JP3202083B2 - 堆積膜形成方法および堆積膜形成装置 - Google Patents

堆積膜形成方法および堆積膜形成装置

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JP3202083B2 JP34375792A JP34375792A JP3202083B2 JP 3202083 B2 JP3202083 B2 JP 3202083B2 JP 34375792 A JP34375792 A JP 34375792A JP 34375792 A JP34375792 A JP 34375792A JP 3202083 B2 JP3202083 B2 JP 3202083B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基体上に堆積膜、特に
機能性膜、例えば半導体デバイス、電子写真用感光体デ
バイス、画像入力用ラインセンサー、撮像デバイス、光
起電力デバイスなどに用いる結晶またはアモルファス堆
積膜をマイクロ波プラズマCVD法により形成する堆積
膜形成方法および堆積膜形成装置に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】半導体デバイス、電子写真用感光
体デバイス、画像入力用ラインセンサー、撮像デバイ
ス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素
子、光学素子などに用いる素子部材として、アモルファ
スシリコン、例えば水素または/およびハロゲン(例え
ばフッ素、塩素など)で補償されたアモルファスシリコ
ンのアモルファス堆積膜、またはダイヤモンド薄膜のよ
うな結晶堆積膜が提案され、その中の幾つかは実用に付
されている。
【0003】こうした堆積膜の形成方法として、熱によ
り原料ガスを分解する方法(熱CVD法)、光により原
料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより
原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)など、多
数のものがこれまで知られている。中でもプラズマCV
D法、すなわち原料ガスを直流または高周波、マイクロ
波グロー放電によって分解し、ガラス、石英、耐熱性合
成樹脂フィルム、ステンレス、アルミニウムなどの基体
上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は、電子写真用アモ
ルファスシリコン堆積膜の形成などのために実用化が非
常に進んでおり、そのための装置も各種提案されてい
る。特に近年、堆積膜形成方法としてマイクロ波グロー
放電分解を用いたプラズマCVD法すなわちマイクロ波
プラズマCVD法が工業的にも注目されている。
【0004】マイクロ波プラズマCVD法は、他の方法
に比べ、高いデポジション速度(堆積速度)と高い原料
ガス利用効率という利点を有している。こうした利点を
生かしたマイクロ波プラズマCVD技術の1つの例が、
米国特許4,504,518号明細書に記載されている。
この明細書に記載の技術は、0.1Torr以下の低圧での
マイクロ波プラズマCVD法により、高速の堆積速度で
良質の堆積膜を得るというものである。さらに、マイク
ロ波プラズマCVD法での原料ガスの利用効率を改善す
るための技術が、特開昭60−186849号公報に記
載されている。この公報に記載の技術は、マイクロ波エ
ネルギーの導入手段を取り囲むように基体を配置して内
部チャンバー(すなわち放電空間)を形成するようにし
て、原料ガス利用効率を非常に高めるようにしたもので
ある。また、特開昭63−230881号公報には、こ
の技術を改良したものとして、基体を加熱する手段を放
電空間外に設けたものが記載されている。また、特開昭
61−283116号公報には、半導体部材製造用の改
良形マイクロ波技術が開示されている。この技術は、放
電空間中にプラズマ電位制御用の電極を設け、この電極
に所望の電圧を印加して堆積膜へのイオン衝撃を制御し
ながら膜堆積を行うようにして、堆積膜の特性を向上さ
せるものである。
【0005】マイクロ波プラズマCVD法で大面積の堆
積膜を形成する場合には、プラズマの均一化が大きな課
題となっている。そこで特開平1−27576号公報に
は、マイクロ波電力の密度を高めるとともに均一化し、
成膜される機能性堆積膜の膜厚や膜質の均一化を図る技
術が開示されている。図3は、大面積の機能性堆積膜を
得るためのマイクロ波プラズマCVD装置であって、こ
の公報に開示されているものの簡単な模式図である。2
台のマイクロ波発振機701,702が設けられ、これ
ら各マイクロ波発振機701,702のそれぞれに対し
てマイクロ波アプリケーター703,704が1つずつ
設けられている。このマイクロ波アプリケータ703,
704は真空容器700内の成膜空間(放電空間)に対
して対称な位置に設置されており、これによって成膜空
間内のマイクロ波電力の密度が高められるとともに均一
化する。
【0006】一方、直流または低周波交流のグロー放電
プラズマ放電を利用したプラズマCVD法の改良とし
て、特開昭57−10920号公報には、膜形成時にア
モルファス材料の感受する電磁波を膜形成面に照射する
技術が開示されている。
【0007】これらの従来の技術により、ある程度大き
な堆積速度と原料ガスの利用効率で比較的厚い光導電性
材料を製造することが可能となった。このような従来の
マイクロ波プラズマCVD法による堆積膜形成装置の構
成が図4および図5に示されている。この堆積膜形成装
置は、円筒形の電子写真感光ドラムを製造するためのも
のである。図4はこの従来の装置の模式的縦断面図であ
り、図5図4のX−X線での模式的横断面図である。
【0008】真空気密可能な反応容器801は、ほぼ円
筒形の容器であって、側壁には他端が真空ポンプ(不図
示)に連通する排気管804が一体的に形成されてい
る。反応容器801の上面と下面のほぼ中心部には、そ
