JP3191486B2 - 熱硬化性繊維状バインダー及びその製造方法 - Google Patents

熱硬化性繊維状バインダー及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱硬化性繊維状バイン
ダーに関する。さらに詳しくは、無機及び有機繊維等の
シート化に使用するバインダーであって、形態が繊維状
であるために繊維への定着の歩留まりが良く、且つ耐熱
性、電気絶縁性に優れた熱硬化性の繊維状バインダーに
関する。
【0002】
【従来の技術】繊維状物をシート化する場合、セルロー
ス系の天然繊維は、バインダーなしに水を媒体とした抄
紙方法によりシートとしての強度を発現できる。しか
し、非セルロース系の無機及び有機等の繊維をシート化
するにはバインダーの使用は不可欠である。従来知られ
ているバインダーのうち、天然パルプ、合成パルプ等の
繊維状バインダーは、歩留まりは良いが、耐熱性に乏し
いという欠点がある。従って、ガラスやアラミド等の耐
熱繊維のバインダーとしては不適当である。
【0003】それに対して、耐熱繊維のバインダーとし
て、エポキシ等の耐熱樹脂の粉末やエマルジョンが用い
られている。しかし、これらのバインダーは繊維に内添
又はスプレーしたときの繊維への歩留まりが極めて悪い
という欠点がある。そこで、粉末樹脂の歩留まりを上げ
るためにカチオン性にした樹脂が、特公平4−4707
6号に開示されている。しかし、この樹脂を用いても、
歩留まりは依然として十分ではなかった。
【0004】バインダーの歩留まりを上げるためには、
バインダーとなる樹脂を繊維状にすることが好ましい。
ところが、熱可塑性樹脂であれば繊維化するのは容易で
はあるが、得られるバインダーも熱可塑性であり、耐熱
性に問題がある。一方、熱硬化性樹脂を繊維化できれ
ば、耐熱性の良いバインダーが得られると予想される。
しかし、一般に樹脂の繊維化は、樹脂を加熱溶融した後
に行われることから、熱硬化性樹脂については、この加
熱溶融の際にバインダーとして機能するに必要な熱硬化
性も失われてしまうと考えられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】樹脂を繊維化するに
は、まず樹脂を流動状態にしておき、次いで、この状態
で紡糸又はフラッシュする。ところが、バインダー繊維
の場合は常温では接着性を示さず、加熱したときに接着
性を示さねばならない。熱可塑性樹脂については、加熱
しても重合度は変化しないので、あらかじめ加熱接着性
の樹脂を選定しておき、加熱溶融して繊維化後冷却固化
すれば所望の接着性のバインダー繊維が得られる。しか
し、その代わりに加熱接着後に再加熱すると再度軟化溶
融するので耐熱性は不十分となる。
【0006】一方、熱硬化性樹脂は接着時の加熱により
重合が進行して硬化するので接着後に再加熱しても耐熱
性は充分である。しかし、その代わりに繊維化時の加熱
でも重合が進み、重合が進み過ぎると接着性を失ってし
まう。そのため、繊維化後、加熱接着性を残した状態で
重合を止めておく必要がある。
【0007】これまで熱硬化性と称するバインダー繊維
は、特開昭58−203117号や特開昭63−219
627号に開示されている。しかし、いずれのバインダ
ー繊維も、基本的には熱可塑性のポリエステルやオレフ
ィン−ビニルアルコール系の樹脂をベースとしいる。そ
して、これらのベース樹脂に紡糸温度以上で反応する多
価イソシアネートやブロックドイソシアネート化合物を
硬化剤として配合して繊維化(紡糸)している。接着時
には、繊維化温度以上の硬化反応が起こる温度に加熱す
るものである。従って、熱硬化性樹脂そのものを繊維化
したわけではない。しかも、硬化剤としてイソシアネー
ト化合物を使用しているので、これらのバインダー繊維
を用いて作成したシートは、電気絶縁性等の電気特性が
低下するという欠点を有する
【0008】そこで、本発明の目的は、バインダー繊維
として使用時の加熱接着性があり、即ち熱硬化性であ
り、接着後は硬化して耐熱性を発揮し、さらに電気特性
も良好である熱硬化性繊維状バインダー及びその製造方
法を提供することにある。
【0009】熱硬化性樹脂の硬化反応はベース樹脂の組
成、硬化剤、硬化温度、硬化時間等により大きく変わる
のでこれらの条件の選定は大切である。しかし、通常は
硬化を完全に終了した最後の樹脂物性により選定される
のが普通であって、硬化速度については樹脂の物性を損
ねなければ速い方が良いと言う程度の考慮しかされてい
ない。それに対して、樹脂の硬化速度をコントロール
し、硬化反応を二段に分けて前段は繊維化までとし、後
