JP3204122B2 - メタルハライドランプ - Google Patents

メタルハライドランプ

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JP3204122B2 JP26150896A JP26150896A JP3204122B2 JP 3204122 B2 JP3204122 B2 JP 3204122B2 JP 26150896 A JP26150896 A JP 26150896A JP 26150896 A JP26150896 A JP 26150896A JP 3204122 B2 JP3204122 B2 JP 3204122B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は発光管の両端部に、
石英ガラス内に電極を封止して構成される封止部を有す
るメタルハライドランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】メタルハライドランプは、35W程度の
低消費電力のものまで実用化が進み、小型で高効率であ
ることから自動車の前照灯や液晶プロジェクタのバック
ライト用の光源等、様々な用途において開発が進められ
ている。
【0003】メタルハライドランプは、一般に電圧印加
直後の光の立上りが遅く、また消灯後すぐに点灯させる
ことはできない。このため、電圧印加直後の速い点灯や
消灯直後の再点灯が要求される場合、例えば自動車の前
照灯用にメタルハライドランプを用いる場合、電子点灯
回路との組み合わせにより始動時のランプ電流を安定点
灯時の数倍にし、さらに十数キロボルトの高圧パルスを
印加することにより、電圧印加直後の速い点灯および消
灯直後の再点灯を実現している。
【0004】しかしながら、メタルハライドランプに高
圧パルスを印加すると、ランプの始動・再始動の際、メ
タルハライドランプのタングステン等からなる電極およ
びこの電極を封止した石英ガラスの温度が急激に上昇す
る。電極の熱膨張係数(48×10-7/℃)は、石英ガ
ラスの熱膨張係数(6×10-7/℃)よりも大きいた
め、例えば電極の軸方向には、石英ガラスに瞬間的に大
きな張力が発生し、この張力により石英ガラスが破壊す
る(クラックが生じる)ことがあった。
【0005】この問題を解決する方法として、電極表面
に添加剤(ThO2等)を設けることにより、電極の周縁
に石英ガラスの被膜を設けて、この被膜と石英ガラスと
が互いに伸縮自在となるように構成されたメタルハライ
ドランプが提案されている(特開平7−282719号
公報)。
【0006】添加剤を電極表面に設ける方法は、例え
ば、あらかじめ全体に添加剤を含有した電極を、化学エ
ッチング、もしくは酸化・還元することにより電極の表
皮を除去し、表皮に存在する添加剤を電極の表面に残す
方法等が考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、タング
ステンで構成される電極の表面に残された添加剤は、電
極表面とは化学的に結合していないので電極から脱落し
やすく、このため電極表面における添加剤の残存量は不
均一となり、したがって石英ガラスの被膜は一定の厚さ
で形成されない。このため、点灯時にこの被膜と封止部
の石英ガラスとの接触抵抗が発生し、クラックが生じる
原因となる。
【0008】また、添加剤は、発光管内に封入された発
光金属と反応してランプ特性を悪化させるため、発光金
属との組み合わせによっては使用を制限される。
【0009】さらに添加剤は、一般に1μm程度のきわ
めて細かい粒子であり、添加剤が電極の表面に付着して
いることを確認するには、電子顕微鏡を用いて300倍
以上の拡大観察を行うことが必要であるが、これを管理
していくことは、コストアップを招く。
【0010】本発明は、封止部およびその近傍で発生す
るクラックを抑制することにより点灯寿命を向上させた
メタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、内部に金属ハ
ロゲン化合物を封入した発光管の両端部に、石英ガラス
内に電極を封止して構成される封止部を有し、前記電極
と前記石英ガラスとが接する部分において、前記電極の
表面に、電圧を印加した際、前記電極に加わる応力が、
常温時の前記電極に加わっている応力を打ち消す方向に
働くよう粗面加工を施しているとともに、前記電極と前
記石英ガラスとが強固に固着されている構成を有する。
【0012】これにより、電極の石英ガラス内への封止
工程において、石英ガラスの徐冷点付近で石英ガラスの
固化が始まるとともに電極と石英ガラスとが強固に固着
する。したがって、さらに温度が低下し、封止部が常温
となった時、石英ガラスには、電極と石英ガラスとの温
度係数の相違による応力が存在している。この時、冷却
