JP3199865U - 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法 - Google Patents

振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3199865U
JP3199865U JP2015600049U JP2015600049U JP3199865U JP 3199865 U JP3199865 U JP 3199865U JP 2015600049 U JP2015600049 U JP 2015600049U JP 2015600049 U JP2015600049 U JP 2015600049U JP 3199865 U JP3199865 U JP 3199865U
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diaphragm
fiber
shellac
resin
natural
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2015600049U
Other languages
English (en)
Inventor
陽平 神
陽平 神
スーウァイ ヨング
スーウァイ ヨング
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Original Assignee
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd filed Critical Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
Priority to JP2015600049U priority Critical patent/JP3199865U/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3199865U publication Critical patent/JP3199865U/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R31/00Apparatus or processes specially adapted for the manufacture of transducers or diaphragms therefor
    • H04R31/003Apparatus or processes specially adapted for the manufacture of transducers or diaphragms therefor for diaphragms or their outer suspension
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R2231/00Details of apparatus or processes specially adapted for the manufacture of transducers or diaphragms therefor covered by H04R31/00, not provided for in its subgroups
    • H04R2231/001Moulding aspects of diaphragm or surround
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R2307/00Details of diaphragms or cones for electromechanical transducers, their suspension or their manufacture covered by H04R7/00 or H04R31/003, not provided for in any of its subgroups
    • H04R2307/029Diaphragms comprising fibres
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R2499/00Aspects covered by H04R or H04S not otherwise provided for in their subgroups
    • H04R2499/10General applications
    • H04R2499/11Transducers incorporated or for use in hand-held devices, e.g. mobile phones, PDA's, camera's
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R7/00Diaphragms for electromechanical transducers; Cones
    • H04R7/02Diaphragms for electromechanical transducers; Cones characterised by the construction
    • H04R7/12Non-planar diaphragms or cones

Abstract

【課題】石油資源の使用量を抑制でき、COの増加の抑制にも貢献でき、湿度や水分に対する耐性に優れるラウドスピーカ用の振動板を提供する。
【解決手段】スピーカ21用の振動板1は、繊維と樹脂を含んでいる。振動板の主材料は繊維であり、振動板は繊維を抄紙して作製されている。なお繊維には、天然繊維を含んでいる。そして、樹脂には、天然物由来の熱硬化性の樹脂を用いている。
【選択図】図1