段を接着後完全硬化までとすることができれば、繊維状
バインダーを得ることも可能である。
【0010】しかし、これまでの熱硬化性樹脂では、硬
化速度のコントロールは特に考慮されておらず、従っ
て、従来一般に使用されている組成の熱硬化性樹脂で
は、繊維化しようとした場合でも硬化速度が速過ぎて、
繊維化された時点で既に硬化がほぼ完了していて殆ど接
着性を示さなかった。そこで本発明者らは熱硬化性樹脂
の硬化速度をコントロールするために、ベース樹脂、硬
化剤、樹脂組成物の性状、繊維化の方法等を種々検討し
て、熱硬化性でありながら熱接着性を有する繊維状バイ
ンダーを得ることに成功し本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、常温で固体で
ありかつ80℃以上の軟化点を有するエポキシ樹脂、常
温で固体である前記エポキシ樹脂の硬化剤、及び常温で
固体である硬化促進剤を含み、並びに形態が繊維状であ
る熱硬化性繊維状バインダーに関する。
【0012】さらに本発明は、常温で固体でありかつ8
0℃以上の軟化点を有するエポキシ樹脂、常温で固体で
ある前記エポキシ樹脂の硬化剤、及び常温で固体である
硬化促進剤との混合物を加熱溶融し、次いで、エポキシ
樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤との反応が実質的に起こ
らない間に溶融物を紡糸して繊維状物を得ることを特徴
とする、熱硬化性繊維状バインダーの製造方法に関す
る。加えて、本発明は、常温で固体でありかつ80℃以
上の軟化点を有するエポキシ樹脂と常温で固体である前
記エポキシ樹脂の硬化剤との混合物を加熱溶融し、次い
で、エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤との反応が
実質的に起こらない間に溶融物を紡糸して繊維状物を得
る熱硬化性繊維状バインダーの製造方法であって、前記
溶融物の紡糸を、紡糸温度におけるゲルタイムが10分
以上になる条件で行うことを特徴とする方法に関する。
【0013】以下本発明について説明する。本発明のバ
インダーは、エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤
び/又は硬化促進剤とを含む混合物である。エポキシ樹
脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹
脂、並びにノボラック型エポキシ樹脂であるフェノール
ノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾール型エポ
キシ樹脂を挙げることができる。本発明では、常温で固
体であり、かつ加熱溶融して紡糸可能なエポキシ樹脂を
適宜選択する。加熱溶融して紡糸可能であるという観点
から、融点が、例えば80〜150℃、好ましくは80
〜130℃の固体タイプのエポキシ樹脂を用いることが
適当である。融点が80℃以上のエポキシ樹脂を用いる
ことで、得られるバインダー繊維同志の付着により起こ
るブロッキングを防止できる。また、融点が150℃以
下、好ましくは130℃以下のエポキシ樹脂を用いるこ
とで、溶融樹脂の紡糸を比較的低い温度で容易に行うこ
とができる。
【0014】エポキシ樹脂の融点は、樹脂のエポキシ当
量、分子量に応じて変化する。ビスフェノールA型エポ
キシ樹脂についての目安は、エポキシ当量約600、分
子量約1100で融点80℃、エポキシ当量約200
0、分子量約3000で融点130℃、エポキシ当量約
3000、分子量約4000で融点150℃である。
【0015】ビスフェノールA型エポキシ樹脂として
は、油化シェルエポキシ製エピコート1002(600
〜700、83℃、約1060)、1003(700、
89℃)、1055(800〜900、95℃、約13
50)、1004(875〜975、98℃、約160
0)、1007(1750〜2200、128℃、約2
900)、1009(2400〜3300、148℃、
約3750)を例示できる。尚、括弧内は、樹脂のエポ
キシ当量、融点及び分子量である。
【0016】フェノールノボラック型エポキシ樹脂につ
いては、エポキシ当量225〜250のもので融点が7
7〜86℃であり、エポキシ当量225〜250のもの
で融点が87〜95℃である。オルソクレゾール型エポ
キシ樹脂については、エポキシ当量230のもので融点
が80℃であり、エポキシ当量230のもので融点が9
9℃である。
【0017】一方、エポキシ樹脂の硬化剤は、常温で固
体であり、かつ加熱によりエポキシ樹脂と硬化反応を起
