JP3163122B2 - 酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体の製造方法

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JP3163122B2 JP19003491A JP19003491A JP3163122B2 JP 3163122 B2 JP3163122 B2 JP 3163122B2 JP 19003491 A JP19003491 A JP 19003491A JP 19003491 A JP19003491 A JP 19003491A JP 3163122 B2 JP3163122 B2 JP 3163122B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、臨界電流密度を向上さ
せ得るBi系酸化物超電導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在のところ、高臨界温度Tc を示す超
電導体として、RE-Ba-Cu-O系(REは Yを含む希土類元
素、Tc =90K)、 Bi-Sr-Ca-Cu-O系(Tc =80K,110K)、
Tl-Ba-Ca-Cu-O系(Tc =125K)等の酸化物超電導体が知
られている。これら酸化物超電導体を実用化するため
に、液体窒素温度以上の臨界温度を目標にすると、臨界
温度Tc に関しては Y系、Bi系、Tl系のいずれの酸化物
超電導体も、この基準を満たしている。また、臨界磁場
c2もかなり高く、0Kにおいて Y系では 50T〜200T、Bi
系では 50T〜400T、Tl系では〜130Tである。
【0003】現状の酸化物超電導体は、上記した臨界温
度Tc や臨界磁場Hc2は比較的良好であるのに対し、臨
界電流密度Jc が実用レベルに達していないという問題
を有している。例えば、焼結法で作製したBi系酸化物超
電導材料では、外部磁場が存在しない条件下でも実用レ
ベルより二桁以上低い。一方、薄膜材料においては、10
6 A/cm2 を超えるJc が得られているものの、試料の厚
さが薄いため、臨界電流Ic で見るとまだ充分でないと
いう問題が残されている。さらに、磁場を印加したとき
のJc の低下が大きいという問題もある。
【0004】ところで、第二種超電導材料は、高い磁場
中でも超電導と常伝導が共存することによって、超電導
状態が利用できるという好都合な特性を有している。こ
のとき、外部磁場は量子化された状態(磁束)で超電導
体内に入り込んでいる。ただし、この状態で電流を流せ
ば、電流と磁束の間に働くローレンツ力のために磁束が
動き、電圧が発生する。これは、あたかも超電導体に抵
抗が存在するような結果を招き、零抵抗の電流とはなら
なくなってしまう。これによって、超電導特性を十分に
生かすことができなくなる。これは、第二種超電導材料
に共通の問題である。
【0005】ここで、零抵抗を得るためには、磁束を動
かないようにする工夫が必要となる。例えば、材料内部
に空間的に不均一な部分が存在していると、磁束はそこ
に位置した方がエネルギー的に安定となる。これをピン
止めという。この安定度がローレンツ力にたえられれ
ば、磁束は動かずに実質的に抵抗ゼロの電流が得られ
る。臨界電流密度Jc は、ローレンツ力とピン止めが釣
り合った状態の電流密度と考えられる。
【0006】金属系超電導体の実用材料では、粒界や析
出物等の不均質部を積極的に超電導体に導入して高い臨
界電流密度Jc 値を得ている。酸化物超電導体について
も、各所で盛んに磁場中でのJc を上げる努力が行われ
ている。例えば、焼結法を適用した Y系酸化物超電導材
料に関しては、原料を溶融状態から急冷し、微細な絶縁
性析出物を分散させることによって、磁場に対するJc
の低下が少ない試料が得られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、 Y系
酸化物超電導体においては、磁場による臨界電流密度の
低下を抑制した例が報告されている。しかしながら、上
記した方法はBi系酸化物超電導体等の他の酸化物超電導
