JP2008023773A - 防湿繊維ボードとその製造方法 - Google Patents

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寿久 三浦
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Abstract

【課題】接着剤に依存することなく繊維ボードを非透水性のフィルムで被覆し、且つ繊維ボードとフィルムとの密着性を確保しながら、防湿性を担保できる防湿繊維ボードを提供する。
【解決手段】繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードであって、該繊維ボード10が、非透水性のフィルム20で真空状に被覆されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードであって、非透水性のフィルムが被覆された防湿繊維ボードに関する。
近年、木質繊維などの繊維と合成樹脂などのバインダー樹脂とを混合し、これを加熱プレスして得られる繊維ボードが、ドアパネルやインナーパネルなどの自動車用内外装材、壁材や床材などの建材、及び吸音材やスピーカーボックスなどの機器材料として、広い分野で多用されるようになってきている。しかし、この繊維ボードには吸水性を有する木質繊維などがその原料として使用されていること、且つボード内部がポーラスな構造となっていることにより、従来のような金属や合成樹脂のみで形成されたボード(パネル)と比べて高い吸水性を有している。そのため、長期使用しているうちに、徐々に繊維ボードが空気中の水分などを吸収することによって、重量が増大する、繊維ボードが膨張する、強度が低下するなど、種々の弊害が生じることがあった。これを解決しようとする繊維ボードとして、例えば特許文献1がある。
特許文献1の繊維ボードは、木質繊維とバインダー樹脂とを混合して繊維ボードを形成し、これの内部に水分が浸透することを防止するために、繊維ボードの表裏面を非透水性のシート又はフィルムで被覆している。そして、当該シート又はフィルムは、接着剤により繊維ボードの表面へ接着されている。また、防水目的ではないが、繊維ボードの片面又は両面に合成樹脂シートを接着剤を介して張り合わせたものとして、他に特許文献2もある。
特開2005−47140号公報 特開平6−254815号公報
上記特許文献1や特許文献2の繊維ボードは、シートを接着剤により繊維ボードへ貼り付けているだけなので、例えば繊維ボードを自動車用の内外装部材として使用した場合、走行時の振動衝撃が付加されて繊維ボードが瞬間的に反り返ることによって接着面が剥離するおそれがある。振動衝撃によりシートが剥離する可能性は、繊維ボードを建材に使用した場合の地震、工事、自動車の走行などや、繊維ボードを吸音材やスピーカーボックスなどの機器材料として使用した場合の音の振動でも同様である。
また、繊維ボードを自動車用部材として適用する際、当該繊維ボードは凹凸を有する複雑な形状に成形されていることが多いが、この場合、例えば垂直面部と水平面部との関係などのように、向きの異なる部位面同士が交差するコーナー部においてはシートと繊維ボードとの密着性が十分でなく、当該部分から接着剤が剥がれ易くなる。さらに、繊維ボード表面に接着剤を塗布する場合、繊維ボードに特有のポーラス構造により接着剤が繊維ボードの内部に染み込み、多くの接着剤が必要であるという不都合もある。
そこで本発明者らは、接着剤のみに依存せずとも非透水性のフィルムを繊維ボードに被覆して、その密着性及び防湿性を担保できる方法がないか鋭意検討の結果、繊維ボードの全周を非透水性のフィルムで被い、これを真空中でシールすれば、接着剤を使用しなくとも繊維ボードの防湿性を担保できることを知見し、本発明を完成するに至った。特に自動車分野において、繊維ボードを真空シールする技術は今までに存在していなかった。
すなわち、本発明の目的は、接着剤のみに依存することなく繊維ボードを非透水性のフィルムで被覆し、且つ繊維ボードとフィルムとの密着性を確保しながら、防湿性を担保できる防湿繊維ボードを提供するにある。