こすものから選ばれる。そのような硬化剤としては、芳
香族第一アミン、変性アミン、酸無水物、ポリアミド樹
脂、合成樹脂初期縮合物、イミダゾール類等を例示でき
る。
【0018】芳香族第一アミンとしては、メタフェニレ
ンジアミン(融点62〜63℃)、ジアミノジフェニル
メタン(融点89℃)等を例示できる。変性アミンとし
ては、アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダク
ト)、ポリアミン−エチレンオキシド(ED)アダク
ト、ポリアミン−プロピレンオキシド(PO)アダク
ト、シアノエチル化ポリアミン、ケチミン(ケトイミ
ン)等を挙げることができる。
【0019】酸無水物としては、芳香族酸無水物、例え
ば無水フタル酸(融点128℃)、エチレングリコール
ビス(アンヒドロトリメリテート)(TME)(融点約
70℃)、グリセリントリス(アンヒドロトリメリテー
ト)(TMG)(融点約70℃)を挙げることができ
る。環状脂肪族酸無水物としては、例えば無水マレイン
酸(融点53℃)、無水コハク酸(融点120℃)、テ
トラヒドロ無水フタル酸(融点100℃)、メチルテト
ラヒドロ無水フタル酸(融点63℃)を挙げることがで
きる。酸無水物の市販品としては、エピクロンB−44
00(商品名、融点168℃、大日本インキ化学工業
製)を例示できる。
【0020】ポリアミド樹脂は、主としてダイマー酸と
ポリアミンの縮合により生成するものであり、分子中に
反応性の第一及び第二アミノ基を有するポリアミノアミ
ドである。ポリアミド樹脂としては、市販品として、ト
ーマイド210(富士化成製)、バーサミド100(ヘ
ンケル白水製)、サンマイド300(三和化成製)、ポ
リマイドL−10−3(三洋化成製)を例示できる。
【0021】合成樹脂初期縮合物として、フェノール樹
脂、アミノ樹脂等を用いることができる。フェノール樹
脂は、レゾール型とノボラック型があり、ノボラック型
の市販品としてはバーガム(融点80〜120℃)、プ
ライオーフェン(融点85〜135℃)〔いずれも商品
名、大日本インキ化学工業製〕を入手できる。
【0022】硬化剤として用いられるイミダゾール類と
しては種々のものが知られている。その中で、融点及び
硬化反応性等を考慮して選ばれる。例えば、2−エチル
−4−メチルイミダゾール(融点41℃)、2−ウンデ
シルイミダゾール(融点70〜74℃)、2−ヘプタデ
シルイミダゾール(融点86〜91℃)等を例示でき
る。
【0023】特に、硬化剤は、エポキシ樹脂との混合物
の紡糸温度におけるゲルタイムが10分以上となるもの
を選ぶことが、エポキシ樹脂と硬化剤との反応が実質的
に起こらない内に上記混合物を加熱溶融して得た溶融物
を紡糸するという観点から好ましい。さらに、硬化剤
は、エポキシ樹脂との混合物の170℃におけるゲルタ
イムが3分以下となるものを選ぶことが、熱接着性に優
れた熱硬化性繊維状バインダーが得られるという観点か
ら好ましい。但し、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物の
紡糸温度及び170℃におけるゲルタイムは、硬化剤の
種類以外に、硬化剤の量、後で説明する硬化促進剤の種
類と量によっても変化する。よって、硬化剤の量、硬化
促進剤の種類と量も、上記ゲルタイムを有するように調
整することが好ましい。
【0024】本発明の熱硬化性繊維状バインダーには、
エポキシ樹脂と硬化剤以外に、硬化促進剤を含む。本発
明においては、硬化促進剤は、エポキシ樹脂及び硬化剤
と同様に、常温で固体であるものを用いる。硬化促進剤
は、硬化剤の種類により異なる。例えば、硬化剤がフェ
ノール樹脂の場合、硬化促進剤としては、例えばトリフ
ェニルホスフィン(TPP)、2−メチル−4−エチル
イミダゾール(2M4EZ)、1,8−ジアザビシクロ
(5.4.0)−ウンデセン−7(DBU)及びオクチ
ル酸亜鉛等を例示できる。また、硬化剤が酸無水物の場
合には、硬化促進剤としては、例えばホウ酸エステル、
ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩、イミダゾー
ル等を挙げることができる。
【0025】以下本発明の熱硬化性繊維状バインダーの
製造方法について説明する。本発明の製造方法は、前記
エポキシ樹脂と硬化剤との混合物、又は前記エポキシ樹
脂と硬化剤と硬化促進剤との混合物(以下原料混合物と
いうことがある)を加熱溶融して得られた溶融物を紡糸
して繊維状物を得るものであるが、該溶融物の紡糸をエ
ポキシ樹脂と硬化剤との反応が実質的に起こらない間に
行うことが特徴である。本発明において、「エポキシ樹