体への応用が困難であるという問題を有していた。ここ
で、Bi系酸化物超電導体は、 Y系よりも高臨界温度を示
し、かつ水分等の外部環境に対する安定性も比較的良好
であるため、Bi系酸化物超電導体の磁場中での臨界電流
密度Jc の向上を図ることが強く望まれていた。
【0008】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、Bi系酸化物超電導体の磁場中での臨
界電流密度Jc を実用化に適するよう高めることを可能
にした酸化物超電導体の製造方法を提供することを目的
としている。
【0009】
【課題を解決するための手段と作用】本発明者らは、上
述したような目的を達成するために研究を進めたとこ
ろ、Bi系酸化物超電導体中に特定の酸化物の微細粒子を
均一に分散させることによって、それらの微細粒子を磁
束ピン止め中心として機能させ、かつ微細粒子を分散し
た上でBi系酸化物超電導体の良好な焼結状態を維持する
ことで、磁場中においても高い臨界電流密度Jc が得ら
れることを見出だした。
【0010】本発明は、上記したような知見に基づいて
なされたものである。すなわち、本発明の酸化物超電導
体の製造方法は、Bi系酸化物超電導体粉末 100体積部に
対し、ピン止め作用を有する酸化物粉末を 1体積部〜40
体積部の範囲で混合する工程と、この混合粉末を 800℃
〜900℃の範囲から選ばれた温度T1iまで昇温し、この
温度T1iから 2℃〜10℃低い温度T1fまで徐々に降温さ
せながら、所定時間保持して焼結させる工程と、この焼
結体を50℃以下の温度T2 まで急冷する工程と、この急
冷体を 400℃〜 700℃の範囲から選ばれた温度T3 で熱
処理する工程とを具備することを特徴としている。
【0011】本発明に使用される酸化物超電導体として
は、 Bi-Sr-Ca-Cuを基本構成元素とするBi系酸化物超電
導体であれば、種々の組成および構造のものを適用する
ことが可能であり、例えば下記の一般式で実質的に表さ
れるものが例示される。
【0012】 一般式:(Bi1-x Ax a (Sr1-y Dy b (Ca1-z Ez (n±α)-0.5 (Cu1-t Mt (n±β)+0.5 O2n+4±γ (式中、 AはPb、Li、 K、Na、Sb、SnおよびGeから選ば
れた少なくとも 1種の元素を、 DはBaおよびCdから選ば
れた少なくとも 1種の元素を、 EはMg、ZnおよびYから
選ばれた少なくとも 1種の元素を、 MはNb、 V、 W、T
i、Cr、Al、Ni、Co、ScおよびFeから選ばれた少なくと
も 1種の元素を示す。また、 a、 b、α、β、γ、 x、
y、 zおよび tは、それぞれ 1.4≦ a≦ 2.1、 1.5≦ b
≦ 2.0、 0≦α≦ 0.7、 0≦β≦ 0.7、 0≦γ≦ 0.5、
0≦ x≦0.4、 0≦ y≦ 0.3、 0≦ z≦ 0.4、 0≦ t≦
0.5を満足する数を示し、 nは 2または 3である)ま
た、本発明において、ピン止め物質として添加する酸化
物粉末は、Bi系酸化物超電導体との反応性が低い酸化物
であれば絶縁性物質であっても、常伝導物質であっても
よく、例えば ZrO2 、Cr2 O 3 、NbO 、 NbO2 、Al2 O
3 、 HfO2 、MgO 、TiO 、CaO 、NiO 、SrO 、Sc2 O 3
等の酸化物が使用される。これらは、1種または 2種以
上の混合物として使用される。
【0013】次に、本発明の製造方法について、図1お
よび図2を参照しながら、より詳細に説明する。
【0014】まず、目的とするBi系酸化物超電導体粉末
を用意する。Bi系酸化物超電導体粉末は、通常の固相反
応法を適用して製造すればよく、例えば以下に示す通り
である。すなわち、まず目的とするBi系酸化物超電導体
の構成元素の単体またはそれらを含む化合物を、所定の
比率で乾式混合法あるいは分散媒としてアセトン、エタ
ノール、メタノール、プロパノール等を用いた湿式混合
法によて、充分混合する。混合の際には、例えばBi2 O
3 、PbO 、Pb3 O 4 、SrCO3 、CaCO3 、CuO 、Cu2 O 、