Description

本技術分野は、各種音響機器や映像機器に使用される振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法に関する。
従来のラウドスピーカ用の振動板は、叩解されたクラフトパルプと、樹脂とを含んでいる。クラフトパルプは、主に針葉樹から製作されている。振動板前駆体は、叩解されたクラフトパルプを抄紙し、その後で乾燥・プレス成形をすることによって製作している。振動板前駆体の弾性率は、約1840MPaである。そこで、乾燥・成形した前駆体振動板へ、樹脂を含浸することにより、大きな弾性率を有する振動板が形成される。
振動板前駆体へ含浸する樹脂には、たとえば不飽和ポリエステルなどを用いることができる。そして、スチレンモノマーに不飽和ポリエステル樹脂を溶かした溶液中へ乾燥した振動板前駆体を浸漬している。このように処理することによって、不飽和ポリエステル樹脂を振動板前駆体へ含浸している。そして、樹脂を含浸した振動板前駆体を加熱することによって、溶剤が揮発して、振動板が完成する。なお、このようにして製作された振動板の弾性率は、約3060MPaである。
この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開昭52−91418号公報
スピーカ用の振動板は、繊維と、天然物由来の熱硬化性の樹脂を含んでいる。振動板の主材料は繊維であり、振動板は繊維を抄紙して作製されている。なお繊維には、天然繊維を含んでいる。そして、天然繊維は、天然物由来の物質である。さらに、樹脂も天然物が原料であるので、石油資源の使用量を抑制できる。また、COの増加の抑制にも貢献できる。また、振動板は、樹脂を含んでいるので、湿度や水分に対する耐性に優れる。
図1は、本発明の実施の形態におけるラウドスピーカの断面図である。 図2Aは、本発明の実施の形態における振動板の表層部での断面を示した概念図である。 図2Bは、本発明の実施の形態における振動板の表面の走査線電子顕微鏡(SEM)観察図である。 図3Aは、本発明の実施の形態における振動板の断面の概念図である。 図3Bは、本発明の実施の形態における振動板の断面のSEM観察図である。 図4は、本発明の実施の形態における振動板の要部の概念図である。 図5は、変性セラックを用いた場合の振動板の表面のSEM観察図である。 図6は、本実施の形態における振動板の製造フローチャートである。 図7Aは、ポリエステルを含浸した場合の振動板の表層部での断面を示した概念図である。 図7Bは、ポリエステルを含浸した場合の振動板の表面のSEM観察図である。 図8は、本実施の形態における移動体装置の概念図である。
従来の振動板に含浸する樹脂は、不飽和ポリエステルのように、石油から作られている。さらに、不飽和ポリエステルを振動板へ含浸する際に、不飽和ポリエステルを溶かす溶剤も、石油から作られている。ところが、石油は、あとわずか30年で、枯渇するとも言われている。したがって、石油の使用量の削減が課題である。そこで、石油を原料とする化学材料の使用量の削減が必要となっている。
本実施の形態における振動板を用いたラウドスピーカについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態によるラウドスピーカの断面図である。ラウドスピーカ21は、振動板1と、エッジ22と、フレーム23と、磁気ギャップ24Aを有する磁気回路24と、ボイスコイル25とを含んでいる。なお、振動板1を上から見た場合の形状は、円形、矩形、トラック形、楕円形などでも良い。
振動板1の外周部には、エッジ22が連結されている。エッジ22の外周部は、フレーム23の外周端へ連結されている。すなわち、振動板1はエッジ22を介してフレーム23へと連結されている。なお、振動板1は、ツィータコーン、サブコーン、ダストキャップなどを含んでもかまわない。
フレーム23の中央の下端部には、磁気回路24が結合されている。ボイスコイル25の第1端は、振動板1の中央部に固定されている。一方、ボイスコイル25の第2端は、磁気ギャップ24Aに挿入されている。
なお、図1に示す磁気回路24は、外磁型であるが、磁気回路24は、内磁型や、内磁と外磁とを組み合わせて構成してもかまわない。
外磁型である磁気回路24は、磁石24Bと、ヨーク24Cと、プレート24Dとを含んでいる。磁石24Bはヨーク24Cとプレート24Dとの間に挟まれるように配置されている。そして、プレート24Dとヨーク24Cとが対向する位置に、磁気ギャップ24Aが形成されている。
図2Aは、振動板1の表層部での断面を示した概念図である。図2Bは、振動板1の表面のSEM観察図である。振動板1は、抄紙によって作製されている。振動板1は、繊維2と樹脂3を含んでいる。繊維2は、振動板1の主材料であり、樹脂3は添加物である。そして、樹脂3は、繊維2へ付着している。なお、繊維2には、天然繊維2Aを含むことが好ましい。樹脂3は、天然物に由来し、かつ熱硬化性であることが好ましい。樹脂3には、たとえば、セラック3Aを用いることができる。なお図2Bは、樹脂3として未変性のセラックを用いた場合の振動板1の表面を観察したSEM写真である。
以上のように、天然繊維2Aと樹脂3の原料は、共に天然物である。この構成により、振動板1は、石油資源の使用量を削減できる。その結果、石油資源の枯渇の抑制に貢献できる。さらに、石油の精製や、石油由来の合成樹脂を製造する過程で発生するCOの排出量も抑制できる。さらに、振動板1は、樹脂3を含んでいるので、湿度や水分に対する耐性が優れる。なお、後述するように、繊維2は、天然繊維と合成繊維の混合物でもかまわない。
次に、天然繊維2Aについて、さらに詳しく説明する。ガラス繊維等の無機材料を用いた振動板は、一般的に埋め立てて廃棄することが必要である。一方、振動板1には、天然繊維2Aを含む繊維2を用いている。天然繊維2Aの原材料は、木(竹も含む)や草などであり、天然繊維2Aは、天然物に由来している。したがって、振動板1は、焼却できる。その結果、埋め立てる廃棄物を減量できる。さらに、振動板1を焼却した場合、木や草などの成長過程で空気中から吸収した二酸化炭素が、空気中へ戻るだけである。したがって、天然繊維2Aを含む振動板1を焼却しても、新たな二酸化炭素の増加を抑制できる。したがって、地球環境の破壊の抑制に貢献できる。
天然繊維2Aの繊維長は、0.8mm以上で、かつ3mm以下であることが好ましい。天然繊維2Aの繊維長が0.8mm未満である場合、天然繊維2Aの強度は小さい。その結果、振動板1の剛性率は小さい。天然繊維2Aの繊維長が0.8mm以上であるので、振動板1の弾性率を大きくできる。一方、天然繊維2Aの繊維長が、3mmを超えた場合、天然繊維2Aを混ぜて抄紙するには、天然繊維2A同士の絡み合いが多過ぎる。その結果、振動板1中での天然繊維2Aの分散性が低下する。そこで、天然繊維2Aの繊維長を3mm以下とすることによって、振動板1の外観不良を抑制できる。
振動板1には、非木材系の天然繊維2Aを用いることが好ましい。この構成により、木材資源を保全できる。なお、非木材系の繊維の原材料には、たとえば、竹、笹、ケナフ、ジュート、バガス、マニラ麻、ガンピなどを用いることができる。竹、ケナフ、ジュート、バガスは、生育期間が短い。したがって、振動板1の原材料には、特に竹、ケナフ、ジュート、バガスなどを用いることが好ましい。このように、生育期間が短い原材料を用いることにより、森林資源の枯渇を抑制でき、森林の保全にも貢献できる。つまりこれらの原材料を振動板1に使用することによって、環境への負荷を小さくできる。
特に、天然繊維2Aとしては、竹繊維を用いることが好ましい。竹繊維は、軽くかつ、高い硬度を有する。従って竹繊維を用いた振動板1は、軽く、かつ大きな弾性率を有する。さらに、振動板1は、大きな内部損失も有している。その結果、振動板1が再生する音は、澄んでおり、迫力もある。