脂と硬化剤との反応が実質的に起こらない」とは、エポ
キシ樹脂と硬化剤との反応が全く起こらないか、または
一部起こっても、バインダーとして十分な熱硬化性を有
する程度にしか反応が進んでいないことを意味する。具
体的には、例えば、紡糸して得られた繊維状物が紡糸温
度において10分以上のゲルタイムを有するような条件
で溶融物を紡糸することで、十分な熱硬化性を有するバ
インダーを得ることができる。
【0026】尚、ゲルタイムとは、熱硬化性樹脂組成物
の硬化完了までの時間を表すものであり、硬化速度を見
積もる数値である。ゲルタイムが短いと硬化反応の進行
が速く、硬化完了までの時間は短い。一方、ゲルタイム
が長いと硬化反応の進行が遅く、硬化完了までの時間は
長い。また、同一の組成を有する組成物については、測
定温度が低い程、ゲルタイムは長くなり、測定温度が高
くなる程、ゲルタイムは短くなる。
【0027】また、本発明のように、エポキシ樹脂と硬
化剤とが一部反応するよう場合には、ゲルタイムは未反
応のエポキシ樹脂と硬化剤の割合を計る尺度にもなる。
即ち、全く反応していない(紡糸前の)エポキシ樹脂と
硬化剤の紡糸温度におけるゲルタイムが11分であり、
紡糸後のバインダーの紡糸温度におけるゲルタイムが1
0分であれば、バインダー中の反応したエポキシ樹脂と
硬化剤とは極一部であることが分かる。
【0028】さらに、本発明のバインダーは、170℃
におけるゲルタイムが3分以下、好ましくは2分以下で
あることが好ましい。即ち、バインダーの使用温度に近
い温度である170℃におけるゲルタイムが短い程、硬
化反応速度がより早く、接着製に優れることを示すもの
である。
【0029】エポキシ樹脂と硬化剤との反応の開始温
度、及び反応の進行速度は、硬化剤の種類と量、並びに
硬化促進剤の種類と量によって変化する。また、エポキ
シ樹脂と硬化剤との反応の進行具合は、紡糸にかかる温
度及び時間(滞留時間)によっても変化する。よって、
本発明では、溶融紡糸の条件に応じて、エポキシ樹脂と
硬化剤と、必要により硬化促進剤の種類及び量を適宜決
定する。逆に、エポキシ樹脂と硬化剤と、必要により硬
化促進剤の種類及び量が決まると、使用できる溶融紡糸
方法も自ずと決まる。
【0030】繊維化のための紡糸の方式としては、押出
し方式である溶融紡糸方式及びメルトブロー方式、並び
に押出し以外の方式である遠心紡糸方式等を挙げること
ができる。但し、一般に押出し方式は、滞留時間が長い
ため、反応速度の速い混合物には適さない。
【0031】硬化反応の反応速度が速い原料混合物の場
合にも、「エポキシ樹脂と硬化剤との反応が実質的に起
こらない」間に紡糸をして、本発明のバインダーを得る
ことができる。むしろ、原料混合物の紡糸温度より硬化
反応の開始温度が低く、かつ硬化反応が速い混合物を用
いても、良好な加熱接着性を有する本発明のバインダー
を製造することができる。即ち、硬化反応の開始温度が
低く、かつ硬化反応が速い混合物を用いて得たバインダ
ーは、170℃におけるゲルタイムがより短く、一般に
熱接着性に優れている。
【0032】上記繊維化のための紡糸では、いずれの方
式においても繊維化に最適の溶融粘度範囲が存在する。
一般には繊維化時の溶融物の粘度は約5〜100ポイズ
の範囲であることが適当である。特に遠心紡糸方式にお
いては、溶融物の粘度を10〜50ポイズの範囲にする
ことが好ましい。
【0033】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに説明する。 実施例1 熱硬化性のベース樹脂(主剤)としてエポキシ樹脂を用
い、硬化剤としてノボラック型のフェノール樹脂を使用
した例について説明する。
【0034】まず、エポキシ樹脂として、融点83℃の
ビスフェノール(BPA)型エポキシ樹脂を用いエピク
ロン2055(大日本インキ化学工業製)6400gを
粗粉砕した。一方、硬化剤として、融点106℃のフェ
ノールノボラック樹脂、プライオーフェンVH−417
0(大日本インキ化学工業製)1180gと、硬化促進
剤としてトリフェニールフォスフィン(TPP)32g
を150℃で溶融混合し、冷却後乾式粉砕機にて粗粉砕
した。この二つを混合し、再度乾式粉砕機にて平均粒径
50μm程度まで微粉砕し、繊維化用樹脂原料とした。
この原料混合物の130℃(紡糸温度)におけるゲルタ
イムは15分、170℃におけるゲルタイムは2.5分
であった。
【0035】この繊維化用原料混合物を試験用遠心式紡
糸装置を用いて、樹脂原料投入量50g/分、紡糸温度
130℃、回転数3500回転/分の運転条件で繊維化
