JP2008055829A - 繊維ボードの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維ボードをプレスした後の厚み方向中間部のバインダー樹脂不足を回避して、厚み方向でのバインダー樹脂の偏在を避ける。
【解決手段】繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維マットを作成し、複数枚の繊維マットを積層して熱プレスすることで所定形状に成形する繊維ボードの製造方法であって、中間層となる繊維マットの上下に、該中間層の繊維マットよりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マットを積層して表面層とし、該複数積層構造の積層繊維マットを熱プレスすることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維マットを作成し、複数枚の繊維マットを積層して熱プレスすることで所定形状に成形する繊維ボードの製造方法であって、中間層となる繊維マットの上下に、該中間層の繊維マットよりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マットを積層して表面層とし、該複数積層構造の積層繊維マットを熱プレスすることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維マットを作成し、複数枚の繊維マットを積層して熱プレスすることで所定形状に成形する繊維ボードの製造方法に関し、詳しくは、複数枚積層する各繊維マットにおけるバインダー樹脂含有量を調整して、プレス成形された複数積層構造の繊維ボードにおいて厚み方向中間部のバインダー樹脂不足を解消する。
繊維とバインダー樹脂とを混合した繊維マットからなる複数積層構造のプレス成形品は、例えば特許文献1及び特許文献2に公知である。特許文献1では、繊維マットのプレス圧を調整することで、高密度の中間層の表裏外面に該中間層よりも密度の低い低密度層からなる三層構造の複数積層体が開示されている。これにより、吸水性に優れた層と揮発性に優れた層とを併せ持つ繊維構造物を得ることができるとされている。特許文献2では、高密度層の上下に低密度層を積層した三層積層構造の吸音材であり、空気流に対するフローレジスタンス(抵抗値)に着目した積層構造とすることで吸音効果の向上を図っている。
ところで、一般的な繊維マット2は、図3によく示されるように、繊維5と熱可塑性のバインダー樹脂6とを混合して作成されているが、この繊維マット2を熱プレスすると(図3(b)参照)、図3(c)によく示されるように表面側にバインダー樹脂6が多く、厚み方向中間部はバインダー樹脂6が少なくなる傾向があり、バインダー樹脂6の偏在した繊維ボード1となる。つまり、プレス前の繊維マット2の状態ではバインダー樹脂6が均一に分散した状態であっても、プレスする際の熱によってバインダー樹脂6が溶融して上下表面側に移動し、プレス成形品としての繊維ボード1における厚み方向中間部はバインダー樹脂6が少なくなる。これは、単層繊維マットであろうと複数積層繊維マットであろうと、溶融バインダー樹脂の移動特性に変わるところはない。なお、図3(c)に示す繊維ボード1中のバインダー樹脂6は、見た目でわかり易いように粒状に表現しているが、実際にはプレス時の熱によって溶融し、不定形な状態となっている。
繊維マットをプレスした際の溶融バインダー樹脂がこのような移動特性を有する原理は必ずしも明らかではないが、次の原理が考えられる。第1には、繊維マットがプレスされることで溶融バインダー樹脂が染み出すが、繊維マットの左右端への距離は長く移動抵抗が大きくなるので左右方向(平面方向)へは移動し難いが、上下端へは距離が短くこれによって移動抵抗も比較的小さいので、上下方向(厚み方向)へ優先的に移動するからと考えられる。第2に、繊維マットをプレスすると、先ず上下表面側が圧縮されて繊維が密になる。表面側が密になることで毛細管現象が促進され、これによって溶融バインダー樹脂が吸い上げられて上下方向に移動するためと考えられる。実際には、上記第1、第2の原理のうち、一方のみが作用しているかもしれないし、双方が作用しているかもしれない。また、金型の表面は繊維マットと比べて平滑であるので移動抵抗が少なく、繊維マットと金型との当接面が最も溶融バインダー樹脂が流れ易いことも上記第1及び第2の原理に寄与しているであろう。
