JP3186633B2 - 接着性に優れた潤滑処理鋼板とその製造方法 - Google Patents

接着性に優れた潤滑処理鋼板とその製造方法

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JP3186633B2
JP3186633B2 JP05344397A JP5344397A JP3186633B2 JP 3186633 B2 JP3186633 B2 JP 3186633B2 JP 05344397 A JP05344397 A JP 05344397A JP 5344397 A JP5344397 A JP 5344397A JP 3186633 B2 JP3186633 B2 JP 3186633B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材その他の土木
・建築用に、或いは自動車、家電製品、産業機器等に使
用する素材として好適な、接着性に優れ、汎用の接着剤
で接着可能な潤滑処理鋼板およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】鋼板をプレス成形等により加工する際に
は、滑り不足による鋼板またはプレス金型の傷つきを防
止するために、プレス油を塗布することが一般に行われ
ている。塗布されたプレス油は、加工後の脱脂工程で脱
脂される。この脱脂には、特定フロンである 1,1,1−ト
リクロロエタン等の有機溶剤が使用されてきた。しか
し、特定フロン類は、1988年に成立した国内法により使
用が全廃されている。また、その他の有機溶剤の使用
も、作業環境および排液処理の問題から、なるべく使用
しない方向になっている。
【0003】そこで近年、特に家電製品や自動車等のメ
ーカーにおいては、プレス油を塗布せずに加工できる潤
滑処理鋼板が使用されるようになってきた。この潤滑処
理鋼板は、プレス油塗布工程と脱脂工程が省略でき、脱
脂時のフロン等の有機溶剤の問題を回避できる上、プレ
ス作業場の環境改善や工程省略化によるコストダウンの
点でも効果のあることから、そのニーズが高まってい
る。
【0004】一般に、潤滑処理鋼板は、比較的安価で耐
食性に優れた亜鉛系めっき鋼板を母材とし、これに潤滑
性に優れた樹脂皮膜を形成したものである。樹脂皮膜中
に固形潤滑剤を添加して皮膜に潤滑性を付与することが
行われている。固形潤滑剤としては、ワックス類、無機
層状物質 (例、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素
等) 、低摩擦係数の有機プラスチック類 (例、フッ素樹
脂、ポリエチレン) 、金属セッケン等が使用されてい
る。
【0005】これまでに提案された潤滑処理鋼板として
は、例えば下記のものがある。 ウレタン化エポキシエステル樹脂、シリカ粉末、親水
性ポリアミド樹脂およびポリエチレンワックスを含有す
る有機溶剤型塗料組成物を 0.3〜5μmを塗布したカチ
オン電着塗装性に優れた有機複合鋼板 (特開昭63−3579
8 号公報) 。 アクリル化エポキシ樹脂中にフッ素樹脂およびシリカ
微粒子を含有する樹脂皮膜が形成されている、プレス加
工性に優れた樹脂塗装鋼板 (特開平3−96337 号公報)
【0006】クロメート皮膜の上にフッ素樹脂粒子と
シリカ微粒子とを含有するモンタンワックス酸化物のエ
マルジョンを塗布した、潤滑性と耐食性に優れる表面処
理鋼板(特開平3−17190 号公報) 。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】固形潤滑剤を含有する
潤滑性樹脂皮膜を形成した、上述したような従来の潤滑
処理鋼板は、表面の摩擦係数が低く、プレス油を塗布せ
ずに加工することができる反面、表面の滑り性がよいた
め、接着性が悪くなる傾向がある。そのため、この種の
潤滑処理鋼板は、外観が美麗で、穴あけ等の煩雑な工程
が不要といった種々の利点を有する接着剤を用いた接合
を適用することができず、かしめ、ボルト等による機械
的接合や、スポット溶接等で接合するのが一般的であっ
た。
【0008】本発明は、このような状況に鑑み、プレス
油を塗布せずに加工できる (従って、脱脂工程が不要
な) 潤滑性を備え、同時に接着性にも優れていて、接着