れぞれ、マイクロ波電力伝送用の導波管803が取り付
けられ、各導波管803の他端は、スタブチューナ(不
図示)やアイソレータ(不図示)を介して図示しないマ
イクロ波電源に接続されている。各導波管803の反応
容器801側の端部には、マイクロ波導入用の誘電体窓
802がそれぞれ気密封止されている。誘電体窓802
は、導波管803からのマイクロ波を反応容器801内
に効率よく透過でき、かつ反応容器801内を真空気密
にし得るような材料、例えば石英ガラスやアルミナセラ
ミックスで構成されている。反応容器801の中心部を
取り囲むように、堆積膜の形成される複数の円筒状の基
体805が互いに平行になるよう配置されている。各基
体805は、反応容器801の下面から延びる回転軸8
08によって保持され、同じく反応容器801の下面か
ら基体805の内部に挿入されるように延びるヒータ8
07によって加熱されるようになっている。回転軸80
8は、反応容器801の真空を破ることなく回転自在の
ものであり、回転軸808の他端は減速ギア820を介
して駆動用のモータ809に接続されている。したがっ
て、モータ809を駆動すると、基体805がその長手
方向(母線方向)の中心軸の回りを自転することにな
る。
【0009】反応容器801内において、円筒状の各基
体805と各誘電体窓802で囲まれた部分が放電空間
806であり、この放電空間806は両端が各誘電体窓
802で画定される柱状の空間である。
【0010】この装置を用いる従来の堆積膜形成方法に
よる堆積膜形成は、以下のようにして行なわれる。ま
ず、真空ポンプ(不図示)により排気管804を介して
反応容器801内を排気し、この反応容器801内の圧
力を1×10-7Torr以下とする。次いで、各ヒータ80
7により全ての基体805を膜堆積に好適な温度に加熱
保持する。そして図示しない原料ガス導入管を介して、
例えばa−Si膜を形成する場合であれば、シラン(S
iH4)ガスや水素ガスなどの原料ガスを反応容器80
1内に導入する。これと同時平行的にマイクロ波電源
(不図示)により周波数500MHz以上の、好ましく
は2.45GHzのマイクロ波を発生させ、このマイク
ロ波を導波管803そして各誘電体窓802を介して反
応容器801内に導入する。その結果、放電空間806
においてグロー放電が生起し、原料ガスはマイクロ波の
エネルギーにより励起解離し、円筒状の各基体805の
表面上に堆積膜が形成される。このときモータ809を
駆動して基体805を自転させることにより、基体80
5の外周面の全面にわたって均一に堆積膜を形成するこ
とができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】マイクロ波プラズマC
VD法によるこのような従来の堆積膜形成方法および堆
積膜形成装置より、ある程度の堆積速度では実用的な特
性と均一性とを有する堆積膜を得ることが可能になっ
た。また反応容器(真空容器)内の清掃を厳格に行え
ば、ある程度欠陥の少ない堆積膜を得ることは可能であ
った。しかし、これら従来の方法および装置には、特に
堆積速度の大きい領域において、例えば電子写真用感光
ドラムのように大面積の比較的厚い堆積膜が成膜する場
合に、均一膜質で光学的および電気的諸特性の要求を満
足し、かつ画像欠陥などの原因となる欠陥の少ない堆積
膜を定常的に安定して高収率(高歩留まり)で得るのは
難しい、という解決すべき問題点が残存している。
【0012】また、マイクロ波プラズマCVD法による
従来の装置では、成膜空間内で放電を生起させるのに必
要な電力の方が、ひとたび放電が起こったのちにこの放
電を維持するために必要な電力より大きいため、放電を
開始させるのに必要な電力という観点でマイクロ波発振
機の選択がなされていた。このため、放電が定常状態に
遷移して成膜が進行しているときに望ましいマイクロ波
電力とマイクロ波発振機が発生するマイクロ波電力とが
適合せず、成膜された膜の膜厚や膜質の分布(ばらつ
き)が大きく、また再現性もよくないといった問題点が
あった。
【0013】本発明の目的は、半導体デバイス、電子写
真用感光体デバイス、画像入力用ラインセンサー、撮像
デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニ
クス素子、光学素子などに用いる素子部材として用いら
れる均一で特性の良い機能性堆積膜を、マイクロ波プラ
ズマCVD法により、安価に安定して歩留まり良く再現
性よく高速で形成し得る堆積膜形成方法および堆積膜形
成装置を提供することにある。
【0014】さらに本発明の目的は、マイクロ波プラズ
マCVD法によりアモルファスシリコン堆積膜またはダ
イヤモンド堆積膜などの機能性堆積膜を形成する場合
に、特性の優れ、かつ欠陥の少ない膜を形成し得る堆積
膜形成方法および堆積膜形成装置を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の堆積膜形
成装置は、基体が保持され真空を保持し得る成膜室と、
前記成膜室にマイクロ波電力を供給するマイクロ波供給
手段と、前記成膜室内に原料ガスを供給する原料ガス供
給手段と、前記成膜室に接続された排気手段とを有し、
マイクロ波プラズマCVD法によって前記基体の表面に
堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、前記マイク
ロ波供給手段が、少なくとも、マイクロ波発振機と、前
記マイクロ波発振機に接続されマイクロ波の分配を行な
、放電開始電力と放電維持電力の間で連続的に電力を
変化させながら前記成膜室に電力を供給することができ
るように分配比が調整可能である電力分配器と、一端が
前記成膜室に取り付けられて前記電力分配器からのマイ
クロ波電力を前記成膜室に導入するマイクロ波アプリケ
ータと、前記マイクロ波アプリケータに供給されるマイ
クロ波電力を測定する電力測定手段とによって構成さ
れている。
【0016】本発明の第2の堆積膜形成装置は、基体が
保持され真空を保持し得る成膜室と、前記成膜室にマイ
