JP3187876B2 - 少なくとも一部が金属間化合物からなる複合材の接合方法 - Google Patents

少なくとも一部が金属間化合物からなる複合材の接合方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも一部が例え
ばTi−Al系などの金属間化合物からなる複合材を製
造する際に適用される複合材の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属間化合物は耐熱性,耐酸化性,耐摩
耗性等に優れしかも軽量に構成でき、また、超電導等の
機能性を有するなどの優れた性質をもつため、各種用途
に使われる素材としてきわめて有望視されている。
【0003】金属間化合物の例として、Ti−Al系,
Ni−Al系,Ni−Ti系,Co−Ti系,Fe−A
l系,Mo−Al系,Mo−Si系,Nb−Al系,T
i−Si系等の2元系や、Fe−Al−Si系,Al−
Ga−As系等の多元系が知られている。具体的には、
構造材として、TiAl,Ti3 Al,Al3 Ti,C
3 Ti,Ni3 Al,NiAl,FeAl,Mo3
8 ,MoSi2 ,Nb3 Al,Ti5 Si3 等が知ら
れている。また形状記憶効果を有するTiNi,CuZ
n等や、超電導材料としてNb3 Sn,V3 Ga,Nb
3 Ga,Nb3Ge等、磁性材料としてFe3 (AlS
i)、SmCo5 、半導体及びその他の機能性材料とし
てInSb,GaAs,Bi2 Te3 ,ZnSe等、そ
の他にも多くのものがある。
【0004】金属間化合物を利用する製品例としては、
高温で使用される外壁材や、タ−ビン部材、ピストンや
バルブシステム等のエンジン部品、弾性部材、あるいは
超電導等の各種金属間化合物に固有の優れた性質を生か
した機能部品などが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】金属間化合物は上記の
ように優れた性質を有する反面、接合に困難を伴う。例
えば、電子ビ−ム溶接法によって接合を行なう場合、溶
接部において結晶粒の粗大化を生じたり、実用上無視で
きない程大きな欠陥が生じることがある。ろう付けや接
着剤による接合も考えられるが、接合部の耐熱性や機械
的性質や固有の機能性等が母材よりも劣る。
【0006】また、接合部を加圧しつつ加熱することに
よって高温下で接合させることも考えられるが、接合部
が軟化する温度まで加熱されると所定の形状を維持する
ことが困難となる。
【0007】従って本発明の目的は、少なくとも一部が
金属間化合物からなる複合材を高品質かつ比較的容易に
接合でき、接合時の加熱温度が比較的低くてすみ、しか
も接合部が優れた性能を発揮できるように接合部の組
織,欠陥等の制御がなされた複合材の接合方法を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を果たすために
開発された本発明は、金属間化合物からなる第1の部材
を第2の部材に接合する場合に、上記第1の部材と第2
の部材との接合界面に、上記金属間化合物の少なくとも
1つの成分と同じ成分を主とするインサート材を介在さ
せた状態でこれらを加圧するとともに第1の温度に加熱
することにより上記第1および第2の部材とインサート
材とを互いに固着させる加圧接合工程と、上記加圧接合
工程を行ったのちに上記第1および第2の部材とインサ
ート材との接合部を金属間化合物が形成される第2の温
度まで加熱することにより、上記インサート材が設けら
れていた箇所を全て金属間化合物に変化させる熱処理工
程とを具備している
【0009】第1の部材は、Al原子等を含む金属間化
合物からなる。本発明におけるインサート材に使われる
材料は、上記金属間化合物の少なくとも1つの成分と共
通の成分、例えば金属間化合物にAl原子が含まれてい
る場合にはAl箔のように薄く均一なAl材が適してい
る。ただしこのインサート材は、純金属の塊である必要
はなく、合金あるいは固溶体であってもよいし、めっき
等によってつくられた複合体であってもよい。
【0010】このインサート材は、第1の部材あるいは
第2の部材の接合界面に、めっきや溶射、蒸着等によっ
て被着させてあってもよい。第2の部材は、金属間化合
物や合金あるいは高融点金属,半導体,セラミックスの
ように耐熱性や機能性を有するものからなる。