剤により接合することができる、潤滑処理鋼板とその製
造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
の解決を目指して検討を重ねた結果、クロメート処理し
た亜鉛系めっき鋼板の表面に、固形潤滑剤としてワック
スを含有する樹脂皮膜を形成し、その際に皮膜の焼付け
温度を、ワックスが焼付け中に溶融しないように低く設
定すると、皮膜表面に現れるワックスを少なくすること
ができ、接着剤で接着可能な潤滑皮膜になることを知っ
た。また、接着性をさらに高めるには、ワックスに加え
て珪酸ナトリウム等のアルカリ金属珪酸塩の添加が有効
であることも判明した。
【0010】本発明は、これらの知見に基づいて完成し
たものであり、下記の(1) 〜(6) からなる。 (1) 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、Cr換算付着
量が5〜80 mg/m2のクロメート皮膜を有し、その上にワ
ックス5〜30量%を含有する膜厚 0.1〜5μmの潤滑性
有機樹脂皮膜を有し、該潤滑性有機樹脂皮膜が、最高到
達板温度が該ワックスの融点より30℃以上低い温度で塗
膜を焼付けて得られたことを特徴とする、接着性に優れ
た潤滑処理鋼板。
【0011】(2) 前記潤滑性有機樹脂皮膜がさらにアル
カリ金属珪酸塩 0.3〜7重量%を含有する上記(1) 記載
の潤滑処理鋼板。 (3) 前記ワックスの融点が 100℃以上である、上記(1)
または(2) 記載の潤滑処理鋼板。
【0012】(4) 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面
に、クロメート処理を施してCr換算付着量が5〜80 mg/
m2のクロメート皮膜を形成した後、その上に、不揮発分
合計量に基づいて5〜30重量%のワックスを含有する水
性有機樹脂塗料を塗布し、最高到達板温度が該ワックス
の融点より30℃以上低い温度で塗膜を焼付けて膜厚 0.1
〜5μmの潤滑性有機樹脂皮膜を形成することを特徴と
する、接着性に優れた潤滑処理鋼板の製造方法。
【0013】(5) 前記水性有機樹脂塗料が、不揮発分合
計量に基づいて 0.3〜7重量%のアルカリ金属珪酸塩を
さらに含有する上記(4) 記載の方法。 (6) 前記ワックスの融点が100 ℃以上であり、塗布をロ
ールコータにより連続的に実施する、上記(4) または
(5) 記載の方法。 本発明において、「亜鉛系めっき鋼板」とは、亜鉛めっ
き鋼板と亜鉛合金めっき鋼板とを包含する意味である。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の潤滑処理鋼板の母材は、亜鉛系めっき鋼板であ
る。亜鉛系めっき鋼板は、溶融めっき、電気めっき、気
相めっきのいずれのめっき法により製造したものでもよ
い。また、2層以上のめっき皮膜を有するものでもよ
く、その場合には、少なくとも1層のめっき皮膜が亜鉛
系めっき皮膜であればよい。前述したように、亜鉛系め
っきは、純亜鉛めっきでも、亜鉛合金めっきでもよく、
亜鉛合金めっきの場合、亜鉛の含有量は50%を下回って
いてもよく、合金元素は特に制限されないが、代表的に
は、Ni、Fe、Al、Co等である。
【0015】本発明において、母材として好ましい亜鉛
系めっき鋼板の例としては、電気亜鉛めっき鋼板、電気
Zn−Ni合金めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶
融亜鉛めっき鋼板、溶融Zn−5%Al合金めっき鋼板、溶
融Zn−55%Al合金めっき鋼板等が挙げられる。
【0016】亜鉛系めっき皮膜の付着量は特に制限され
ないが、少なすぎると耐食性が不十分となり、多すぎる
と加工性が低下する傾向があることから、通常は10〜15
0 g/m2の範囲が好ましい。より好ましい範囲は、電気め
っきでは15〜40 g/m2 、溶融めっきでは30〜140 g/m2
ある。
【0017】亜鉛系めっき鋼板のめっき皮膜の上に、ク
ロメート皮膜を形成する。亜鉛系めっき皮膜の上に形成
したクロメート皮膜は、周知のように耐食性、特に耐白
さび性を改善する作用がある。それに加えて、本発明で
は、最上層の潤滑性樹脂皮膜の密着性もクロメート皮膜
により改善される。即ち、クロメート皮膜を介在させず