Cu2 CO3 等の酸化物、炭酸化合物、あるいは、焼成後に
酸化物に転化する硝酸塩、有機酸塩、水酸化物、酸塩水
和物等の化合物を原料として用いることができる。ま
た、各原料粉末の平均粒径は、焼結密度を向上させるた
めに、0.3μm 〜 1.8μm の範囲のものを使用すること
が好ましい。
【0015】前述の原料を充分混合し、脱水乾燥した
後、 750℃〜 830℃で数十時間程度仮焼する。仮焼は窒
素またはアルゴンと酸素とを含有する雰囲気中で行うこ
とが好ましい。次に、この仮焼したものを充分に粉砕混
合した後、 800℃〜 900℃で数十時間〜数百時間の焼成
を行い、臨界温度Tc が 80K、 90Kあるいは110K前後の
Bi酸化物超電導焼結体を得る。そして、このBi酸化物超
電導焼結体を粉砕することにより、本発明において一方
の出発原料として使用するBi酸化物超電導体粉末を得
る。この一方の出発原料となるBi酸化物超電導体粉末
は、平均粒径 0.5μm以下程度とすることが好ましい。
【0016】本発明の製造方法においては、まず図1の
101工程に示すように、上記Bi酸化物超電導体粉末と、
上述したピン止め中心となる酸化物粉末とを十分に混合
し、本発明における原料粉末を調製する。上記ピン止め
用酸化物粉末は、平均粒径が0.5μm 以下のものを使用
することが好ましい。また、ピン止め用酸化物粉末のBi
系酸化物超電導体粉末に対する配合量は、Bi系酸化物超
電導体粉末 100体積部に対して 1体積部〜40体積部の範
囲が適当である。ピン止め用酸化物粉末の配合量が 1体
積部未満では磁束ピン止めの機能を十分に発揮させるこ
とができず、高臨界電流密度を得ることができない。ま
た、逆に40体積部を超えると、高密度の酸化物超電導体
が得にくくなり、臨界電流密度の低下を招く。
【0017】上記Bi酸化物超電導体粉末とピン止め用酸
化物粉末との混合に際しては、乾式混合法、あるいは分
散媒としてアセトン、エタノール、メタノール、プロパ
ノール等を用いた湿式混合法を使用する。なお、混合の
際に酸化物粉末に代えて、焼成後に酸化物に転化する硝
酸塩、有機酸塩、水酸化物、酸塩水和物等の化合物を出
発原料として用いることもできる。
【0018】次に、上記混合物を脱水乾燥した後、図1
の 102工程に示すように、Bi酸化物超電導体とピン止め
用酸化物との混合物の焼結工程を行う。この焼結工程に
おいては、まず使用したBi系酸化物超電導体の組成や、
Bi系酸化物超電導体とピン止め用酸化物との組合わせに
応じて、焼結工程の開始温度T1iを 800℃〜 900℃の範
囲から設定する。この焼結工程の開始温度T1iは、緻密
質なBi系酸化物超電導体が得られると共に、Bi系酸化物
超電導体とピン止め用酸化物粒子との強い結び付きが得
られるように設定する。
【0019】すなわち、Bi系酸化物超電導体とピン止め
用酸化物との組合わせによって、特にこれらの反応性が
低い場合には、部分溶融あるいは溶融が生じるような温
度に設定することが好ましい。これにより、Bi系酸化物
超電導体とピン止め用酸化物粒子との強い結び付きが得
られると共に、ピン止め用酸化物粒子を微細化すること
ができる。ただし、焼結工程の開始温度T1iを 800℃未
満の温度に設定すると、ピン止め用酸化物粒子とBi系酸
化物超電導体との結び付きの絶対力が不足して、良好な
ピン止め中心を得ることができない。また、逆に開始温
度T1iを 900℃を超える温度に設定すると、Bi系酸化物
超電導体がガラス状態に変化したり、Bi系酸化物超電導
体とピン止め用酸化物粒子との反応が激しくなるため、
Bi系酸化物超電導体本来の超電導特性を得ることができ
ない。よって、焼結工程の開始温度T1iは、 800℃〜 9
00℃の範囲の温度から設定するものとする。
【0020】次に、焼結工程の終了温度T1fを設定す
る。ここで、焼結工程を一定温度(開始温度T1i)に保
持して行うと、Bi系酸化物超電導体がガラス状態に変化
したり、Bi系酸化物超電導体とピン止め用酸化物粒子と
の反応が激しくなるため、Bi系酸化物超電導体本来の超
電導特性を得ることができない。よって、本発明の製造
方法においては、終了温度T1fを開始温度T1iから 2℃