一般に、竹は生後50日ほどで成長する。したがって、振動板1には、生後2ヶ月以上を経過した竹の繊維を用いることが好ましい。このように、竹は、非木材繊維の中でも特に生育が早く、繁殖力も著しい。針葉樹の生育期間が40〜60年であるのに比べて、竹の育成期間は1年未満であり、非常に短い。生後1年以上の竹の伐採を続けても、竹林は約1年で伐採時と同程度の規模にまで戻っている。したがって、竹繊維は、振動板1の原料として継続的かつ、安定的に入手できる。また、生後1年以上の竹を伐採することにより、竹の生態系が乱れることを抑制できる。その結果、竹を振動板1の原材料として使用することは、環境破壊の抑制に貢献できる。そのため、天然繊維2Aは、竹齢が1年以上を経過した竹の繊維であることが、さらに望ましい。
また、生後1年を経過した竹の繊維の特性は、安定している。したがって、さらに望ましくは、振動板1には、生後1年以上を経過した竹の繊維を用いる。この構成により、振動板1は、弾性率や内部損失などの特性値が安定する。
竹の繊維は、リグニンを含んでいる。竹の繊維に含まれるリグニンの含有率が20重量%を超える場合、竹繊維は、その表面に過度のリグニンを含有している。過度のリグニンは、天然繊維2A同士の水素結合を阻害し、天然繊維2A同士の結合力を小さくする。したがって、リグニンの含有量が20%を超える竹繊維を用いた場合、振動板1の強度が不足する。また、リグニンの含有量が20重量%を超える竹繊維は、抄紙によって、振動板1を成形することが困難である。そこで、竹の繊維における、リグニンの含有率が20重量%以下であることが望ましい。この構成により、振動板1の内部損出を高くできる。
振動板1には、木材系の天然繊維2Aを用いることもできる。木材系の天然繊維2Aの原材料は、針葉樹、広葉樹のいずれでもかまわない。振動板1は、木材系の天然繊維2Aを用いることにより、高い内部損失を有する。その結果、振動板1は、周波数音圧特性にピーク点やディップ点の発生を抑制できる。したがって、振動板1の周波数音圧特性が良い。
なお、振動板1が要求される音質に応じて、上記材料の中から1種、あるいは2種以上の天然繊維2Aを選択して、振動板1を製作してもかまわない。
図3Aは、本発明の実施の形態における振動板1の断面の概念図である。図3Bは、振動板1の断面のSEM観察図である。図4は、振動板1の要部の概念図である。なお、図4は、図3A、図3Bに示す内層部1Bの一部を拡大して示している。繊維2は、天然繊維2Aに加えて、さらに補助繊維2Bを含んでもかまわない。補助繊維2Bには、微細繊維を含むことが好ましい。微細繊維は、天然繊維2A同士を結び付けるバインダーとして働く。すなわち、微細繊維は、天然繊維2Aと絡み合い、天然繊維2A同士の結合力を強くしている。したがって、振動板1の弾性率を大きくできる。また、補助繊維2Bは、天然繊維2A間の隙間に入り込むことができる。その結果、振動板1のピンホールを抑制できるので、振動板1の音圧を大きくできる。
微細繊維には、カナダ標準濾水度の小さな天然繊維2Aを含むことが好ましい。なお微細繊維の原料には、木材、非木材のいずれを用いてもかまわない。微細繊維の原料に木材を用いる場合、針葉樹や広葉樹などを用いることができる。一方、微細繊維の原料に非木材を用いる場合、竹、ケナフ、麻、ジュート、バガスなどを用いることができる。微細繊維は、たとえばミキサー、ビーター、リファイナー、ガラスビーズなどの媒体を用いる粉砕機、圧力式ホモジナイザー、一軸、二軸または多軸混練機などによって製作できる。なお、微細繊維の繊維長は、0.8mm以下であることがこのましい。この構成により、さらに振動板1の弾性率を大きくできる。
なお、微細繊維のカナダ標準濾水度は、200ml以下であることが望ましい。この構成により、振動板1の弾性率は、さらに大きくなる。また、振動板1のピンホールの発生は、さらに抑制できる。
また、微細繊維には、バクテリアセルロースを含んでもかまわない。バクテリアセルロースは、バクテリアが生成するナノファイバである。バクテリアセルロースを生成するバクテリアには、たとえば、酢酸菌を用いることができる。なお、バクテリアセルロースを生成するバクテリアは、酢酸菌に限られない。例えば、アセトバクターアセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクターキシリナム(Acetobacter xylinum)、アセトバクターランセンス(Acetobacter rancens)、ザルチナベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウムキシロイヂス(Bacterium xyloides)などのバクテリアを用いることもできる。
微細繊維の添加量が、繊維2の総重量に対して、1重量wt%未満である場合、微細繊維の量が少ないので、振動板1は弾性率が小さい。そこで、微細繊維は、繊維2の総重量に対して、1重量wt%以上の割合で添加することが望ましい。この構成により、振動板1の弾性率を大きくできる。
一方、微細繊維の添加量が、繊維2の総重量に対して、30重量wt%を超えている場合、抄紙をする際のスラリー中の微細繊維の量が多すぎる。このようなスラリーを抄紙した場合、微細繊維は、抄紙網の網の目を詰まらせる。その結果、振動板1を抄紙する際に振動板1から水分を脱水する時間が長くなる。以上により、振動板1の生産性が低下する。そこで、微細繊維の添加量は、繊維2の総重量に対して、1重量%以上、30重量%以下の割合であることが望ましい。この構成により、振動板1の生産性が良い。
補助繊維2Bには、合成繊維を含んでも良い。合成繊維には、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、アラミド、ビニロン、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを用いることができる。そして、振動板1へ要求される音質に応じて、上記樹脂材料の中から、1種、あるいは2種以上の材料を選択して、天然繊維2Aへ添加する。なお、合成繊維の添加量は、繊維2の総重量に対して、1重量%以上、30重量%以下の割合であることが望ましい。
たとえば、ポリエステル繊維を用いた場合、後述する加熱プレスの際にポリエステル繊維は溶融する。この構成により、さらに振動板1の弾性率を大きくできるので、振動板1の再生帯域は広くなる。ポリオレフィン繊維やアクリル繊維を用いた場合、振動板1の内部損失が大きくなる。したがって、振動板1の歪みを低減できる。アラミド繊維を用いた場合、振動板1の耐熱が向上する。さらに、振動板1の弾性率も大きくできる。したがって、振動板1の信頼性を高くできる。そして、ビニロン繊維を用いた場合、振動板1の弾性率は大きい。レーヨン繊維やナイロン繊維を用いた場合、振動板1の耐熱が向上する。PEN繊維を用いた場合、振動板1の弾性率と内部損失をともに大きくできる。
また、補助繊維2Bには、叩解した合成繊維を用いることが好ましい。この構成により、合成繊維の表面積が大きくなる。その結果さらに、合成繊維と天然繊維2Aとが、互いに絡みやすくなる。したがって、振動板1の弾性率をさらに大きくできる。
振動板1は、強化材4を1種以上含むことが好ましい。なお、強化材4には、各種のフィラーを用いることができる。フィラーには、たとえばマイカ、プラントオパール、ガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム、珪藻土、タルク、水酸化アルミニウム、炭化された天然繊維などを用いることができる。振動板1は、強化材4を含むことにより、弾性率を大きくできるので、振動板1の再生帯域は広くなる。