し、平均繊維径十数μm、長さは不定のエポキシ樹脂連
続繊維を得た。このエポキシ樹脂繊維は、最小限の熱履
歴で繊維化されているため、加熱すると速やかに溶融し
て接着性を示し、その後熱硬化して接着後は耐熱性を示
すようになった。このエポキシ樹脂繊維を用いてガラス
繊維不織布を作製した。その際のエポキシ樹脂繊維の歩
留りは約90%と高かった(通常のエマルジョン系の接
着剤の歩留りは約30〜40%)。得られたガラス繊維
不織布は実用上問題のない強度を有していた。さらに、
このガラス繊維不織布を用いてエポキシ樹脂積層板を作
製し、絶縁抵抗(D−2/100,PCT)を測定した
が、従来のものとほぼ同等の結果が得られた。
【0036】実施例2 主剤として、融点86℃のクレゾールノボラック型エポ
キシ樹脂、エピクロンN−680(大日本インキ化学工
業製)2150gと、硬化剤として、融点90℃のフェ
ノールノボラック樹脂、バーガムTD−2106(大日
本インキ化学工業製)1180g、硬化促進剤としてT
PP5gを用いたほかは実施例1と同様の条件で繊維化
を行い、同様に接着性の良好な繊維を得た。尚、原料混
合物の130℃(紡糸温度)におけるゲルタイムは13
分、170℃におけるゲルタイムは2分であった。
【0037】比較例1 主剤としてBPA型エポキシ樹脂、エピクロン1050
(融点69℃)を用い他の条件は実施例1と同様にして
繊維化を行った。しかし融点が低く粉砕時にブロッキン
グを生じ繊維化が困難であった。
【0038】
【発明の効果】本発明により耐熱性、電気絶縁性に優れ
た繊維状バインダーを得ることができ、耐熱性の無機、
有機繊維のシート化を効率よく行うことができるように
なった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 1/00 - 8/18 D01D 5/08 D04H 1/00 - 3/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】常温で固体でありかつ80℃以上の軟化点
    を有するエポキシ樹脂、常温で固体である前記エポキシ
    樹脂の硬化剤、及び常温で固体である硬化促進剤を含
    み、並びに形態が繊維状であることを特徴とする熱硬化
    性繊維状バインダー。
  2. 【請求項2】紡糸温度におけるゲルタイムが10分以上
    であり、かつ170℃におけるゲルタイムが3分以下で
    ある請求項1に記載の熱硬化性繊維状バインダー。
  3. 【請求項3】常温で固体でありかつ80℃以上の軟化点
    を有するエポキシ樹脂、常温で固体である前記エポキシ
    樹脂の硬化剤、及び常温で固体である硬化促進剤の混合
    物を加熱溶融し、次いでエポキシ樹脂と該エポキシ樹脂
    の硬化剤との反応が実質的に起こらない間に溶融物を紡
    糸して繊維状物を得ることを特徴とする熱硬化性繊維状
    バインダーの製造方法。
  4. 【請求項4】溶融物の紡糸を、紡糸温度におけるゲルタ
    イムが10分以上になる条件で行う請求項3に記載の製
    造方法。
  5. 【請求項5】常温で固体でありかつ80℃以上の軟化点
    を有するエポキシ樹脂と常温で固体である前記エポキシ
    樹脂の硬化剤との混合物を加熱溶融し、次いで、エポキ
    シ樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤との反応が実質的に起
    こらない間に溶融物を紡糸して繊維状物を得る熱硬化性
    繊維状バインダーの製造方法であって、前記溶融物の紡
    糸を、紡糸温度におけるゲルタイムが10分以上になる
    条件で行うことを特徴とする方法。
  6. 【請求項6】エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂との混合
    物、又はエポキシ樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤と硬化
    促進剤との混合物を加熱溶融して粘度が5〜100ポイ
    ズの溶融物とし、該溶融物を遠心紡糸する請求項3〜5
    のいずれか1項に記載の製造方法。
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JP6715474B2 (ja) * 2016-04-13 2020-07-01 パナソニックIpマネジメント株式会社 接着シートおよびその製造方法

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