に、亜鉛系めっき皮膜の上に潤滑性樹脂皮膜を直接形成
した場合には、耐食性も著しく低下するが、樹脂皮膜の
密着性が確保されず、加工中に樹脂皮膜が剥離して、目
的とする潤滑性も得られなくなる。
【0018】クロメート皮膜は、塗布型、反応型、電解
型等の任意の方法で形成することができる。使用するク
ロメート処理液にも特に制限はないが、好ましいクロメ
ート処理液は、耐食性および樹脂皮膜の密着性のいずれ
にも優れている、コロイダルシリカを含有する塗布型ク
ロメート処理液である。塗布型クロメート処理液は、造
膜を促進させるため、予め部分還元させた2段還元型の
ものでもよい。また、クロメート処理液は、慣用の1種
もしくは2種以上の添加剤 (例、フッ酸、ケイフッ酸等
の含フッ素酸、リン酸、水性樹脂等) を少量含有してい
てもよい。
【0019】塗布型クロメート処理液の場合には、これ
をめっき皮膜上に塗布した後、乾燥してクロメート皮膜
を形成する。この時の加熱温度は最高到達板温で30〜10
0 ℃の範囲が普通である。
【0020】クロメート皮膜の付着量は、Cr換算の量で
5〜80 mg/m2とする。この付着量が5mg/m2 未満では前
述したクロメート皮膜の効果が不十分であり、80 mg/m2
を超えると、それ以上の耐食性の向上が得られないため
不経済である上、加工性も低下する。クロメート皮膜の
好ましい付着量は、Cr換算で10〜60 mg/m2である。
【0021】クロメート皮膜の上に、潤滑性の有機樹脂
皮膜を形成する。この有機樹脂皮膜には、皮膜の摩擦係
数を低減させ、潤滑性を確保するために、ワックスを含
有させる。有機樹脂皮膜へのワックスの添加が、皮膜の
摩擦係数の低下の有効であることは周知であり、従来の
潤滑処理鋼板でもワックスの添加が行われてきた。しか
し、ワックスの添加は同時に接着性の低下を招き、接着
剤による接着を不可能にする。即ち、潤滑性と接着性は
両立しがたかった。
【0022】本発明では、有機樹脂皮膜にワックスを添
加するものの、後で詳しく説明するように、皮膜の焼付
け温度をワックスの融点より30℃以上低い温度とするこ
とで、ワックスが焼付け中にほとんど溶融することがな
く、ワックスの皮膜表面での広がりを防ぐことができる
ので、潤滑性に加えて、接着剤による接着が可能な接着
性も兼ね備えた皮膜が得られる。なお、有機樹脂皮膜中
のワックスが焼付け中に実質的に溶融していないこと
は、皮膜表面の顕微鏡観察により、ワックス粒子周囲に
ワックスの広がりがほとんどないことで確認することが
できる。
【0023】また、このワックスを含有する有機樹脂皮
膜に珪酸ナトリウム等のアルカリ金属珪酸塩を添加する
と、皮膜の潤滑性を実質的に保持したまま、その接着性
をさらに高めることができる。
【0024】樹脂皮膜のベース樹脂種は特に制限され
ず、従来より鋼板の被覆、特に潤滑処理鋼板に使用され
てきた任意の樹脂種を使用できる。好ましい樹脂として
は、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステ
ル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0025】ワックスは、パラフィンワックスのような
天然ワックスでもよく、或いはポリエチレンワックスや
ステアリン酸エステルのような合成ワックスでもよい
が、いずれの場合も通常は球形粉末状である。ワックス
の平均粒径は樹脂皮膜の膜厚と同じか、それよりやや小
さいか大きい程度がよく、通常は 0.5〜3.0 μmの範囲
内が好ましい。本発明で用いるワックスは、後述するよ
うに、融点が100 ℃以上のものが好ましい。
【0026】ワックスは、樹脂皮膜中に5〜30重量%の
割合で存在させる。ワックスの量が5重量%より少ない
と潤滑性の向上が少なく、30重量%を超えると、樹脂皮
膜の下地クロメート皮膜への密着性が低下する上、樹脂
皮膜の強度が低下し、外観も劣化する。好ましいワック
スの量は8〜20重量%である。
【0027】アルカリ金属珪酸塩としては珪酸ナトリウ
ムが好ましいが、珪酸リチウム、珪酸カリウム等の他の
アルカリ金属珪酸塩も使用できる。以下では、珪酸ナト
リウムで代表させて説明する。
【0028】珪酸ナトリウムは、例えば、オルト珪酸ナ
トリウム(Na4SiO4) 、メタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3) 、