強化材4にマイカを用いる場合、マイカのアスペクト比は、大きいことが好ましい。この構成により、さらに剛性の大きい振動板1を得ることができる。なおマイカは、天然マイカ、合成マイカのいずれでもかまわない。
強化材4には、プラントオパールを含んでもかまわない。プラントオパールの原材料には、たとえば、稲、竹、ススキ、ヒエ、ヨシ、トウモロコシなどを用いることができる。この構成により、天然由来の材料を用いるので、鉱物資源の枯渇の抑制に貢献できる。
強化材4には、金属繊維を含んでもかまわない。金属繊維には、たとえば、ステンレス、アルミニウム、セラミックなどを用いることができる。この構成により、振動板1の弾性率が大きくなり、振動板1の再生帯域を広くできる。
なお、強化材4をあらかじめシラン処理して用いることが好ましい。天然繊維2Aとシラン処理された強化材4との親和性は高い。したがって、振動板1の弾性率は、さらに大きくできる。
更に、振動板1へ樹脂ラミネートや、樹脂フィルムを貼り付けても良い。この構成により、振動板1の音質を向上できる。なお、樹脂フィルムは、振動板1の表側もしくは裏側の少なくともいずれか一方へ貼り合わされる。樹脂フィルムには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEN、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)などを用いることができる。
更に、乾燥した振動板1に対して難燃剤を含浸することが好ましい。あるいは、難燃剤は、抄紙時に添加してもかまわない。なお、難燃剤には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、無機系難燃剤などを用いることができる。臭素系難燃剤としては、たとえば、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、デカブロモジフェニルエーテル(Deca−BDE)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などを用いることができる。リン系難燃剤としては、トリクレジルホスフェート、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩類などを用いることができる。アンチモン系難燃剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモンソーダなどを用いることができる。無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを用いることができる。
次に、樹脂3について、詳しく説明する。図2A、図2Bに示す樹脂3としては、セラック3Aを用いることが好ましい。セラック3Aはラックカイガラ虫が分泌する樹脂状物質が原料である。セラック3Aは、原料の樹脂状物質を熱溶融法、ソーダ法、溶剤抽出法などで精製することによって製作できる。セラック3Aは、天然物由来であるため、無害であり、環境への負荷も小さい。また、セラック3Aは、耐水性、耐油性が良い。さらにセラック3Aは、成形性も優れている。
セラック3Aは、未変性セラック、変性セラックのいずれか、あるいはこれらを混合して使用してもかまわない。なお、セラック3Aとしては、たとえば、未変性セラックを硫酸によって変性した変性セラックを用いることができる。樹脂3に未変性セラックを使用した場合と、樹脂3に変性セラックを使用した場合の振動板1の特性を(表1)に示している。なお、これらの振動板1の特性と比較するために、従来の振動板と、天然繊維2Aだけを抄紙した振動板前駆体の特性も、併せて(表1)に示している。
Figure 0003199865
(表1)に示したように、未変性セラックを用いたNo.3の振動板1の弾性率は、天然繊維2Aだけで形成したNo.2の振動板前駆体に比べて大きい。さらに、未変性セラックを用いた振動板1の弾性率は、従来の振動板に比べても大きい。この構成により、No.3の振動板1は、不要な歪みの発生を抑制できる。また、振動板1の再生帯域は広い。さらに、強化材4の配合量を削減できる。その結果、振動板1の比重を小さくできるので、振動板1は軽い。したがって、振動板1を用いたラウドスピーカ21が出力する音の音圧を大きくできる。
一方、変性セラックを用いたNo.4の場合、振動板1の内部損失は、従来の振動板(No.1)や天然繊維2Aだけで形成した場合の振動板前駆体(No.2)の内部損失に比べて大きい。したがって、振動板1は、音圧周波数特性のピークやディップを抑制できる。
図5は、変性セラックを用いた場合の振動板1の表面のSEM観察図である。図2Aに示したように、変性セラックは、図2Bに示す未変性セラックと同様に、天然繊維2A間を橋渡しするようにして、天然繊維2Aへ付着している。この構成により、天然繊維2A同士は、強く結合している。
ところが、(表1)に示したように、変性セラックを用いた振動板1(No.4)の弾性率は、従来の振動板(No.1)や天然繊維2Aだけで形成した場合の振動板前駆体(No.2)の弾性率に比べて小さい。これは、変性セラック自身が未変性セラックに比べて柔らかいためであると考えられる。そこで、セラック3Aには、未変性セラックと変性セラックとの混合物を用いることが好ましい。この構成により、振動板1の弾性率を大きくできる。この場合、未変性セラックと変性セラックの配合量を適宜変えれば、振動板1は、容易に弾性率と内部損失を所望の値にできる。
なお、天然繊維2Aには、弾性率の大きな材料を用いることが好ましい。たとえば、竹繊維や微細繊維は、木材系繊維に比べて弾性率が大きい。したがって、天然繊維2Aに竹の繊維を用いれば、変性セラックによる弾性率の低下を補うことができる。さらに、弾性率を大きくできる強化材4を添加することが好ましい。この構成により、振動板1は、変性セラックによる弾性率の低下を補うことができる。
次に、振動板1の製造方法について、図6も参照しながら説明する。図6は、振動板1の製造フローチャートである。
振動板1の製造方法は、叩解工程12と、予備成形工程13と、熱プレス工程16とを含んでいる。なお、予備成形工程13は、抄紙工程13Aと、塗布工程13Bを含んでいる。さらに、振動板1の製造方法は、加工工程17を含んでもかまわない。
叩解工程12では、天然繊維2Aの基となる原材料11を叩解機へ投入し、叩解機によって原材料11を叩解して、天然繊維2Aを製作している。なお、叩解機には、ディスクリファイナー、ビーター等を用いることができる。なお、叩解された天然繊維2Aの叩解度(カナダ標準濾水度による叩解度)は200ml以上、700ml以下の範囲であることが好ましい。叩解度が200ml未満の天然繊維2Aを用いた場合、抄紙時の濾水速度が遅く、振動板1の生産性は、著しく低くなる。一方、叩解度が700mlを越える天然繊維2Aを用いた場合、天然繊維2A同士の絡み合いが低くなる。したがって、振動板1の弾性率が小さくなる。
そこで、天然繊維2Aの叩解度は、200ml以上、700ml以下であることが好ましい。この構成により、振動板1の弾性率を大きくできる。また、抄紙工程13Aにおいて、天然繊維2Aの分散不良を抑制できるので、振動板1は、場所による材料の密度のばらつきを抑制できる。
予備成形工程13では、天然繊維2Aと樹脂3を含む予備成形物15を作製している。なお、予備成形物15は、乾燥・成形前の状態の振動板1である。
