JP3182641B2 - ディーゼルエンジンの遠心式ガバナのトルクアップ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の技術分野】本発明はディーゼルエンジンの遠心
式ガバナのトルクアップ装置に関し、トルク調整ボルト
を位置決め固定する際に、トルクピンの退入隙間に誤差
が生じるのを防止して、適正なトルクアップ量を確保で
きるものを提供する。

【０００２】

【発明の背景】一般に、ディーゼルエンジンでは、過負
荷になるとガバナのトルクアップ装置により、調量ラッ
クを最大燃料噴射位置よりさらに増量側に移行してトル
クアップし、エンジンに粘り強さを発揮させるようにし
てある。

【０００３】本発明はこのディーゼルエンジンの遠心式
ガバナのトルクアップ装置を対象とし、その基本構造
は、図１、図３又は図４に示すように、ディーゼルエン
ジンにガバナレバー１を揺動自在に枢支し、ガバナレバ
ー１の出力部２を燃料噴射ポンプ３の調量ラック４に連
動連結し、筒状のケース本体５を被固定部１８にロック
ナット１６で位置決め可能に固定し、このケース本体５
内にトルクピン７を前後摺動自在に収容し、ケース本体
５の後部６にトルク調整ボルト８を前後進退可能にネジ
嵌合し、トルクピン７とトルク調整ボルト８との間にト
ルクスプリング１０を介装し、当該トルクスプリング１
０でトルクピン７をケース本体５に対して前方に弾圧付
勢し、上記トルクピン７の後方の伝動ピン１１を退入隙
間ｔを介してトルク調整ボルト８に臨ませて、トルクピ
ン７の退入によりガバナレバー１を燃料増量側Ｒへ揺動
可能に構成した形式のものである。

【０００４】

【従来の技術】この形式の従来技術としては、図４に示
すように、トルクピン７から接当部１１ａを後方に一体
に連出し、トルク調整ボルト８でトルクスプリング１０
を直接受け止めるようにして、トルク調整ボルト８で接
当部１１ａを介してトルクピン７の退入隙間ｔを調節す
るように構成したものが一般的である。

【０００５】上記従来技術では、トルクピン７の退入隙
間ｔをトルク調整ボルト８で適正に調節しようとする
と、トルク調整ボルト８に着座するトルクスプリング１
０の長さも同時に変化するので、トルクスプリング１０
の初期バネ圧が狂うおそれがある。つまり、トルクピン
７の退入隙間ｔとトルクスプリング１０の初期バネ圧と
を個別に設定することが困難である。

【０００６】そこで本出願人は、上記不都合を解消する
ため、特願平７−１４５８１４号で、次のトルクアップ
装置を先に提案した。即ち、図３に示すように、ケース
本体５内の後部に前後移動可能に嵌挿したバネ受け具２
０と、バネ受け具２０の中心案内孔２１に挿通した伝動
ピン１１と、バネ受け具２０とトルク調整ボルト８の間
に介装される付勢バネ２２とを具備して成り、トルクス
プリング１０をバネ受け具２０で受け止めて、トルクピ
ン７の後方に別体に配置した上記伝動ピン１１に対して
トルク調整ボルト８を調節することで、トルクピン２の
退入隙間ｔを調節するように構成してある。

【０００７】このため、本先行技術では、トルクピン７
の退入隙間ｔをトルクスプリング１０を動かすことなく
独立に調節できるので、トルクスプリング１０の初期バ
ネ圧に狂いが生じることを防止できる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】一方、ディーゼルエン
ジンを出荷する場合、トルクアップ量を適正値に保持し
たうえで、トルク調整ボルト８をケース本体５に位置決
め固定する必要があるため、適正な退入隙間ｔに設定さ
れたトルク調整ボルト８をポンチで複数箇所打撃して強
くカシメている。

【０００９】一般に、上記トルクピン７の退入隙間ｔの
管理は０.１±０.０１mmの幅で行われるが、上記先行技
術では、ケース本体５にネジ嵌合しているトルク調整ボ
ルト８をカシメ操作すると、ネジ山にガタがあるため、
或は、ネジ山が潰れることで、トルク調整ボルト８が退
入隙間ｔを減じる方向に動いてしまい、退入隙間ｔを適
正に確保することが困難になる虞れがある。本発明は、
トルクアップ装置のトルク調整ボルトを位置決め固定す
る際に、トルクピンの退入隙間に誤差が生じるのを防止
することを技術的課題とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため
の手段を、実施形態を示す図１〜図２により以下に説明
する。即ち、請求項１に記載した本発明１は前記基本構
造のディーゼルエンジンの遠心式ガバナのトルクアップ
装置において、上記トルク調整ボルト８の側面に受け止
め面１２を設け、上記ケース本体５の側壁１３からトル
ク調整ボルト８の受け止め面１２にボルト固定用具１４
を押し当て、ボルト固定用具１４で前後方向に交差する
方向からトルク調整ボルト８をケース本体５に位置決め
固定可能に構成したことを特徴とするディーゼルエンジ
ンの遠心式ガバナのトルクアップ装置である。