二珪酸ナトリウム (Na2Si2O5) 、四珪酸ナトリウム (Na
2Si4O9) などのいずれでもよく、またこれらの水和物で
もよい。さらに、組成不定の珪酸ナトリウム (Na2O・nS
iO2)の濃厚水溶液である水ガラスも使用できる。この中
で好ましいのは、オルト珪酸ナトリウムである。
【0029】珪酸ナトリウム(水和物の場合には水を除
いた量)を添加する場合には、樹脂皮膜中に 0.3〜7重
量%の割合で存在させることが好ましい。この量が0.3
重量%より少ないと樹脂皮膜の接着性向上効果が十分に
得られず、7重量%を超えるとコスト高になる上、ベー
ス樹脂の架橋を妨げ、耐食性が劣化する。珪酸ナトリウ
ムの好ましい量は 0.5〜2重量%である。
【0030】潤滑性有機樹脂皮膜の膜厚は 0.1〜5μm
とする。樹脂皮膜の膜厚が0.1 μm未満では、潤滑性お
よび耐食性向上効果が少なく、5μmを超えると、耐食
性は向上するが、プレス成形性が低下し、コストも増大
する。好ましい樹脂皮膜の膜厚は 0.5〜4μmである。
【0031】上記の樹脂皮膜は、不揮発分合計量に基づ
いて、5〜30重量%のワックスと、好ましくは 0.3〜7
重量%の珪酸ナトリウムとを含有する有機樹脂塗料を、
亜鉛系めっき鋼板上のクロメート皮膜の上に塗布するこ
とにより形成することができる。この塗料は、水溶性の
珪酸ナトリウムが塗料の溶媒に溶解するように、水性塗
料とする。塗料の溶媒は、好ましくは水単独であるが、
水と水混和性有機溶媒(例、アルコール) との混合溶剤
でもよい。水性塗料は、水溶性有機樹脂を溶媒に溶解さ
せたものでもよいが、好ましいのは有機樹脂をエマルジ
ョン化した水性エマルジョン樹脂塗料である。
【0032】珪酸ナトリウムを含有させる場合には、水
性塗料の液性はpH7以上のアルカリ性とすることが好
ましい。
【0033】水性有機樹脂塗料には、樹脂、珪酸ナトリ
ウム、ワックス、溶媒に加えて、さらに塗料に使用でき
る各種の添加剤を含有しうる。このような添加剤として
は、顔料、界面活性剤 (乳化剤や分散剤を含む) 、消泡
剤、増粘剤などがある。塗料には通常は顔料を添加せ
ず、クリアー塗料とするが、必ずしもこれに限定される
ものではない。
【0034】塗布は任意の慣用の方法で実施でき、例え
ば、スプレーコータ、ハケ塗り、浸漬、カーテンフロー
コータなどを使用することもできるが、工業的にはロー
ルコータを用いることが、膜厚の制御が容易で、塗料の
無駄が少なく、連続塗布に適していることから有利であ
る。塗布は、塗膜の焼付け後に 0.1〜5μmの膜厚の樹
脂皮膜が形成されるように行う。
【0035】塗布は、帯 (ストリップ) 状の鋼板に対し
て連続的に行うことが工業的には好ましい。その場合、
亜鉛系めっき工程、クロメート処理工程、および塗料の
塗布および焼付け工程を1ラインで連続的に実施するこ
ともできる。あるいは、これらの連続する2工程を1ラ
インで、残りの工程を別ラインで行っても、また各工程
をそれぞれ別ラインで行ってもよい。
【0036】塗布後の塗膜の焼付けは、最高到達板温が
ワックスの融点より30℃以上低い温度となるように行
う。この温度を超えると、焼付け時に塗膜中に存在する
ワックスが半溶融あるいは溶融して、表面張力が相対的
に小さいワックスが塗膜表面に広がることにより、焼付
け後の樹脂皮膜表面のうちワックスが占める面積率(ワ
ックス表面占有率)が著しく増大する。これが原因で、
樹脂皮膜の接着性が著しく低下する。しかし、最高到達
板温がワックスの融点より30℃以上低ければ、ワックス
は焼付け中にほとんど溶融せずに当初の球形粒子状態を
そのまま保持し、ワックスの塗膜表面での広がりが起こ
らないので、樹脂皮膜表面のワックス表面占有率は小さ
いままであり、ワックスの広がりによる樹脂皮膜の接着
性の低下が避けられる (図1参照) 。
【0037】このように、焼付け温度をワックスの融点
より30℃以上低くし、かつ有機樹脂塗料が水性であるた
め、ワックスとしては、融点が100 ℃以上のものが好ま
しい。ワックスの融点が100 ℃より低いと、焼付け温度
は最高でも70℃より低くなり、水性塗料の塗膜を乾燥さ
せる (即ち、塗膜中の水分を蒸発させる) のに非常な長
時間が必要となる。ワックスの融点の上限は特に制限は
