JP3201260B2 - 溶融金属めっき鋼板の付着量制御方法 - Google Patents

溶融金属めっき鋼板の付着量制御方法

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JP3201260B2
JP3201260B2 JP11914496A JP11914496A JP3201260B2 JP 3201260 B2 JP3201260 B2 JP 3201260B2 JP 11914496 A JP11914496 A JP 11914496A JP 11914496 A JP11914496 A JP 11914496A JP 3201260 B2 JP3201260 B2 JP 3201260B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融金属めっき鋼
板のめっき付着量制御方法、特にガスワイピングノズル
のスリットギャップの幅方向のプロフィールを制御する
ことで行う溶融金属めっき鋼板のめっき付着量制御方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融亜鉛めっきに代表される連続溶融金
属めっき設備では、近年、そのほとんどが溶融金属のめ
っき付着量 (以下、単に付着量とも云う) の制御にガス
ワイピングノズルを使用している。これを使用した付着
量制御は非接触で行われるが、被めっき材に反りが見ら
れると幅方向の付着量分布にばらつきが発生する。この
ばらつきにより所定の付着量を得るために部位によって
はその所定量以上の過剰な付着量となることが多く原単
位の悪化を招いている。
【0003】図1(a) 、(b) は、ガスワイピングノズル
10を使用しながら鋼板12のめっき浴14からの引き上げの
状況およびそのときの鋼板の幅方向の板反り状況を示す
それぞれ模式的説明図である。これらの図から判るよう
にガスワイピングノズル10の通過時における鋼板12は、
その鋼板サイズ (板厚、板幅、材質) により若干異なる
が、ほとんどの場合、図1(b) のように湾曲した状態で
進入してくる。図中、点線で示す仮想中心線からの鋼板
中心部での距離を反り量Aという。当然のことながら湾
曲の状態がひどくなればノズルと鋼板の距離は、表裏お
よび幅方向により異なってくる。
【0004】また、めっき浴中には鋼板の方向を転換す
るシンクロールと1本または2本の鋼板反りコレクティ
ングロール(以下、単にコレクティングロール)が配置
されていてそれぞれの鋼板条件に応じてこのコレクティ
ングロールにより鋼板の反りを最小にするよう調整する
が、完全に平坦化することは不可能である。また、平坦
化するに従い鋼板の厚み方向の振動が増大し、ロールと
の共震によるチャターマークの発生で品質の低下をまね
く。従ってこれらの弊害をなくすためには鋼板が反った
状態、言い替えると振動の少ない安定した状態でガスワ
イピングできれば操業上は有利である。しかし、通常の
ガスワイピングノズルを使用して様々な反り状態にある
鋼板の幅方向付着量分布を均一化することは困難であ
る。
【0005】さらに、例えば合金化溶融亜鉛めっき鋼板
の製造においては、幅方向の付着量分布のばらつきによ
り幅方向に合金化の度合いのばらつきも生じる。すなわ
ち、付着量の多い部分は幅方向に対して相対的に合金化
度が低く、少ない部分は逆に高くなる。合金化溶融亜鉛
めっき鋼板で幅方向にこのような合金化度の異なる部分
が生じると未処理あるいは過処理となり品質は著しく低
下する。
【0006】これまでの製品に対する要求品質でしばし
ば問題となったのは、鋼板エッジにおけるオーバーコー
ト(過剰付着)であり、これに対する技術的対策として
多くの技術が提案された。しかし、現代の自動車外装用
鋼板に代表される高品質溶融金属めっき鋼板では、鋼板
幅方向にわたってさらに均一なめっき付着量分布が要求
されるようになってきた。
【0007】この問題を解決するため従来から様々な提
案がなされてきた。通常、ワイピングノズルは、幅方向
に平行、またはエッジ部にいくにしたがい広がる形状の
スリットギャップのプロフィールを有するが、鋼板の表
裏面に備えられた一対のノズルではスリットギャップに
同一のプロフィールを与え、全てのサイズの鋼板の付着
量制御を行う。時には品種によって、あるいは鋼板のサ
イズ構成により異なったプロフィールのノズルに交換し