クロ波電力を供給するマイクロ波供給手段と、前記成膜
室内に原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記成
膜室に接続された排気手段とを有し、マイクロ波プラズ
マCVD法によって前記基体の表面に堆積膜を形成する
堆積膜形成装置において、前記マイクロ波供給手段が、
少なくとも、マイクロ波発振機と、前記マイクロ波発振
機に接続されマイクロ波の分配を行ない分配比が0:1
から1:0まで連続的に調整可能である電力分配器と、
一端が前記成膜 室に取り付けられて前記電力分配器から
のマイクロ波電力を前記成膜室に導入するマイクロ波ア
プリケータと、前記マイクロ波アプリケータに供給され
るマイクロ波電力を測定する電力測定手段と、によって
構成されている。
【0017】本発明の堆積膜形成方法は、成膜室を排気
し、原料ガス供給手段から前記成膜室に原料ガスを供給
し、マイクロ波電力供給手段によりマイクロ波電力を供
給して、基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法にお
いて、前記マイクロ波電力は分配比の調節が可能である
電力分配器を介して、前記成膜室に接続された第1のマ
イクロ波アプリケータ及び前記成膜室もしくは他の成膜
室に接続された第2のマイクロ波アプリケータに供給さ
れるものであり、前記第1のマイクロ波アプリケータに
少なくとも放電開始電力が供給されるように前記電力分
配器の分配比を調整して、該第1のマイクロ波アプリケ
ータにマイクロ波電力を供給して第1の放電を生起する
第1の工程と、前記電力分配器を調節して前記第1のマ
イクロ波アプリケータに印加するマイクロ波電力を第1
の放電を維持しながら低下させるとともに、前記第2の
マイクロ波アプリケータに印加するマイクロ波電力を増
大させ、前記第1の放電を維持したまま、前記第2のマ
イクロ波アプリケータに少なくとも放電開始電力を供給
して、前記成膜室もしくは前記他の成膜室に第2の放電
を生起する第2の工程と、を少なくとも有する。
【0018】
【作用】イクロ波プラズマCVD装置によって機能性
堆積膜を形成する場合、放電を開始させるのに必要な実
効のマイクロ波電力(以下これを「放電開始電力」と呼
ぶ)と、いったん放電が開始した後、徐々にマイクロ波
電力を小さくしていったときに放電状態を維持できる最
小の実効のマイクロ波電力(以下これを「放電維持電
力」と呼ぶ)とでは、通常、大きな差があることが知ら
れている。一方、同一のマイクロ波発振機の出力を広範
囲にわたって可変とすることは困難である。
【0019】そこで本発明では、マイクロ波の分配を行
ない分配比が調整可能である電力分配器を設け、この電
力分配器をマイクロ波発振機とマイクロ波アプリケータ
との間に配置した。この電力分配器としては、分配比が
0:1から1:0まで連続的に調整可能なものが望まし
い。以下、この電力分配器を可変分配器と呼ぶ。そして
本発明の装置で成膜を行なう場合には、同一のマイクロ
波発振機で放電開始と成膜とが行なわれるようにし、こ
のマイクロ波発振機から最大発振電力近くのマイクロ波
電力を供給しながら、放電開始時には分配比を大きくし
て相対的に大きな電力が成膜室内に導入され、ひとたび
放電が開始したのちには分配比を小さくして、成膜に必
要な相対的に小さなマイクロ波電力が個々のマイクロ波
アプリケーターに供給されるようにする。これにより、
ゆらぎが小さい安定したマイクロ波電力を供給できるよ
うになり、均一性の高い機能性堆積膜が形成できるよう
になる。
【0020】本発明の装置において、可変分配器はマイ
クロ波発振機より入力したマイクロ波電力を少なくとも
2方向に分配する。この可変分配器は、マイクロ波発振
機からのマイクロ波電力が入力する入力口(入力ポー
ト)1つと、マイクロ波電力を分配して出力するための
出力口(出力ポート)を少なくとも2つ有する。入力口
はマイクロ波発振機に接続され、少なくとも1つの出力
口は伝達されるマイクロ波電力を測定するための電力測
定手段を介してマイクロ波アプリケーターに接続されて
いる。これら入力口と出力口の形状は、接続に用いられ
る導波管などのマイクロ波伝達手段形状や寸法に合わ
せ、円形、矩形あるいは楕円形とすることが望ましい。
この場合、可変分配器をカスケード接続することも可能
である。そして、可変分配器の各出力口には、他の可変
分配器へのカスケード接続に使用されるものを除いて、
それぞれマイクロ波アプリケータが接続されるようにす
ることが好ましい。
【0021】またマイクロ波の分配比を急激に変化させ
た場合には、放電切れや放電不安定状態などの不具合が
発生することがあるので、このような不具合を伴うこと
なく分配比を変更するための所要時間を調査しておき、
この所要時間にしたがって可変分配器を操作することが
望ましい。
【0022】本発明においては、マイクロ波電力の損失
を防ぐために、成膜室からマイクロ波電力の反射を完
全になくすようにインピーダンスの調整を行ない、か
つ、可変分配器とマイクロ波アプリケーターとの間の
マイクロ波の吸収をなくすようにすることが望ましい。
これらの条件が満たされない場合、マイクロ波電力の損
失が無視できなくなり、成膜室に供給されるマイクロ波
電力が減少してしまう。しかしこの場合であっても、電
力測定手段でモニターしながら、所望のマイクロ波電力
をそれぞれのマイクロ波アプリケーターから供給するこ
とは可能であり、本発明による膜厚や膜質の均一化とい
う効果は保持される。
【0023】マイクロ波発振機と電力分配器との間や電
力分配器とマイクロ波アプリケータとの間を接続しマイ
クロ波電力を伝達するマイクロ波伝達手段としては、導
波管や同軸線路などいずれのものも使用可能であるが、
導波管を使用するのが一般的である。ここでは、矩形導
波管を利用したものについて説明する。
【0024】本発明の装置において、マイクロ波伝達手
段として好適に用いられる矩形導波管の寸法は、使用さ
れるマイクロ波の周波数帯(バンド)および伝搬モード