〜10℃低い温度に設定し、開始温度T1iから徐々に終了
温度T1fに至るまで降温させながら、焼結工程を進行さ
せる。この様子を図2に示す。ここで、終了温度T1f
開始温度T1iに対する低下が 2℃未満である(T1f>T
1i-2℃)と、上記したBi系酸化物超電導体のガラス化や
Bi系酸化物超電導体とピン止め用酸化物粒子との反応を
十分に防止することができず、また終了温度T1fの開始
温度T1iに対する低下が10℃を超える(T1f<T1i -10
℃)と、焼結の進行を妨げることとなる。
【0021】また、上記焼結工程の保持時間は、使用し
たBi系酸化物超電導体の組成や設定焼結温度(T1iおよ
びT1f)に応じて適宜設定するものとする。通常、焼結
時間は 0.1時間〜 100時間程度とすることが好ましい。
さらに、開始温度T1iから終了温度T1fへの降温は、図
2に示したように、直線的に降温させてもよいし、また
数度づつ段階的に降温させるように設定してもよい。
【0022】上記焼結工程が終了した後、図1の 103工
程に示すように、焼結体を50℃以下の温度T2 まで銅板
等を用いて急冷する。この急冷工程によって、ピン止め
用酸化物粒子の凝集や粗大化が防止され、ピン止め用酸
化物の 0.1μm 以下程度の微細な粒状粒子を、Bi系酸化
物超電導体内に均一に分散させることができる。上記急
冷時の設定温度T2 が50℃を超えると、上記したピン止
め用酸化物粒子の凝集や粗大化を十分に防止することが
できない。また、急冷速度は10℃/sec以上に設定するこ
とが好ましい。
【0023】なお、分散粒子としての酸化物粒子の凝集
粗大化の防止、および均一分散性の向上を図る上で、急
冷工程の後に中間粉砕工程を導入し、再度、焼結工程お
よび急冷工程を行ってもよい。このように、中間粉砕工
程を含む焼結工程および急冷工程を複数回行うことによ
って、より微細な粒状粒子が分散されたBi系酸化物超電
導体が得られ、より効果的である。
【0024】次に、図1の 104工程に示すように、上記
急冷体を 400℃〜 700℃の範囲から選ばれた温度T3
再加熱し、その温度で数時間〜数十時間保持して熱処理
した後、徐冷することによって、 ZrO2 、Cr2 O 3 、 N
bO2 等の分散粒子からなるピン止め中心を有するBi系酸
化物超電導体が得られる。
【0025】この 400℃〜 700℃の温度域による熱処理
工程を導入する目的は次の通りである。前述した焼結工
程(開始温度T1i〜終了温度Tif)によって、Bi系酸化
物超電導焼結体の結晶粒内はよい超電導特性を示すもの
の、粒界のウィークリングが存在するため、全体として
はあまりよい超電導特性、特に良好な臨界電流密度Jc
は得られない。よって、このウィークリンクを改善し、
高い臨界電流密度等の良好な超電導特性が得られるよう
に、上記熱処理工程を導入する。
【0026】この熱処理工程の温度T3 が 400℃未満の
場合、粒界のウィークリンクを改善することができず、
また 700℃を超える場合、導入した分散粒子以外に新た
な反応による物質が生成し、逆にウィークリンクが促進
させるため、超電導特性が低下する。さらに、上記熱処
理の他の目的は、急冷により固溶されている元素を熱処
理を施すことにより微細に析出させ、超電導特性を改善
させることにある。すなわち、ピニング特性の向上に極
めて有効である。
【0027】本発明の酸化物超電導体の製造方法によれ
ば、ピン止め作用を有する酸化物の微細な粒状粒子が組
織内に均一に分散されたBi系酸化物超電導体が得られ
る。この酸化物粒子の粒子径は、 0.1μm 以下とするこ
とが好ましく、またその含有量はBi系酸化物超電導体 1
00体積部に対して 1体積部〜40体積部の範囲とすること
が好ましい。これによって、Tc =80K〜90K あるいはT
c = 105K〜115K、液体窒素温度(77K)、1Tの磁場中にお
ける臨界電流密度Jc が104 A/cm2 以上のBi系酸化物超
電導体材料が得られる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0029】実施例1 焼成後に、Bi1.6 Pb0.4 Sr1.75Ca2.25Cu3.2 O10±δ
