%、エチレングリコール100モ
ル%であった。またポリエステル樹脂をゲルパーミエー
ションクロマトグラフを用いてポリスチレン換算Z平均
分子量を測定したところ、Mz=430×103 であっ
た。以下前記と同じ方法を用いてポリエステル樹脂B〜
Iを得た。なおポリエステル樹脂Fは前記方法で得られ
た還元粘度0.76のポリエステル樹脂を、さらに19
0℃で7時間固相重合して得られたものである。
【0018】実施例1 ポリエステル樹脂Aを、日本精工所製40mmφ押出し機
で、スリット幅200mmのダイスを用いて製膜し、厚さ
50μm のフィルムを得た。樹脂組成と得られた特性を
表1に示す。後に示す比較例と比べるとネックイン幅が
小さく、剥離強度は大で、D−リモネンの吸着も少な
く、バランスの取れた特性を示した。 実施例2〜6 実施例1と同様にして、表1に示す樹脂B〜Fを用いて
実験を行った。得られた結果を表1に示す。 比較例1〜3 表1に示す樹脂G〜Iを用いた以外は実施例1と同様に
して製膜した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】前記表1より明らかなように本発明のポ
リエステル樹脂シール材は、分岐鎖を有し、高い還元粘
度と高いZ平均分子量を有していることより、 (1) 従来のポリエチレンに比べて、フレーバー性に
極めて優れている。 (2) フィルム成形性(押出加工性)に優れており、
生産性の点において、従来のポリエステルに比べて非常
に優れている。 (3) 得られたフィルムの接着強度が高い。 等のバランスの取れた優れた特性を示していることが判
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 嘉本 武史 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋 紡績株式会社 総合研究所内 審査官 森川 聡 (56)参考文献 特開 平3−84027(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリコール成分に占めるエチレングリ
    コールの割合が90〜100モル%であり、分岐鎖を有
    し、その還元粘度(ηsp/c)およびポリスチレン換
    算Z平均分子量(Mz)が下記式(I)および(II)
    を満足することを特徴とするポリエステル樹脂シール材 ηsp/c≧0.80 (I) 600×103 ≧Mz≧280×103 (II)
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