によって適宜選択される。導波管の設計にあたっては、
矩形導波管内での伝送損失が少なく、かつ多重モードが
なるべく発生しないようにすることが好ましく、具体的
には、EIAJ規格のものの他、2.45GHz用の自
社規格として、96mm×24mmのものを挙げること
ができる。成膜室内にマイクロ波アプリケーターを対向
させて配設する場合、マイクロ波のクロストークを防ぐ
ため、対向する各マイクロ波アプリケーターに接続され
ている矩形導波管の長辺が互いに直交するよう配設す
る。
【0025】マイクロ波電力を測定するための電力測定
手段は、通常、方向性結合器とマイクロ波電力計とから
構成される。例えば、方向性結合器で分岐・減衰させた
マイクロ波をクリスタルマウントで検波し、検波出力か
らマイクロ波電力を求めるようになっている。そして、
このマイクロ波電力計でモニターしながら、成膜室に供
給されるマイクロ波電力を調整する。
【0026】マイクロ波アプリケーターは、一般に成膜
室の側壁に配設され、マイクロ波電力を成膜室内に供給
できるような構造となっている。このとき、マイクロ波
電力は、マイクロ波アプリケーターの先端部分に設けら
れたマイクロ波透過性部材(いわゆる誘電体窓)を介し
て、成膜室内に供給されるようにする。このマイクロ波
透過性部材は、マイクロ波アプリケーターと成膜室との
間の気密を保持するようになっている。
【0027】ここで、1入力2出力型の可変分配器とマ
ジックティとの比較を行なう。マジックティーでは、
1:1の分配のみが可能であるが、可変分配器では分配
比が自由に調整できる。したがって、可変分配器で分配
比を調整しマイクロ波電力を集中的に投入すれば放電を
容易に開始できる。この意味で、マジックティーより可
変分配器の方が使いやすい。ここで“集中的”というの
は、可変分配器によって、接続されたマイクロ波アプリ
ケータのうちある特定のマイクロ波アプリケーターにマ
イクロ波電力を集中して供給することを意味している。
【0028】またマイクロ波電力の分配数が多い場合に
ついて、可変分配器とマジックティーとを比較すると、
可変分配器の方が、マイクロ波プラズマCVD装置とし
て使用できるマイクロ波電力の範囲が広い。その理由は
以下の通りである。すなわち、マイクロ波電力の分配数
が増えるとマイクロ波アプリケーター1個当りに供給で
きるマイクロ波電力が減少するが、マジックティーの場
合、放電開始電力を越えるようにマイクロ波電力を集中
させてマイクロ波アプリケーターに投入する機能がない
ので、各マイクロ波アプリケータに加わる電力が放電開
始電力を上回るという条件から電力範囲が限定されてし
まう。これに対し、可変分配器では後述する式(1)の条
件を満たす範囲でマイクロ波電力を集中させる機能を有
するので、その分、マジックティーの場合に比べ放電開
始のための条件が緩くなり、マジックティーよりも使用
できるマイクロ波電力の範囲が広くなる。
【0029】[マイクロ波アプリケーターの上限数] 1つのマイクロ波発振機からマイクロ波を分配できるマ
イクロ波アプリケーターの数は、大面積の機能性堆積膜
を形成する装置において特に重要な問題となるため、そ
の上限の数を知るための手続きや判断基準について以下
に述べる。
【0030】(手続き) まず、特定のマイクロ波アプリケーターに放電開始電
力を供給し、放電を開始させる。
【0031】放電状態を維持しながら、そのマイクロ
波アプリケーターから供給する電力を放電維持電力付近
まで下げる。このとき、既に放電が開始している他のマ
イクロ波アプリケーターがある場合、そこから成膜室内
に供給されるマイクロ波電力が放電維持電力未満になら
ないように、可変分配器の分配比を調整する。
【0032】新たに他のマイクロ波アプリケーターに
供給可能なマイクロ波電力、すなわち最大発振電力から
放電維持に必要な全てのマイクロ波電力を引いた残りの
マイクロ波電力が、(a)放電開始電力よりも大きいとき
には、次のマイクロ波アプリケーターにこれら手続き
,,を繰り返し、(b)放電開始電力よりも小さいと
きには、そこで、マイクロ波アプリケーターの上限数が
決まる。
【0033】ここで成膜室内部で放電が開始したかどう
かの判断は、予め成膜室の壁面に覗き窓を設けておいて
視認で行なってもよいし、成膜室内部に金属プローブを
挿入してこのプローブに流れる電流が0でないことで判
断してもよいし、これ以外の方法によってもよい。成膜
室内部のマイクロ波アプリケータ近傍の領域において放
電が開始する時点で、当該マイクロ波アプリケータに対
する入射マイクロ波電力と反射マイクロ波電力とを電力
測定手段を用いて記録する。このときの入射マイクロ波
電力と反射マイクロ波電力の差、いわゆる実効電力が前
述の放電開始電力となる。
【0034】例えば、全て同じマイクロ波アプリケータ
ーを使用し、それぞれのマイクロ波アプリケーターから
のマイクロ波電力が互いに影響を及ぼさず、放電開始電
力500W、放電維持電力200W、マイクロ波発振機
の最大発振電力1000Wの場合を想定する。この場
合、マイクロ波アプリケーターの上限の数を求める手続
は以下の表1のように進行し、分配できるマイクロ波ア
プリケーターの上限数は3つであることが分かる。
【0035】
【表1】 上記(の手続)より分配できるマイクロ波アプリケータ
ーの上限数をMとすると、Mは以下のようになる。
【0036】
【数1】 ところで放電開始電力や放電維持電力は、ガス種、内
圧、成膜室や成膜室内部の放電空間の形状、成膜室や放
電空間の体積、温度、マイクロ波の漏洩、マイクロ波の
同調手段などにより異なるため、マイクロ波アプリケー
ターの上限の数は一概に決定することはできない。その
ため、あらかじめ前述の方法で放電開始電力と放電維持
電力を測定し、上限の数を決定することが望ましい。
【0037】また複数のマイクロ波アプリケーター間に
おいてマイクロ波電力が互いに他のマイクロ波アプリケ
ーターに侵入するいわゆるクロストークが起こる場合に
は、第1番目のマイクロ波アプリケーターと第2番目の
マイクロ波アプリケーターとでは放電開始電力が異なる