また、繊維マットをプレスすると上側表面層と下側表面層の双方にバインダー樹脂が偏在することは上述の通りであるが、プレスした後の繊維ボードには、上側表面層の側端にのみ溶融バインダー樹脂によるバリが形成されている。この原理も必ずしも明らかではないが、繊維マット中の水分がプレス時の熱によって蒸発し、この水蒸気の上昇気流によって溶融バインダー樹脂も上方へ押し上げられることで、上側表面層にのみバリが発生すると考えられる。すなわち、繊維マットをプレスした際の溶融バインダー樹脂は、下方よりも上方へ移動する量が多いと考えられる。
このように、繊維ボード中にバインダー樹脂の多い樹脂リッチな部分とバインダー樹脂の少ない樹脂プアーな部分とが混在した状態では、種々の不都合が生じる。具体的には、表面層部分は樹脂リッチなので繊維ボードの厚み方向においては有意に耐水性を有し、かつ強度的にも優れている。これに対して、中間層部分は樹脂プアーで比較的隙間の多い状態なので、繊維ボードにおける側面からの耐水性は十分に発揮できず、かつ繊維同士の結合も弱くなる。繊維ボードの側面部分に防水処理を施すことも考えられるが、これには新たな製造工程と材料が必要となり、コストが嵩む。
ここで、上記特許文献1及び特許文献2では、繊維ボードを密度の異なる積層構造として、各層の材料特性を調整して各課題を解決しようとしているが、各層の密度を変えただけでは、溶融バインダー樹脂の移動特性に変わりはなく、プレス時のバインダー樹脂の偏在には対応できない。そこで、本発明者は鋭意検討の結果、特許文献1や特許文献2に記載の発明のように単に密度に着目するのではなく、各層に含有されるバインダー樹脂の量に着目することで上記課題を解決し得ることを知見した。
すなわち、本発明の解決しようとする課題は、繊維ボードを複数積層構造として、各層のバインダー樹脂の含有量を調節することで、プレスした後の厚み方向中間部のバインダー樹脂不足を回避して、上下方向(厚み方向)でのバインダー樹脂の偏在をできるだけ避けることにある。
上記課題を解決するための手段として、本発明は繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維マットを作成し、複数枚の繊維マットを積層して熱プレスすることで所定形状に成形する繊維ボードの製造方法であって、中間層となる繊維マットの上下に、該中間層の繊維マットよりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マットを積層して表面層とし、該複数積層構造の積層繊維マットを熱プレスすることを特徴とする。
前記積層繊維マットは、熱プレス時に上下型でプレスするものである。そして、前記積層繊維マットを熱プレスしたとき、前記中間層となる繊維マットを挟む繊維マットのうち、厚み方向上側が上側表面層、厚み方向下側が下側表面層となる。上側表面層のバインダー樹脂含有量は、下側表面層のバインダー樹脂含有量より少なくすることが好ましい。
なお、本発明では各層におけるバインダー樹脂の含有量を相違させていることで、結果的に熱プレス前の各繊維マットの密度が異なっている場合もあるが、繊維の配合量を特別調整している訳ではない。したがって、最終的に得られる繊維ボードにおける各層の密度はプレス前の繊維マットの密度とは異なっている。最終的に得られる繊維ボードにおける各層の密度は好ましくは同等であるが、表面層の密度が高く中間層の密度は低い場合や、表面層の密度が低く中間層の密度は高い場合もある。
本発明によれば、中間層となる繊維マットの上下に、該中間層の繊維マットよりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マットを積層している。したがって、複数積層した繊維マットをプレスしたときに、中間層に含まれていたバインダー樹脂が上下表面層側へ流れた(染み出た)としても、表面層のバインダー樹脂含有量は少なく設定されているので、中間層が樹脂プアーとなることを避けられ、バインダー樹脂が偏在することを抑制し、厚み方向に概ね均一に分散した繊維ボードを得ることができる。これにより、中間層が隙間の多い状態になることもなく、繊維ボードの側面からの耐水性も担保でき、かつ繊維同士の結合も強固に保てる。