そのために、抄紙工程13Aでは、たとえば、以下のように抄紙することによって、抄紙体を作製している。天然繊維2Aを含む繊維2を水へ投入して、スラリーを作製する。次に、抄紙網の上に、スラリーを供給する。スラリー中の水分は、抄紙網を通って、抄紙網の下側へと流れ落ちる。なお、このとき、抄紙網の下側から、水分を真空吸引してもよい。この結果、天然繊維2Aが抄紙網上に堆積して、抄紙体が形成される。なお、スラリーを作製する際に、必要に応じて、スラリーへ強化材4や補助繊維2Bなどの充填材、防水剤、顔料などを適宜配合することが好ましい。この構成により、所望の音質の振動板1を製造できる。なお、防水剤としては、フッ素樹脂を用いることができる。
予備成形物15は、塗布工程13Bにおいて、抄紙体へ樹脂3を塗布することにより製作することができる。なお、樹脂3は、たとえばスプレーによって、抄紙体へ塗布することが好ましい。この場合、樹脂3を溶剤へ溶かした溶解液を抄紙体へ吹き付けることが好ましい。抄紙体は乾燥していないので、非常に崩れやすい。しかし、樹脂3は、抄紙体へ吹き付け塗布されるので、予備成形物15が崩れることを抑制できる。
樹脂3としてセラック3Aを用いた場合、溶剤としては、アルコール系溶剤を用いることができる。なお、アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、メタノール、エタノールなどを用いることができる。あるいは、溶剤としてはアルカリ水を用いても良い。これらの溶剤は、安全性が高く、非常に取り扱いが容易である。
なお、塗布工程13Bでは、溶解液に抄紙体を浸漬してもかまわない。この場合、塗布工程13Bの工数を短くできるので、振動板1の生産性が向上する。
あるいは、樹脂3は、固形の状態で添加してもかまわない。すなわち、抄紙体の表面へ粉状の樹脂3を塗布する。この場合、溶剤が不要となる。さらに、溶解液を準備する工程も不要である。したがって、振動板1の生産性が向上する。
なお、抄紙体へ樹脂3を塗布する前に、抄紙体を生乾きの状態にまで乾燥してもよい。この構成により、抄紙体へ樹脂3を塗布する際に、抄紙体が崩れることを抑制できる。
熱プレス工程16では、熱プレスによって、予備成形物15を乾燥・成形することにより、振動板1を完成させている。すなわち、熱プレス工程16では、成形金型によって予備成形物15を所定の寸法となるように、圧縮している。また、成形金型を加熱することにより、樹脂3を加熱して、硬化している。このとき、予備成形物15に含まれた水分も蒸発させている。なお、成形金型の温度は、水が蒸発する温度以上であり、かつ樹脂の硬化温度以上であることが好ましい。
予備成形物15を乾燥・成形する際、樹脂3の温度上昇に伴って、樹脂3は柔らかく(粘性が小さく)なる。その結果、樹脂3が、天然繊維2Aに付着し、さらに天然繊維2A同士の間の隙間が樹脂3で埋められて、天然繊維2A同士が橋渡しされる。そして、予備成形物15の温度を、樹脂の硬化温度以上に上げることにより、樹脂3は硬化する。この構成により、軟化した樹脂3と天然繊維2Aとは、ともに成形金型の表面に沿った形に成形される。つまり、振動板1は、成形金型の形状と寸法に成形され、かつ振動板1の表面には、形成金型の表面形状が転写される。
樹脂3は、熱硬化性樹脂であるので、樹脂3は、成形金型によって加熱されて、一旦軟化する。そして、樹脂3の温度が、樹脂3の軟化点温度を超えてさらに上昇すると、樹脂3は硬化する。なお、成形金型は、樹脂3の硬化が完了するまでの間、予備成形物15への加圧を継続している。
セラック3Aを溶解する溶剤の気化温度は、セラック3Aの硬化温度よりも低い。また、成形金型の温度は、セラック3Aの硬化温度よりも高くする必要がある。したがって、樹脂3がセラック3Aである場合、セラック3Aが軟化・溶融するよりも前に、溶剤は気化する。すなわち、セラック3Aが溶融を開始する温度では、既に溶剤は蒸発している。なお、溶剤としては、アルコールを用いることが好ましい。アルコールが蒸発する温度は、水よりも低い。したがって、アルコール溶剤が成形金型と接触した瞬間に、溶剤は気化する。
溶融状態のセラック3Aは、溶解液の状態に比べて粘度が非常に大きいので、成形金型によって加圧されても、流動しにくい。したがって、セラック3Aは、振動板1の内層部1Bにまで到達しにくい。そのため、図3A、図3Bに示すように、セラック3Aは、振動板1の表層部1Aに集中している。すなわち、振動板1の厚み方向において、振動板1の内層部1Bは、表層部1Aに比べて、セラック3Aの含有量が少ない。そして、セラック3Aの多くは、振動板1の表層部1Aの表面近傍に集中している。その結果、表層部1Aの表面近傍には、セラック3Aによるスキン層1Cが形成される。なお、スキン層1Cでは、図2A、図2Bや図5に示すように、天然繊維2A同士の間の隙間が、セラック3Aによって埋められた箇所が多数形成されている。
この構成により、天然繊維2A同士がセラック3Aによって強固に接着されている。したがって、振動板1の剛性を大きくできる。また、振動板1の表面はセラック3Aによってほぼ覆われているので、振動板1は、湿度や水分に対する耐性に優れる。そのため、抄紙工程13Aで、スラリーへ添加するフッ素樹脂などの防水剤の添加量を削減できる。その結果、天然繊維2Aの疎水化を抑制できるので、フッ素樹脂による天然繊維2A間の水素結合の阻害が抑制でき、振動板1の剛性を高くできる。
さらに、内層部1Bまでセラック3Aを充填した場合に比べて、振動板1は軽い。さらに、内層部1Bは、セラック3Aの充填度が低いので、振動板1は、内部損失が低下することを抑制できる。この構成により、振動板1は、軽く、かつ内部損失が大きい。
スキン層1Cは、図3A、図3Bに示すように、振動板1の両面に形成することが好ましい。この構成により、さらに振動板1の剛性を大きくできる。なお、スキン層1Cは、振動板1の片面のみに設けてもかまわない。
そして、加工工程17では、乾燥・成形した振動板1の不要な部分をトリミングしている。なお、塗布工程13Bは抄紙工程13Aと熱プレス工程16との間で行われる。しかし、塗布工程13Bは、熱プレス工程16と加工工程17との間で行っても良い。熱プレス工程16の後に塗布工程13Bを実施する場合、塗布工程13Bの後に、乾燥工程を設ける。この場合、塗布工程13Bでの振動板1は、既に振動板1として形成されている。したがって振動板1は、十分な強度を有している。その結果、抄紙体が崩れることや、変形の発生などを抑制できる。
以上のようにして、製造された振動板1の密度は、0.25g/cm以上、かつ1.00g/cm以下であることが好ましい。そして、天然繊維2Aや、樹脂3の充填率などを、適宜変更することによって、容易に所望の密度の振動板1を製作できる。振動板1の密度が0.25g/cm未満の場合、振動板は、弾性率が著しく低い。したがって、振動板1の強度不足によって、高域での面鳴きなどのような異音が発生する可能性を有している。一方、振動板1の密度が、1.00g/cmを超えた場合、振動板1の密度は樹脂で作製された振動板と同等となる。このような振動板1は、音圧特性が低い。そこで、振動板1の密度を0.25g/cm以上、かつ1.00g/cm以下の範囲に調整することにより、振動板1は、硬さと、軽さとを兼ね備える。
ただし、樹脂3の配合量は、振動板1中の樹脂3の配合比(重量比率)が、1重量%以上となるように調整することが望ましい。樹脂3の配合比が1%未満である場合、振動板1の音響特性に対し、樹脂3を添加したことによる効果は顕著に現れない。
一方、樹脂3の配合量が多すぎる場合、振動板1の弾性率が小さくなる。これは、樹脂3を溶かす溶剤が、天然繊維2A同士の水素結合を阻害するためであると考えられる。そこで、樹脂3の配合量は、振動板1中の樹脂3の配合比が、50重量%以下となるように調整することが望ましい。なお、さらに望ましくは、樹脂3の配合量は、振動板1中の樹脂3の配合比が、40重量%以下となるように調整する。この構成により、樹脂3を溶かす溶剤が、天然繊維2A同士の水素結合を阻害することを抑制できる。したがって、振動板1の弾性率を大きくできる。また、樹脂3の配合比を50%重量以下とすることによって、振動板1の比重の増加を抑制できる。したがって、迫力ある音圧を実現できる振動板1やラウドスピーカ21を得ることができる。