可能性がある。その場合には(手続き)で示した方法に
より、実験で上限の数を決定することが望ましい。
【0038】さらに、異なる複数のマイクロ波アプリケ
ーターを使用することで、放電開始電力や放電維持電力
がさまざまに異なる場合には、判断基準となっている式
(1)はそのままでは使用できない。しかし上述の「手続
き」で示した方法と同じ考え方に従って表1と同様の作
業を行い、実験的にマイクロ波アプリケーターの上限の
数を決定することが可能である。
【0039】[マイクロ波発振機の電力のゆらぎ(リッ
プル)] 次に、マイクロ波発振機の出力電力のゆらぎと膜厚や膜
質分布との関係を検討した結果を説明する。
【0040】成膜時に必要なマイクロ波電力が放電維持
電力に近い場合には、マイクロ波発振機の使い方とし
て、(1)放電開始と成膜とにそれぞれ専用のマイクロ波
発振機を用いる、(2)放電開始と成膜とに共用のマイク
ロ波発振機を用いる、の2通りのものが考えられる。し
かし、(1)の放電開始と成膜とにそれぞれ専用のマイク
ロ波発振機を用いた場合、操作が複雑である、マイ
クロ波発振機の相互の干渉を防止する工夫が必要であ
る、コストがかかる、といっ問題点が存在し、現在
のところ実用には供されていない。
【0041】それに対して、(2)の放電開始と成膜とに
マイクロ波発振機を用いる方法は一般的に用いられてお
り、上述の従来例で示した装置にもこの方法が採用され
ている。ところがこの場合、前述のように、成膜時に必
要なマイクロ波電力よりもかなり大きな最大発振電力を
もつマイクロ波発振機を用いなければならない。例えば
体積7.8リットルの円柱状チャンバーに対し、SiH4
を270sccmで流し、内圧5mTorrとして放電実験を行
なった場合、放電開始電力は1.3kWであった。そし
てこの場合、成膜に必要なマイクロ波電力を0.2KW
に程度であり、また、使用されるマイクロ波発振機の最
大発振電力は1.5kW(最大定格)程度となる。
【0042】ところでマイクロ波発振機において、その
最大発振電力(最大定格)付近でマイクロ波電力を供給
した場合と、低電力領域で供給した場合とではマイクロ
波供給電力のリップル率
【0043】
【数2】 が異なっていることを実験により見い出した。ここでリ
ップル率の測定方法としては、(1)マイクロ波発生に使
用されるマグネトロンの陽極電流値を測定する方法や、
(2)導波管を伝達しているマイクロ波電力を方向性結合
器に取付けられたクリスタルマウントを介して測定する
方法などがある。
【0044】図6は、マイクロ波電力を変化させたとき
のリップル率の測定結果をまとめたグラフである。リッ
プル率は、マイクロ波供給電力とほぼ線形な関係にある
マグネトロンの陽極電流値を測定し、計算によって求め
た。図6に示されるように、低電力でのリップル率は大
きく、高電力になるに従って単調にリップル率は小さく
なった。したがってマイクロ波発振機はその最大発振電
力(最大定格)付近で使用した方が安定したマイクロ波
電力を供給することがわかった。ここで次の比率:
【0045】
【数3】 を定義する。このPexのとり得る範囲は0<Pex<1で
あり、図6の結果は、Pexの値が1に近ければ近いほど
このマイクロ波発振機から安定したマイクロ波電力が供
給できることを示している。
【0046】例えば最大発振電力A kWのマイクロ波
発振機から2つのマイクロ波アプリケーターを介して1
つの成膜室にマイクロ波電力を供給し、成膜時に必要な
マイクロ波電力をマイクロ波アプリケーター1台あたり
B kWに選んだ場合を想定する。そしてこのPexを使
って従来装置と本発明の装置との比較を行なうと以下の
ようになる。
【0047】まず従来の装置ではマイクロ波発振機ごと
に1つのマイクロ波アプリケーターと接続し、2つの経
路から成膜室にマイクロ波電力を供給する。したがって
【0048】
【数4】 となり、成膜時にはPex=B/Aである。それに対して
本発明による装置では、
【0049】
【数5】 であるから、成膜時にはPex=2B/Aとなり、Pex
値は従来の装置よりも1に近くなる。したがって本発明
の装置ではリップル率が小さく、安定した状態でマイク
ロ波電力を供給できるようになった。
【0050】[マイクロ波発振周波数の変動] 次に、マイクロ波の発振周波数の変動と膜厚や膜質分布
との関係を検討した結果を説明する。
【0051】図7は、同一型式の3台の5kWマイクロ
波発振機について、マイクロ波供給電力とそのときのマ
イクロ波発振周波数を調べた結果をまとめたグラフであ
る。図7は供給するマイクロ波電力を変化させるとマイ
クロ波発振機の発振周波数が変動し、その変動幅はマイ
クロ波発振機毎に異なることを示している。また、特定
のマイクロ波供給電力(例えば500W)において、マ
イクロ波発振機ごとにマイクロ波発振周波数が異なって
いる(その差は最大22MHz)。従来の装置のよう
に、そのため、多数のマイクロ波発振機から等しく特定
のマイクロ波電力を供給し、大面積に渡って均一な堆積
膜を形成する場合、マイクロ波発振機ごとにマイクロ波
発振周波数が異なるので、後述する実施例などで明らか
になるように膜厚や膜質に分布を生ずることになる。一
方、本発明の装置では、可変分配器を用いることによっ
てマイクロ波発振機の必要台数を減らすことができるの
で、その分だけマイクロ波発振周波数のばらつきを抑え
ることができる。
【0052】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照し
て説明する。
【0053】《第1の実施例》 図1は本発明の第1の実施例の堆積膜形成装置の構成を
示す模式図である。この堆積膜形成装置は、電力分配器
を使用しマイクロ波プラズマCVD法によって成膜を行
なうものである。
【0054】最大発振電力1.5kWのマイクロ波発振
機101は、1入力2出力の可変分配器102の入力ポ
ートに接続され、可変分配器102の各出力ポートに
は、それぞれ矩形導波管103,104の一端に接続さ
れている。各矩形導波管103,104は相互に直交し