【0011】上記部材を加熱する工程において、ホット
プレス(HP),等方圧プレス加工(HIP)等の適宜
の方法で加圧するとよい場合がある。その際に一軸プレ
スあるいは二軸プレス等によって接合部を特定の方向か
ら部材の自重以上に加圧することにより、金属間化合物
形成時の接合部に剪断応力を伴う流動を生じさせると、
更に好ましい結果が得られることがある。
【0012】
【作用】第1の部材と第2の部材は、箔等の所定の形状
に加工されたインサート材を介して重合され、加圧接合
工程において加圧されるとともに第1の温度に加熱され
ることによって、第1および第2の部材とインサート材
とが互いに固着する。この加圧接合工程を行ったのち、
熱処理工程において、上記第1の温度よりも高い第2の
温度、すなわち金属間化合物が形成される第2の温度ま
で接合部を加熱することにより、インサート材が設けら
れていた箇所が全て金属間化合物に変化する。この熱処
理工程によって、第1の部材と第2の部材の接合部にお
いてAl箔等のインサート材が反応し、接合部に金属間
化合物が形成されると同時に、金属間化合物形成時の発
熱もしくは自己燃焼反応熱により、第1の部材と第2の
部材とが接合される。
【0013】本発明におけるインサート材は、第1の部
材および第2の部材の接合界面に対して均一な単一の成
分のみが接するため、接合界面での変形や密着および拡
散や反応が均一となる。
【0014】
【実施例】以下に本発明の一実施例について、図1ない
し図5を参照して説明する。図1に示されるように、本
実施例では、(TiAl+Ti3 Al)等の金属間化合
物からなる第1の部材11と、同じく金属間化合物から
なる第2の部材12を、インサート材13を介して接合
することにより、図2に示されるような複合材Aを製造
する。製造工程の一例が図3に示されている。
【0015】第1の部材11と第2の部材12は、それ
ぞれ、Ti−Al系の金属間化合物(TiAl+Ti3
Al)からなる。第1の部材11と第2の部材12を製
造するには、以下の製造方法を採用することができる。
【0016】ガスアトマイズ法により作製した 350メッ
シュ以下のAl粉末と 350メッシュ以下のスポンジTi
粉末を、重量分率でTi:Al=68.4%:31.6
%の割合で、Arガス置換された乾式ボ−ルミルを用い
て混合する。そののち、金型プレスあるいはパイプに詰
めてスェ−ジング加工するなどして、所望形状の混合圧
着体を得る。この混合圧着体を熱処理することによっ
て、金属間化合物(TiAl+Ti3 Al)からなる第
1の部材11と第2の部材12が得られる。第1および
第2の部材11,12の組成は、Ti−48at%Alで
ある。
【0017】上記工程を経て得られた第1の部材11と
第2の部材12との間に、インサート材13を設け、
接合工程21を実施する。この場合、各部材11,1
2とインサート材13を互いに密接させた状態で仮止め
するとよい場合がある。仮止め方法としては、線材で縛
ったり、凹凸嵌合、圧接、摩擦圧接、接着剤、ろう付
け、ボルト止め等が採用される。
【0018】インサート材13は、上記金属間化合物の
少なくとも1つの成分と共通の成分を主とする均一な箔
などからなり、本実施例のTi−Al系金属間化合物で
は、Al箔が採用される。このAl箔の厚さの一例は1
0μmであるが、必要に応じて適宜の厚さのものを選定
して使用する。
【0019】加圧接合工程21において、上記部材1
1,12とインサート材13を、図示しない加熱装置に
よって、例えば真空雰囲気中で第1の温度(例えば75
0℃・1hour)の条件で加熱するとともに、例えば5kg
/mmの圧力で加圧を行う。
【0020】図4に、上記加圧接合工程21を実施した
のちの組織の一例を示す。図4において、図示右側に位
置する第1の部材11と、図示左側に位置する第2の部
材12との間に、前記インサート材13のAl箔からな
るAlリッチ層13′が存在し、このAlリッチ層1
3′が母材(TiAl+Ti3 Al)と良好に反応して
いる。
【0021】上記加圧接合工程21によってAlリッチ
層13′(インサート層25)を介して接合された第1
の部材11と第2の部材12を、熱処理工程30におい
てアルゴンガスフロー雰囲気中で、金属間化合物が形成
される第2の温度(例えば1200℃で2時間)の加熱
を行う。
【0022】上記熱処理工程30によって、インサ−ト
層25が部材11,12の接合部において反応し、金属