ないが、ワックスの融点は通常は250 ℃以下である。好
ましいワックスは、融点が 100〜200 ℃、より好ましく
は 100〜150 ℃の範囲内のものである。
【0038】本発明の潤滑処理鋼板は、鋼板の表面に下
から亜鉛系めっき皮膜、クロメート皮膜、およびワック
スと好ましくは珪酸ナトリウムを含有する樹脂皮膜が順
に形成されている。これらの皮膜は通常は鋼板の両面に
形成するが、片面に形成してもよい。その場合には、反
対側の鋼板表面の処理は特に制限されない。例えば、亜
鉛系めっきだけ、または亜鉛系めっきの上にクロメート
皮膜を形成したものでも、或いはその上にさらに潤滑剤
を含有しない樹脂皮膜 (通常の塗装鋼板用の樹脂皮膜)
を形成して意匠性を付与したものでもよい。
【0039】本発明の潤滑処理鋼板は、ワックスを含有
しているにもかかわらず、ワックスによる接着性の低下
が防止されており、組立て時に接着剤による接合が可能
である。使用可能な接着剤の種類は限定されないが、例
えば、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系、酢酸ビニ
ル系、アルキド系、ニトロゴム系、フェノール系、シリ
コーン系等が例示される。
【0040】接着剤で組立てた後、通常は無塗装のまま
で使用に供されるが、所望により塗装を施すことができ
る。その場合には、潤滑処理皮膜が下地皮膜となるの
で、プライマー塗装は行わずに、上塗りまたは中塗りと
上塗りだけを行えばよい。
【0041】
【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるも
のではない。
【0042】(実施例1)供試材 めっき付着量60 g/m2(片面当たり) の溶融亜鉛めっき鋼
帯の両面に連続的に、塗布型クロメート処理液 (コロイ
ダルシリカを含有) をロールコータで塗布した後、130
℃の熱風乾燥オーブンを通過させて (滞留時間10秒間)
Cr付着量30 mg/m2のクロメート皮膜を形成した。続い
て、この鋼帯の両面のクロメート皮膜の上に、ワックス
(平均粒径1.0 μm) とオルト珪酸ナトリウムを添加し
たポリウレタン系水性エマルジョン型樹脂塗料 (住友バ
エイルウレタン社製、パオヒドロールPR135)をロールコ
ータを用いて、乾燥後の膜厚が1.5 μmとなるように塗
布し、全炉長15mのカテナリー型熱風乾燥オーブンを通
過させて塗膜を焼付け、樹脂皮膜を形成した。塗料に添
加したワックスの量と融点およびオルト珪酸ナトリウム
の量、ならびに塗膜の焼付け時の最高到達板温は表1に
示した通りである。
【0043】接着試験 上記方法で得られた潤滑処理鋼帯の供試材から25mm×15
0 mmの寸法の試験片を多数切り出し、同種のもの同士を
つなぎ手面積が30mm×30mmになるように接着剤により接
着した。用いた接着剤はセメダイン社製のエポキシ系接
着剤(EP-007)である。次いで、圧力2kgf/cm2 で24時間
加圧した後、圧力を解放し、6日間放置した。
【0044】6日間の放置後に、接着試験片をインスト
ロン万能引張試験機を用いて引張速度2mm/minにて剥離
するまで剪断力を加え、剥離面を目視観察して凝集破壊
(剥離が接着剤内部で起こった) か、界面破壊 (剥離が
樹脂と接着剤との界面で起こった)かを決定した。凝集
破壊は接着性が良好、界面破壊は接着性が不良であるこ
とを意味する。
【0045】潤滑性試験 バウデン試験機による摩擦係数を測定した。この測定値
が0.1 以下であれば潤滑性は良好であると判定できる。
以上の試験結果も表1に併せて示す。
【0046】
【表1】
【0047】(実施例2)塗料をアクリル系水性エマルジ
ョン型樹脂塗料 (大日本インキ工業社製ボンコート398
0) に変更した以外は、実施例1と同様に潤滑処理鋼板
の供試材の作製と接着試験を実施した。塗料に添加した
ワックスの量と融点およびオルト珪酸ナトリウムの量、
塗膜焼付け時の最高到達板温、および接着試験結果を表
2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】(実施例3)塗料をアルキド系水性エマルジ
ョン型樹脂塗料 (大日本インキ工業社製ウォーターゾー
ルS-212)に変更した以外は、実施例1と同様に潤滑処理
鋼板の供試材の作製と接着試験を実施した。塗料に添加