なるように、Bi2 O 3 粉末、Pb3 O 4 粉末、SrCO3
末、CaCO3 粉末、Cu2 O 粉末あるいは CuO粉末を所定量
秤量し、分散媒としてエタノールを用いた湿式混合法に
よって充分混合した後、 100℃で長時間乾燥した。次
に、 O2 / (O2 +Ar)=10%程度の雰囲気中にて、 800℃×
24時間の条件で仮焼し、この仮焼物を乾式粉砕法あるい
はエタノールを用いた粉砕法により、平均粒径 0.5μm
程度の粉末とした。
【0030】次いで、 100℃で長時間乾燥した後、 O2
/ (O2 +Ar)=10%程度の雰囲気中にて、 830℃×50時間の
条件で焼成を行い、臨界温度Tc =110K のBi系酸化物超
電導体を得た。その酸化物超電導焼結体を乾式あるいは
湿式粉砕法によって粉砕し、脱水乾燥した後、粒径 0.5
μm 以下のBi系酸化物超電導体粉末を得た。
【0031】次に、上記Bi系酸化物超電導体粉末 100体
積部に対して、平均粒径 0.5μm 以下の ZrO2 粉末を20
体積部の割合で添加し、充分に混合した後、 100℃で長
時間脱水乾燥した。その後、 O2 / (O2 +Ar)=10%程度の
雰囲気中にて、焼結工程の開始温度T1i=830℃、焼結工
程の終了温度T1f=825℃、保持時間72時間の条件で、焼
結工程を行った。この焼結工程の終了後、10℃/secの冷
却速度で30℃まで急冷した。この後、、再び 450℃まで
昇温し、この温度で大気中にて12時間程度保持して熱処
理し、熱処理後室温まで徐冷することによって、微細な
ZrO2 粒子を含有する、Bi1.6 Pb0.4 Sr1.75Ca2.25Cu
3.2 O10±δで実質的に表されるBi系酸化物超電導焼結
体を得た。
【0032】上記の熱処理プロセスの効果は次の通りで
ある。まず、焼結工程の開始温度T1iが 830℃程度の焼
結は、Tc =110K 相の成長を促進すると共に、Bi1.6 Pb
0.4 Sr1.75Ca2.25Cu3.2 O10±δ超電導体と、粒状の Z
rO2 粒子との強い結び付きを作りだし、緻密な超電導材
料を提供する。しかし、その保持時間が長すぎると、Zr
O2 と超電導体との反応が激しくなり、超電導特性に悪
い影響を与える恐れがあるため、焼結工程の終了温度T
1fを 825℃とし、焼結時間を72時間とした。急冷プロセ
スは、 ZrO2 粒子の成長を防止する。また、 450℃、大
気中の熱処理プロセスは、粒界のウィークリンクを改善
して、バルクとして高い臨界電流密度Jc を得るための
プロセスである。
【0033】このようにして得た微細な ZrO2 粒子を含
有するBi系酸化物超電導焼結体を用いて、臨界温度Tc
および液体窒素温度、1Tの磁場中における臨界電流密度
c (77K,1T)を測定したところ、Tc =110K 、Jc =8.2
×104 A/cm2 という良好な結果が得られた。
【0034】なお、臨界温度Tc の測定は直流 4端子法
を用いて行った。Tc は測定した抵抗温度特性から零抵
抗を示す温度として求めた。臨界電流密度Jc は、液体
窒素温度(77K)において零磁場下および1Tの磁場下で、
1μV/cm程度の電圧を発生する電流値を試料断面積で除
して求めた。また、粉体のJc は、液体窒素温度におい
て磁化測定結果によりビーンモデル(Jc = 20△M(emu/
cm2 )/d(cm)(C.P.Beam:Pheys.Rev.Letts 8(1962)250 参
照) )を用いて求めた。磁化測定には、振動試料型磁力
計(VSM)と超電導量子干渉計(SQUID磁力計)を用いて行
った。
【0035】実施例2〜7 表1に示す各組成のBi系酸化物超電導体とピン止め用酸
化物とを用い、表1に示す条件にて、それぞれBi系酸化
物超電導焼結体を作製した。また、これらの特性を実施
例1と同様にして求めた。その結果も併せて表1に示
す。なお、表1中の (a)酸化物超電導体の製造条件の温
度と時間は、焼結温度と時間を示し、 (b)ピン止め用酸
化物の欄の体積%は、Bi系酸化物超電導体粉末 100体積
部あたりのピン止め用酸化物の体積部を示し、 (c)ピン