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の本発明に係る防湿繊維ボードは、繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードであって、該繊維ボードが、非透水性のフィルムで真空状に被覆されていることを特徴とする。なお、本発明における「フィルム」とは、シートも含む概念である。また、「防湿」とは、空気中の湿気に限らず、水滴や雨水などの水分はもちろんのこと、繊維ボード表面に塗布する塗料など、液状のものが繊維ボード内部に浸透することも防止するという広い概念である。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の防湿繊維ボードにおいて、前記フィルムが複数積層構造となっており、前記繊維ボードと当接することとなる最内層には、接着剤層が設けられている。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は2記載の防湿繊維ボードにおいて、前記繊維ボードは、前記フィルムで被覆される前に、少なくともその一部に凹凸が成形賦与されている。
請求項4記載の本発明は、請求項3記載の防湿繊維ボードにおいて、前記フィルムは、前記繊維ボードを被覆する前に、予め前記繊維ボードの形状に合わせた凹凸が成形賦与されている。
請求項5記載の本発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の防湿繊維ボードにおいて、前記フィルムで前記繊維ボードを真空被覆した際に生じるフィルムの鍔が、面方向内側に折り返し溶着されている。
請求項6記載の本発明に係る防湿繊維ボードの製造方法は、繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードの表面全体を被うように非透水性のフィルムを重ね、当該フィルムを真空中で接着することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6記載の防湿繊維ボードの製造方法において、前記フィルムは、前記繊維ボードと当接することとなる最内層に、接着剤層を有する複数積層構造となっており、前記接着剤層を加熱してフィルムと繊維ボードとを接着させる工程を有する。
請求項8記載の本発明は、請求項6または7記載の防湿繊維ボードの製造方法において、前記繊維ボードを前記フィルムで真空被覆する前に、少なくとも前記繊維ボードの一部に凹凸を成形賦与し、フィルムを前記繊維ボードの形状に合わせた形状に凹凸成形しておく工程を有する。
請求項9記載の本発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の防湿繊維ボードの製造方法において、前記繊維ボードを前記フィルムで真空被覆した後、繊維ボードの外周より外側に突出形成されたフィルムの鍔を、面方向内側に折り返し溶着する工程を有する。
本発明によれば、繊維ボードの全周が非透水性のフィルムで被覆されているので、繊維ボードが空気中の湿気などを吸収することを確実に防止できる。このとき、繊維ボードはポーラスな構造であることにより、真空引きによるフィルムと繊維ボードとの密着性が高く、接着剤を使用せずとも防水性を担保でき、振動衝撃などによってフィルムと繊維ボードとが剥離するような不都合もない。また、繊維ボードに防湿(防水)処理が施されていることによって、吸水性の高い木質繊維を使用したとしても、湿気などを吸収して膨張したり重量が増加することは無く、車両などの軽量化を図るに有利である。必要に応じて繊維ボード表面に塗料などを塗布する場合でも、当該塗料が繊維ボードの内部に浸透することがないので、塗料の使用量を少なくしてコストを低減し、且つ繊維ボードの重量増加も極力抑えることができる。また、繊維ボード表面がフィルムで被覆されていることによって、平滑性が高く、塗料を塗布した際の意匠性も向上できる。この繊維ボードを防湿処理することによる効果は、空隙が多く湿気などを多量に吸い込んでしまいがちな比較的比重の低い繊維ボードに対して特に有効である。
フィルムを最内層に接着剤層を有する複数積層構造として、この接着剤層によってフィルムと繊維ボードとを接着しておけば、真空被覆との相乗効果により、より密着性を高めることができる。仮に繊維ボードに水分が潜在しており、高温環境などによってこの潜在水分が気化するようなことがあっても、接着剤層を介していることで、繊維ボードとフィルムとの間に空間が生じることを回避できる。また、接着剤層をフィルムに積層した状態で使用することで、単に接着剤を繊維ボードに塗布する場合と比べて、接着剤の繊維ボードへの染み込み量が軽減され、接着剤の使用量を大幅に抑えながら確実に両者を接着できる。また、接着剤を介していることで、フィルム表面に多少の傷がついても真空状態を確保しておくことができる。
