JP3173058B2 - 半導体薄膜の形成方法 - Google Patents

半導体薄膜の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、半導体薄膜の形成方
法に関し、特に、水素化アモルファス半導体薄膜の形成
に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】水素化アモルファスシリコン(a−S
i:H)薄膜は、高光伝導度、低暗伝導度、広バンドギ
ャップなどの優れた特性を有するため、太陽電池や薄膜
トランジスタ(TFT)などに広く用いられている。こ
のa−Si:H薄膜は通常、プラズマCVD法を用いて
シラン(SiH4 )などの原料ガスを分解することによ
り形成されるが、基板温度が300℃程度の低温で良質
のa−Si:H薄膜が得られるのが大きな特徴である。
【0003】一方、現在、大画面の液晶ディスプレイに
おいては、画素スイッチング素子としてTFTを用いる
ために、ガラス基板のような、耐熱性は低いが安価な基
板上に300℃以下の低温で良質のa−Si:H薄膜を
形成することが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、通常のプラズ
マCVD法により300℃以下の低温でa−Si:H薄
膜を形成すると、膜中にダングリングボンドが多数発生
してバンドギャップ内の局在準位密度が大きくなり、良
質のa−Si:H薄膜が得られないという問題があっ
た。従って、この発明の目的は、良質の水素化アモルフ
ァス半導体薄膜を300℃以下の低温で形成することが
できる半導体薄膜の形成方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は、半導体薄膜の形成方法において、IV族
元素を主成分とする第1の半導体薄膜(8)にエネルギ
ービーム(L)を照射して溶融し、その後固化すること
によりアモルファスの第2の半導体薄膜(9)を形成す
る工程と、第2の半導体薄膜(9)を水素化処理する工
程とを具備するものである。
【0006】ここで、第1の半導体薄膜としては、Si
薄膜やゲルマニウム(Ge)薄膜のほか、SiとGeと
の化合物から成る半導体薄膜などを用いることができ
る。また、エネルギービームとしては、レーザ光をはじ
めとする光のほか、イオンビームや電子ビームなどを用
いることができる。
【0007】
【作用】上述のように構成されたこの発明による半導体
薄膜の形成方法によれば、アモルファスの第2の半導体
薄膜(9)を水素化処理することにより、そのバンドギ
ャップ内の局在準位密度を大幅に減少させることができ
る。また、この第2の半導体薄膜(9)は、エネルギー
ビーム(L)の照射による溶融固化により形成している
ことから、300℃以下の低温で形成することができ
る。同様に、第2の半導体薄膜(9)の水素化処理も、
水素プラズマ処理などにより300℃以下の低温で行う
ことができる。以上により、良質の水素化アモルファス
半導体薄膜を300℃以下の低温で形成することができ
る。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参
照しながら説明する。最初に、レーザ光による溶融固化
及びその後の水素化処理により、良質のa−Si:H薄
膜を形成する方法について説明する。
【0009】すなわち、まず、プラズマCVD法により
例えば膜厚が12nmのa−Si:H薄膜をガラス基板
上に堆積する。次に、例えば常温でこのa−Si:H薄
膜に紫外から青色の波長域のレーザ光、例えばXeCl
エキシマレーザによるパルスレーザ光(波長308n
m)を照射して溶融し、その後固化することによりa−
Si:H薄膜を形成する。なお、このパルスレーザ光の
パルス幅は例えば30nsとする。このようにして形成
されたa−Si:H薄膜中には、ダングリングボンドが
多数存在することから、そのバンドギャップ内の局在準
位密度が多く、電気伝導度が高い。
【0010】次に、このa−Si:H薄膜を例えばH2
ガス流量100SCCM、RF(200kHz)電力3
0W、1分の条件でH2 プラズマ処理する。このH2
ラズマ処理の際の基板温度を変えた時のa−Si:H薄
膜の暗伝導度及び光伝導度の変化を図2に示す。図2か
らわかるように、基板温度が170〜250℃の範囲で
は、暗伝導率は1×10-9S/cm以下、光伝導率は1
×10-5S/cm以上となり、これらの値は300℃以
上の温度で形成されたa−Si:H薄膜と同等の良好な
値である。このように、レーザ光の照射による溶融固化
及びその後の水素化処理により、優れた電気的特性を有
する良質のa−Si:H薄膜を形成することができるこ