止導入条件の焼結条件および熱処理条件は、Bi系酸化物
超電導体粉末とピン止め用酸化物粉末を所定の割合で充
分混合した後の焼結条件および急冷した後の再熱処理条
件であり、 (d)超電導材料の特性は微細粒状の分散粒子
を含有した超電導特性である。
【0036】実施例8、9、10 表1に示すような組成となるように、Bi2 O 3 粉末、Sr
CO3 粉末、 A2 CO3 (A=Li,K,Na)粉末、CaCO3 粉末およ
び CuO粉末を所定の割合で混合し、 720℃〜780℃、10
時間〜12時間の条件で仮焼し、粉砕した後、その粉末を
ペレット状に加圧成形し、表1に示す酸化物超電導体の
製造条件で焼成を行った後、粉砕を行い、 0.5μm 以下
のBi系酸化物超電導体粉末をそれぞ得た。
【0037】次に、これらのBi系酸化物超電導体粉末を
用いて、それぞれに TiO粉末、 HfO2 粉末、 ZrO2 粉末
を同表に示す割合で混合し、同表に示すピン止導入条件
に基づいて、焼結工程、急冷工程および熱処理工程を行
い、酸化物からなる分散粒子を含有するBi系酸化物超電
導体材料を得た。これらの特性を実施例1と同様にして
求めた。その結果も併せて表1に示す。
【0038】実施例11 表1に示すような組成となるように、Bi2 O 3 粉末、 P
bO粉末、SrCO3 粉末、CaCO3 粉末、 CuO粉末、Cu2 O 粉
末および Y2 O 3 粉末を所定の割合で混合し、同表に示
す酸化物超電導体の製造条件に基づいてBi系酸化物超電
導体粉末を作製した。次に、同表に示すピン止め用酸化
物の割合、ピン止導入条件に基づいて、酸化物からなる
分散粒子を含有するBi系酸化物超電導体材料を得た。こ
れらの特性を実施例1と同様にして求めた。その結果も
併せて表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】表1から明らかなように、いずれのBi系酸
化物超電導体も、Tc は液体窒素温度以上であり、かつ
c (77K,1T)は104 A/cm2 以上で、実用可能な超電導体
材料が得られていることが分かる。
【0041】次に、本発明との比較として掲げた例につ
いて説明する。これら比較例の条件および特性の測定結
果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】比較例1 超電導体の組成、ピン止め物質の種類、製造条件等は実
施例1と同様であるが、ピン止め物質の含有量を 0.5体
積%とした。超電導特性において、Tc は110Kであった
が、Jc (77K,1T)は 2×103 A/cm2 と、実用レベル以下
であった。
【0044】比較例2 超電導体の組成、ピン止め物質の種類、製造条件等は実
施例1と同様であるが、ピン止め物質の含有量を45体積
%とした。超電導特性において、Tcが 30Kであるた
め、Jc (77K,1T)は得られなかった。
【0045】比較例3 超電導体の組成、ピン止め物質の析出物の種類、製造条
件等は実施例3と同様であるが、ピン止め物質の含有量
を 0.9体積%とした。超電導特性において、Tc は107K
であったが、Jc (77K,1T)は 5×103 A/cm2 と、実用レ
ベル以下であった。
【0046】比較例4 超電導体の組成、ピン止め物質の種類、製造条件等は実
施例3と同様であるが、ピン止め物質の含有量を40体積
%とした。超電導特性において、Tcが 52Kであるた
め、Jc (77K,1T)は得られなかった。
【0047】比較例5 ピン止導入条件の焼結温度を 780℃とした以外は、他の
製造条件およびピン止め物質等は実施例4と同様とし
た。その焼結温度を 800℃以下にしたため、試料は液体
窒素温度以下のTc を示した。また、Jc(77K,1T)は得
られなかった。
【0048】比較例6 ピン止導入条件の焼結温度を 950℃にしたこと以外は、
他の製造条件およびピン止め物質等は実施例5と同様と
した。その焼結温度を 900℃以上にしたため、焼結体中
のガラス化が進み過ぎ、Tc は105Kを示したが、Jc (7
7K,1T)は実用レベル以下の 4×102 A/cm2 であった。