て配設され、これら矩形導波管103,104の他端は
マイクロ波アプリケータ105,106に接続されてい
る。また、矩形導波管103,104の途中には、それ
ぞれマイクロ波電力測定器109,110が挿入されて
いる。各マイクロ波アプリケータ105,106は、成
膜室108内にマイクロ波電力を導入するためのもので
あって、成膜室108の壁面に、気密を保持しながら相
互に対向するように締結されている。
【0055】成膜室108は、真空気密可能なものであ
って、ガス排気口111に接続された図示しない真空ポ
ンプによって排気されるようになっている。成膜室10
8の内部には、成膜室108に原料ガスを供給するため
のガス導入棒107が、マイクロ波アプリケーター10
5,106の中心軸上に配設されている。このガス導入
棒107の表面には、ガス噴出のための小孔が多数設け
られる。
【0056】次に、この堆積膜形成装置の動作を説明す
る。
【0057】堆積膜を形成する不図示の基体を成膜室1
08内に配置したのち、不図示の真空ポンプによりガス
ガス排気口111を介して成膜室108内を10-6Torr
台まで真空引きしたする。その後、不図示のマスフロー
コントローラーを介して所望の流量の原料ガスをガス導
入棒107の小孔より成膜室108内に導入する。そし
て不図示の圧力調整バルブにより、成膜室108内を所
定の圧力に維持する。
【0058】次に可変分配器102を調整して、導波管
103側と導波管104側とに、1:0の比でマイクロ
波電力が分配されるように設定する。そして、マイクロ
波発振機101からマイクロ波アプリケーター105を
介して成膜室108内にマイクロ波電力を漸増させなが
ら供給する。成膜室108内部において放電開始を確認
した後、導波管103,104に分配するマイクロ波電
力が等しくなるよう可変分配器102を調整する。この
調整に要する時間は、予め実験検討で決めておく。そし
て最終的には、所望のマイクロ波電力が2つのマイクロ
波アプリケーター105,106を介して等しいマイク
ロ波電力で成膜室108内部に投入されるように、マイ
クロ波電力測定器109,110で監視しながら可変分
配器102とマイクロ波発振機101とを微妙に調整す
る。
【0059】次に、この堆積膜形成装置を用いて実際に
成膜を行なった例について、数値を挙げて説明する。
【0060】[実験例1] 上述の堆積膜形成装置を用い、アモルファスシリコン膜
の堆積を行なった。成膜用の原料ガスとしてSiH4
用い、流量を27sccmとした。成膜室108の内圧60
mTorrとして、1.2kWのマイクロ波電力を一方のマイ
クロ波アプリケーター106側から成膜空間108内に
供給したところ、放電が開始し、その後直ちに、マイク
ロ波電力が両方のマイクロ波アプリケーター105,1
06ともに400Wとなるように調整し、120秒間、
不図示の基体上にSi:H膜を堆積した。
【0061】堆積終了後、不図示の基体上に形成された
堆積膜の膜厚分布を幅方向および長手方向について測定
したところ、±5%以内に収まっており、堆積速度は1
00Å/sであった。また堆積膜の形成された基体の一
部を切り出し、反射型FT−IR装置(1720X,パ
ーキン・エルマー社製)を用いて赤外吸収スペクトルを
測定したところ、2000cm-1および630cm-1
吸収が認められ、a−Si:H膜に特有の吸収パターン
であった。さらにRHEED(JEM−100SX,日
本電子製)により膜の結晶性を評価したところ、ハロー
で非晶質であることがわかった。また、金属中水素分析
計(EMGA−1100,堀場製作所製)を用いて膜中
の水素量およびその分布を定量したところ、8±1原子
%に収まっていた。
【0062】また、堆積膜の形成された基体からさらに
20箇所の部分をランダムに切り出し、それぞれについ
てAl製くし型ギャップ電極(幅250μm,長さ5m
m)を抵抗加熱蒸着法にて蒸着し、AM−1光(100
mW/cm2)照射下での光電流値、および暗中での暗
電流値をマルチメータ(HP4140B,ヒューレット
・パッカード社製)を用いて測定し、明導電率σp(S
/cm)および暗導電率σd(S/cm)を求めたとこ
ろ、それぞれ(5.3±0.5)×10-6S/cmおよび
(5.5±0.5)×10-10S/cmの範囲内に収まっ
ていた。
【0063】さらに成膜時(片側400Wずつ投入)の
マイクロ波発振機101のリップル率は、マイクロ波電
力測定器109,110に入る電力をBNCで分岐して
オシロスコープ(2225,テクトロニクス社製)から
読み取った結果、7.0%であった。
【0064】[比較例1−1] 「従来の技術」で説明した図3に示した従来の堆積膜形
成装置を用いて、基体上にa−Si:H膜を堆積させ
た。成膜ガスにはSiH4を用い、流量を270sccmと
した。放電は一方のマイクロ波発振機301のみで成膜
室305に1.2kWの電力を供給したところ開始し
た。その後、直ちに、両方のマイクロ波発振機301,
302からそれぞれ400Wずつの電力を供給して成膜
を行った。
【0065】堆積終了後、基体を取り出し、膜厚分布を
幅方向および長手方向について測定したところ、±7%
以内であり、堆積速度は平均98Å/sであった。また
その一部を切り出し、反射型FT−IR装置(1720
X,パーキン・エルマー社製)を用い、リファレンス透
過法により赤外吸収スペクトルを測定したところ、20
00cm-1および630cm-1に吸収が認められ、a−
Si:H:膜に特有の吸収パターンであった。また、2
000cm-1付近のSi−Hに帰属される吸収から膜中
の水素量を定量したところ、8±1原子%であった。さ
らに、RHEED(JEM−100SX,日本電子製)
により、膜の結晶性を評価したところ、ハローで、非晶
質であることが判った。
【0066】また、堆積膜の形成された基体からさらに
20箇所の部分をランダムに切り出し、それぞれについ
てAl製くし型ギャップ電極(幅250μm,長さ5m
m)を抵抗加熱蒸着法にて蒸着し、AM−1光(100
mW/cm2)照射下での光電流値および暗中での暗電
