JP3169385B2 - 架橋ポリオレフィンの製造方法 - Google Patents

架橋ポリオレフィンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、架橋ポリオレフィンの
製造方法に関する。詳しくは、特定の構造のアルケニル
シランとオレフィンの共重合体に放射線を照射すること
を特徴とする架橋ポリオレフィンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィンの物性を改良する目的で
架橋反応が行われている。しかしながら、ポリプロピレ
ンなどポリα−オレフィンは元来、架橋反応に比較して
主鎖の解重合が優先する為、パーオキサイドの分解と
か、放射線の照射により単純にラジカルを発生させるだ
けでは架橋反応が起こらず、むしろ分解が進行し分子量
が低下するだけである。この為、通常はアルコキシビニ
ルシラン等の加水分解によって架橋反応が生ずる単量体
をポリオレフィンにグラフトし、ついで架橋することが
行われている(例えば、特開昭58-117244)。一方シンジ
オタクチック構造のポリオレフィンについては従来、唯
一ポリプロピレンについて知られていたが、最近になっ
て、種々の均一系の触媒によって極めて規則性の高いシ
ンジオタクチックポリプロピレンが得られることが報告
された。(J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255-6256)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来シンジオタクチッ
ク構造の架橋ポリオレオレフィンについては知られてお
らず、そのようなものが得られると従来にない機能が期
待できる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決して架橋ポリオレフィンを製造する方法について鋭
意探索し、本発明を完成した。
【0005】即ち、本発明はシンジオタクチック構造の
アルケニルシランとオレフィンの共重合体に放射線を照
射することを特徴とする架橋ポリオレフィンの製造方法
である。
【0006】本発明においてアルケニルシランとオレフ
ィンの共重合体を製造するに用いる触媒系としては、プ
ロピレンの単独重合を行った時、得られる重合体が高度
にシンジオタクチック構造であって、しかもアルケニル
シランとの共重合性が良好であるようなものが挙げられ
る。
【0007】具体的には上記文献に示されているよう
な、高度にシンジオタクチックなポリプロピレンを製造
するに用いる触媒が例示できるが、異なる構造の触媒で
あっても、プロピレンの単独重合をおこなったとき得ら
れるポリプロピレンのシンジオタクチックペンタッド分
率が0.7 以上のポリプロピレンを製造することができる
ようなものであれば利用でき、異なる2つの互いに結合
したシクロペンタジエニル基またはその誘導体を配位子
として有する遷移金属化合物からなる触媒が利用でき
る。
【0008】非対称な配位子を有する遷移金属化合物と
しては上記文献に記載されたイソプロピル(シクロペン
タジエニル-1- フルオレニル) ハフニウムジクロリド、
或いはイソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオ
レニル) ジルコニウムジクロリドの他に下記一般式(化
2)に示すような化合物、
【0009】
【化2】 (式中A,B は互いに異なる芳香族炭化水素、R は A,Bを
連結する炭素数1〜20の炭化水素残基、あるいは珪素を
含む化合物、X はハロゲン原子または炭素数1〜20の炭
化水素残基。M はチタン、ジルコニウム、ハフニウムか
ら選ばれる金属原子。)が好ましく利用できる。
【0010】A,B としては炭素数5〜30の単環、あるい
は多環の芳香族化合物が例示でき、具体的にはシクロペ
タジエン或いはその一部または全部の水素が炭素数1〜
10のアルキル基で置換したもの( ここでアルキル基はそ
の末端が再度シクロペンタジエン環に結合した構造であ
っても良い。) 、インデン、フルオレンなどの多環芳香
族化合物あるいはその水素の一部または全部が炭素数1
〜10のアルキル基で置換したものなどが例示される。
【0011】R としては、ジアルキルメチレン基、ジア
ルキルシリレン基が好ましく、例えば R'2C 、R'2Si