【0049】比較例7 ピン止導入条件の熱処理温度を 350℃にしたこと以外
は、他の製造条件およびピン止め物質等は実施例6と同
様とした。その熱処理温度を 400℃以下にしたため、粒
界のウィークリンクを改善することができず、Tc は11
0Kであったが、Jc (77K,1T)が低く、 3.5×102 A/cm2
であった。
【0050】比較例8 ピン止導入条件の熱処理温度を 720℃とした以外は、他
の製造条件およびピン止め物質等は実施例7と同様とし
た。その熱処理温度を 700℃以上にしたため、(Ca,Sr)
2 (Pb,Bi)Ox 等の生成が粒界のウイークリンクを促進し
たため、Tc は117Kであったが、Jc (77K,1T)は 3×10
3 A/cm2 しかなかった。
【0051】比較例9 焼結工程後の冷却を急冷ではなく、 200℃/時間の冷却
速度で徐冷した。他の製造条件およびピン止め物質等は
実施例5と同様とした。その冷却過程により、(Bi,Pb,S
n)2 (Sr,Cd)3 (Cu,Ti)2 Ox 等の析出物の成長によ
り、表2に示すように、十分なJc (77K,1T)は得られな
かった。
【0052】比較例10 焼結工程の終了温度T1fを開始温度T1i(=870℃)と等
しくする以外は、実施例7と同様とした。長時間にわた
って焼結工程の開始温度( 870℃)を維持したこちによ
ってガラス化が進み過ぎ、Jc (77K,1T)は実施例7より
低くなった。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の酸化物超
電導体の製造方法によれば、酸化物微細粒子をBi系酸化
物超電導体に均一に分散させることができ、それらを磁
束ピン止中心として機能させることが可能であるため、
液体窒素温度以上で実用可能な臨界電流密度Jc を有す
るBi系酸化物超電導体材料を再現性よく得ることができ
る。なお、Bi系酸化物超電導体は、今まで4.2K、20T 以
上では使用可能な材料であったが、77K 、数テスラの磁
場中においてはJc が低く、使用不可能であったのに対
して、本発明によって得られるBi系酸化物超電導体は、
77K、強磁場中でも実用可能となる。また、強いピン止
中心を存在させることにより、外部磁場による磁束が超
電導体内部に入り込むことができないため、強い反発力
が生じ、すなわち磁気浮上現像を応用するリニアモータ
カー等に最適な材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造工程を示すフローチャートであ
る。
【図2】本発明の製造工程における温度プログラムを模
式的に示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野村 俊自 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝 総合研究所内 (56)参考文献 特開 平3−141512(JP,A) 特開 平1−308803(JP,A) 特開 平3−53412(JP,A) 特開 平2−30655(JP,A) 特開 平2−199057(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00,29/00 C04B 35/64

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Bi系酸化物超電導体粉末 100体積部に対
    し、ピン止め作用を有する酸化物粉末を 1体積部〜40体
    積部の範囲で混合する工程と、 この混合粉末を 800℃〜 900℃の範囲から選ばれた温度
    1iまで昇温し、この温度T1iから 2℃〜10℃低い温度
    1fまで徐々に降温させながら、所定時間保持して焼結
    させる工程と、 この焼結体を50℃以下の温度T2 まで急冷する工程と、 この急冷体を 400℃〜 700℃の範囲から選ばれた温度T
    3で熱処理する工程とを具備することを特徴とする酸化
    物超電導体の製造方法。
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