【００１１】請求項２に記載した本発明２は、ケース本
体５の後部６からロックナット１６にかけて防護キャッ
プ１７を套嵌し、防護キャップ１７でロックナット１６
を回動不能に固定し、ボルト固定用具１４を防護キャッ
プ１７とケース本体５を貫通してトルク調整ボルト８に
押し当て、ボルト固定用具１４で防護キャップ１７及び
トルク調整ボルト８をケース本体５に共に位置決め固定
可能に構成したことを特徴とするものである。

【００１２】上記ボルト固定用具１４は、固定ネジ、固
定ピンなどをいう。また、上記トルク調整ボルト８の受
け止め面１２は、当該調整ボルト８に周設した溝面など
をいう。さらに、前記ガバナレバー１は一本レバー式、
二本式のものを問わない。

【００１３】

【作用】本発明１では、上記ケース本体５の側壁１３か
らトルク調整ボルト８の受け止め面１２にボルト固定用
具１４を押し当て、前後方向に交差する方向からトルク
調整ボルト８をケース本体５に固定するので、トルク調
整ボルト８の位置決め固定に際して、ボルト固定用具１
４がトルク調整ボルト８に押し当たっても、トルク調整
ボルト８の調整方向とは交差する向きであるため、トル
ク調整ボルト８が不測に前後方向に動くことはなく、適
正に設定されたトルクピン７の退入隙間ｔが狂う虞れは
ない。

【００１４】本発明２では、ボルト固定用具１４でトル
ク調整ボルト８を位置決め固定すると、ケース本体５の
後部６に套嵌した防護キャップ１７をボルト固定用具１
４で横側から貫通して同時に位置決め固定できる。

【００１５】

【発明の効果】本発明１では、ボルト固定用具のトルク
調整ボルトへの位置決め操作方向はトルク調整ボルトの
調整方向とは交差する向きのため、トルク調整ボルトが
不測に前後方向に動くことはなく、適正に設定されたト
ルクピンの退入隙間が狂う虞れはない。これによりディ
ーゼルエンジンの出荷に際して、適正なトルクピンの退
入隙間を確保して、トルク調整ボルトを簡便、且つ正確
に位置決め固定できる。

【００１６】本発明２では、ボルト固定用具をケース本
体に押し当てるだけで、トルク調整ボルト及び防護キャ
ップをケース本体に対して同時に位置決め固定できるの
で、この両者の固定構造を簡便にして安価に実施できる
うえ、固定操作の工数が減り、トルクアップ装置の生産
性が高まる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて述べる。図１はディーゼルエンジンの遠心式ガ
バナのトルクアップ装置の要部縦断面図、図２は同遠心
式ガバナの原理を示す斜視図である。

【００１８】図２に示すように、縦型ディーゼルエンジ
ンのポンプ室にガバナレバー１を支軸２３を介して揺動
自在に枢支し、ガバナレバー１の内腕１ｂをポンプ室内
に、その外腕１ａをポンプ室外に各々臨ませ、ポンプ室
の下部に遠心式ガバナＧのガバナウエイト２４を配置す
る。上記ガバナウエイト２４をガバナレバー１の内腕１
ｂの入力部にガバナスリーブ２５を介して連動連結し、
内腕１ｂのフォーク状出力部２を燃料噴射ポンプ３の調
量ラック４(具体的には、ラックピン)に係合する。上記
ポンプ室の周壁に調速レバー２７を支軸２８を介して揺
動自在に枢支し、前記ガバナレバー１の外腕１ａをガバ
ナスプリング３０を介して調速レバー２７に連結し、ガ
バナレバー１をガバナウエイト２４からのガバナフォー
スＧＦとガバナスプリング３０のスプリングフォースＳ
Ｆとの不釣合い力で揺動自在に構成する（符号Ｒは燃料
増量側、Ｌは燃料減量側を示す）。

【００１９】図１及び図２に示すように、上記ガバナレ
バー１の外腕１ａに矩形平板状の受け止め部２９を折り
曲げ形成し、ポンプ室１９の側壁１８にトルクアップ装
置Ｔをネジ嵌合により進退位置調節可能に固定し、トル
クアップ装置Ｔのトルクピン７の出力部７ａをこのガバ
ナレバー１の受け止め部２９に弾圧接当可能に臨ませ、
ガバナレバー１をトルクピン７で全負荷位置(４／４)に
揺動規制可能に構成する。尚、符号１６はトルクアップ
装置Ｔをポンプ室１９の側壁１８に位置決め固定するた
めのロックナットである。