繊維ボードが、フィルムで被覆される前に少なくともその一部に凹凸が成形賦与されていれば、フィルムで被覆した後に凹凸成形する場合と比べて成形性が高く、複雑な形状の繊維ボードにも対応できる。フィルムで被覆した後に凹凸成形する場合の熱や押圧力によってフィルムが破損するおそれもない。このとき、フィルムも予め繊維ボードの形状に合わせた凹凸が成形賦与されていれば、真空被覆時にフィルムが無理に伸縮することなく的確に繊維ボードと密着するので、特に異なる向きの部位面同士が交差するコーナー部などにおいても、よりフィルムと繊維ボードとの密着性を高めることができる。
非透水性のフィルムを繊維ボードの表面全体を覆うように重ね合わせ、このフィルム同士をそのまま接着すると、繊維ボードの外周より外側に突出した鍔が形成される。このフィルムの鍔を面方向内側に折り返し溶着しておけば、繊維ボードを使用する際に、これの組み付けや他の部材との接合を容易に行うことができる。
以下に、本発明に係る車両用パネルの実施の形態を図面を用いて説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。殊に図面に示す形状は、特にどの部材用として規定した形状を示したものではないので、実際に使用する場合はこれとは異なる形状に成形されるものである。そのうえで図1は、本発明に係る防湿繊維ボードの一形態を示す断面図である。図2は、図1に示す防湿繊維ボードの構成を示す分解断面図である。図3は、図1に示す防湿繊維ボードの製造方法の一例を示す工程図である。
本実施形態に係る防湿繊維ボードは、図1に示すごとく繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボード10が、非透水性のフィルム20で真空状に被覆されている点が注目される。これは、図2に示すごとく繊維ボード10の表裏面に、繊維ボード10の全体を覆う十分な大きさを有するフィルム20を重ね合わせたうえで、真空中でフィルム20同士を接着することで真空被覆された構成となっている。このとき、繊維ボード10は、フィルム20で被覆される前に少なくともその一部に凹凸が成形賦与されており、フィルム20も、繊維ボード10を被覆する前に予め繊維ボード10の形状に合わせた凹凸が成形賦与されている。
そしてこのフィルム20は、外面に非透水性の合成樹脂層21が、内面に接着剤層22がそれぞれ設けられた複数積層構造となっており、内面側の接着剤層22が繊維ボード10表面と当接接着されることで、真空被覆と相俟って繊維ボード10とフィルム20とがより密着状かつ確実に被覆されている。
また、図3(B)に示されるように、フィルム20を繊維ボード10の表面全体を覆うように重ね合わせてこのフィルム20同士を接着すると、繊維ボード10の外周より外側に突出した鍔23が形成される。この鍔23は、図1の要部拡大図に示すように、繊維ボード10の外周より外側に突出しないよう面方向内側に折り返し溶着されている。
この防湿繊維ボードは、自動車や列車などの各種車両、壁材、床材、床下衝撃吸収材、断熱材などの建材、及びスピーカーボックス、吸音材などの機器材料として広く適用できる。これらの中でも、本防湿繊維ボードが表面塗装、走行時の振動、悪天候などに対して有意な効果を発揮できることから、各種車両、特に自動車に適用することが好ましい。自動車の場合は、ドアトリム、インナーパネル、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなどの内装材にも使用できるが、ドアパネル、フロントパネル、リアパネル、フェンダー、バンパーなどの外装材として使用することが好ましい。
[繊維ボードについて]
繊維ボード10に使用される繊維としては、木質繊維、動物繊維又は無機繊維などを使用できる。具体的には、木質繊維は木本類や草本類から採取できる繊維である。木本類としては、スギやヒノキなどの針葉樹や、シイ、柿、サクラなどの広葉樹、熱帯樹を使用することができ、草本類としては、良質の繊維が得られやすい靭皮植物が好ましく、例えばケナフ、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ワラ、バガスなどがある。また、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、これらのパルプを原料として合成される人工の各種セルロース系繊維を使用してもよい。動物繊維としては、羊毛、山羊毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ等のウール、シルク、ダウン、フェザーを使用できる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などを挙げることができる。これらの中でも、コスト、生産性、環境面などの観点から木質繊維、特にケナフ繊維が用いて好適である。