流値をマルチメータ(HP4140B,ヒューレット・
パッカード社製)を用いて測定し、明導電率σp(S/
cm)および暗導電率σd(S/cm)を求めたとこ
ろ、それぞれ(5.3±1.0)×10-6S/cmおよび
(6.2±1.0)×10-10S/cmの範囲内に収まっ
ていた。
【0067】また成膜時(片側400Wずつ投入)の各
マイクロ波発振機301,302のリップル率は、オシ
ロスコープ(2225,テクトロニクス社製)から読み
取ると、18%であった。ここで[実験例1]と[比較
例1−1]とを比較して表にあらわすと以下の様にな
る。
【0068】
【表2】 なお、「発明が解決しようとしている課題」のところで
述べたように、Pexの値が1に近いほど安定したマイク
ロ波電力を供給できる。これらの結果から明らかなよう
に、本実施例ではリップル率が改善されて、膜厚や膜質
分布が改善された。
【0069】[比較例1−2] 実施例1の装置において、マイクロ波発振機の最大出力
は1.5kWで同じであるが、メーカー(型)の異なる
マイクロ波発振機に交換して、実験例1と全く同様の成
膜実験を行った。この結果と[実験例1]との結果とを
比較して表にあらわすと以下の様になる。
【0070】
【表3】 ここでΔfは0.8kWの電力を供給しているときの発
振周波数と2.45GHzとの差をあらわしている。実
験例1と比較例1−2の結果から明らかなように、マイ
クロ波発振機の個体差が膜厚や膜質の分布に関係してい
る。
【0071】以上、本発明の第1の実施例について説明
したが、2つのマイクロ波アプリケータを対向させる必
要はない。2つのマイクロ波アプリケーターを対向させ
ずに同一の成膜室側壁に配設した場合は、これらマイク
ロ波アプリケーター間でクロストークが起こらないよう
マイクロ波反射板を設ける。また、本実施例における2
つのマイクロ波アプリケーターのうち、一方のマイクロ
波アプリケーターを別の成膜室と締結してもよいし、マ
イクロ波吸収体におきかえてもよい。
【0072】《第2の実施例》 次に、本発明の第2の実施例の堆積膜形成装置につい
て、図2を用いて説明する。この実施例は、2個の1入
力2出力タイプの可変分配器を使用し、1台のマイクロ
波発振機からのマイクロ波電力を3つのマイクロ波アプ
リケーターに分配しようとするものである。
【0073】図2において、成膜室207の一方の側壁
に、3個のマイクロ波アプリケータ204,205,20
6が取り付けられている。各マイクロ波アプリケータ2
04〜206は相互に対向しているわけではないので、
クロストークを防止するため、成膜室207内には2枚
のマイクロ波反射板208が設けられている。マイクロ
波発振機201の出力は、一方の可変分配器202の入
力ポートに接続されている。この可変分配器202の一
方の出力ポートは第1のマイクロ波アプリケータ204
に接続され、他方の出力ポートは、他方の可変分配器2
03の入力ポートに接続されている。そして、この他方
の可変分配器203の各出力ポートは、それぞれ第2お
よび第3のマイクロ波アプリケータ205,206に接
続されている。この装置の動作は、放電の開始を除い
て、第1の実施例に示したものと同様であるので、放電
開始に関係する部分のみ抜き出して説明する。
【0074】まず、予め実験により決定した値に可変分
配器202の分配比を設定し、マイクロ波アプリケータ
ー204を介して成膜室207内にマイクロ波電力を漸
増させながら供給する。成膜室207内部においてマイ
クロ波アプリケーター204近傍で放電開始を確認した
らその時のマイクロ波電力をそのまま維持する。そし
て、マイクロ波アプリケーター204に供給するマイク
ロ波電力を可変分配器202を調整して放電維持電力付
近まで減少させ、放電維持電力付近で維持する。そして
その減少分に相当するマイクロ波電力を可変分配器20
3を調整してマイクロ波アプリケーター205に振替え
る。
【0075】次に、成膜室207内部においてマイクロ
波アプリケーター205近傍で放電させるため、マイク
ロ波発振機201から供給するマイクロ波電力を漸増さ
せる。このときマイクロ波アプリケーター204に供給
するマイクロ波電力も漸増するので、可変分配器202
を微調整し、これを常に放電維持電力付近で維持する。
成膜室207内部においてマイクロ波アプリケーター2
05近傍で放電開始を確認したらその時のマイクロ波電
力をそのまま維持する。そしてマイクロ波アプリケータ
ー205に供給するマイクロ波電力を可変分配器203
を調整して放電維持電力付近まで減少させ、放電維持電
力付近で維持する。そしてその減少分に相当するマイク
ロ波電力をマイクロ波アプリケーター205に振替え
る。次に、成膜室207内部においてマイクロ波アプリ
ケーター206近傍で放電させるため、マイクロ波発振
機から供給するマイクロ波電力を漸増させる。このとき
マイクロ波アプリケーター204と205に供給するマ
イクロ波電力も漸増するので、可変分配器202,20
3を微調整し、これを常に放電維持電力付近に維持す
る。成膜室207内部において、マイクロ波アプリケー
ター206近傍で放電開始を確認したら、全てのマイク
ロ波アプリケーターから可変分配器202,203を調
整し、所望のマイクロ波電力を供給する。以上の可変分
配器の調整にかける時間は、予め実験検討で決めてお
く。
【0076】また、マイクロ波発振機の最大発振電力が
大きい場合、複数のマイクロ波アプリケーターから同時
に放電を開始させてもよい。
【0077】以上本発明の第2の実施例について説明し
たが、本発明においては、この第2の実施例から容易に
類推されるように、可変分配器の数を4つ以上に増やす
ことも可能である。
【0078】
【発明の効果】以上説明したように発明は、マイクロ
波発振機から成膜室に至るマイクロ波電力の伝達経路の
途中に、分配比が調整可変である電力分配器を設けるこ
とにより、安定した電力を多方向に供給することが可能
となり、また、成膜時に好適な条件と放電を開始させる
ための条件を両立させることが可能となり、機能性堆積