以下に、具体的な試作例によって、本実施の形態による効果を説明する。まず、上記の製造方法によって、(表2)に示すように、セラック3Aを含む振動板1のサンプルA、Bを試作した。サンプルA、Bは、未変性セラックであるセラック3Aと天然繊維2Aのみで製作した振動板1である。これらのサンプルは、抄紙体の両面にセラック3Aの溶解液をスプレーによって塗布して作製している。セラック3Aを溶解する溶剤には、エタノールを用いた。なお、サンプルAとサンプルBは、天然繊維2Aの含有量とセラック3Aの含有量の比率が異なっている。サンプルAでは、天然繊維2Aが60重量%を占めており、セラック3Aが残りの40重量%を占めている。サンプルBでは、天然繊維2Aが50重量%を占めており、セラック3Aが残りの50重量%を占めている。
なお、比較のため、天然繊維2Aとポリエステル系樹脂のみでサンプルCを製作している。さらに、ポリエステル系樹脂は、加熱プレス後の抄紙体へ含浸させている。そして、このようにして作製された各サンプルの弾性率、内部損失、音速の値を測定している。その結果、(表2)に示すように、サンプルA、Bの振動板は、サンプルCの振動板に比べて、弾性率、音速が向上した。
Figure 0003199865
また、セラック3Aを40重量%含むサンプルAに比べて、セラック3Aを50重量%含むサンプルBの方が、振動板1の弾性率が小さいことも確認している。これは、過剰なセラック3Aの塗布が、天然繊維2Aの水素結合を阻害していることを裏付けていると言える。さらに、セラック3Aを50重量%含むサンプルBの振動板1の弾性率は、サンプルCの弾性率に近い。したがって、セラック3Aの配合比率は、50重量%以下であることが望ましい。
図7Aは、ポリエステルを含浸した場合の振動板の表層部での断面を示した概念図である。図7Bは、サンプルCの振動板の表面のSEM観察図である。なお、図7Bは、図2Bと同一の倍率で観察された図である。ポリエステル系樹脂は、主に天然繊維2Aの表面に付着している。一方、セラック3Aは、図2A、図2Bや図5に見られるように、天然繊維2Aの表面に付着することに加えて、天然繊維2A同士の間の隙間を埋めている。さらに、サンプルAおよびサンプルBの振動板1の表層部1Aには、図3A、図3Bに見られるような、セラック3Aによるスキン層1Cが形成されていることも確認できている。
次に、セラック3Aとして、未変性セラックと変性セラックとの配合比を変えた場合の振動板1の特性変化について説明する。(表3)に示すサンプルDからサンプルJは、すべてセラック3Aと天然繊維2Aのみで製作した振動板である。サンプルDからサンプルIは、変性セラックと未変性セラックとの混合溶液を抄紙体へ塗布している。なお、サンプルJの振動板1の樹脂3は、変性セラックのみである。なお、これらのサンプルは、サンプルBと同じ製造方法によって作製されている。また、セラック3Aの配合比率もサンプルBと同一である。
そして、これらのサンプルの弾性率と内部損失の値を測定している。その結果、(表3)に示すように、未変性セラックの含有率が増加するにしたがって、振動板1の弾性率が大きくなっている。一方、変性セラックの含有率が増加するにしたがって、振動板1の内部損失が大きくなっている。
Figure 0003199865
特に、未変性セラックよりも変性セラックを多く含む場合に、振動板の内部損失を大きくする効果が大きいことがわかる。
次に、振動板1の他の例の製造方法について簡単に説明する。図6に示すように、予備成形物15は、抄紙工程13Aにおいて、天然繊維2Aと粉状のセラックとを混ぜて、抄紙して製作してもかまわない。この場合、予備成形工程13には、塗布工程13Bを設ける必要がないので、生産性が良好である。なお、粉状のセラックの粒径は1マイクロメートル以上、500マイクロメートル以下とすることが望ましい。セラックの粒径が、1マイクロメートル未満である場合、粉状のセラック同士の凝集力が大きくなり、水中にセラックを均一に分散させることが困難である。また、粉状のセラックの粒径が、500マイクロメートルを超えると、加熱プレス時に樹脂が溶融されにくくなり、十分な補強効果を得られないだけではなく、分散不良や外観不良を招く虞がある。
図8は、本実施の形態における移動体装置の概念図である。移動体装置は、たとえば、自動車31である。自動車31は、本体部32、ラウドスピーカ21を含んでいる。また、本体部32には、ドア33を含んでもかまわない。さらに、自動車31は、ミラーハウジング34を含むことが好ましい。ミラーハウジング34は本体部32の外周の側面部に設置されている。さらに、自動車31には、さらにエンジンあるいはモータ、タイヤなどの駆動部を含むことが好ましい。そして、本体部32は、駆動部が発生する動力によって移動する。
ラウドスピーカ21は、本体部32内に搭載できる。ラウドスピーカ21は、たとえば、後方確認用のミラー34Aが収納されたミラーハウジング34内などに収納することが好ましい。この場合、ラウドスピーカ21は、ミラーハウジング34内に収納されることによって、間接的に本体部32内に搭載されている。そして、ラウドスピーカ21は、警報音を出力し、歩行者にハイブリッド車や電気自動車などの車両の接近を警告できる。
この場合、ラウドスピーカ21は雨水などに触れる場所に搭載されている。ところが、ラウドスピーカ21にセラックが塗布された振動板1を用いた場合、振動板1は耐水性が良い。その結果、別途、振動板1へフッ素樹脂などをコーティングする必要がない。したがって、振動板1は軽いので、音圧レベルも大きい。この構成により、ラウドスピーカ21から放出された警報音は、歩行者へ聞こえやすい。また、図1に示す磁気ギャップ24Aの磁束は、小さくてもかまわない。したがって、磁石24Bを小さくできる。その結果、自動車31を軽くすることに貢献できるので、自動車31の燃費向上にも貢献できる。
以上のように、ラウドスピーカ21は、自動車31において、雨水に触れるような場所に設置することができる。したがって、ラウドスピーカ21は、たとえば、ドア33内や、エンジンルーム内、あるいはモータールーム内などにも収納することができる。
ラウドスピーカ21の設置場所は、上記に限られない。たとえば、ラウドスピーカ21は、天井、インパネ、サンバイザー、シート、リアトレイ等に組込むことができる。さらに、ラウドスピーカ21は、ヘッドレスト、アームレスト、コックピット、ミラー、メータ、ステアリング、ピラー、ドア等に組み込むこともできる。なお、ラウドスピーカ21は、カーオーディオ、あるいはカーナビゲーションの一部としても使用できる。
なお、移動体装置は自動車31に限られない。移動体装置は、例えば、自転車、オートバイ、バス、電車、船舶や、飛行機等であってもかまわない。
本発明のスピーカ用の抄紙振動板は、電子機器や、移動体装置等に搭載されるスピーカに適用できる。
1 振動板
1A 表層部
1B 内層部
1C スキン層
2 繊維
2A 天然繊維
2B 補助繊維
3 樹脂
3A セラック
4 強化材
12 叩解工程
13 予備成形工程
13A 抄紙工程
13B 塗布工程
15 予備成形物
16 熱プレス工程
17 加工工程
21 ラウドスピーカ
22 エッジ
23 フレーム
24 磁気回路
24A 磁気ギャップ
24B 磁石
24C ヨーク
24D プレート
25 ボイスコイル
31 自動車
32 本体部
33 ドア
34 ミラーハウジング
34A ミラー