の速度は緩やかであるため、石英ガラスに重大なクラッ
クが生じることはない。
【0013】次に、このメタルハライドランプを始動す
る際には電極の温度が急上昇し、電極と石英ガラスとの
温度係数の相違により、石英ガラスに瞬間的に大きな応
力が働くが、これは常温時に常時働いている上述の応力
を打ち消す方向に働くため、発光管あるいは封止部の石
英ガラスに重大なクラックが生じることはない。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図1を用いて説明する。
【0015】図1は、35Wの自動車前照灯用メタルハ
ライドランプの要部切欠正面図を示すものである。図1
において、石英ガラスからなる発光管1の内部には放電
空間2が設けられており、この放電空間2内には、水銀
と金属ハロゲン化物と始動用ガスとが封入されている。
金属ハロゲン化物としては、ScI3、NaI、始動用
ガスとしては、キセノン等が用いられる。
【0016】このメタルハライドランプは、発光管1の
両端部にピンチシール方式により形成した封止部6を有
している。封止部6には導入部材であるモリブデン箔
3、円柱状のタングステン棒で構成される電極4、およ
びタングステンで構成される外部リード棒5が封止され
ている。モリブデン箔3の一端部には電極4、他端部に
は外部リード棒5がそれぞれ接続されている。封止部6
の幅および厚さは、それぞれ4.2mmおよび2.2m
mである。また、電極4の直径は0.25mmである。
電極4の表面は、砥石で研磨することにより粗面となっ
ており、中心線平均平均あらさR(電極4の軸中心から
表面までの距離と、その距離の平均値との差の絶対値を
平均したもの)は約3μmである。
【0017】電極4を封止する工程では、封止部6を構
成する石英ガラスを加工温度領域まで加熱して電極4を
ピンチシール方式により封止する。その後、石英ガラス
が冷え、石英ガラスの徐冷点付近で実質の固化が始ま
る。このとき、電極4の表面が粗面加工されているた
め、電極4と封止部6を構成する石英ガラスとが強固に
固着する。
【0018】さらに石英ガラスが冷えると、石英ガラス
には、電極4の軸方向に圧縮応力が生じ始める。これ
は、石英ガラスとタングステンの熱膨張係数の違いによ
り、石英ガラスの収縮長よりも電極4の収縮長の方が大
きいためである。
【0019】石英ガラスには、電極4の軸方向において
圧縮応力が存在していることは、光弾性法により確認し
ている。この実験は、電極4の軸に平行に偏光を通過さ
せることにより行った。
【0020】一方、電極4の軸に垂直な方向には、張力
が存在していると考えられる。これは、電極4が電極4
の軸の中心方向に収縮し、かつ電極4の周囲の石英ガラ
スが電極4に強固に固着されているために、石英ガラス
が電極4の軸の中心方向に引き寄せられることに起因す
ると考えられる。
【0021】さらに、これにともなって円柱状の電極4
の断面の円周方向には、圧縮応力が働いていると考えら
れる。
【0022】ところで、電極4の周辺の石英ガラスは半
径方向の張力に弱く、電極4の周縁部には微少なクラッ
クの入った石英のガラス層が形成されるが、これにより
発光管1の内部の気体がリークに至ることはない。ま
た、これらの微少なクラックによって石英ガラスの応力
分布に大きな変化が生じることはないことを確認してい
る。
【0023】本発明のメタルハライドランプに電圧を印
加すると、電極4および石英ガラスの温度が急激に上昇
し、電極4と石英ガラスとの熱膨張係数の違いにより、
石英ガラスには、電極4の軸方向および電極4の断面の
円周方向には張力、電極4の軸に垂直な方向には圧縮応
力が瞬間的に働くが、これらはすべて、常温時に働いて
いる電極4の軸方向および電極4の断面の円周方向に働
く圧縮応力、あるいは電極4の軸に垂直な方向に働く張
力を打ち消す方向に働くものであるため、発光管1に封
入された気体がリークしてしまうほど大きなクラックが
発生することはない。
【0024】本発明のメタルハライドランプの点灯寿命
を測定するために、電極4の中心線平均あらさRの値の
異なる3種類のメタルハライドランプを試作し、それぞ
れの点灯実験を行ったところ、表1に示すとおりの結果
が得られた。
【0025】中心線平均あらさRは、砥石による研磨お
よびタンブリング加工で調整した。点灯モードは9分4
5秒点灯、15秒消灯を5回行い、その後10分間消灯
する過程を1サイクルとし、これを繰り返し行ったもの
である。
【0026】
【表1】
【0027】表1中に示す点灯時間は、クラック発生に
より発光管1から封入物がリークし、メタルハライドラ
ンプが不点灯となるまでの総点灯時間の平均値を示す。
【0028】表1に示したメタルハライドランプ(イ)
は、本実施の形態のメタルハライドランプであり、Rが