また、繊維ボード10には繊維を接着するためのバインダー樹脂を混合している。このバインダー樹脂としては、繊維の接着剤として機能するものを使用することができ、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、AS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂などを挙げることができる。さらに、植物由来のリグニンなどを使用することもできる。但し、後述のように、繊維ボード10をフィルム20で被覆する際の熱によって繊維ボード10が変形することを防止するため、熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂を使用する場合は、比較的軟化点や融点の高い樹脂を使用することが好ましく、少なくともフィルム20に使用する樹脂よりも軟化点の高い樹脂を使用することが望まれる。これらバインダー樹脂は、粉末状、繊維状、溶媒溶液の状態など各種の形態で使用することができる。
本実施形態の防湿繊維ボードにおける繊維とバインダー樹脂との混合割合、ボード比重、厚みなどは、基本的には車両や建材などとして従来から使用されている一般的な繊維ボードと同等に設定すればよい。例えば自動車のパネルとして使用する場合は、これに限定されることはないが、繊維とバインダー樹脂との混合割合を重量比で50:50〜90:10、ボード比重を1.0〜2.0程度、ボード厚みを1〜20mm程度を目安として設定できる。但し、本実施形態の繊維ボード10は、フィルム20で被覆されることを前提に製造されるものであり、フィルム20で被覆することによって塗料の染み込みはなく、強度も向上する方向に働くので、ボードの密度や厚みを一般的なボードよりも若干低めに設定しても、繊維ボードとしての機能を発揮し得る。また、繊維ボード10は単層であっても複数積層構造であっても構わない。
[フィルムについて]
フィルム20の外層を構成する非透水性の合成樹脂層21には、熱可塑性樹脂を使用している。この合成樹脂層21は基本的には単層でよいが、より防湿性を高めたり他の性状を付加するために、異なる素材で形成したフィルムを重ねた積層構造としてもよい。そして、フィルム20の最内層を構成する接着剤層22には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、クロロプレン系、シリコーン系、シアノアクリレート系、オレフィン系などの各種の接着剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、合成ゴム系、エチレン共重合樹脂系、ポリプロピレン共重合樹脂系、酸変性ポリオレフィン系などの各種の接着性樹脂を使用できる。接着剤層の接着強度は高いに越したことはないが、真空被覆することが前提なので、接着強度の比較的低い接着剤層でも構わない。接着剤層22は、必ずしもフィルム10の内面側全体に形成する必要は無く、少なくとも繊維ボード10に当接する範囲に形成してあればよい。
合成樹脂層21の厚みは50〜400μmが好ましく、150〜300μmがより好ましい。合成樹脂層が薄すぎると、確実な防湿効果を発揮できなかったり、強度が弱くて破損し易くなる。一方、フィルムが厚すぎると、厚みに見合った顕著な防湿効果の向上が得られず、コスト高の原因となる。また、フィルム20の外形寸法は、少なくとも繊維ボード10の全体を覆うことができ、且つフィルム20同士を接着する際の接着代を確保できる大きさに設定する。好ましくは、繊維ボード10より1周り大きい程度である。
[製造方法]
次に、本実施形態の防湿繊維ボードの製造方法を、図3を参照しながら説明する。本実施形態の防湿繊維ボードは、先ず、図3(A)に示す第1工程において、所定形状に賦形された繊維ボード10及びフィルム20を製造する。このとき、フィルム20は、繊維ボード10の上面側を覆う上面側フィルム20aと、繊維ボード10の下面側を覆う下面側フィルム20bとの2枚を別個に製造している。次いで、図3(B)に示す第2工程において、繊維ボード10の上下面を覆っているフィルム20aとフィルム20bとを真空中で接着する。最後に、図3(C)に示す第3工程において、鍔23を折り返し溶着すると共に、必要に応じフィルム20の接着剤層22を繊維ボード10に溶着させることで得られる。
[第1工程]