製造を行う場合もある。
【0008】前者の場合、鋼板のサイズにより操業条件
が大きく異なるため全ての鋼板に適応したプロフィール
を選定するのは困難である。また後者の場合もノズルを
交換することにより前者のような不都合をある程度回避
できるが、ノズルを交換する手間を考えると製造のチャ
ンスを制約されるばかりでなく、そのためにラインの停
止を回避することは困難である。
【0009】また、めっき浴に浸漬された鋼板はめっき
浴中のシンクロールで方向を上方に転換されて、めっき
浴上に引き上げられるが、そのとき過剰に付着した溶融
金属をガスワイピングノズルで払拭する位置における被
めっき鋼板の幅方向の板反りの状態は、板厚、板幅によ
って異なり一般的には板厚が厚いほど、あるいは板幅が
広いほど弓状に大きく反る傾向がある。この場合、同じ
製品を製造する場合でも鋼板のサイズによってガスワイ
ピング時の鋼板の幅方向の板反り状態が異なることにな
る。従って、同じ板幅でも反り量が異なれば同じプロフ
ィールのノズルでは付着量の均一化が困難である。
【0010】これらの問題を解決するためには、幅方向
においてスリットギャップを変更すること、および幅方
向の板の反りを可及的に少なくすることが考えられる。
まず、オンラインでノズルのスリットギャップを幅方向
において任意に変化させる機構を備えたノズルは、次の
ように種々提案されている。
【0011】特開平4−21752 号公報では、下リップに
取り付けられたアクチュエータにより下リップを弾性的
に上下させることによりスリットを任意の大きさに変化
させることを可能としている。
【0012】また、特開昭60−43909 号公報では、油圧
シリンダをノズルの幅方向に数個取付け、これを上下さ
せることによりリップを上下させ幅方向のプロフィール
を任意に変化させることが、さらに、実開平6−20451
号公報では、押し棒をヒータ加熱により熱膨張させ下リ
ップを押し下げる機構を幅方向に数個取付けることによ
りプロフィールを変化させることが、それぞれ開示され
ている。
【0013】これらの技術を実行すればノズルギャップ
の幅方向のプロフィールは理論的にオンラインで任意に
変化させることができる。しかし、これらを実行する場
合は、これらの機構を制御する機能が必要である。特開
昭60−43909 号公報では、下流に設置された付着量計を
利用したフィードバック (FB) 制御が提案されている
が、演算が膨大になるため制御が発散する恐れがある。
さらに、ギャップの変動量が微小でも付着量の変動量は
大きく、FB制御によるオーバーシュート幅が大きくな
り油圧シリンダは常時動作することとなり、かえって変
動量が大きくなってしまう。
【0014】一方、ガスワイピング時の鋼板の反りを可
及的に小とするように制御する方法も各種提案されてい
る。例えば、流体の静圧を利用した静圧パット方法 (特
開昭54−93636 号公報、特開昭55−58358 号公報、特開
昭57−101620号公報等) 、電磁パット法 (特開昭56−93
865 号公報、特開平1−87754 号公報等) 、ロール矯正
方法 (特開昭62−30865 号公報、特開昭63−128160号公
報等) のように数多く提案されている。これらの提案
は、全て特別な鋼板の反り矯正装置が必要であり、かつ
それらをガスワイピングノズルの直上または、直下に設
置する必要があり通常ガスワイピングノズルの直下には
めっき浴槽が直上には合金化炉があるため設備上の制約
もある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】このように、付着量制
御において、被めっき鋼板のガスワイピング時の鋼板形
状に応じた適切なガスワイピングノズルのスリットギャ
ップの幅方向のプロフィールを任意に選択し、ガスワイ
ピングノズルのスリットギャップ、つまりスリットギャ
ップの幅方向のプロフィールを操業中にノズルを交換す
ることなく変化させることで、鋼板のめっき付着量を幅
方向、長手方向に均一化することができる。しかしなが
ら、従来技術にあって鋼板の反りに対する対策、さらに
振動に対する対策としては十分なものがなかったのが実
情である。
【0016】本発明の第1の目的は、これらスリットギ
ャップ調整可能なガスワイピングノズルを用いたときの
オンラインでのめっき付着量の制御方法、特に、幅方向
にわたって均一なめっき付着量分布を簡単な制御方式で