とがわかる。
【0011】次に、以上のようなa−Si:H薄膜の形
成方法をボトムゲート型のTFTの製造に適用した一実
施例について図1を参照しながら説明する(以下、この
a−Si:H薄膜を用いたTFTを「a−Si:H T
FT」という)。この実施例においては、図1Aに示す
ように、まず、例えばガラス基板1上にゲート電極2を
形成する。このゲート電極2は、例えば膜厚が50nm
程度のアルミニウム(Al)膜により形成される。この
Al膜は、スパッタ法などにより300℃以下の低温で
形成することができる。
【0012】次に、プラズマCVD法により300℃以
下の低温で全面にゲート絶縁膜3を形成する。このゲー
ト絶縁膜3としては、例えば膜厚が200nm程度の二
酸化シリコン(SiO2 )膜を用いる。なお、このゲー
ト絶縁膜3としては、窒化シリコン(Si3 4 )膜を
用いることも可能である。次に、プラズマCVD法によ
り300℃以下の低温で、リン(P)が例えば2%の濃
度にドープされたa−Si:H薄膜4をゲート絶縁膜3
上に形成する。このa−Si:H薄膜4の膜厚は例えば
80nm程度とする。
【0013】次に、このPがドープされたa−Si:H
薄膜4に例えばXeClエキシマレーザによるパルスレ
ーザ光Lを照射して溶融し、その後固化して結晶化す
る。これによって、図1Bに示すように、Pがドープさ
れた多結晶Si薄膜5が形成される。この多結晶Si薄
膜5の電気伝導度を測定したところ、1×103 S/c
m以上の高い値を示し、極めて低抵抗であることがわか
った。なお、パルスレーザ光Lとして、XeClエキシ
マレーザ以外の各種のエキシマレーザによるパルスレー
ザ光を用いることも可能である。
【0014】次に、図1Cに示すように、Pがドープさ
れた多結晶Si薄膜5をエッチングによりパターニング
して例えばn+ 型のソース領域6及びドレイン領域7を
形成する。次に、プラズマCVD法により300℃以下
の低温で全面にノンドープのa−Si:H薄膜8を形成
する。このa−Si:H薄膜8の膜厚は例えば20nm
程度とする。
【0015】次に、このa−Si:H薄膜8に例えばX
eClエキシマレーザによるパルスレーザ光Lを照射し
て溶融し、その後固化してアモルファス化する。この場
合、後述の理由により、このアモルファス化は、ソース
領域6とドレイン領域7との間の部分におけるゲート絶
縁膜3上でのみ起こる。この結果、図1Dに示すよう
に、ソース領域6とドレイン領域7との間の部分におけ
るゲート絶縁膜3上にのみa−Si:H薄膜9が形成さ
れ、このa−Si:H薄膜9がチャネル領域として用い
られる。一方、ソース領域6及びドレイン領域7の上に
は、パルスレーザ光Lの照射による溶融固化により多結
晶Si薄膜が形成される。そして、この多結晶Si薄膜
には、このパルスレーザ光Lの照射時に下地のソース領
域6及びドレイン領域7からPが拡散することから、こ
の多結晶Si薄膜もこれらのソース領域6及びドレイン
領域7の一部となる。
【0016】次に、ソース領域6及びドレイン領域7の
上にそれぞれ例えばAlから成る電極10、11を形成
する。この後、300℃以下の低温でH2 プラズマ処理
を行うことによりa−Si:H薄膜9を水素化処理す
る。これによって、目的とするa−Si:H TFTが
完成する。ここで、上述のパルスレーザ光Lの照射によ
る溶融固化により、ソース領域6とドレイン領域7との
間の部分におけるゲート絶縁膜3上でのみアモルファス
化が起こり、この部分にのみa−Si:H薄膜9が形成
される理由について説明する。
【0017】図3は、石英基板上に形成されたSi薄膜
にXeClエキシマレーザによるパルスレーザ光を照射
して溶融し、その後固化した場合における結晶−アモル
ファス相変化図を示す。図3中、横軸はSi薄膜の膜
厚、縦軸はパルスレーザ光のエネルギー密度である。
【0018】図3より、アモルファス化は、Si薄膜の
膜厚が50nm以下の場合にしか起こらないことがわか
る。ところで、上述の実施例において、ソース領域6と
ドレイン領域7との間の部分におけるゲート絶縁膜3上
のSi薄膜の膜厚は、a−Si:H薄膜8の膜厚、すな
わち20nmである。これに対して、ソース領域6及び
ドレイン領域7の部分におけるゲート絶縁膜3上のSi
薄膜の膜厚は、これらのソース領域6及びドレイン領域
7を構成する多結晶Si薄膜の膜厚、すなわち80nm
と、これらのソース領域6及びドレイン領域7の上のa
−Si:H薄膜8の膜厚、すなわち20nmとの合計、
従って100nmである。すなわち、ソース領域6とド
レイン領域7との間の部分におけるゲート絶縁膜3上で
はSi薄膜の膜厚は50nmよりも小さいが、ソース領
域6及びドレイン領域7の部分におけるゲート絶縁膜3