第1工程は、防湿繊維ボードの構成素材としての繊維ボード10とフィルム20とを製造する工程である。繊維ボード10は、周知の方法で繊維とバインダー樹脂とを混合してマット状に形成したものを、所望する形状に形成したプレス型で加熱プレスして賦形することで得られる。例えば、木質繊維により繊維ボードを製造する場合、微生物の作用を利用した生分解(レッティング)、高温の水蒸気を利用した蒸煮、高気圧状態から一気に大気圧まで気圧開放する爆砕、ディスクリファイナなどを用いる乾式開繊などによって木質植物の靭皮から繊維を採取する。そして、得られた繊維をカード機やエアレイ機などで解繊してウェブを形成し、必要に応じてフリースやニードルパンチなどで繊維同士を絡ませたり、コーミングによって繊維の配向を一定方向に揃えてバインダー樹脂を混合する。
繊維状のバインダー樹脂を混合する場合は、遠心法やメルトブロー法などの周知の方法で紡糸したバインダー樹脂を、混綿機などで繊維と混綿すればよい。粒状のバインダー樹脂を使用する場合は、繊維ウェブに散布若しくはエアー吹付けしたり、ローラーに付着させたバインダー樹脂粉体を電気印加によって塗布する方法などがある。バインダー樹脂を溶媒溶液として混合する場合は、木質繊維ウェブに溶媒溶液を噴霧したり、繊維ウェブを溶媒溶液に浸漬(ディッピング)したり、加圧して浸漬(含浸)したりできる。
そして、バインダー樹脂を混合された繊維ウェブをプレス(一次プレス)して繊維マットを得る。次いで、この繊維マットを所定寸法に裁断し、必要に応じて複数枚の繊維マットを重ねた後、図3(A)に示すごとく所定形状に型決めされたプレス機によって熱間でプレス(二次プレス)して形状を固定することで、所望する形状の凹凸が賦形された繊維ボード10が完成する。なお、図3は、第1〜第3それぞれの製造工程を概念的に表しており、後述の加熱炉(成形機)やこれに配設されるヒーター、及び真空機構などは図示していない。
フィルム20は、例えば、熱可塑性樹脂を押出成形など周知の方法によってフィルム状の合成樹脂層21を得た後、これの片面に接着剤を塗布することで接着剤層22を形成するか、または、合成樹脂層21と熱可塑性接着性樹脂を接着剤層22として押出ラミネート、ドライラミネート、共押出などの周知の方法によって積層することにより2層構造とすることができる。必要に応じて、前述のフィルム状の合成樹脂層21を所定寸法に裁断し、真空成形、圧空成形、真空圧空成形など周知の方法で上面側フィルム20a及び下面側フィルム20bをそれぞれ所定形状に成形し、次いでこれらの片面に接着剤を塗布するか、または前述の2層構造としたフィルム20を所定寸法に裁断し、前述の周知の方法で成形して用いることもできる。
[第2工程]
第2工程は、防湿繊維ボードを形成する工程である。具体的には、上記第1工程で得られた上面側フィルム20a、繊維ボード10及び下面側フィルム20bを、それぞれ上からこの順で第2工程用の真空ボックス内に図2に示す状態に重ね合わせる。すなわち、繊維ボード10をこれの上下(表裏)からフィルム20a・20bで挟み込む。このとき、上面側フィルム20aは、図3(A)の状態から上下反転させている。そして、真空ボックス内の空気を外部へ排出して真空状態を作る。次いで図3(B)に示すように、圧力または熱を与えるプレート31を押し当てることで、上面側フィルム20aと下面側フィルム20bとを接着させる。この後、真空ボックス内を大気開放することにより、繊維ボード10とフィルム20とが確実に密着する。このときの上面側フィルム20aと下面側フィルム20bとの溶着代が、繊維ボード10の外周より外側へ突出形成された鍔23となっている。必要に応じて、繊維ボード10全面を接着剤層22の軟化温度以上に昇温し、繊維ボード10とフィルム20とを接着させる。なお、ガラスクロス30は、プレート31で熱を与える場合に、これとフィルムとが接着されることを防ぐために設置されている。
[第3工程]
第3工程は、第2工程で得られた防湿繊維ボードを、実際に使用し易いように加工(後処理)する工程である。すなわち、上記第2工程で形成されたままの鍔23を、防湿繊維ボードの外周から突出しないよう面方向内側へ折り返して、超音波などで溶着することで完成する。このとき、フィルム20を折り返し易くするために、熱風を当てるなどしてある程度柔軟性を発現させておくとよい。
なお、防湿繊維ボードを実際に使用する場合は、防湿繊維ボードを基板や他の防湿繊維ボードに接合する必要があるが、これに対応させるためには、繊維ボード10の所定位置に予め接合用のビス孔などを設けたうえで真空被覆すればよい。この場合でも、真空被覆することによってフィルム20がビス孔の内周面にぴったり密着しているので、ビス孔部分にビスなどを通してフィルム20に孔が開いても、真空状態を確保できる。このとき、ビス孔にパッキンなどを嵌合させておけば、より確実に真空状態を確保できる。
(実施例)
[第1工程]