実現する方法を提供することである。
【0017】本発明の第2の目的は、ガスワイピング時
に鋼板の反りがみられる場合にも、さらに鋼板の振動が
見られる場合にも、前述のような設備を使用して反りを
矯正することなく、幅方向に均一なめっき付着量分布を
有し、かつ表面品質に優れた溶融めっき鋼板を製造でき
る溶融金属めっき鋼板のめっき付着量制御方法を提供す
ることである。
【0018】
【課題を解決するための手段】ここに、本発明者らは、
かかる技術課題を解決するために、種々検討を重ねたと
ころ、次のような知見を得た。
【0019】付着量制御において、被めっき鋼板をガ
スワイピングする時にその鋼板にむしろ一定範囲内の反
りを持たせることにより安定させ、しかる後にその反り
量に応じた適正なプロフィールとなるようにワイピング
ノズルの幅方向のノズルギャップをオンライン上で変化
させることにより、表面欠陥がなく、かつ付着量分布の
均一なめっき鋼板を製造することができる。
【0020】同様に、平坦化するに従い鋼板の厚み方
向の振動が増大し、ロールとの共震によるチャターマー
クの発生で品質の低下を招くことから、むしろ鋼板が反
った状態、言い替えると振動の少ない安定した状態でガ
スワイピングできれば操業上は有利である。
【0021】しかし、通常のガスワイピングノズルを
使用して様々な反り状態にある鋼板の幅方向付着量分布
を均一化することは困難である。しかも、ガスワイピン
グ条件を変更したとしても表裏で同一のプロフィールの
ガスワイピングノズルを使用しているならば表裏とも幅
方向に付着量分布を均一化することは困難である。さら
にガスワイピングノズルの1つのプロフィールで様々に
変化する鋼板の湾曲状態に対応するには限度がある。
【0022】この湾曲の度合いを最初からある程度予測
してそれに応じたプロフィールのガスワイピングノズル
を導入することも考えられるが、やはり全ての鋼板条件
に適応したガスワイピングノズルをその都度選定するこ
とは困難である。従って、この全ての鋼板条件に適応す
るためには湾曲条件の近い鋼板をまとめてスケジューリ
ングし、それに応じたガスワイピングノズルをその都度
交換して使用するか、製造中にノズルを交換せずオンラ
イン上で適正なプロフィールを選択、変更するという方
法をとればよい。しかし、前者の場合は、交換するため
の設備停止時間の問題や作業性、ノズル特性の把握等困
難な問題が多く、実現性は少ない。従って理想的には後
者の方法をとることが望ましい。
【0023】かくして、本発明では、ノズルの幅方向の
スリットギャップを調整可能とした機構を備えたガスワ
イピングノズルを使用し、予め鋼板の反りに応じて最適
のガスワイピングノズルのプロフィールを選択し、次い
で、フィードフォワード (FF) 制御することにより簡
単な機構で素早いスリットギャップの調整をオンライン
で実行することにより品質、サイズを問わず幅方向の付
着量を均一化することに成功した。
【0024】さらに、本発明では、ノズルの幅方向のス
リットギャップを調整可能とした機構を備えたガスワイ
ピングノズルを使用し、ガスワイピング時の鋼板が厚み
方向の振動のなくなるあるいは最小となるように反らせ
た状態で、予め鋼板の反りに応じて最適のガスワイピン
グノズルのプロフィールを選択し、次いで、スリットギ
ャップ調整をオンラインで実行することにより品質、サ
イズを問わず鋼板の反った状態でも幅方向の付着量を均
一化できかつ前述のような表面欠陥のない鋼板の製造に
成功した。
【0025】ここに、本発明は、連続溶融金属めっき設
備において、溶融金属めっき浴から連続的に引き上げら
れる被めっき鋼板に過剰に付着した溶融金属を所定の付
着量に制御する方法において、ガスワイピングノズルの
幅方向のスリットギャップの各種プロフィールの中から
被めっき鋼板の幅方向の付着量分布を均一にできる最適
なプロフィールを、ガスワイピング時の被めっき鋼板の
反り量、目標付着量の2つをパラメーターとして選択
し、幅方向の付着量分布を均一化するよう幅方向のスリ
ットギャップを制御する、溶融金属めっき鋼板の付着量
制御方法である。
【0026】また、別の面からは、本発明は、連続溶融
金属めっきに際して、溶融金属めっき浴から連続的に引
き上げられる被めっき鋼板に過剰に付着した溶融金属を
所定の付着量に制御する方法において、被めっき鋼板の
ライン速度、めっき浴中におけるロール径 (例:コレク