上ではSi薄膜の膜厚は50nmよりも大きい。これ
が、ソース領域6とドレイン領域7との間の部分におけ
るゲート絶縁膜3上でのみアモルファス化が起こり、従
ってこの部分にのみa−Si:H薄膜9が形成される理
由である。
【0019】図4は、上述の実施例により製造されたa
−Si:H TFTのH2 プラズマ処理の前後における
ドレイン電流−ゲート電圧特性を示す。ただし、a−S
i:H薄膜8をプラズマCVD法により形成する際の基
板温度は250℃である。また、H2 プラズマ処理は、
基板温度250℃で3分行った。図4からわかるよう
に、H2 プラズマ処理前は、ゲート電圧によるドレイン
電流の変化は全く生じないが、H2 プラズマ処理後に
は、ゲート電圧によりドレイン電流を大きく変化させる
ことができ、良好なスイッチング特性を得ることができ
る。
【0020】以上のように、この実施例によれば、特性
の良好なa−Si:H TFTを300℃以下の低温プ
ロセスで製造することができる。この実施例によるa−
Si:H TFTの製造方法は、例えばアクティブマト
リクス方式の液晶ディスプレイにおける画素スイッチン
グ素子としてのTFTの製造に適用して好適なものであ
る。特に、チャネル領域としてのa−Si:H薄膜9
は、パルスレーザ光Lの照射により形成しているので、
液晶ディスプレイの大画面化にも容易に対応することが
できる。
【0021】以上、この発明の一実施例につき具体的に
説明したが、この発明は、上述の実施例に限定されるも
のではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形
が可能である。例えば、上述の実施例におけるa−S
i:H薄膜4の代わりに多結晶Si薄膜を用いることも
可能である。また、ソース領域およびドレイン領域形成
用のn型不純物としては、例えばヒ素(As)を用いる
ことも可能である。さらに、ガラス基板1の代わりに他
の絶縁体基板を用いることも可能である。
【0022】また、上述の実施例においては、ボトムゲ
ート型のa−Si:H TFTを製造する場合について
説明したが、この発明は、トップゲート型のa−Si:
HTFTの製造に適用することも可能である。さらに、
上述の実施例においては、この発明をnチャネルのa−
Si:H TFTの製造に適用した場合について説明し
たが、この発明は、pチャネルのa−Si:H TFT
の製造に適用することも可能である。この場合、ソース
領域およびドレイン領域形成用の不純物としては、例え
ばホウ素(B)のようなp型不純物が用いられる。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
良質のアモルファス半導体薄膜を300℃以下の低温で
形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例によるボトムゲート型のa
−Si:H TFTの製造方法を工程順に説明するため
の断面図である。
【図2】XeClエキシマレーザによるパルスレーザ光
の照射による溶融固化により形成されたa−Si:H薄
膜の電気伝導度とH2 プラズマ処理の温度との関係を示
すグラフである。
【図3】Si薄膜にXeClエキシマレーザによるパル
スレーザ光を照射して溶融し、その後固化した場合にお
ける結晶−アモルファス相変化図である。
【図4】図1に示す製造方法により製造されたa−S
i:H TFTのH2プラズマ処理の前後におけるドレ
イン電流−ゲート電圧特性を示すグラフである。
【符号の説明】 1 ガラス基板 2 ゲート電極 3 ゲート絶縁膜 4 Pがドープされたa−Si:H薄膜 6 ソース領域 7 ドレイン領域 8、9 ノンドープのa−Si:H薄膜 L パルスレーザ光
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 クリストフ・シラ 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (72)発明者 碓井 節夫 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−245124(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 IV族元素を主成分とする第1の半導体薄
    膜にエネルギービームを照射して溶融し、その後固化す
    ることによりアモルファスの第2の半導体薄膜を形成す
    る工程と、 上記第2の半導体薄膜を水素化処理する工程とを有する
    半導体薄膜の形成方法。
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