上側表面層のバインダー樹脂含有量を下側表面層のバインダー樹脂含有量よりも少なくしていれば、中間層からのバインダー樹脂許容量は上側表面層の方が大きくなる。したがって、中間層からバインダー樹脂が水蒸気などによって上方へ多く流されても、よりバインダー樹脂含有量の少ない上側表面層がこれを許容することで、下側表面層のバインダー樹脂含有量と同等になり、バインダー樹脂が厚み方向により均等に分散した繊維ボードを得ることができる。同時に、繊維ボートの側面上方にバインダー樹脂によるバリの発生を抑制することもできる。
(第1実施形態)
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明するが、これに限定されることはない。本実施形態に係る製造方法で得られる繊維ボード1は、図1(c)によく示されるように、中間層12とこれを上下から挟み込む表面層13・13との三層構造となっている。具体的には、繊維5とバインダー樹脂6とを混合して3枚の繊維マットを作成し、図1(a)に示すごとく中間層12となる繊維マット2の上下に、該中間層12の繊維マット2よりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マット3・3を1枚積層して三層積層構造の積層繊維マット4とし、この積層繊維マット4を図1(b)に示すごとく熱プレスすることで所定形状に成形して得られる。なお、図1(c)に示す繊維ボード1中のバインダー樹脂6は、見た目でわかり易いように粒状に表現しているが、実際には各繊維5を接着した状態で不定形となっている。
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明するが、これに限定されることはない。本実施形態に係る製造方法で得られる繊維ボード1は、図1(c)によく示されるように、中間層12とこれを上下から挟み込む表面層13・13との三層構造となっている。具体的には、繊維5とバインダー樹脂6とを混合して3枚の繊維マットを作成し、図1(a)に示すごとく中間層12となる繊維マット2の上下に、該中間層12の繊維マット2よりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マット3・3を1枚積層して三層積層構造の積層繊維マット4とし、この積層繊維マット4を図1(b)に示すごとく熱プレスすることで所定形状に成形して得られる。なお、図1(c)に示す繊維ボード1中のバインダー樹脂6は、見た目でわかり易いように粒状に表現しているが、実際には各繊維5を接着した状態で不定形となっている。
繊維マット2・3に使用される繊維5としては、木質繊維、動物繊維又は無機繊維などを使用できる。具体的には、木質繊維は木本類や草本類から採取できる繊維である。木本類としては、スギやヒノキなどの針葉樹や、シイ、柿、サクラなどの広葉樹、熱帯樹を使用することができ、草本類としては、良質の繊維が得られやすい靭皮植物が好ましく、例えばケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ、バガスなどがある。また、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、これらのパルプを原料として合成される人工の各種セルロース系繊維を使用してもよい。動物繊維としては、羊毛、山羊毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ等のウール、シルク、ダウン、フェザーを使用できる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などを挙げることができる。これらの中でも、コスト、生産性、環境面などの観点から木質繊維、特にケナフ繊維が用いて好適である。
また、繊維マット2・3には繊維5を接着するためのバインダー樹脂6を混合している。このバインダー樹脂6としては、繊維5の接着剤として機能し、プレス時の熱によって溶融する各種の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、AS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。また、繊維の接着剤としての観点からは熱硬化性樹脂を使用してもよい。熱硬化性樹脂は熱をかけることによって硬化する特性を有するものであるが、流動性を有する状態においてプレス圧によって厚み方向上下に移動する原理は同じである。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂などを挙げることができる。さらに、植物由来のリグニンなどを使用することもできる。これらバインダー樹脂6は、粉末状、繊維状、溶媒溶液の状態など各種の形態で使用することができる。