ティングロール径、スタビライジングロール径) 、鋼板
幅寸法、板厚寸法を含むめっき条件から、被めっき鋼板
の共振発生条件を計算により求め、この共振発生条件を
外した条件となるように、コレクティングロールの押込
み量を設定するとともに、このときの押込み量と被めっ
き鋼板の反り量との関係をあらかじめシミュレーション
で求めておき、このシミュレーションによる関係を使っ
て上記のコレクティングロールの押込み量から、被めっ
き鋼板の反りの状態を推定し、そのとき推定された反り
量のときの幅方向の付着量分布を均一にするワイピング
ノズルのプロフィールを選択し、幅方向の付着量分布を
均一化するよう幅方向のスリットギャップを制御する、
溶融金属めっき鋼板の付着量制御方法である。
【0027】
【発明の実施の形態】従来、ガスワイピングノズルのス
リットギャップのプロフィールは固定したものであり、
品種替え等でのノズル替えは実施していたが基本的には
同じプロフィールで全サイズの鋼板の付着量を調整して
いた。最近に至り、幅方向において可変式のスリットギ
ャップを備えたノズルを使用するとにより個々の条件に
応じたプロフィールをノズルに付与することで付着量分
布の均一化を図ることが可能となったが、基本となるパ
ターンは1つであって、これでもって多くの条件に対応
することはできない。
【0028】したがって、本発明では、第1の操作とし
て、そのようなプロフィールをいくつか与える条件を記
憶させておき、そのうちの最適なプロフィールを瞬時に
あるいは条件に応じて呼出し、実行することで迅速な付
着量の均一化を可能としたものである。
【0029】本発明においてこのような最適プロフィー
ルを選択するときのパラメータとして、反り量と目標付
着量としたのは、反り量で鋼板からの距離が決定され、
目標付着量によってワイピングガスの流量が決定される
からである。具体的にはこのような好適プロフィール
は、先行する操業に際してのデータを基にいくつかのパ
ターンを用意しておいて、それに最も近似するプロフィ
ールを最適プロフィールとして選択する。ここに、幅方
向の付着量分布を均一化するとは、例えば、付着量の幅
方向のバラツキの限界を±5%として、その範囲内に入
るようなプロフィールを選ぶのである。
【0030】次いで、本発明によれば、そのようにして
選択された最適プロフイールを用いて実際にガスワイピ
ングを開始するが、その際にも、板幅方向の付着量分布
を均一化するようにスリットギャップを制御するが、そ
の場合にはFF制御方式によって予め付着量分布の変動を
予測し、それを解消するようにスリットギャップを微調
整するのである。この場合の制御は、例えば、板の平坦
が悪く、ノズルと板の距離が遠くなればスリットギャッ
プは開く方向に制御するのであり、また逆の場合は閉め
るのである。通常、本発明において用いるガスワイピン
グは板幅方向に18以上の領域に区分されているため、操
業中にはそれぞれについて微調整が行い得るのである。
【0031】なお、被めっき鋼板の表裏面についてはそ
れぞれ別々にガスワイピングノズルの好適プロフイール
の選択、めっき操業中のノズルギャップの調整が行われ
ることは言うまでもない。
【0032】一方、本発明の別の面においては、ガスワ
イピング時の鋼板の厚み方向の振動を最小とするために
浴中の反りコレクティングロールにより最適な幅方向の
反りを持たせ、次いで前述と同様にしてこの反り量に応
じたガスワイピングノズルの最適なプロフィールを選択
し、さらに幅方向におけるスリットギャップを制御して
ガスワイピングすることにより幅方向の付着量分布を均
一化し、かつ表面欠陥の少ないめっき鋼板を得ることが
できる。
【0033】上述の態様の場合、振動量を最小とする鋼
板の反り量は、まず計算によって振動の条件を求め、次
にその条件を外れるようにコレクティングロールの押込
み量を変更するのである。これで振動を最小とする反り
が実現される。そしてそのときの反り量に基づいて最適
プロフィールを求めるのである。ここに、振動条件の計
算は鋼板の弦振動について行い、例えば次の式に基づい
て固有弦振動を算出することで行われる。
【0034】
【数1】
【0035】ここに、 n: 倍振動(n=1,2, ) 、l: 弦の
長さ(mm)、 S:ユニットテンション(Kg/mm2)、 γ: 線
密度(Kg/mm) 、 g: 重力(9800mm/s2) なお、振動としてはその他にロール回転に伴うものや、