Claims (25)

  1. 天然繊維を含む繊維と、
    前記繊維に付着した天然物由来の熱硬化性の樹脂と、を含む、
    ラウドスピーカ用の振動板。
  2. 前記樹脂はセラックである、
    請求項1記載の振動板。
  3. 前記セラックは変性セラックである、
    請求項2記載の振動板。
  4. 前記セラックは未変性のセラックである、
    請求項2記載の振動板。
  5. 前記セラックは変性セラックと未変性セラックとの混合物である、
    請求項2記載の振動板。
  6. 前記振動板は、前記セラックのスキン層が形成された表層部をさらに備えた、
    請求項2に記載の振動板。
  7. 前記振動板は、前記スキン層に比べて前記セラックの充填度が小さい内層部を、さらに備えた、
    請求項6に記載の振動板。
  8. 前記セラックの含有比率は、前記振動板の総重量に対して、1重量%以上、50重量%以下である、
    請求項2記載の振動板。
  9. 前記天然繊維のカナダ標準濾水度による叩解度は、200ml以上、700ml以下である、
    請求項1記載の振動板。
  10. 前記天然繊維の長さは、0.8mm以上、3mm以下である、
    請求項1記載の振動板。
  11. 前記振動板の密度は、0.25g/cm以上、1.00g/cm以下である、
    請求項1記載の振動板。
  12. 前記繊維は、カナダ標準濾水度による叩解度が200ml以下である微細化天然繊維をさらに含む、
    請求項1記載の振動板。
  13. 前記微細化天然繊維の含有比率は、前記繊維の総重量に対して、1wt%以上、30wt%以下である
    請求項12記載の振動板。
  14. 前記天然繊維は竹繊維を含む、
    請求項1記載の振動板。
  15. 前記竹繊維中のリグニン含有量は、20重量%以下である、
    請求項14記載の振動板。
  16. 強化材をさらに含む、
    請求項1に記載の振動板。
  17. 前記強化材は、マイカ、プラントオパール、金属繊維の少なくとも1つである、請求項16記載の振動板。
  18. 天然繊維を含む繊維と、前記繊維に付着した天然物由来の熱硬化性の樹脂とを含む振動板と、
    前記振動板の外周部が連結されたエッジと、
    前記エッジの外周部が連結されたフレームと、
    前記フレームの下端に設けられ、磁気ギャップを備えた磁気回路と、
    第1端側が前記振動板へ固定され、かつ第2端側が前記磁気ギャップに挿入されたボイスコイルと、を備えた、
    ラウドスピーカ。
  19. 移動可能な本体部と、
    前記本体部に搭載された請求項18に記載のラウドスピーカと、を備えた、
    移動体装置。
  20. 前記本体部は、前記ラウドスピーカが収納されたドアを有する、
    請求項19に記載の移動体装置。
  21. 前記本体部の外周側面に設けられたミラーハウジングと、
    前記ミラーハウジングに収納されたミラーと、をさらに備え、
    前記ラウドスピーカは、前記ミラーハウジングに収納されることで、間接的に前記本体部に搭載された、
    請求項19に記載の移動体装置。
  22. 天然繊維を含む繊維と天然物由来の熱硬化性の樹脂とを含む予備成形物を作製するステップと、
    前記予備成形物を熱プレスし、前記樹脂を硬化するステップと、
    を備えた、
    ラウドスピーカ用の振動板の製造方法。
  23. 前記予備成形物を作製する際には、前記繊維を抄紙した後で、前記樹脂を塗布する、
    請求項22に記載の振動板の製造方法。
  24. 前記樹脂を塗布する際には、アルカリ水またはアルコールに前記セラックを解かした溶解液を前記予備成形物へ塗布する、
    請求項23に記載の振動板の製造方法。
  25. 前記予備成形物を作製する際には、前記繊維と前記樹脂とを混ぜて抄紙する、
    請求項22に記載の振動板の製造方法。
JP2015600049U 2012-10-31 2013-09-19 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法 Expired - Fee Related JP3199865U (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015600049U JP3199865U (ja) 2012-10-31 2013-09-19 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012240176 2012-10-31
JP2012240176 2012-10-31
PCT/JP2013/005526 WO2014068834A1 (ja) 2012-10-31 2013-09-19 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法
JP2015600049U JP3199865U (ja) 2012-10-31 2013-09-19 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP3199865U true JP3199865U (ja) 2015-09-17