ケナフ繊維とフェノール樹脂とを重量比で7:3の割合で混合し、180℃でプレスして図1に示す形状に賦形した、厚み2mm、比重1.0の単層構造の繊維ボードを作製した。また、合成樹脂層21がナイロン層120μm、接着剤層22がポリエステル系熱可塑性樹脂層130μmの、総厚み250μmのフィルム20を共押出法により作製した。このフィルムを250℃に設定された上下2つのヒーター板から50mm離れた位置で12秒間加熱した後、真空成形により上面側フィルムと下面側フィルムを、それぞれ図3の20a、20bの形状に成形した。
[第2工程]
真空ボックス内を真空度60mmHgとし、2秒間保持した状態で、135℃のプレート31を3秒間押し当ててフィルム20同士を溶着した。さらに180℃の加熱ゾーンを15秒間かけて通過させて繊維ボード全体を加熱して繊維ボード10とフィルム20とを接着させた。このときの鍔23は、繊維ボード10の外周から外方へ約20mmの幅があった。
[第3工程]
最後に、鍔23を150℃の熱風を当てながら折り曲げて、超音波カシメ機にて溶着して完成させた。
(その他の実形態)
上記実施形態では、繊維ボード10及びフィルム20を予め所定形状に賦形したうえで真空被覆しているが、防湿繊維ボードの使用箇所(使用目的)によっては平板状のボードとしてもよい。この場合、上記実施形態のように二枚のフィルム20a・20bを用意せずとも、大きく裁断した一枚のフィルム20を折り畳んで、その間に繊維ボード10を挟み込むこともできる。
フィルム20を真空中で接着している限り、接着剤層22を設けない形態でも構わない。また、接着剤層22はフィルム20の外周部分のみ、すなわち繊維ボード10と当接しない部分のみに設け、フィルム20同士は真空中で接着剤により接着することもできる。
鍔23は下方(図面基準)に折り返してもよい。鍔23の外方突出量や防湿繊維ボードの使用方法によっては、必ずしも折り返す必要はなく、また、鍔23を折り返すとしても、繊維ボードの外周からの突出量を若干残した状態で折り返すこともできる。
上記実施形態では、フィルム10を接着する第2工程において、接着剤層22を加熱して繊維ボード10と接着させる工程を有するが、この工程は第3工程にて行ってもよい。この場合は、炉内温度によってフィルム10もある程度柔軟になっているので、鍔23を折り返し易くするために熱風などを当てる必要はなくなる。
防湿繊維ボードの一形態を示す断面図である。 防湿繊維ボードの構成を示す分解断面図である。 防湿繊維ボードの製造方法の一例を示す工程図である
符号の説明
10 繊維ボード
20 フィルム
21 合成樹脂層
22 接着剤層

Claims (9)

  1. 繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードであって、
    該繊維ボードが、非透水性のフィルムで真空状に被覆されていることを特徴とする防湿繊維ボード。
  2. 前記フィルムは複数積層構造となっており、
    前記繊維ボードと当接することとなる最内層には、接着剤層が設けられている請求項1記載の防湿繊維ボード。
  3. 前記繊維ボードは、前記フィルムで被覆される前に、少なくともその一部に凹凸が成形賦与されている請求項1又は2記載の防湿繊維ボード。
  4. 前記フィルムは、前記繊維ボードを被覆する前に、予め前記繊維ボードの形状に合わせた凹凸が成形賦与されている請求項3記載の防湿繊維ボード。
  5. 前記フィルムで前記繊維ボードを真空被覆した際に生じるフィルムの鍔が、面方向内側に折り返し溶着されている請求項1ないし4のいずれかに記載の防湿繊維ボード。
  6. 繊維とバインダー樹脂とを混合後プレス成形して成る繊維ボードの表面全体を被うように非透水性のフィルムを重ね、当該フィルムを真空中で接着することを特徴とする防湿繊維ボードの製造方法。
  7. 前記フィルムは、前記繊維ボードと当接することとなる最内層に、接着剤層を有する複数積層構造となっており、
    前記接着剤層を加熱してフィルムと繊維ボードとを接着させる工程を有する請求項6記載の防湿繊維ボードの製造方法。
  8. 前記繊維ボードを前記フィルムで真空被覆する前に、少なくとも前記繊維ボードの一部に凹凸を成形賦与し、前記フィルムを前記繊維ボードの形状に合わせた形状に凹凸成形しておく工程を有する請求項6または7記載の防湿繊維ボードの製造方法。
  9. 前記繊維ボードを前記フィルムで真空被覆した後、繊維ボードの外周より外側に突出形成されたフィルムの鍔を、面方向内側に折り返し溶着する工程を有する請求項6ないし8のいずれかに記載の防湿繊維ボードの製造方法。

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