ロール支持アーム等の固有振動も考えられることから、
厳密にはそれらも考慮すべきであるが、実際上は簡便法
として本発明にあっては通常は鋼板の弦振動だけを考慮
すれば十分である。
【0036】このようにして固有弦振動が算出されたな
らば、これと共振しない条件下でコレクトロールの押し
込み量を規定するのである。このとき、コレクトロール
の押し込み量と鋼板反り量との関係を予めシュミレーシ
ョンによって求めておき、今度はそのようにして得られ
た鋼板反り量をもとに、前述と同様の最適プロフィール
の選択を行うのである。このようにして最適プロフィー
ルが求められた後の操作は前述の態様の場合と同様であ
る。
【0037】いずれの態様の場合にあっても本発明で
は、オンラインでスリットギャップの調整の可能なガス
ワイピングノズルを使用するのである。次に、実施例に
よって本発明の作用効果を具体的に説明する。
【0038】
【実施例】
実施例1 図2は、本発明において用いるガスワイピングノズルで
あって、予めそのプロフィールが決定できるとともにス
リットギャップのオンラインでの調整が可能なガスワイ
ピングノズル20の模式的断面図であり、図示のように、
下リップ22と上リップ24は、スリットギャップ26の隙間
をあけた形でノズルヘッダ28に固定されている。このス
リットギャップ26はギャップ調整ボルト30を押し込むこ
とにより下リップ22が弾性的に押し下げられスリットギ
ャップ26の大きさが変化する。このギャップ調整ボルト
30をノズル幅方向に100 mm前後の間隔で配置し、各ボル
トの押込み量を調整することにより予めガスワイピング
ノズルのプロフィールを変更できるとともに、さらに操
業中はオンラインでノズル幅方向におけるスリットギャ
ップを制御できる。
【0039】図3にスリップギャップのプロフィールの
一例を示す。このときエッジ部のオーバーコートを防止
するため、エッジ部に向かうにしたがってスリットギャ
ップが広がるテーパ状になっているのが一般的である。
【0040】従来、一度調整したスリットギャップのプ
ロフィールは操業中は変更できないのが一般的であっ
た。そこで、本発明ではギャップ調整ボルト30に電熱ヒ
ータを取付け、この発熱によるボルトの熱膨張を利用
し、下リップ22を押下げるノズルを製作し、操業中にギ
ャップを変化させることを可能とした。この装置を使用
すると最大で0.5 mmのスリットギャップ拡大が可能であ
る。
【0041】図4は本発明方法において用いる制御系を
示すフロー図である。上位コンピュータ40においてこれ
まで蓄積されたデータから目標付着量、および板厚、板
幅によって変動する反り量をパラメータとして用い、ス
リットギャップの最適のプロフィールを選択する。
【0042】次いでこれを制御盤42に記憶させると共
に、CRT 44に表示する。この状態でガスワイピングを開
始し、操業中に、前記ギャップ調整ボルト30の温度測定
結果 (熱電対等により測定) の信号によってヒータ温度
調節器を作動させ、例えば図2のギャップ調整ボルト30
のヒータを制御する。
【0043】これらのボルト30のヒータは、複数設けら
れていてそれぞれ独立に温度調整器をもち、独立に温度
設定が可能である。これはノズルの幅方向における各区
分におけるスリットギャップを独立に任意に変化させる
ことが可能であることを意味する。表裏面も独立して制
御可能である。
【0044】本例で使用したノズルは、有効幅2000mmの
ノズルに105 mmピッチで18個の調整ボルトを取付けた。
これを表裏のノズルにそれぞれ取付け合計36個のボルト
に36個の温度調整器を配置した。これをシーケンサーで
個々に温度を設定した。
【0045】また、制御盤42のシーケンサー内には、18
個のボルトの温度設定値を記憶させテーブル化し、一度
に18個の指令が出るようにしてある。その一例を図5に
示す。図中、片側の9個の箇所における幅方向のスリッ
トギャップを制御する例を示す。縦軸の温度は電熱ヒー
タの設定温度を表わす。このテーブルを最大40枚記憶で
き、任意に呼出し可能とした。つまり、40通りのパター
ンから最適パターンを選択できるのである。
【0046】次に、操業中には、さらに上位の情報とし
て、目標付着量および被めっき鋼板の反り量、好ましく
は目標付着量、被めっき鋼板の反り量、ライン速度を取