間化合物を形成すると同時に発熱し、第1の部材11と
第2の部材12との接合界面において拡散結合すること
などにより一体化する。
【0023】図5は上記熱処理後の接合部を示す顕微鏡
写真である。この写真に見られるように、熱処理後はA
lが拡散によってきれいに接合し、強度も高いものが得
られる。接合部は全て金属間化合物からなり、Al(金
属)は残っていない。
【0024】図5において中央部付近がインサート材1
3が設けられていた箇所であり、この箇所を含む接合部
は実質的に母材としての第1の部材11および第2の部
材12と連続している。従って母材および接合部は共に
優れた耐熱性と耐酸化性を発揮し、しかも接合強度がき
わめて大きい。
【0025】なお、上記熱処理工程30における加熱温
度は、インサート材13の厚さ等の条件に応じて変化す
るので、実施例に限らない。また、場合によっては、熱
処理工程30を実施しなくとも、加圧接合工程21にお
ける加熱のみで、金属間化合物を形成することができる
ことがある。
【0026】第1の部材11と第2の部材12が、本実
施例のようなTi−Al系の金属間化合物の場合、イン
サート材13としてAl箔を用いれば熱処理温度がかな
り低くてすむ。この実施例のようなTi−Al系の場
合、高強度な複合材を得るためには、真空雰囲気中で加
熱を行なうのが特によい。大気中で行なうと酸化が進行
し、強度が低下する場合がある。
【0027】加熱は、炉を用いて全体を加熱してもよい
が、接合部を局部的に加熱する方が簡便であり、母材と
しての第1の部材11と第2の部材12の変形を抑制す
る上でも有利である。局部的な加熱方法としては、燃焼
ガスあるいはヒ−タ等による外部の熱源を用いる方法
や、ア−ク、電気抵抗加熱、高周波誘導加熱、摩擦発熱
等のように部材自身を発熱させる方法もある。
【0028】加圧接合工程21および熱処理工程30
は、大気中で行ってもよいが、前記実施例で述べたよう
に不活性ガスあるいは真空雰囲気や酸化還元雰囲気等の
ガス中で行えば更に好ましい結果が得られることがあ
る。また、これらの雰囲気を組合わせてもよい。特に局
部的に加熱する場合は、ガスアーク,金属被覆アーク溶
接等の通常の溶接に用いられる雰囲気制御が有効であ
る。また、ろう付け等に用いられる溶剤やフラックス等
を用いてもよい。
【0029】なお、必要があれば熱処理工程30の終了
後に、鍛造等の適宜の加工工程31を実施することによ
り、母材と接合部の欠陥、偏析の改善、不純物の分散等
を図ってもよい。
【0030】また、熱処理工程30によって金属間化合
物の形成と接合がなされた後、必要に応じて上記雰囲気
を維持した状態で例えば1100℃に保持し、3時間の
仕上げ熱処理工程32を行ってもよい。その処理温度
は、金属間化合物の固相線以下の温度域が望ましい。特
に、Ti−Al系の場合は700℃以上が望ましい。こ
れ以下の温度では、十分な拡散が進行しない。
【0031】上述した仕上げ熱処理工程32は大気中で
行ってもよいが、不活性ガスあるいは酸化還元雰囲気等
のガス中で行えば更に好ましい結果が得られることがあ
る。また、材料によっては加圧しない状態でこの仕上げ
熱処理工程32を実施してもよい。
【0032】仕上げ熱処理工程32を行うことによっ
て、複合材Aに含まれる空孔を更に減少させることがで
きるとともに、組織の均一化が促進され、接合歪の除
去、更には不純物の拡散もしくは不純物の除去が図れ
る。この熱処理工程32の実施によって、結晶粒の大き
さや金属間化合物組織または析出物の調整をすることも
可能である。
【0033】上記一連の工程によって、第1の部材11
と第2の部材12が一体化された複合材Aが得られた。
この複合材Aは、母材および接合部がいずれも金属間化
合物(TiAl+Ti3 Al)からなる。
【0034】なお、仕上げ熱処理工程32の終了後に仕
上げ加工35を行ってもよい。例えばバレル加工等によ
って複合材Aの表面を滑らかなものにする。あるいは機
械加工等によって表面の研磨を行うとか、表面傷,表面
層等の除去あるいは切断,研削加工等により形状の修
正、追加を行ったり、前記インサ−ト層25のはみ出し
た箇所を除去する。また、ショットピ−ニング等を行う
ことにより、複合材Aの表層部に圧縮残留応力を生じさ
せれば、複合材Aの耐久性を更に高めることができる。
【0035】前記実施例における第2の部材12は、N