繊維マット2・3は、周知の方法で繊維5とバインダー樹脂6とを混合してマット状に形成すればよい。例えば、木質繊維により繊維マット2・3を製造する場合、微生物の作用を利用した生分解(レッティング)、高温の水蒸気を利用した蒸煮、高気圧状態から一気に大気圧まで気圧開放する爆砕、ディスクリファイナなどを用いる乾式開繊などによって木質植物の靭皮から繊維5を採取する。そして、得られた繊維5をカード機やエアレイ機などで解繊してウェブを形成し、必要に応じてフリースやニードルパンチなどで繊維同士を絡ませたり、コーミングによって繊維5の配向を一定方向に揃えてバインダー樹脂6を混合する。
繊維状のバインダー樹脂6を混合する場合は、遠心法やメルトブロー法などの周知の方法で紡糸したバインダー樹脂6を、混綿機などで繊維5と混綿すればよい。粒状のバインダー樹脂6を使用する場合は、繊維ウェブに散布若しくはエアー吹付けしたり、ローラーに付着させたバインダー樹脂6の粉体を電気印加によって塗布する方法などがある。また、バインダー樹脂6を水溶液等に分散させて、これを繊維ウェブに噴霧したり、繊維ウェブを溶液中に浸漬(含浸)してもよい。そして、繊維5とバインダー樹脂6とを混合した繊維ウェブをプレス(一次プレス)して繊維マット2・3を得、これを所定寸法に裁断しておく。
このとき、中間層12用の繊維マット2のバインダー樹脂含有量よりも表面層13用の繊維マット3のバインダー樹脂含有量を少なくして両繊維マット2・3のバインダー樹脂含有量を異ならせておく。具体的には、積層繊維マット4中のバインダー樹脂6の全量を10としたとき、繊維マット2のバインダー樹脂含有量と繊維マット3のバインダー樹脂含有量との比が概ね4:3から8:1の範囲で適宜設定すればよい。その設定基準は、積層繊維マット4をプレスした際に中間層12から表面層13へバインダー樹脂6が移動する量によって定められ、各繊維マット2・3の厚み、プレス圧、繊維マット2・3へのバインダー樹脂6の混合量などによって異なる。すなわち、プレス圧などによってプレス成形時の中間層12から表面層13へのバインダー樹脂6の移動量が多い場合は、例えば繊維マット2のバインダー樹脂含有量と繊維マット3のバインダー樹脂含有量との比を8:1程度に設定してその差を大きくする。逆に、プレス成形時の中間層12から表面層13へのバインダー樹脂6の移動量が少ない場合は、例えば繊維マット2のバインダー樹脂含有量と繊維マット3のバインダー樹脂含有量との比を4:3程度に設定してその差を小さくする。もちろんその中間量であれば、繊維マット2のバインダー樹脂含有量と繊維マット3のバインダー樹脂含有量との比は6:2程度に設定すればよい。なお、本実施形態では、2枚の繊維マット3・3のバインダー樹脂含有量は同一に設定している。また、繊維マット2は繊維マット3よりもバインダー樹脂6を多く含ませるために、その厚みを繊維マット3よりも大きくしている。
そのうえで、図1(a)に示すごとく繊維マット2の上下に繊維マット3・3を積層して三層構造の積層繊維マット4とする。そして、この積層繊維マット4を所定形状に型決めされたプレス機20によって熱プレス(二次プレス)する。すると、図1(b)の矢印で示すように中間層12中のバインダー樹脂6が上下の表面層13・13側へ染み出ることで、中間層12のバインダー樹脂量が減っていくと同時に、表面層13のバインダー樹脂量が増えていく。しかしながら、表面層13・13は、上述のように前もって中間層12よりもバインダー樹脂量を少なく設定してあるので、このバインダー樹脂の移動特性によって、両層12・13の樹脂含有量の差が小さくなっていき、最終的には両層12・13中のバインダー樹脂含有量は略均等となる。
これにより、図1(c)に示すごとくバインダー樹脂6が厚み方向に偏在していない繊維ボード1を得ることができ、この繊維ボード1は、上下面(厚み方向)のみならず側面からの耐水性に優れ、かつ適度な強度も確保することができる。