したワックスの量と融点およびオルト珪酸ナトリウムの
量、塗膜焼付け時の最高到達板温、および接着試験結果
を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【発明の効果】表1〜3からわかるように、本発明に従
って、クロメート処理した亜鉛系めっき鋼板に、ワック
スと珪酸ナトリウムを所定の量だけ添加した塗料を塗布
し、塗膜の焼付けをワックスが溶融しない条件で行う
と、接着性が良好な潤滑処理鋼板が得られた。これに対
し、焼付け温度が高すぎて、ワックスが半溶融ないし溶
融すると、接着性が不良となった。また、珪酸ナトリウ
ムを省略しても、焼付け温度が適切であれば接着性は良
好であり、焼付け温度が高すぎると接着性は不良であっ
た。
【0052】従って、本発明の潤滑処理鋼板は、プレス
油を塗布せずに加工でき、脱脂工程が不要となるという
潤滑処理鋼板に求められる良好な潤滑性を保持した上
で、加工後に、従来の潤滑処理鋼板で採用されていた
「かしめ」やボルト等による機械的接合やスポット溶接
に代えて、穴あけ等が不要な接着剤を用いて組立てを行
うことができるので、組立て作業が簡便となり、しかも
組立て時に樹脂皮膜が傷つかないので、その美麗な外観
を保持できる。以上より、本発明は潤滑処理鋼板の用途
拡大を図る上で極めて有用であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワックス含有樹脂皮膜の焼付け工程におけるワ
ックス粒子の状態変化と皮膜表面のワックスの表面占有
率を示す説明図であり、図1(a) は焼付け温度が高く、
ワックスが半溶融ないし溶融した場合 (ワックスの表面
占有率が高い) を、図1(b) は焼付け温度が低く、ワッ
クスが溶融せずにその形状を保持した場合 (ワックスの
表面占有率が低い) を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−252520(JP,A) 特開 平6−57442(JP,A) 特開 平8−196989(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08 C10M 109/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、
    Cr換算付着量が5〜80 mg/m2のクロメート皮膜を有し、
    その上にワックス5〜30量%を含有する膜厚0.1〜5μ
    mの潤滑性有機樹脂皮膜を有し、該潤滑性有機樹脂皮膜
    が、最高到達板温度が該ワックスの融点より30℃以上低
    い温度で塗膜を焼付けて得られたことを特徴とする、
    着性に優れた潤滑処理鋼板。
  2. 【請求項2】 前記潤滑性有機樹脂皮膜がさらにアルカ
    リ金属珪酸塩 0.3〜7重量%を含有する請求項1記載の
    潤滑処理鋼板。
  3. 【請求項3】 前記ワックスの融点が 100℃以上であ
    る、請求項1または2記載の潤滑処理鋼板。
  4. 【請求項4】 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面に、
    クロメート処理を施してCr換算付着量が5〜80 mg/m2
    クロメート皮膜を形成した後、その上に、不揮発分合計
    量に基づいて5〜30重量%のワックスを含有する水性有
    機樹脂塗料を塗布し、最高到達板温度が該ワックスの融
    点より30℃以上低い温度で塗膜を焼付けて膜厚 0.1〜5
    μmの潤滑性有機樹脂皮膜を形成することを特徴とす
    る、接着性に優れた潤滑処理鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記水性有機樹脂塗料が、不揮発分合計
    量に基づいて 0.3〜7重量%のアルカリ金属珪酸塩をさ
    らに含有する請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記ワックスの融点が100 ℃以上であ
    り、塗布をロールコータにより連続的に実施する、請求
    項4または5記載の方法。
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