り込み、これらのうちの少なくとも1つをパラメータと
して上記のテーブルから最適な温度設定を呼び出し自動
的にノズルに伝送できる。
【0047】これにより、板反りの大きい広幅材では表
裏でそれぞれ異なったプロフィールを伝送して反りの影
響をなくすプロフィールとしたり、付着量が多くエッジ
部のビルドアップを起こしやすい場合は、エッジ部がよ
りギャップが広がるようなパターンを伝送することによ
りビルドアップを抑制できた。
【0048】図6(a) は従来方法による鋼板の反りとス
リットギャップの幅方向分布を示すグラフであり、図6
(b) は本発明方法によるスリットギャップの幅方向プロ
フィールの幅方向分布を示すグラフである。本発明の場
合、鋼板形状に応じてスリットギャップを幅方向で独立
して変更している。図7(a) は、従来のスリットギャッ
プ非可変型ノズル、同(b) は本発明のスリットギャップ
可変型ノズルの結果を示すグラフである。
【0049】実施例2 本例は鋼板に共振を回避した条件下で一定量の反りを与
えることでその振動を可及的少とした状態で本発明を実
施する例を説明する。
【0050】図8に示すような溶融金属めっき系を考え
る。チャターマークの発生には鋼板を弦とみた時に発生
する弦振動、ロールの回転振動、ロールアームの固有振
動などの共振によるものと推定される。
【0051】そこで、簡便法として前述の数1を使った
計算により、ライン速度、鋼板サイズ、コレクトロール
押込量、ロール径の各条件での振動を算出した。板厚1
mm、板幅1000mmとした。
【0052】例えば、この鋼板サイズであれば、ライン
速度80mpm のときコレクトロールの押込量10〜20mmで鋼
板の弦振動数 (1.41Hz) に共振し、チャターマークが発
生することになる。よって、この速度で操業する場合は
コレクトロールの押込量を10mm以下または20mm以上で行
う必要がある。一方、図9(a) は押込み量と反り量との
関係を予めシミュレーションによって求めたグラフであ
る。図9(b) は反り量の説明図である。
【0053】したがって、例えば、この鋼板の反りの状
態がコレクトロール押込量と、反りの図9のグラフで表
せるとした時、共振領域のコレクト押込量10〜20mmを外
して、例えば5mmで操業したとすれば、反り量はおよそ
1.5 mmと推定できる。この推定反り量に対応したワイピ
ングノズルのプロフィールを表裏でそれぞれ選択すれば
より均一な付着量分布を得られる。
【0054】コレクト押込量の決定は、ラインオペレー
タが行えばよい。ただし、現状の条件で共振点の計算値
のみ表示させておき、オペレータが共振領域を外して、
コレクトロールの押込量を設定する。この時に設定され
たコレクトロールの押込量を取り込んで、反り量を再計
算し計算値をノズル制御盤に渡すことで、ノズルのプロ
フィール設定を行えるようにすればよい。
【0055】
【発明の効果】これまでの1つに固定されたスリットギ
ャップのプロフィールでは、極く限られた狭い範囲の条
件での鋼板製造においてめっき付着量分布を均一化する
ことができたが、全てを網羅するためには1つでは不可
能であり、交換を必要としていた。しかし、本発明によ
れば可変スリット式ガスワイピングノズルを使用するこ
とによりそのときどきの条件に適応した最適のプロフィ
ールを与え、めっき付着量分布を幅方向に均一化するこ
とが可能となった。また、プロフィールを予め記憶させ
必要に応じて呼び出すことにより迅速なノズルプロフィ
ールの変更が可能となった。
【0056】かくして、本発明によれば、幅方向におけ
るスリットギャップを操業中に変更することにより付着
量分布が改善され、被めっき鋼板のサイズ、材質を問わ
ず均一なめっき付着量分布を実現できる。これにより特
に今日のように被めっき鋼板サイズがしばしば変化する
ような操業を行う場合、以下のような利益が得られる。
【0057】溶融金属原単位の向上 付着量分布が均一にできることから必要最小限の溶融金
属の消費で済む。従って、金属原単位が向上する。
【0058】めっき鋼板の品質向上 溶融亜鉛めっき鋼板 (GI鋼板) においては、スパング
ル (結晶) 微細化処理時に幅方向の付着量分布が不均一
であれば付着量の多い部分のスパングルが相対的に大き
くなり品質が低下する。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼
板 (GA鋼板)においては付着量の多い部分と少ない部
分では相対的に合金化の度合いが異なるためやはり品質
の低下をまねく。
【0059】燃料原単位の向上 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 (GA鋼板) においては最低
の合金化度 (亜鉛めっき層への鉄の拡散の度合いを規
定) がおよそ決められている。従って、幅方向の付着量
分布においてめっき付着量の最も多い部分の合金化度が
規定以上必要になってくる。この場合めっき付着量が均
一であれば少ない加熱で最小の合金化度を狙って製造す
ることができ、燃料原単位が向上する。
【0060】さらに、特に、ワイピング時の鋼板の厚
み方向の振動を最小とするために被めっき鋼板の共振を
回避することで、ワイピング時のストリップの厚み方向
の振動が抑制でき、サザナミ模様が抑制でき表面外観品
質に優れた鋼板が製造可能となる。また、チャターマー
クの発生を防止でき、合金化亜鉛めっき鋼板の長手方向
の合金化処理むらが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) は、ガスワイピングノズルを使用しな
がら鋼板のめっき浴からの引き上げの状況を、図1(b)
はそのときの鋼板の幅方向の反り状況を示すそれぞれ模
式的説明図である
【図2】本発明において用いるガスワイピングノズルの
模式的断面図である。
【図3】プロフィールの一例を示す図である。
【図4】本発明において用いる制御系を示すフロー図で
ある。
【図5】片側ボルト9個の箇所における幅方向のスリッ
トギャップを制御する例を示す図である。
【図6】図6(a) は従来方法による鋼板の反りを、図6
(b) は本発明方法によるスリットギャップの幅方向プロ
フィールの幅方向分布を示すグラフである。
【図7】図7(a) 、(b) は、図6(a) 、(b) のそれぞれ
の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の鋼板の反りの矯正を示す模式図であ
る。
【図9】図9(a) は反り量と押込量の関係を示すグラフ
であり、図9(b) は反り量の説明図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続溶融金属めっきに際して、溶融金属
    めっき浴から連続的に引き上げられる被めっき鋼板に過
    剰に付着した溶融金属を所定の付着量に制御する方法に
    おいて、ガスワイピングノズルの幅方向のスリットギャ
    ップの各種プロフィールの中から被めっき鋼板の幅方向
    の付着量分布を均一にできる最適なプロフィールを、ガ
    スワイピング時の被めっき鋼板の反り量と目標付着量の
    2つをパラメーターとして選択し、幅方向の付着量分布
    を均一化するよう幅方向のスリットギャップを制御す
    る、溶融金属めっき鋼板の付着量制御方法。
  2. 【請求項2】 連続溶融金属めっきに際して、溶融金属
    めっき浴から連続的に引き上げられる被めっき鋼板に過
    剰に付着した溶融金属を所定の付着量に制御する方法に
    おいて、被めっき鋼板のライン速度、めっき浴中におけ
    る各ロールのロール径、鋼板幅寸法、板厚寸法を含むめ
    っき条件から、被めっき鋼板の共振発生条件を計算によ
    り求め、この共振発生条件を外した条件となるように、
    コレクティングロールの押込み量を設定するとともに、
    このときの押込み量と被めっき鋼板の反り量との関係を
    あらかじめシミュレーションで求めておき、このシミュ
    レーションによる関係を使って前記コレクティングロー
    ルの押込み量から、被めっき鋼板の反りの状態を推定
    し、そのとき推定された反り量のときの幅方向の付着量
    分布を均一にするワイピングノズルの最適なプロフィー
    ルを選択し、幅方向の付着量分布を均一化するよう幅方
    向のスリットギャップを制御する、溶融金属めっき鋼板
    の付着量制御方法。
  3. 【請求項3】 前記スリットギャップを操業中に任意に
    変更することが可能なガスワイピングノズルを使用する
    請求項1または2記載の溶融金属めっき鋼板の付着量制
    御方法。
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