【００２０】図１に示すように、上記トルクアップ装置
Ｔは、円筒状のケース本体５と、これに収容されるトル
クピン７と、バネ受け具２０と、伝動ピン１１と、トル
ク調整ボルト８と、トルクスプリング１０と、付勢スプ
リング２２とを具備して成る。即ち、上記トルクピン７
は、その基端部が本体ケース５内に摺動自在に収容さ
れ、トルクスプリング１０によって前方に弾圧付勢され
るとともに、その先端の出力部７ａは前述のごとくガバ
ナレバー１の受け止め部２９に接当可能に臨む。

【００２１】図１に示すように、上記バネ受け具２０
は、本体ケース５内の後部６よりスライド自在に嵌入さ
れ、当該バネ受け具２０の収容孔３０の終端３２（以
下、所定位置という)で受け止められる。このため、バネ
受け具２０のネジ加工やネジ込み用溝部は不要になり、
本体ケース５内の収容孔３０にネジ加工する必要もな
い。

【００２２】図１に示すように、上記伝動ピン１１は、
上記バネ受け具２０の中心案内孔２１を貫通する状態
で、上記トルクピン７とトルク調整ボルト８の間にトル
クピン７の退入隙間ｔを空けて前後方向に進退自在に介
装され、退入隙間ｔを調量ラック４のトルクアップ位置
Ｔｕに対応させて、トルク調整ボルト８によりトルクス
プリング１０から独立して調節可能に構成される。尚、
伝動ピン１１はバネ受け具２０の中心案内孔２１を貫通
しているので、伝動ピン１１の円滑な移動を確保でき
る。

【００２３】図１に示すように、ケース本体５の後部の
付勢スプリング２２はバネ受け具２０とトルク調整ボル
ト８の間に介装され、その弾圧力はトルクスプリング１
０の弾圧力よりも強く設定され、バネ受け具２０を常に
前向きに押圧付勢して、トルクスプリング１０の後端を
上記所定位置３２で受け止めて正しく位置決めし、トル
クスプリング１０の初期バネ圧を規定するように構成さ
れる。これにより、トルク調整ボルト８の回動でトルク
ピン７の退入隙間ｔを調節する際に、トルクスプリング
１０の受け止め位置にズレを生じることがなくなる。因
みに、本実施形態では、トルクスプリング１０の初期バ
ネ圧はゼロ（自然長のまま）に設定するように構成され
る。また、付勢スプリング２２はトルクスプリング１０
と同じスプリングを用いて、生産性を向上するようにし
てある。

【００２４】図１に示すように、上記トルク調整ボルト
８はトルクピン７の退入隙間ｔを調節するためのもの
で、付勢スプリング２２により後方に弾圧付勢される。
上記トルク調整ボルト８の側面に受け止め溝面１２が周
設され、ケース本体５の後部６の側壁１３に前後方向に
直交するように嵌挿孔３３が貫設される。

【００２５】一方、図１に示すように、ケース本体５の
後部６からロックナット１６にかけて防護キャップ１７
が套嵌され、防護キャップ１７でロックナット１６を回
動不能に固定する。上記防護キャップ１７の側壁に前後
方向に長い長孔３４を開け、ボルト固定用具であるボル
ト固定用ネジ１４を防護キャップ１７の長孔３４及びケ
ース本体５の嵌挿孔３３から押し込んでカシメ付け、当
該ボルト固定用ネジ１４の先端をトルク調整ボルト８の
受け止め溝面１２に係合状に押し当てる。そして、当該
ボルト固定用ネジ１４の嵌挿固着により、前後方向に直
交する向きからトルク調整ボルト８を位置決め固定する
とともに、防護キャップ１７をケース本体５に対して固
定して、ロックナット１６を作業者から回動不能に遮蔽
する。

【００２６】そこで、先ず、上記実施形態のトルクアッ
プ装置の機能を説明する。図２に示すように、エンジン
の負荷が変動して、全負荷運転状態から過負荷運転状態
に移行すると、エンジンの回転速度が低下してガバナフ
ォースＧＦも減少し、スプリングフォースＳＦが打ち勝
つため、ガバナレバー１の外腕１ａの受け止め部２９が
トルクアップ装置Ｔのトルクピン７に接当する。そして
トルクピン７がケース本体５内に後退し、ガバナレバー
１はさらに燃料増量側Ｒのトルクアップ位置Ｔｕにまで
揺動し、燃料噴射量を増やしてエンジンに粘り強さを発
揮させる。