(式中R'は水素または炭素数1 〜20のアルキル残基で同
じでも異なっても良く二つのR'が互いに結合していても
良い。) で表される化合物が好ましく利用できるが、さ
らに-CR'-CR'- で表されるエチレン基も例示できる(式
中R'は上記に同じ。)。
【0012】Xとしては弗素、塩素、臭素、沃素、ある
いはメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル
基、シクロペンタジエニル基などの芳香族化合物が例示
できるが特に塩素、メチル基が好ましい。
【0013】またアルミノキサンとしては、下記一般式
(化)あるいは(化)で表される化合物、
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】 (式中Rは炭素数1 〜3 の炭化水素残基、nは1以上の
整数。)が例示でき、特にRがメチル基であるメチルア
ルミノキサンでnが5 以上、好ましくは10以上のものが
利用される。
【0016】上記遷移金属化合物に対するアルミノキサ
ンの使用割合としては10〜1000000モル倍、通常50〜500
0モル倍である。また、上記遷移金属化合物を予めトリ
アルキルアルミニウムで処理した後、反応して、イオン
対を形成する化合物と接触することで得られる触媒系を
利用することもできる。
【0017】本発明において、アルケニルシランとして
は、Si-H基を含有するものであれば良く、下記一般式
(化5)で示されるものが好ましく利用できる。
【0018】
【化5】H2C=CH-(CH2)n-SiHm R3-m (式中nは1以上の整数、mは1 〜3 の整数、R は炭素
数1〜5のアルキル残基。)ビニルシランでは理由は不
明であるが活性が不良であるという問題があり、またm
として3 のものもmが1〜2のものに比較して重合に際
し活性が不良であり、共重合体中にアルケニルシラン単
位が導入されにくいという問題がある。
【0019】またオレフィンとしては下記一般式(化
6)で示される化合物、
【0020】
【化6】 (式中R は水素又は炭素数1 〜12の炭化水素残基。) が
例示でき、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン-
1、ペンテン-1、ヘキセン-1、2-メチルペンテン、ヘプ
テン-1、オクテン-1などのα−オレフィンの他にスチレ
ンまたはその誘導体も例示される。
【0021】重合条件については特に制限はなく不活性
媒体を用いる溶媒重合法、或いは実質的に不活性媒体の
存在しない塊状重合法、気相重合法も利用できる。
【0022】重合温度としては−100 〜200 ℃、重合圧
力としては常圧〜100 kg/cm2 で行うのが一般的であ
る。好ましくは−100 〜100 ℃、常圧〜50kg/cm2であ
る。
【0023】好ましい分子量としては、135 ℃テトラリ
ン溶液で測定した極限粘度として0.1 〜3.0程度である
のが一般的である。
【0024】本発明において重要なのは、共重合体の立
体規則性が所望のものであることであり、ポリマー鎖中
のプロピレンの2個あるいは3個の連続部が実質的にラ
セミであることであり、例えば、プロピレンの共重合体
では、13C-NMR でトリクロロベンゼン中で 135℃で測定
した時テトラメチルシランを基準として、約20.2ppmに
あらわれるプロピレンのシンジオタクチック構造に帰属
されるメチル基のピークが全メチル基のピークの総和に
対し0.5 以上、より好ましくは0.7 以上であるようなも
のである。
【0025】ここでアルケニルシランとオレフィンの重
合割合としては特に制限は無いが、ポリオレフィンと混
合して用いる場合には、通常アルケニルシランが 0.001
〜30モル% 程度、好ましくは0.1 〜10モル% である。ま
た単独で用いる場合には0.0001〜1 モル% 程度である。
【0026】共重合体の分子量としては特に制限はない
が、混合して物性の向上を計ろうとする場合にはポリオ
レフィンの分子量と同程度あるいはそれ以下とするのが
好ましい。場合によっては、アルケニルシランを含有す
る他はポリオレフィンと同様の重合(組成、分子量等)
を行って用いても良く、例えば、ブロック共重合を行っ
て、前段のみあるいは後段のみにアルケニルシランを共
重合してもよい。
【0027】本発明において、上記共重合体はそのま
ま、あるいは上記オレフィンをアルケニルシランと共重
合することなく重合して得たポリオレフィンと混合した
後、放射線を照射することで架橋される。
【0028】ポリオレフィンとしては特に単独では架橋
しにくいプロピレンなどのα−オレフィンの単独重合
体、またはその共重合体に本発明の方法を適用すると効
果的である。これらのポリオレフィンの製造法について
は既に公知であり種々の銘柄のものが市場で入手可能で
ある。またアルケニルシランを用いない他は上記オレフ
ィンとアルケニルシランの共重合体の製造法と同様に行
うことでシンジオタクチック構造のポリオレフィンも製
造可能である。
【0029】本発明において、放射線としてはγ線、電
子線、X線、加速イオンなどが例示できるが、特に透過
性の大きいγ線、X線が好ましく利用でき、電子線を用
いる場合にはポリプロピレンを薄くして照射することが
好ましい。照射の際の線量としては0.1 〜50Mrad、通常
1 〜10Mrad程度で充分である。
【0030】
【実施例】以下に実施例を示しさらに本発明を説明す
る。
【0031】実施例1 常法にしたがって合成したイソプロピルシクロペンタジ
エニル-1- フルオレンをリチウム化し、四塩化ジルコニ
ウムと反応し再結晶することで得たイソプロピル(シク
ロペンタジエニル-1- フルオレニル) ジルコニウムジク
ロリド10mgと東ソアクゾ(株)製メチルアルミノキサン
(重合度16.1)2gを内容積200ml のオートクレーブにい
れ、プロピレン50g 、アリルジメチルシラン3.5gを加え
30℃で4時間重合した。反応後未反応のプロピレンをパ
ージしついで濾過洗浄してポリプロピレン23.9g を得
た。
【0032】このポリプロピレンは1,2,4-トリクロロベ
ンゼン溶液で135 ℃でテトラメチルシランを基準として
測定した13C-NMR において約20.2ppm に観測されるピー
クがプロピレンの全メチル基に帰属されるピーク強度の
総和の0.85でありシンジオタクチック構造であった。ま
た珪素の分析により算出したアリルジメチルシランの共
重合体中の含量は2.7 モル% であり135 ℃のテトラリン
溶液で測定した極限粘度(以下ηと略記) は0.61、1,2,
4-トリクロロベンゼンで測定した重量平均分子量と数平
均分子量との比(以下、MW/MN と略記)は2.1 であっ
た。
【0033】このポリプロピレンをガラス管に脱気封入
して20℃でγ線を2Mrad/hrで3Mrad照射し、次いで100
℃で1 時間加熱した。その後パウダーを取り出し沸騰キ
シレンで6 時間抽出したところ不溶分は95wt% であり架
橋が進行していた。
【0034】なおγ線を照射すること無く加熱処理した
ものの沸騰キシレン不溶分は1.5wt%であった。
【0035】実施例2 実施例1 で得たポリプロピレンを用い窒素雰囲気中で電
子線照射装置(日新ハイボルテージ(株)製EPS-750)を
用いて電子線を5Mrad 照射したところ沸騰キシレン不溶
分は85.5wt% であった。
【0036】実施例3 アリルジメチルシランに変えアリルメチルシランを用い
た他は実施例1と同様にして、アリルメチルシラン含量
1.8 モル% 、ηが0.58、約20.2ppm に観測されるピーク
がプロピレンの全メチル基に帰属されるピーク強度の総
和の0.79であるシンジオタクチック構造の共重合体を1
2.5g 得た。このポリマ−に実施例1と同様にγ−線を
照射したところ沸騰キシレン不溶分は92.5wt% であっ
た。
【0037】
【発明の効果】本発明の方法によって、シンジオタクチ
ック構造の架橋ポリオレフィンを得ることができ工業的
に極めて価値がある。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シンジオタクチック構造のアルケニルシ
    ランとオレフィンの共重合体に放射線を照射することを
    特徴とする架橋ポリオレフィンの製造方法。
  2. 【請求項2】 アルケニルシランが一般式(化1)で表
    される請求項1の製造方法 【化1】H2C=CH-(CH2)n-SiHm R3-m (式中nは1以上の整数、mは1 〜3 の整数、Rは炭素
    数1〜5のアルキル残基。)
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