3である。メタルハライドランプ(ロ)および(ハ)は
比較検討のために試作したメタルハライドランプであ
り、それぞれ、Rが1.5および0.5である。
【0029】表1の結果から、電極4の中心線平均あら
さRが大きい方が、クラックが発生するまでの時間が長
いことがわかる。
【0030】電極4に接する石英ガラスのうち、放電空
間2の内壁面に隣接する部分は、封止工程における発光
部内壁の変形を防ぐ必要があるため、封止時の温度が低
い。したがって、電極4の中心線平均あらさが小さいと
き(R=0.5)、電極4と石英ガラスとの固着が不十
分となり、クラックが発生するまでの時間が短い。
【0031】また、Rが1.5のとき、封止時の加工温
度の微少なばらつきによって、電極4に接する石英ガラ
スに発生する封止完了後の応力が大きく変わる。したが
って点灯寿命を確定することができなかった。
【0032】さらに、Rが3のときは、点灯寿命が20
00時間であり、従来のメタルハライドランプ(粗面加
工は施していないが、1μm程度の凹凸を有するもの)
の寿命(約300時間)を大幅に超えている。
【0033】以上のことから、メタルハライドランプの
始動時に発生しうるクラックを防止するに十分な応力を
石英ガラスに与えるためには、Rを3以上とすることが
望ましい。
【0034】また、電極4の表面を粗面にすることによ
り、電極4の強度が低下するが、Rが電極4の直径の1
0%以下であれば電極4の強度は十分であることを確認
している。
【0035】以上をまとめると、電極4の中心線平均あ
らさが大きいほど、石英ガラスに大きな応力が発生する
ので、メタルハライドランプの始動時に発生する急激な
張力を緩和し、クラック発生の確率をきわめて低く抑え
ることができる。逆に、電極4の中心線平均あらさが小
さい程、電極4に接する石英ガラス中に応力が発生しな
い領域が生じるため、クラックが発生する確率が高くな
る。
【0036】なお、電極4の表面の凹凸は、電極4と石
英ガラスとが接する部分において設けられていれば十分
であるが、放電空間2内の電極部分7の表面にも凹凸が
設けられていれば電極部分7において放熱効果を奏す
る。
【0037】なお、本実施の形態においては、石英ガラ
スの応力を光弾性法を用いた実験により評価し、メタル
ハライドランプ点灯による応力の緩和の効果を直接確認
しているのは電極4の軸方向のみであるが、石英ガラス
および電極4の冷却過程(電極の封止工程後)と加熱過
程(電圧印加後)とは、石英ガラスおよび電極4の伸縮
の方向が互いに相殺することは明らかであるため、他の
方向に関しても同様に点灯時の応力緩和の作用があり、
また、このことはランプの寿命時間を測定する実験の結
果、クラック発生までの時間が大幅に延びていることか
らも明らかである。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば
灯中に、封止部またはその近傍に発生するクラックを
防止することができ、点灯寿命の長いメタルハライドラ
ンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における35W自動車用メ
タルハライドランプを示す図
【符号の説明】
1 発光管 2 放電空間 3 モリブデン箔 4 電極 5 外部リード棒 6 封止部 7 放電空間2内の電極部分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 寿▲蔵▼ 大阪府高槻市幸町1番1号 松下電子工 業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭54−71884(JP,A) 特開 平5−198285(JP,A) 実公 昭46−3348(JP,Y1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 61/36

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に金属ハロゲン化合物を封入した発
    光管の両端部に、石英ガラス内に電極を封止して構成さ
    れる封止部を有し、前記電極と前記石英ガラスとが接す
    る部分において、前記電極の表面に、電圧を印加した
    際、前記電極に加わる応力が、常温時の前記電極に加わ
    っている応力を打ち消す方向に働くよう粗面加工を施し
    ているとともに、前記電極と前記石英ガラスとが強固に
    固着されていることを特徴とするメタルハライドラン
    プ。
  2. 【請求項2】 前記電極表面における中心線平均あらさ
    をR(μm)としたとき、3≦Rであることを特徴とす
    る請求項1記載のメタルハライドランプ。
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