【００２７】本実施形態では、トルクアップ装置Ｔのケ
ース本体５の側壁１３からトルク調整ボルト８の受け止
め溝面１２にボルト固定用ネジ１４を押し当て、前後方
向に直交する向きからトルク調整ボルト８をケース本体
５に固定する。このため、トルク調整ボルト８の位置決
め固定に際して、ボルト固定用ネジ１４がトルク調整ボ
ルト８に押し接当しても、トルク調整ボルト８の調整方
向とは交差する向きなので、トルク調整ボルト８が不測
に前後方向に変化することはなく、適正に設定されたト
ルクピン７の退入隙間ｔが狂うおそれはない。

【００２８】この結果、ディーゼルエンジンＥの出荷に
際して、トルクピン７の退入隙間ｔを適正に確保し、ト
ルク調整ボルト８を簡便、且つ正確に位置決め固定でき
る。また、ボルト固定用ネジ１４でトルク調整ボルト８
を位置決め固定すると同時に、ケース本体５に套嵌した
防護キャップ１７を横側から貫通して同時に位置決め固
定できる。従って、トルク調整ボルト８と防護キャップ
１７の位置決め固定構造を簡便にして安価に実施できる
うえ、固定操作の工数が減って、トルクアップ装置の生
産性が高まる。

【００２９】尚、本発明では、トルク調整ボルト８を位
置決め固定するボルト固定用ネジ１４は、固定用ピンに
代替させても良く、また、ガバナレバー１は上記実施形
態の一本レバー方式に限らず、二本方式のものでも良
い。他方、本発明は、防護キャップ１７を排除した状態
で、例えば、図４に示す従来技術のようなトルクアップ
装置に適用し、ケース本体５の側壁１３からボルト固定
用ネジ又はピンをカシメ付けて、トルク調整ボルト８を
位置決め固定するようにしても良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態を示すディーゼルエンジンの
遠心式ガバナのトルクアップ装置の要部縦断面図であ
る。

【図２】同遠心式ガバナの原理を示す斜視図である。

【図３】先行技術を示す図１の相当図である。

【図４】従来技術を示す図１の相当図である。

【符号の説明】

１…ガバナレバー、２…ガバナレバーの出力部、３…燃
料噴射ポンプ、４…燃料噴射ポンプの調量ラック、５…
ケース本体、６…ケース本体の後部、７…トルクピン、
８…トルク調整ボルト、１０…トルクスプリング、１１
…伝動ピン、１２…トルク調整ボルトの受け止め面、１
３…ケース本体の側壁、１４…ボルト固定用具、１６…
ロックナット、１７…防護キャップ、１８…被固定部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平８−338267（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−209537（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−156131（ＪＰ，Ａ) 特開 平７−11978（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−241069（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−141640（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−122542（ＪＰ，Ｕ) 実開 平４−125641（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭54−178300（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F02D 1/04 F02D 31/00

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディーゼルエンジンにガバナレバー(１)
   を揺動自在に枢支し、ガバナレバー(１)の出力部(２)を
   燃料噴射ポンプ(３)の調量ラック(４)に連動連結し、 筒状のケース本体５を被固定部(１８)にロックナット
   (１６)で位置決め可能に固定し、このケース本体(５)内
   にトルクピン(７)を前後摺動自在に収容し、ケース本体
   (５)の後部(６)にトルク調整ボルト(８)を前後進退可能
   にネジ嵌合し、トルクピン(７)とトルク調整ボルト(８)
   との間にトルクスプリング(１０)を介装し、当該トルク
   スプリング(１０)でトルクピン(７)をケース本体(５)に
   対して前方に弾圧付勢し、 上記トルクピン(７)の後方の伝動ピン１１を退入隙間
   (ｔ)を介してトルク調整ボルト(８)に臨ませて、トルク
   ピン(７)の退入によりガバナレバー(１)を燃料増量側へ
   揺動可能に構成したディーゼルエンジンの遠心式ガバナ
   のトルクアップ装置において、 上記トルク調整ボルト(８)の側面に受け止め面(１２)を
   設け、上記ケース本体(５)の側壁(１３)からトルク調整
   ボルト(８)の受け止め面(１２)にボルト固定用具(１４)
   を押し当て、ボルト固定用具(１４)で前後方向に交差す
   る方向からトルク調整ボルト(８)をケース本体(５)に位
   置決め固定可能に構成したことを特徴とするディーゼル
   エンジンの遠心式ガバナのトルクアップ装置。
2. 【請求項２】 ケース本体(５)の後部(６)からロックナ
   ット(１６)にかけて防護キャップ(１７)を套嵌し、防護
   キャップ(１７)でロックナット(１６)を回動不能に固定
   し、ボルト固定用具(１４)を防護キャップ(１７)とケー
   ス本体(５)を貫通してトルク調整ボルト(８)に押し当て
   て、ボルト固定用具(１４)で防護キャップ(１７)及びト
   ルク調整ボルト(８)を共にケース本体(５)に位置決め固
   定可能に構成したことを特徴とする請求項１に記載のデ
   ィーゼルエンジンの遠心式ガバナのトルクアップ装置。