i,Ni合金,インコネル等のNi基耐熱合金,Ti,
Ti合金,Al,Al合金、Nb,Ta等の高融点金
属、Si等の半金属、あるいは前記実施例以外の金属間
化合物(Al3Ti等)、アルミナ,窒化けい素,炭化
けい素等のセラミックス等の無機材料でもよいし、耐熱
プラスチック等の有機材料でも適用できる場合がある。
また、第1の部材11と第2の部材12とインサート材
13にそれぞれ共通元素が含まれていればなおよい。
【0036】なお、上述したTi−Al系の金属間化合
物の場合には、インサート材13としてAl箔以外にT
i箔を用いることができる場合がある。Ti箔を用いた
場合には熱処理後にTi(金属)が接合部に残ることが
あるが、その場合にもかなりの接合強度が得られる。
【0037】要するに本発明では、互いに接合される第
1の部材11と第2の部材12の少なくとも一方を構成
する金属間化合物の成分をもつ箔等の均一なインサート
材13を用いればよい。また本発明は、前記実施例で示
したものに限らず、Ti−Al系の他の組成についても
適用できる。また本発明は、他の金属間化合物を形成す
る系についても適用できる。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、金属間化合物からなる
第1の部材を第2の部材に接合する場合に、まず加圧接
合工程においてこれらを加圧するとともに第1の温度に
加熱することによって第1および第2の部材とインサー
ト材とを互いに固着させ、そののち熱処理工程において
接合部全てが金属間化合物に変化する第2の温度まで加
熱する。上記加圧接合工程において第1および第2の部
材とインサート材とを互いに十分密着させておくことが
できるため、上記熱処理工程の際には加圧力を弱めた状
態で金属間化合物を形成することができる。このため金
属間化合物形成時に接合部を変形させてしまうことがな
く、金属間化合物からなる第1の部材を第2の部材に強
固に接合させることができ、接合温度が低いにもかかわ
らず欠陥の発生が抑制されかつ強度の高い良好な接合部
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に使用する部材を模式的に示す側面
図。
【図2】本発明方法によって製造された複合材を模式的
に示す側面図。
【図3】本発明方法の一実施例を示す工程説明図。
【図4】本発明の一実施例方法によって製造される複合
材の熱処理前の金属組織を2300倍に拡大して示す顕
微鏡写真。
【図5】本発明の一実施例方法によって製造された複合
材の接合部付近の金属組織を550倍に拡大して示す顕
微鏡写真。
【符号の説明】
11…第1の部材、12…第2の部材、13…インサー
ト材(Al箔)、A…複合材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−200382(JP,A) 特開 平3−161165(JP,A) 特開 平4−367382(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 20/00 - 20/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属間化合物からなる第1の部材を第2の
    部材に接合する場合に、 上記第1の部材と第2の部材との接合界面に、上記金属
    間化合物の少なくとも1つの成分と同じ成分を主とする
    インサート材を介在させた状態でこれらを加圧するとと
    もに第1の温度に加熱することにより上記第1および第
    2の部材とインサート材とを互いに固着させる加圧接合
    工程と、 上記加圧接合工程を行ったのち上記第1および第2の部
    材とインサート材との接合部を金属間化合物が形成され
    る第2の温度まで加熱することにより上記インサート材
    が設けられていた箇所を全て金属間化合物に変化させる
    熱処理工程と、 を具備した ことを特徴とする少なくとも一部が金属間化
    合物からなる複合材の接合方法。
  2. 【請求項2】上記金属間化合物がAl原子を含む場合に
    上記インサート材にAl箔を用いるようにした請求項1
    記載の少なくとも一部が金属間化合物からなる複合材の
    接合方法。
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