Family

ID=50626791

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015600049U Expired - Fee Related JP3199865U (ja) 2012-10-31 2013-09-19 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP3199865U (ja)
CN (1) CN204721598U (ja)
WO (1) WO2014068834A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TW201545564A (zh) * 2014-05-16 2015-12-01 B O B Co Ltd 喇叭振動片及其放電處理模製方法
JP2016026250A (ja) * 2015-08-31 2016-02-12 サカタインクス株式会社 複合材料、該複合材料を含む抗菌性物品、複合材料の製造方法および抗菌性物品の製造方法
JP6613875B2 (ja) * 2015-12-24 2019-12-04 オンキヨー株式会社 スピーカー振動板
JP7181046B2 (ja) * 2018-10-17 2022-11-30 フォスター電機株式会社 電気音響変換器用振動板

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS634798A (ja) * 1986-06-24 1988-01-09 Showa Denko Kk 音響用振動体の製造法
JP3133162B2 (ja) * 1992-07-21 2001-02-05 フオスター電機株式会社 電気音響変換器用振動板
JP3623182B2 (ja) * 2001-09-05 2005-02-23 日本コーンスターチ株式会社 樹脂組成物、樹脂組成物溶液、及び樹脂組成物分散液
US7466839B2 (en) * 2003-12-26 2008-12-16 Og Corporation Waterproof vibration plate for speaker
JP2006060488A (ja) * 2004-08-19 2006-03-02 Sumitomo Electric Ind Ltd 車載用スピーカ
JP2012010215A (ja) * 2010-06-28 2012-01-12 Panasonic Corp スピーカ用振動板及びこれを用いたスピーカ、電子機器、移動手段
JP5357310B2 (ja) * 2011-11-07 2013-12-04 剛貴 浮田 スピーカ装置

Also Published As

Publication number Publication date
CN204721598U (zh) 2015-10-21
WO2014068834A1 (ja) 2014-05-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6371978B2 (ja) 振動板と、これを用いたラウドスピーカと、ラウドスピーカを用いた電子機器、ならびに移動体装置
JP6074584B2 (ja) 高アスペクト比幅狭型振動板または薄型振動板の製造方法と、この製造方法で製造されたスピーカ用振動板、スピーカ、電子機器、移動体装置。
CN1127283C (zh) 扬声器及其制造方法
CN105283499B (zh) 具有声学性质的复合材料、该复合材料的制造、包含该复合材料的组件、该组件的制造和它们的应用
JP3199865U (ja) 振動板と、ラウドスピーカ、および移動体装置、ならびに振動板の製造方法
JP6406011B2 (ja) サンドイッチ構造体、それを用いた一体化成形品およびそれらの製造方法
EP3055350B1 (en) Production of high performance thermoplastic composites
US20200001804A1 (en) Sound protection panel for cladding a wall of an automotive vehicle
JP4357859B2 (ja) 繊維複合樹脂品及びその製造方法
JP4447818B2 (ja) スピーカー用振動板
US9716950B2 (en) Diaphragm, loudspeaker using same, and electronic device and mobile device using loudspeaker
JP6148735B2 (ja) 振動特性を有する複合材構造体
JP2016113595A (ja) 複合材料、成形体、及びこれらの製造方法
JP2005223806A (ja) 振動板、その製造方法、および、スピーカ装置
CN109797489A (zh) 一种消声毡及其应用
JP3137241B2 (ja) スピーカー振動板
CN106217580A (zh) 一种改进型便携音箱
WO2012001926A1 (ja) スピーカ用部品及びこれを用いたスピーカ、電子機器、移動手段
KR102660288B1 (ko) 셀룰로오즈 나노섬유를 포함하는 천연섬유강화 복합재료 및 이의 제조방법
WO2024075201A1 (ja) 複合材料構造体
JP2008055829A (ja) 繊維ボードの製造方法
JP2021187091A (ja) 移動体用樹脂複合構造材及びその製造方法
JPH02274098A (ja) スピーカー用の振動板とボイスコイルボビンの製造方法
KR20200022899A (ko) 다공성 섬유강화 복합재 및 이를 제조하는 방법
JP2012010215A (ja) スピーカ用振動板及びこれを用いたスピーカ、電子機器、移動手段

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150722

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 3199865

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees