JP3168659B2 - 配線基板用絶縁材料および多層配線基板の製造方法 - Google Patents

配線基板用絶縁材料および多層配線基板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は配線基板用絶縁材料と、
これを用いた多層配線基板の製造方法に関する。
【0002】電子機器を小型し、また高速化するには半
導体集積回路の集積度の向上と共に、これを装着する配
線基板の高密度化が必要である。このために配線基板は
当初の単層プリント板から、多層プリント板、表面実装
へと集積度の向上が行われ、現在では半導体チップ実装
にも対応でき、また、更に高密度化が可能なマルチチッ
プモジュール(MCM)が開発されつゝある。
【0003】こゝで、厚膜法で製造したセラミック配線
基板をMCMの基板として使用することも可能である
が、信号の高速化を追求する大型コンピュータなどにお
いては、セラミックよりも更に低誘電率で半田耐熱性に
も優れたポリイミドを絶縁層とし、この上に銅(Cu)配線
を形成したものを交互に積層する薄膜多層配線基板が開
発され、この実用化が行われつゝある。( 例えば、日経
マイクロデバイス 1989/12月号)
【0004】
【従来の技術】現在、配線基板用絶縁材料として実用化
が進められているポリイミドは耐熱性と低誘電率(ε=
3.4)を併せ持つ優れた材料である。
【0005】然し、この材料は極性の大きいイミド環を
有するために吸湿性が大きく、吸湿によって見掛け上の
誘電率が増大し、また絶縁性が低下すると云う問題があ
る。また、信号伝播速度はε1/2 反比例する関係がある
ことから、ポリイミドよりも更に誘電率の低い材料が求
められている。
【0006】こゝで、低吸湿性で耐熱性があり、しかも
誘電率が極めて低い材料としてパーフロロカーボン系の
ポリマ (例えばポリテトラフロロエチレン略称PTFE) が
知られている。
【0007】PTFEで代表されるパーフロロカーボン樹脂
は比誘電率(ε)が 2.0程度と極めて誘電率が低い材料
であり、また炭素ーフッ素間の結合エネルギーが大きい
ため優れた耐熱性を有している。
【0008】また、この材料は吸湿性が非常に小さく、
耐薬品性にも優れていることから、プリント配線基板の
基材として既に用いられている。然し、配線層と絶縁層
を1層づつ交互に積層する薄膜法においては、セラミッ
クスや金属よりなる剛性支持基板と絶縁層、絶縁層と配
線金属、絶縁層同士が接着する必要があるが、PTFEは融
着以外には接着が困難なことから多層配線基板用絶縁材
料としては使用されていない。
【0009】こゝで、PTFEを薄膜法に適用する手段とし
て、PTFEを2 軸延伸などの方法により多孔質化した後、
この多孔質膜に接着性のよい樹脂を含浸する方法が考え
られる。
【0010】すなわち、PTFEと複合化することにより、
必要とする接着性や耐熱性を保持しながら、誘電率や吸
湿性を低減することが可能となる。この方法をとる場合
に含浸する樹脂の必要条件は、多孔質なPTFEに含浸で
き、また、熱処理などによって接着できることが必要で
ある。
【0011】この要件を満たす材料として低分子量の熱
硬化性樹脂であるビスマレイミド・トリアジン樹脂(略
称BTレジン)を多孔質のPTFEに含浸したプリプレグ材料
が品名ゴアテックス GTM-051シリーズ(ジヤパンゴアテ
ックス社)として市販されている。
【0012】然し、BTレジンは耐熱性が 300℃以下とや
ゝ低く、比誘電率 (ε)も約 3.5とかなり大きいために
多孔質PTFEと複合化しても、複合膜の比誘電率は3.0 程
度までしか低誘電率化できない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】PTFEで代表されるパー
フロロエチレン系ポリマは耐熱性が優れ、また低誘電率
の絶縁材料であるが、接着性が極めて悪いため、そのま
ゝでは多層配線基板の層間絶縁膜として使用することは
できない。
【0014】一方、PTFEの接着性を向上する方法として
多孔質PTFEにBTレジンを含浸したプリプレグ材料が市販
されているが、BTレジンは耐熱性が 300℃以下であり、
複合膜の比誘電率も約 3.0とかなり大きい。
【0015】そこで、これよりも耐熱性が優れ、低誘電
率で含浸可能な熱硬化性樹脂を見出し、多孔質PTFEに含
浸して更に優れた多層配線基板用材料を実用化し、これ
を絶縁材料として多層配線基板を形成することが課題で
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記の課題は多孔質のポ
リテトラフロロエチレン膜の空隙部にベンゾシクロブテ
ン環を有する熱硬化性樹脂を含浸させた後に硬化させる
配線基板用絶縁材料を用い、剛性支持基板上に配線層と
上記の配線基板用絶縁材料よりなる絶縁層とを交互に積
層して形成することを特徴として多層配線基板の製造方
法を構成することにより達成することができる。
【0017】
【作用】本発明は、多孔質パーフロロエチレン系ポリマ
基材にベンゾシクロブテン環(略称BCB)を官能基とする
熱硬化性樹脂を含浸させることによって低誘電率, 低吸
湿性であって、耐熱性にも優れ、積層が可能な薄膜多層
配線基板用の絶縁材料を提供するものである。
【0018】BCB 樹脂は低誘電率(ε=2.7)で耐熱性に
優れた樹脂であり、これを支持基板上に塗布し、積層し
てMCMを試作した実施例とその特性は既に報告されて
いる。(IEEE Transactions on Components, Hybrids, a
nd Mnufacturing Tec. vol.13 p347, 1990. J. Electr
onic Materials vol.19 p.1357, 1990 等)然し、BCB
樹脂をPTFEと複合し、更に低誘電率化を図るという試
みは未だ知られていない。
【0019】発明者等はBCB 樹脂が低誘電率であり、耐
熱性に優れると共に表面張力が低く、液状であるために
液体が浸透しにくい多孔質PTFEに対しても含浸が可能な
ことを見出した。
【0020】また、BCB 単独の場合と同様に良好な接着
性を示すことも確認できた。こゝで、比誘電率は,PTFE
とBCB の体積比で決まりPTFEの体積占有率が増すに従っ
て低下するので、この点からはPTFEの体積比が大きく空
隙率が小さい方がよい。
【0021】然し、PTFEの体積比が 50%以上 (空隙率が
50%以下) になると BCBの含浸が困難になり、また接着
性が低下するので、実際には空隙率は50〜80%に設定す
るのが好ましい。
【0022】次に、BCB 樹脂とPTFEを複合する場合の利
点として、低誘電率以外に応力低減や脆さの改善を挙げ
ることができる。すなわち、 BCB樹脂は引張り強さが小
さいために割れ易いという欠点があるが、柔軟なPTFEの
繊維によりクラックの成長が阻止され、全体として割れ
にくゝなる。
【0023】また、BCB 樹脂を 220℃付近で硬化させて
室温まで冷やすと、支持基板との熱膨張率差に起因する
引張応力が発生するが、PTFEと複合化すると、PTFE部に
クレイズ(微小ボイド)が発生して応力を緩和すること
ができる。
【0024】次に、BCB 樹脂とPTFEを複合化した場合、
最大の問題点は層間配線のためのビアホール(Via-hol
e)の形成である。こゝで、市販の BCB樹脂であるテトラ
メチル−ジビニルジシロキサン−ビスベンゾシクロブテ
ン(品名 XU13005,ダウケミカル) は、電子線で露光し
た後に未反応部分を現像し除去してビアホールを形成す
ることができる。
【0025】また、反応性イオンエッチング(略称RIE)
を行うことによりビアホールを形成することもできる。
然し、PTFEと複合化した場合、前者の方法では BCB樹脂
は除去できてもPTFEが除去できない。
【0026】また、後者の場合は工程が複雑な上、Siを
含むBCB 樹脂とPTFEとを同時にドライエッチングするこ
とは難しいと云う問題がある。この問題は,エキシマレ
ーザ光によるアブレーション(Ablation)加工により解決
することができる。
【0027】こゝで、エキシマレーザアブレーション加
工とは、ピーク時のパワーが〜100MW/cm2 の強烈な紫外
線のパルス光によって有機物の化学結合を切断し、プラ
ズマ化して除去する加工法であり、発振波長を選ぶこと
で殆ど全ての有機物を加工することができる。
【0028】こゝで、吸収波長が短いPTFEについては、
波長が157nm のF2レーザで加工する必要があるが、 BCB
樹脂との複合体については波長が248nm の KrFレーザ
や、波長が308nm の XeCl レーザを用いても加工するこ
とができる。
【0029】これは、BCB樹脂がアブレーションされる
際の噴射圧によってPTFEが吹飛ばされるためと考えてい
る。勿論、複合体を F2エキシマレーザを用いて加工す
ることは可能である。
【0030】
【実施例】市販のBCB樹脂溶液(BCB 樹脂の 55%キシレ
ン溶液,品名ダウケミカル XU13005) の20g にメチルイ
ソブチルケトン 10gを加えて含浸溶液とした。
【0031】また、多孔質のPTFEとしては、厚さが80μ
m のPTFE製メンブランフィルタ (空隙率 75 %, 品名FP
-200,住友電工) を使用し、これに直径38mmの銅電極を
形成した。
【0032】先ず、大きさが70mm角のガラス基板上に上
記の多孔質PTFE膜を載せ、この上に含浸溶液をスクリー
ン印刷法で一定量印刷して多孔質PTFE膜に BCB溶液を含
浸させた。
【0033】そして、100℃のオーブンで30分間処理し
て溶剤を除去した後に真空オーブンに入れ、240℃で1
時間かけてBCBを硬化させ、空隙部が充填された均質なP
TFE膜を形成した。
【0034】なお,比較のため,同じ70mm角の基板上に
BCB樹脂のみの膜も形成した。かゝる試料について碁盤
目試験により接着性を調査したが、ガラス上、銅電極上
共に全く剥離しなかった。
【0035】次に、硬化した膜上に対向電極を形成し誘
電率を測定した。その結果、比誘電率は 2.55 (1MHz)で
あり、BCB 樹脂単独では 2.72 でありPTFEとの複合化に
よって誘電率が低下できることが確認できた。
【0036】また、硬化した膜上にさらに膜を積層し3
層よりなり厚さが 200μm の膜を形成したが膜の剥離は
見られなかった。然し、BCB 単独の場合は膜厚が 100〜
120 μm でクラックと剥離が発生した。
【0037】次に、直径50μm の開口を20×20個を有す
るマスクを通してKrF エキシマレーザ光を1ショット当
たり 0.8J/cm2の照射エネルギーで照射し、ビア加工
を行った。
【0038】この結果、膜厚80μmの膜に開口部で直径
60μm 、孔の底で直径35μm の真円形の孔を400 個形成
することができた。孔形成後、銅を蒸着し孔周囲を残し
て銅を除去しビアの接続を調べた結果、400 個とも確実
に接続していた。
【0039】
【発明の効果】本発明の実施により、低誘電率で耐熱性
にも優れた多層配線基板用絶縁材料を提供することがで
き、これを用いた多層配線基板の使用により情報処理の
高速化に貢献することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 1/03 610 H05K 3/46

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質のポリテトラフロロエチレン膜の
    空隙部ベンゾシクロブテン環を有する熱硬化性樹脂
    含浸され、硬化されていることを特徴とする配線基板用
    絶縁材料。
  2. 【請求項2】 剛性支持基板上に配線層と、請求項1
    載の配線基板用絶縁材料からなる絶縁層とを交互に積層
    することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
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