膜の膜厚や膜質のむらを減少させることができるという
効果がある。また、大面積の機能性堆積膜の形成に必要
なマイクロ波発振の台数を減らすことができ、装置の
コストを下げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例の堆積膜形成装置の構成を示す模
式図である。
【図2】第2の実施例の堆積膜形成装置の構成を示す模
式図である。
【図3】マイクロ波プラズマCVD法による従来の堆積
膜形成装置の構成を示す模式図である。
【図4】マイクロ波プラズマCVD法による従来の堆積
膜形成装置の構成を示す模式的縦断面図である。
【図5】図4のX−X線での模式的横断面図である。
【図6】マイクロ波電力とリップル率との関係を示す特
性図である。
【図7】マイクロ波電力と発振周波数との関係を示す特
性図である。
【符号の説明】
101,201 マイクロ波発振機 102,202,203 可変分配器 103,104 矩形導波管 105,106,204〜206 マイクロ波アプ
リケータ 107 ガス導入棒 108,207 成膜室 109,110 マイクロ波電力測定器 111 ガス排出口 208 マイクロ波反射板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新納 博明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 岡村 竜次 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−298106(JP,A) 実開 平1−132236(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 C23C 16/50 H01L 21/31

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体が保持され真空を保持し得る成膜室
    と、前記成膜室にマイクロ波電力を供給するマイクロ波
    供給手段と、前記成膜室内に原料ガスを供給する原料ガ
    ス供給手段と、前記成膜室に接続された排気手段とを有
    し、マイクロ波プラズマCVD法によって前記基体の表
    面に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、 前記マイクロ波供給手段が、少なくとも、マイクロ波発
    振機と、前記マイクロ波発振機に接続されマイクロ波の
    分配を行ない、放電開始電力と放電維持電力の間で連続
    的に電力を変化させながら前記成膜室に電力を供給する
    ことができるように分配比が調整可能である電力分配器
    と、一端が前記成膜室に取り付けられて前記電力分配器
    からのマイクロ波電力を前記成膜室に導入するマイクロ
    波アプリケータと、前記マイクロ波アプリケータに供給
    されるマイクロ波電力を測定する電力測定手段とによ
    って構成されていることを特徴とする堆積膜形成装置。
  2. 【請求項2】 基体が保持され真空を保持し得る成膜室
    と、前記成膜室にマイクロ波電力を供給するマイクロ波
    供給手段と、前記成膜室内に原料ガスを供給する原料ガ
    ス供給手段と、前記成膜室に接続された排気手段とを有
    し、マイクロ波プラズマCVD法によって前記基体の表
    面に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、 前記マイクロ波供給手段が、少なくとも、マイクロ波発
    振機と、前記マイクロ波発振機に接続されマイクロ波の
    分配を行ない分配比が0:1から1:0まで連続的に調
    整可能である電力分配器と、一端が前記成膜室に取り付
    けられて前記電力分配器からのマイクロ波電力を前記成
    膜室に導入するマイクロ波アプリケータと、前記マイク
    ロ波アプリケータに供給されるマイクロ波電力を測定す
    る電力測定手段とによって構成されていることを特徴
    とする堆積膜形成装置。
  3. 【請求項3】 1台のマイクロ発振機に対応して複数の
    マイクロ波アプリケータが設けられ、前記各マイクロ波
    アプリケータ間のマイクロ波電力の分配比が前記電力分
    配器によって調節される請求項1に記載の堆積膜形成装
    置。
  4. 【請求項4】 前記複数のマイクロ波アプリケータが同
    一の成膜室に取り付けられている請求項3に記載の堆積
    膜形成装置。
  5. 【請求項5】 成膜室を排気し、原料ガス供給手段から
    前記成膜室に原料ガスを供給し、マイクロ波電力供給手
    段によりマイクロ波電力を供給して、基体上に堆積膜を
    形成する堆積膜形成方法において、 前記マイクロ波電力は分配比の調節が可能である電力分
    配器を介して、前記成膜室に接続された第1のマイクロ
    波アプリケータ及び前記成膜室もしくは他の成膜室に接
    続された第2のマイクロ波アプリケータに供給されるも
    のであり、 前記第1のマイクロ波アプリケータに少なくとも放電開
    始電力が供給されるように前記電力分配器の分配比を調
    整して、該第1のマイクロ波アプリケータにマイクロ波
    電力を供給して第1の放電を生起する第1の工程と、 前記電力分配器を調節して前記第1のマイクロ波アプリ
    ケータに印加するマイクロ波電力を第1の放電を維持し
    ながら低下させるとともに、前記第2のマイクロ波アプ
    リケータに印加するマイクロ波電力を増大させ、前記第
    1の放電を維持したまま、前記第2のマイクロ波アプリ
    ケータに少なくとも放電開始電力を供給して、前記成膜
    室もしくは前記他の成膜室に第2の放電を生起する第2
    の工程と、 を少なくとも有する堆積膜形成方法。
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