この繊維ボード1は、自動車や列車などの各種車両、壁材、床材、床下衝撃吸収材、断熱材などの建材、及びスピーカーボックス、吸音材などの機器材料として広く適用できる。これらの中でも、各種車両、特に自動車に適用する場合に有効である。自動車の場合は、ドアパネル、フロントパネル、リアパネル、フェンダー、バンパーなどの外装材として使用できるが、ドアトリム、インナーパネル、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの内装材として使用することもできる。なお、図面には平板状の繊維ボード1を図示しているが、これは一例であって、本発明で得られる繊維ボード1を上記のような部材として使用する場合は、適宜その部材として適切な形状に設計する必要がある。本実施形態の繊維ボード1における比重、厚みなどは、基本的には車両や建材などとして従来から使用されている一般的な繊維ボードと同等に設定すればよい。
(第2実施形態)
本発明に係る第2の実施形態を図2に示す。図2において第2実施形態では、上下の表面層33・34用の繊維マット23・24のバインダー樹脂含有量が中間層32用の繊維マット22のバインダー樹脂含有量よりも少ない点は先の第1実施形態と同じであるが、上側表面層33用の繊維マット23(以下、上側繊維マットと称す)と下側表面層34用の繊維マット24(以下、下側繊維マットと称す)のバインダー樹脂含有量も異ならせている点が先の第1実施形態と異なる点である。詳しくは、上側繊維マット23のバインダー樹脂含有量を下側繊維マット24のバインダー樹脂含有量よりも少なくしている。これは、積層繊維マット4を熱プレスする際に、水蒸気等の上昇気流によってバインダー樹脂6が押し上げられて上側へ染み出す量が多くなる傾向に対応させたものである。
本発明に係る第2の実施形態を図2に示す。図2において第2実施形態では、上下の表面層33・34用の繊維マット23・24のバインダー樹脂含有量が中間層32用の繊維マット22のバインダー樹脂含有量よりも少ない点は先の第1実施形態と同じであるが、上側表面層33用の繊維マット23(以下、上側繊維マットと称す)と下側表面層34用の繊維マット24(以下、下側繊維マットと称す)のバインダー樹脂含有量も異ならせている点が先の第1実施形態と異なる点である。詳しくは、上側繊維マット23のバインダー樹脂含有量を下側繊維マット24のバインダー樹脂含有量よりも少なくしている。これは、積層繊維マット4を熱プレスする際に、水蒸気等の上昇気流によってバインダー樹脂6が押し上げられて上側へ染み出す量が多くなる傾向に対応させたものである。
上側繊維マット23と下側繊維マット24のバインダー樹脂含有量を異ならせる基準は、先の第1実施形態と同様に積層繊維マット4をプレスした際に中間層から上下の表面層へバインダー樹脂6が移動する量によって定められる。例えば、積層繊維マット4中のバインダー樹脂6の全量を10としたとき、上側繊維マット23:繊維マット22:下側繊維マット24の比を概ね1:7:2,1:6:3,1:5:4,2:5:3などのように適宜設定すればよい。もちろん、これらの間の比率とすることも可能である。
積層繊維マット4は、図2に示すごとく上からバインダー樹脂含有量の少ない上側繊維マット23、バインダー樹脂含有量の多い繊維マット22、バインダー樹脂含有量が中程度の下側繊維マット24の順に積層されている。したがって、積層繊維マット4をプレスすると、中間層32中のバインダー樹脂6が上下の表面層33・34側へ染み出すことで、中間層32のバインダー樹脂量が減っていくと同時に、上下の表面層33・34のバインダー樹脂量が増えていく。このとき、各層32・33・34に潜在していた水分等が、プレス時の熱によって気化して上方へ向かって移動しながら積層繊維マット4外へ排出される。この水蒸気等の上昇気流によって中間層32からのバインダー樹脂6は、下側表面層34側よりも上側表面層33側へ移動する量が多くなる。しかし、上述のように上側表面層33のバインダー樹脂含有量を前もって少なく設定してあるので、上側表面層33はより多くの上昇バインダー樹脂6を許容できる。このようにして、各層32・33・34のバインダー樹脂含有量の差が小さくなっていき、最終的には各層32・33・34中のバインダー樹脂含有量は略均等となる。その他は、先の第1実施例と同じであるので、その説明を省略する。
(その他の実施の形態)
上記第1及び第2の実施の形態のように繊維ボード1を三層積層構造とする他、四層以上の積層構造としてもよい。この場合は、中間層から表面側に向かって段階的にバインダー樹脂含有量を少なくすればよい。このとき、同時に中間層より上側の各層のバインダー樹脂の総含有量は、中間層より下側の各層のバインダー樹脂の総含有量よりも少なく設定しておくことが好ましい。中間層を挟んだ上側と下側とでの積層枚数を異ならせてあってもよい。
上記第1及び第2の実施の形態のように繊維ボード1を三層積層構造とする他、四層以上の積層構造としてもよい。この場合は、中間層から表面側に向かって段階的にバインダー樹脂含有量を少なくすればよい。このとき、同時に中間層より上側の各層のバインダー樹脂の総含有量は、中間層より下側の各層のバインダー樹脂の総含有量よりも少なく設定しておくことが好ましい。中間層を挟んだ上側と下側とでの積層枚数を異ならせてあってもよい。
以下に、実施例と比較例を作成して、両者の耐水性を比較した試験について説明する。まず実施例として、ケナフ繊維とリグニンとによって、3枚の繊維マットを作成した。中間層用の繊維マットのリグニン含有量を60重量%、上下表面層用の繊維マットのリグニン含有量を20重量%に設定した。これらを積層して三層構造の積層繊維マットとし、これを180℃で3分間熱プレスして目付け1.25kg/m2、厚み2.5mmの平板状繊維ボードを得た。次に比較例として、ケナフ繊維とリグニンとによって、リグニン含有量40重量%の繊維マットを1枚作成した。これを180℃で3分間熱プレスして目付け1.25kg/m2、厚み2.5mmの平板状繊維ボードを得た。
この実施例及び比較例を、同様の外部環境に晒した後の含水率、吸水率、加熱寸法変化率、及び吸湿寸法変化率を測定した。各試験の外部環境と基準値は表1に示す通りである。なお、本試験での基準値には、繊維ボードを自動車用部材として使用するときに、一般的に好ましいとされている数値を採用した。また、その試験結果及び判定評価を表2に示す。
表2から明らかなように、それぞれのバインダー樹脂含有量を調整した繊維マットを積層して作成した実施例では、吸水率試験での板厚膨張率に若干難があるものの、その他の数値は良好であり、実施例の繊維ボートを自動車部材として使用した場合、高い品質を確保できることがわかる。これに対して比較例では、加熱した際の水分含有率は実施例と同等であるが、吸水・吸湿試験結果は基準値を大幅に超えており、耐水性が劣ることがわかる。これは、比較例の繊維ボードが単層構造であるため、厚み方向において樹脂リッチな部分と樹脂プアーな部分とが生じてしまい、樹脂プアーな中間層が大量に水分を吸収したことに起因している。
1 繊維ボード
2 中間層用繊維マット
3 表面層用繊維マット
4 積層繊維マット
5 繊維
6 バインダー樹脂
12・32 中間層
13 表面層
23 上側繊維マット
24 下側繊維マット
33 上側表面層
34 下側表面層
2 中間層用繊維マット
3 表面層用繊維マット
4 積層繊維マット
5 繊維
6 バインダー樹脂
12・32 中間層
13 表面層
23 上側繊維マット
24 下側繊維マット
33 上側表面層
34 下側表面層
Claims (2)
- 繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維マットを作成し、複数枚の繊維マットを積層して熱プレスすることで所定形状に成形する繊維ボードの製造方法であって、
中間層となる繊維マットの上下に、該中間層の繊維マットよりもバインダー樹脂含有量が少ない繊維マットを積層して表面層とし、
複数積層構造の積層繊維マットを熱プレスすることを特徴とする繊維ボードの製造方法。 - 前記積層繊維マットは、熱プレス時に上下型でプレスするものであって、
前記積層繊維マットを熱プレスしたとき、前記中間層となる繊維マットを挟む繊維マットのうち、厚み方向上側が上側表面層、厚み方向下側が下側表面層となるものであり、
上側表面層のバインダー樹脂含有量は、下側表面層のバインダー樹脂含有量より少ない請求項1に記載の繊維ボートの製造方法。
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JP2012192726A (ja) * | 2011-02-28 | 2012-10-11 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | プリフォーム及び同プリフォームの製造方法並びに同プリフォームを用いた繊維強化樹脂成形品の製造方法 |
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